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変革期・不動産ビジネスのトレンドー 殿岡秀秋

2007-01-29 11:04:22 | Weblog

変革期・不動産ビジネスのトレンド第8回

住宅ローンアドバイザー 殿岡秀秋
 
 住宅売主に保険加入義務付けで予算措置

 国土交通省では,2006年の耐震偽装事件のように,住宅の売主が瑕疵担保責任を全うできずに倒産した場合でも,被害者が必ず救済されるような制度作りを目指しています。
 国土交通省は,住宅販売業者による新築住宅の瑕疵(欠陥)について,補修工事の保険金支払いに充てる住宅保証基金を拡充して,2007年度予算案で90億円を計上しました。
 さらに,悪質な欠陥住宅から住宅購入者を救済するため,新たに「住宅購入者等救済基金」(仮称)も創設することにしています。
 政府は,住宅販売業者に対する保険加入や「供託」などの補償資力の確保の義務化も含めた法案を2007年1月からの通常国会に提出することにしています。
 新築住宅の購入者を欠陥から保護するための制度は,2000年4月に施行された住宅品質確保促進法で定められています。住宅の売主は最低10年間の責任を負い,欠陥があれば住宅保証基金や損害保険会社から保険金が支払われることになっています。
 住宅保証基金の拡充はマンションなどの耐震強度偽装事件を受けての措置で,住宅性能保証制度(住宅保証機構が認定)に基づく保険金支払いの増加に備えて,今年度予算案で住宅保証基金の積立額を87億円から3億円積み増すことにしたものです。
 また,同基金の使途を拡充し,損害保険会社の保険金支払い能力を超えるような巨額の改修費用が発生した場合に,同基金から無利子で貸し付けることができるようにします。
 保険を新築住宅の売主に義務付けるには,保険会社の保険が安定して供給される必要があり,再保険プールを各保険会社が活用する形になります。
 再保険プールとは,危険の分散・平準化を効率的に図るための共同再保険のことです。多数の保険会社が各自の引き受けた保険契約の全部または一部をプールしておき,それを個々の加盟会社の引受能力・実績等を考慮して,事前に定められた配分割合により加盟会社へ再配分する仕組みのことです。
 しかし,制度創設期に巨額の事件が起きると,再保険プールのキャパシティー(収容能力)を超え,被害者を完全に救済できない可能性があります。そのため,国によるバックアップとして,国費を再保険プールなどに無利子で貸し付けられるようにしました。
 現在,住宅保証基金に87億円が積まれていますが,2007年度の予算として3億円増額し,総額90億円がその目的に利用できるようにします。
 国土交通省では,こうした予算の裏付けを基に次期通常国会に法案を提出し,保険など瑕疵担保責任の履行確保措置を,新築住宅の売主や請負人に義務付ける方針です。
 
 「住宅購入者等救済基金」を創設へ

 国土交通省は,住宅業者の出資を基に「住宅購入者等救済基金」(仮称)を2009年度をめどに創設するための法案を通常国会に提出することにしています。
 販売業者には10年間,構造部分などの欠陥を補償する義務がありますが,耐震偽装事件のように販売元が倒産したうえ,故意や重大な過失が原因であれば,業者に保険金は支払われず,結果的に購入者は泣き寝入りせざるを得ません。基金は,今後の類似事件でこうした被害者を救済するのが目的となります。
 基金への拠出が義務付けられるのは,補償資力確保の手段として保険加入を選んだ販売業者で,中小業者が中心になるとみられます。住宅1戸当たりの保険料は数万円,基金拠出額は数百円が見込まれています。
 
