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不動産受験新報2007年12月号 小川多聞

2007-12-07 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年12月号
       (毎月1日発売 定価910円)


特集2
新傾向に強くなる
行政書士直前対策
記述式
行政法①
住宅新報社講師 小川多聞

予想問題
 地方自治法は,財務事務の民主的かつ実効的な統制を実現するために,「住民監査請求」と「住民訴訟」を認めているが,この「住民訴訟」を提起できるのは,①住民監査請求に係る監査の結果又は勧告に不服がある場合,②監査委員の勧告を受けた議会,長その他の執行機関又は職員の措置に不服がある場合,③監査委員の勧告を受けた議会,長その他の執行機関又は職員が勧告に係る措置を講じない場合,これに加えて,もう1つの場合があるが,どのような場合か,40字程度で記述しなさい。
 



解 説
「住民訴訟」の要件を聞いてみました。
(1)住民訴訟の意義 
 住民訴訟の制度は,「住民監査請求」をしたけれども,それがうまくいかなかった場合に,裁判所による是正を要求する制度です。
 住民からの請求により,地方公共団体の執行機関または職員の行う違法な行為もしくは怠る事実の発生を防止し,またはこれらによって生じる損害の賠償等を求めることを通じて,地方公共団体の財務の適正をはかり,住民全体の利益を保護することを目的とするものです。
 住民訴訟は,行政事件訴訟法5条の「民衆訴訟」の類型に属するものであり,地方公共団体の機関または職員の法規に適合しない行為の是正等を求める訴訟で,自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものであり,法律による特別の定めに基づいて提起することが認められているものです。
 地方自治法242条の2第1項は,次のように定めています。
 
 普通地方公共団体の住民は,前条第1項の規定による請求(「住民監査請求」)をした場合において,同条第4項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第9項の規定による普通地方公共団体の議会,長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき,又は監査委員が同条第4項の規定による監査若しくは勧告を同条第5項の期間内に行わないとき,若しくは議会,長その他の執行機関若しくは職員が同条第9項の規定による措置を講じないときは,裁判所に対し,同条第1項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき,訴えをもって次に掲げる請求をすることができる。
一 当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
二 行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
三 当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし,当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第243条の2第3項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあっては,当該賠償の命令をすることを求める請求
 
(2)請求権者
 住民訴訟の請求権者は,「住民監査請求を行った住民」であり,住民監査請求の手続を経ていることが,住民訴訟の提起のための必須の要件とされています。
(3)請求対象
 住民訴訟を提起できるのは,次の場合です。
①住民監査請求に係る監査の結果または勧告に不服がある場合
②監査委員の勧告を受けた議会,長その他の執行機関または職員の措置に不服がある場合
③監査委員の勧告を受けた議会,長その他の執行機関または職員が勧告に係る措置を講じない場合
④監査委員が住民監査請求に係る監査または勧告を,当該請求をした日から60日以内に行なわない場合
 本問は,上記④を問うものですが,若干細かいと思われるので,①から③までを問題文に掲げ,④を思い起こしやすくしています。
(4)請求内容
 住民訴訟の請求内容は,次のとおりです。
①当該執行機関または職員に対する当該行為の全部または一部の差止めの請求
②行政処分たる当該行為の取消しまたは無効確認の請求
③当該執行機関または職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
④当該職員または当該行為もしくは怠る事実に係る相手方に損害賠償または不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関または職員に対して求める請求。ただし,当該職員または当該行為もしくは怠る事実に係る相手方が第243条の2第3項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合にあっては,当該賠償の命令をすることを求める請求
 特に,④が,地方公共団体の職員に対して,直接損害賠償や不当利得の返還請求をするのではなく,当該職員または相手方に損害賠償または不当利得返還の請求をすることを地方公共団体の執行機関または職員に対して求める請求とされたことに注意しましょう。
(5)住民訴訟の手続
 住民訴訟は,次の期間内に提起しなければなりません(242条の2第2項)。
①監査委員の監査の結果または勧告に不服がある場合は,当該監査の結果または当該勧告の内容の通知があった日から30日以内
②監査委員の勧告を受けた議会,長その他の執行機関または職員の措置に不服がある場合は,当該措置に係る監査委員の通知があった日から30日以内
③監査委員が請求をした日から60日を経過しても監査または勧告を行なわない場合は,当該60日を経過した日から30日以内
④監査委員の勧告を受けた議会,長その他の執行機関または職員が措置を講じない場合は,当該勧告に示された期間を経過した日から30日以内
 また,242条の2第1項1号の「差止請求」は,当該行為を差し止めることによって人の生命または身体に対する重大な危害の発生の防止その他公共の福祉を著しく阻害するおそれがあるときは,することができません(242条の2第6項)。
 さらに,住民訴訟は,地方裁判所の管轄に専属します(同条5項)。
解答例
 
 監査委員が住民監査請求に係る監査又は勧告を当該請求をした日から60日以内に行わない場合。(43字)



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