 中間省略登記が事実上可能に

 2005年3月の不動産登記法改正以後,禁止する改正をしないまま中間省略登記ができなくなっていた問題で,首相の諮問機関である内閣府規制改革・民間開放推進会議は2006年暮れの最終答申で「第三者のためにする契約」という形で従来の中間省略登記と同様の登記ができることを周知すべきであると答申し,閣議で了承されました。
 2007年1月には,法務省から周知する文書が出される見通しです。
 中間省略登記とは不動産をAからB,BからCへと順次売買したときに,中間のBが移転登記をしないで,Cが登記すること。移転登記の登録免許税が高いため,慣行として行われてきました。
 最高裁は三者の合意があれば申請できるとしていますが,不動産登記法改正以後,法務局は受理していませんでした。このためB(通常の場合,宅建業者)が登記をすれば,その費用をCへの転売価格に上乗せすることになります。
 そこで,規制改革会議は不動産登記法改正前と実質的に同じ形態を実現し,現場の取引費用の低減ニーズに応えるとともに,不動産の流動化,土地の有効利用を促進する観点から,不動産登記制度を所管する法務省との間で「第三者のためにする売買契約の移転登記」という形で可能にすることで確認しました。
「第三者のためにする登記」は,中間省略登記の代わりに法務省から内閣府に出された代案です。不動産を売買する際に,「買主の指定する者に所有権を直接移転する」という特約をつけて行うものです。第一の売買の売主から第二の売買の買主に所有権を直接移転することで,中間省略登記をした場合と同様に登記が実現できるばかりでなく,中間者の不動産取得税が不要となるメリットが生じます。
 従来の中間省略登記では中間者に登録免許税はかからなくても,不動産取得税はかかっていました。今後,合法的な節税に活用できる仕組みができることになります。
 
 国交省,宅建業法の義務遵守を

 国土交通省では,「第三者のためにする契約」により中間省略登記と同様の移転登記をすることを認めることにしています。しかし,この契約をしても宅建業法上は,2回の売買をする方法をとるべきだとしています。
 第一の売買で特約している場合でも,第二の契約は通常の売買とするようにと考えています。当然のこととして第二の売買での重要事項説明も省略できません。
 国土交通省は,宅建業者が「第三者のためにする契約」によって,宅建業法上負っている義務を免れようとすることがあれば,厳正に対処する方針です。
 
 自民党税制調査会の税制改正大綱

 税制調査会には,政府税制調査会と自民党税制調査会の2つがあります。
 政府税調は首相の諮問機関で,学識経験者らで構成されています。3年の任期に合わせてまとめる中期答申などで,中長期的な税制改正の方向性を打ち出すほか,毎年末に翌年度改正の答申を出しています。
 一方,自民党税調は税制に精通したベテラン議員を中心とした税制の最終決定機関で,年度改正に主軸を置き,党の各部会と調整して翌年度改正の税制改正大綱を策定します。公明党と与党協議を開き,与党税制改正大綱をまとめています。政府はこれに基づいて税制改正大綱を法案にし,毎年の通常国会に提出する仕組みになっています。
 
 バリアフリー改修促進税制の創設ほか

 住宅バリアフリー改修工事のための住宅借入金についてのローン控除が新設されます。バリアフリー改修工事を含む増改築工事を行った場合,その工事費用に充てるために借り入れた住宅ローンの年末残高に応じ,一定割合を5年間にわたり,所得税額から控除する制度を創設します。
 改修工事のための住宅借入金1,000万円以上なら最大12万円が5年にわたり,5年間総額で最大60万円税額控除されます。
 これに併せ,現行の住宅ローン減税の対象となる増改築等の範囲に,バリアフリー改修工事を追加し,住宅ローン減税による控除措置との選択適用とします。
 具体的には,バリアフリー改修工事に係る費用については,ローン残高200万円を限度(バリアフリー改修工事以外の部分との合計では1,000万円以下)とし,控除期間5年間で税額控除率2.0%(バリアフリー改修工事以外の部分は1.0%)を適用します。
 一方,地方税部分については,自己資金と借入れの区別なく,固定資産税の減額措置(2007年4月1日から2010年3月31日までにバリアフリー改修を行った住宅に対し,固定資産税額を3分の1減額,戸当たり100㎡までを限度)を創設することにしています。
 
 住宅ローン減税の効果確保―新方式でも

 税源移譲に伴う住宅ローン減税の効果確保について,2007年,2008年の入居者を対象に特例措置を講じ,現行制度との選択制とすることにしました。
 2007年の入居者に対し,住宅ローン等の年末残高2,500万円以下,控除期間15年,控除率=1年目~10年目0.6%(年間限度額15万円),11年目~15年目0.4%(同10万円)で最高控除額200万円を適用します。
 また,2008年入居者には,年末残高2,000万円以下,控除期間15年,控除率=1年目~10年目0.6%(年間限度額12万円),11年目~15年目0.4%(同8万円),最高控除額160万円とします。
 現行制度と比較すると,2007年,2008年ともに最高控除額は同水準で,控除期間を現行の10年間とするか,新たな特例措置の15年間とするかは,入居者の選択に委ねることとしています。
 
 電子登記は税額控除

 電子証明書での所得税電子申告は初回5,000円税額控除,オンライン登記申請の登録免許税も最大5,000円控除です。
 なお,電子申告での領収書証明書添付が不要となります。
 
 事業用資産買換特例は2年延長に

 事業用資産買換特例が2年延長になりました。この制度は,10年超所有の事業用土地建物の買換えに際し,個人の譲渡所得税額が本来の2割で済むというもので,2006年末で期限を迎えます。
 特例の延長を不動産業界が強く要望して実現しました。ただし,次の延長期限の2008年末までに見直しについて検討することになっています。
 
 特定の居住用財産の譲渡特例も3年延長

 特定の居住用財産の買換え・交換の場合の長期譲渡所得の買換特例は,買換え資産の床面積要件の上限を撤廃したうえで,3年間延長されます。ただし,延長される特例とは別のもう1つの特例である相続により取得した居住用財産の買換特例は廃止です。2つある買換特例が,1つに統合されました。
 期限延長される特定の居住用買換特例での買換取得資産には280㎡までとの制限がありましたが,廃止される買換特例にはこの面積制限がありませんので,制度統合にともない制限なしに統一したものと思われます。
 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度と特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除制度については,ともに3年間単純延長されます。
 住宅用家屋の所有権保存登記等に係る特例措置は,2年間延長します。
 特定住宅地造成事業等による土地等の譲渡所得に係る1,500万円特別控除制度の適用期限を2年間延長します。
 
 匿名組合への源泉徴収義務

 匿名組合では,組合員が10人以上だと利益分配の20%について源泉徴収をしないといけません。そこで,源泉徴収逃れのために9人以下にすることも多いのです。
 この人数要件が撤廃され,すべての匿名組合が源泉徴収をしないといけなくなります。投資の仕組み作りに大きな影響が生じるものと思われます。

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不動産ビジネスのトレンド

2007-01-26 10:12:09 | Weblog
変革期・不動産ビジネスのトレンド

             賃貸住宅管理士 殿岡秀秋

 消費者団体訴訟制度

 消費者契約法の改正により,消費者団体訴訟制度が新たに創設され,平成19年6月7日に施行されます。
 この制度は消費者全体の利益を擁護するため,一定の消費者団体に事業者の不当な行為に対する差止請求権を認めるものです。
 法律を所管する内閣府は,建物賃貸借契約(原状回復特約など)や金融商品等をめぐるトラブルを念頭に置いています。
 消費者契約に関する被害が多数発生しており,被害者が消費者契約法によって救済されることは可能となりました。しかし,被害の広がりを防止することが困難でした。このため事業者の不当行為を抑止する方策として,消費者団体訴訟制度が誕生しました。
 消費者団体は事業者と法的な利害関係がないため,現在は事業者に改善申入れや抗議行動を繰り広げることはできても,不当な商行為を差し止める裁判は起こせません。現状は被害者個人がそれぞれ業者と争うしかないのです。
 平成19年6月7日以降は,「適格消費者団体」と認定されれば事業者に対し,悪質な勧誘行為や不当な契約条項など消費者契約法に違反する行為の差止めを求めて提訴できるようになります。
 勝訴すれば被害の未然防止や被害拡大を食い止める効果があると期待されています。たとえば,賃貸住宅の明渡しのときに,原状回復特約を不当と考える入居者の相談を受け,適格消費者団体が家主を訴えることも可能になります。
 適格消費者団体は内閣府が認定します。その要件は法人格を持ち,消費者全体の利益を守る活動を継続していることや,特定業者や業界から不当な影響を受けない役員構成であることなどとなっています。
 不当な契約条項として想定されているのは,消費者契約法の次の条項に違反するものです。
①事業者の損害賠償責任を免除する条項。たとえば,「いかなる理由でも一切損害賠償責任を負わない」というようなもの。消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項。たとえば,「消費者が解約したとき代金を一切返金しない」というようなもの。
②消費者の利益を一方的に害する条項。たとえば建物の賃貸借契約で借主に過重な原状回復義務を課すようなもの。
 内閣府の資料では,「消費者の利益を一方的に害する条項」の例として原状回復義務が記載されています。
 この制度に基づく判決や和解の概要は,内閣府が速やかにインターネットで公表するとしており,建物賃貸借の実務に大きな影響を与えるものと予想されます。
相次ぐ「敷引」無効判決
 関西方面で建物賃貸借にあたり「敷引」という慣行があります。これは借主から貸主に渡された敷金のうち,一定の部分を借主に返還しないことを契約時点で特約するもので,この返還しない部分を「敷引」と呼んでいます。
 京都地裁は平成18年11月8日,敷引特約を消費者契約法違反で無効とした原審(木津簡裁判決)の判断を維持し,家主の控訴を棄却しました。家主側は敷引特約の趣旨を通常損耗料ではなく「賃料の前払い,更新料免除の対価,礼金など」と主張しました。しかし,裁判官は「いずれも合理性がない」と判断したようです。この判決文は公開されていないため,はっきりしたことは分かりませんが,このところ敷引特約を無効とする判決が続いているのは事実です。その幾つかを挙げておきます。
 
 消費者契約法による敷引特約無効の判決 


①平成17年7月,神戸地裁は敷引特約を消費者契約法に違反し,無効と判決しました。これは敷引金の性質を5つに整理したうえで,個々の性質について合理性を判断。結果,無効との判決をくだしたものです。
②平成17年10月,福岡地裁は「敷引金のうち,敷金の25%を超える部分は消費者契約法に違反し無効」と判決しました。
③平成18年6月,大津地裁は敷引特約を「敷金の80%を返還しないという特約は,賃借人の義務を不当に重くする」として敷引金全額の返還を命じました。
④平成18年7月,大阪高裁は「敷金の83%,賃料の6か月分以上に及ぶ敷引は消費者契約法にある住人の利益を一方的に害するもので無効」と判断し,上告を棄却しました。

 マンション再生支援の民間事業者決定

 都市再生機構は平成18年11月17日,横浜市の花咲団地のマンション再生支援で,同機構として初めてマンション再生支援の民間事業協力者を決定しました。
 都市再生機構のコーディネートのもと,花咲団地管理組合がマンション建替えに係る民間協力事業者を募集し,新日鉄都市開発を幹事とする企業グループを選定しました。
 花咲団地は昭和33年に日本住宅公団(現都市再生機構)が供給し,48年が経過しています。4階建て4棟で,全戸専有面積48㎡の3DKタイプとなっています。
 花咲団地では平成17年7月の管理組合総会で建替え推進決議と建替え決議に向けた建替え基本構想の策定と事業協力者募集・選定等を行うコーディネートを都市再生機構に依頼することが決議されました。
 平成18年7月の組合総会では,マンション建替えに係る民間事業協力者の募集選定を行うことについて組合員の合意が得られました。
 同年8月に民間事業協力者の募集を開始したところ10企業グループからの申込みがあり,審査・選定を経て,同年11月12日の組合総会で新日鉄都市開発を幹事企業とするグループに決定されました。グループ参加企業は幹事企業のほかに三菱地所,日建ハウジングシステム,戸田建設となっています。
 役割分担は,分譲管理組合(建替組合)が①マンション建替えに向けた検討,②建替え決議,③建替組合設立④権利変換計画決議・認可取得。
 都市再生機構は,①建替基本構想案策定(権利者個別ヒアリング,行政との事前協議等),②事業協力者選定支援。
 事業協力者は,①建替実施計画案策定,②権利変換計画策定,③建設工事,④保留床処分などとなっています。
 今後は平成19年夏予定の建替え決議に向けて合意形成を図っていきます。権利変換は平成20年春,第一工区への入居は平成22年春,全事業終了は平成24年を予定しています。


都市部での公図と現況のずれを公表


 国土交通省は,都市部での公図と現況のずれを調査していますが,その一部について平成18年11月24日から同省のホームページ(http://www.land.mlit.go.jp/Kouzu_zure)に公開を始めました。
 都市部を中心として地籍調査が遅れているため,現在でも多くの地域において,明治初期の地租改正に由来する公図が登記所に備えられ,筆界確認の資料として使われています。これらの公図には精度の低いものが多く含まれています。
しかし,一般にその認識が低く,問題点や対策の必要性についても理解されていないのが現状です。
 現在,筆界についての情報の整備が不十分で,土地利用をめぐるトラブルや土地活用の遅れが生じています。
 国土交通省は,この公開を通じて公図に代わる正確な地図を作成する「地籍調査」の重要性について関心を高めたいと企図しています。
 公開エリアは地籍調査が終わっていない都市部のエリアで,14都府県の21の市や区で使われている約1万9,600枚の公図が公開の対象です。
 地図上のエリアを「精度の高い地域」から「極めて大きなずれのある地域」までの5段階に色分けして表示します。
 精度の調査では,1枚の公図の四隅の点に対応した現地の点の位置を測量し,どれだけ現況と離れているかを評価しました。
 今回公表される公図では1m以上10m未満の大きなずれのある地域が63%で最も多くなっています。次いでずれが30㎝以上1m未満の地域が23%でした。10㎝未満の精度の高い地域は4%しかありませんでした。
 一方で10m以上極めて大きくずれている地域は3%ありました。
 標準的な公図は,エリアの縦横の長さが200mから250m程度のものが多くなっています。
 市区町村の事業として行われている地籍調査は全国で5割の進捗状況ですが,都市部では2割しか進んでいません。
〈地籍調査を実施していない地区について,今回明らかになった公図と現況のずれを程度によって色分けして表示(川崎市役所周辺を拡大した例)〉
 
 重要事項説明に「造成宅地防災区域の指定の有無」を義務づけ

 宅建業法施行規則が9月30日に一部改正され,宅地・建物に関するすべての取引(賃貸借含む)において,「造成宅地防災区域の指定の有無」を重要事項として説明することが義務づけられました。造成された宅地の安全性を確保するための災害防止措置を規定した改正宅地造成等規制法の施行(9月30日)に伴うものです。
 造成宅地防災区域とは,宅地造成に伴いがけ崩れや土砂の流出等の災害が生ずるおそれの著しい市街地または市街地になろうとする土地等について,都道府県知事が指定した区域です。
 宅地造成等規制法は,宅地造成工事規制区域内において行われる一定の宅地造成工事(1mのガケを生じる盛土等)について造成主に,当該工事の着手前に都道府県知事の許可等を受けなければならない旨等を定めています。
 造成宅地防災区域内の造成宅地の所有者または管理者,占有者は,他に損害を与えないよう常に宅地を安全な状態に維持する義務を負っています。
 都道府県知事は災害防止のため必要に応じて,報告の聴取,立入検査,勧告,改善命令等によって指導や勧告を行うことになっています。そのため,宅地・建物の購入者等の保護の観点から,宅地建物取引業法施行規則第16条の4の2を改正し,宅地または建物について,「当該宅地または建物が宅地造成等規制法第20条第1項により指定された造成宅地防災区域内にあるときは,その旨を説明すること」が新たに規定されました。
「造成宅地防災区域内にあるときは,その旨」との表現ですが,当該区域外のときは説明が要らないのではなく,国土交通省はすべての取引(建物賃貸借を含む)で「区域指定の有無の説明」を行うよう求めています。
 どの区域が造成宅地防災区域なのかについては,都道府県庁に確認する必要があります。
〈国交省作成,「区域指定の有無」欄を設けた重説書式〉
 
宅建業者の監督処分案

 国土交通省は重要事項説明書に虚偽記載があったときは,標準的な業務停止期間を7日間とし,関係者の損害の程度により15日間,30日間とし,処分の内容は同省のホームページに掲載するという「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準(案)」を公表し,パブリックコメント(意見募集)を実施しました。
 現在,宅建業法違反の処分の重さ(指示・業務停止・免許取消し)は内規で定められており,裁量的な部分も残されている。そこで今回,事業者によるコンプライアンス向上の取組みを促進し,不正行為の未然防止を図る目的で定型化した処分基準案を発表したもの。
 違反行為ごとの業務停止期間の案の主な内容は,次のとおり。
 
 重要事項説明書の虚偽記載は標準の業務停止期間を7日間とし,関係者の損害の程度により15日,30日とする。
 契約締結等の時期の制限違反は標準の業務停止期間を15日とし,関係者に損害が発生した場合は30日とする。
 専任取引主任者設置義務違反は業務停止期間を7日とする。
 重要な事項について故意に事実を告げず,または不実のことを告げたときは,業務停止期間を90日とする。
 処分の加重・軽減措置の主な内容については,次のとおり。
 違反行為により発生した関係者の損害が特に大きい場合や違反行為が暴力的である等,特に悪質な場合は,業務停止期間を1.5倍に加重できる。
 複数の違反行為を行ったときの業務停止期間は,違反行為のうち最も長期のものの1.5倍から2倍,または各違反行為の業務停止期間の合計日数のうち,短い日数とする。
 過去5年間に監督処分を受けていた場合は,業務停止期間を1.5倍に加重する。
 関係者の損害が発生せず今後の発生も見込まれない場合,または,関係者の損害が直ちに補填され補填内容が合理的であり当該業者の対応が誠実であると認められる場合は,指示処分とすることができる。
 直ちに違反状態を是正した場合は,指示処分とすることができる。
 また,地域を限定した処分を行うことができるよう規定します。その処分内容は国土交通省の各地方整備局,北海道開発局,沖縄総合事務所のホームページに掲載して公表することにしています。

 バリアフリー法でも重説改正へ

 バリアフリー法に基づく協定の有無について,土地建物の売買や賃貸のときに重要事項説明が必要になるかもしれません。
「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」いわゆるバリアフリー法の施行が平成18年12月20日に行われたのに伴い,宅地建物取引業法施行令を一部改正し,移動円滑化協定の有無等を「法令制限」として重要事項説明に追加することについて,国土交通省は11月にパブリックコメント(意見募集)を行いました。
 バリアフリー法とは,ハートビル法と交通バリアフリー法を統合し,さらにバリアフリー化義務付け施設や重点整備地区の対象範囲を拡大した法律(平成18年6月21日公布)です。
 従来は旅客施設を中心とした徒歩圏が重点整備地区でしたが,バリアフリー法は当該地区を,生活関連施設(官公庁施設,福祉施設等)を中心とした区域や,公共交通機関での移動圏域にまで拡大しました。
 重点整備地区では,地区内の一団の土地所有者や借地人等は,全員の合意によって,高齢者・障害者等の移動等円滑化のための経路の整備や管理に関する協定を締結することができるようになります。
 協定が締結されますと,その区域内の土地所有者等には,当該経路や経路を構成する施設の整備・管理を行うことが求められます。
 移動円滑化協定の効力は新たに土地所有者になった者等にも及ぶため,国交省は宅建業法施行令を一部改正し,移動円滑化協定が承継されること等を「法令制限」として重要事項説明に追加するためにパブリックコメント(意見募集)を実施しました。