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不動産受験新報2007年12月号 伊集院 草

2007-12-09 09:00:00 | Weblog
住宅新報社・月刊「不動産受験新報」20007年12月号
       (毎月1日発売 定価910円)


特集2
新傾向に強くなる
行政書士直前対策
択一式
会社法
住宅新報社講師 伊集院 草

 今回は持分会社および会社合併について学習します。
1.持分会社
(1)意義
 出資者である各社員が会社を共同所有している株式会社以外の会社をいい,「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3つがあります。
①定義
 合名会社とは,無限責任社員のみで構成される会社です(会社法576条2項)。株式会社と正反対の会社というイメージです。
 合資会社とは,無限責任社員と有限責任社員とで構成される会社です(576条3項)。会社構成の両極といわれている株式会社と合名会社の中間の会社というイメージで,二元的組織の会社といえます。
 合同会社とは,有限責任社員のみで構成された会社で,株式会社以外の会社です(576条4項)。株式会社に似ていますが,株式会社より自由に経営できる会社形態で,ベンチャー企業に適しているといえます。
②無限責任と有限責任
 無限責任とは,社員が会社債務について無限に弁済する責任を負うといった重い責任です。合名会社の社員全員と合資会社の無限責任社員が,無限責任を負います。
 有限責任とは,社員が会社債務について出資額を超えて弁済する責任を負わないといった軽い責任(無限責任に比べると)です。合資会社の有限責任社員と合同会社(株式会社も)の社員が,有限責任を負います。
③直接責任と間接責任
 直接責任とは,社員が会社債務について直接会社債権者に対して弁済する責任を負う場合をいいます。一方,間接責任とは,法律上は会社債権者に対して無責任ですが,社員の出資が会社財産になり,それが会社を通して間接的に会社債権者に対する担保となり,その意味で間接責任を負うことになります。
 合名会社および合資会社の社員は直接責任を負い,合同会社の社員は間接責任を負います。なお,株式会社の社員も間接責任を負うことになっています。
(2)社員
①社員の責任
 無限責任社員は,持分会社の財産で債務を完済できない場合,持分会社の財産に対する強制執行が効を奏しなかった場合には,持分会社の債務を弁済しなければなりません(580条1項)。
 なお,有限責任社員は出資額を限度に,この責任を負います(580条2項)。
a.有限責任社員が途中で無限責任社員になった場合,無限責任社員になる前に生じた会社の債務についてもその責任を負います(583条1項)。
b.有限責任社員がその出資額を減少した場合,その旨の登記をする前に生じた会社の債務については,従前の責任の範囲内でその責任を負います(583条2項)。
c.無限責任社員が途中で有限責任社員になった場合でも,その旨の登記をする前に生じた会社の債務については,無限責任社員として,その責任を負います(583条3項)。
d.合資会社の有限責任社員または合名会社および合資会社の社員でない者が,無限責任社員と誤認させる行為をした場合,その誤認に基づいて取引をした者に対し,無限責任社員と同一の責任を負います(588条1項,589条1項)。
②社員の加入
 持分会社の社員加入の効力は,その旨の定款変更時に生じます(604条2項)。ただし,合同会社の場合,定款変更時に出資を完了していないときには,出資完了時に効力を生じます(604条3項)。
 なお,加入社員は加入前の会社の債務についても弁済の責任を負います(605条)。
③社員の退社
 持分の払戻しが行われる退社の方法には,任意退社と法定退社があります。任意退社は,6カ月前までに予告したうえで,事業年度の終了時に行うことができます(606条1項)。法定退社は,一定の事由の発生によって行うことができます(607条1項)。
 なお,退社員は,退社登記前に生じた会社の債務についても弁済の責任を負います(612条1項)。
④持分の譲渡
 持分の譲渡は,株式会社における株式の譲渡に相当しますが,原則として他の社員全員の同意が必要です(585条1項)。ただし,業務執行をしない有限責任社員の場合は,業務執行社員全員の同意で足ります(585条2項)。
 なお,持分全部を譲渡した社員も,その旨の登記の前に生じた債務を弁済する責任を負います(586条1項)。
2.会社合併
 合併とは,2つ以上の会社を1つに合一させる会社法上の契約です。会社の経営戦略として行われることが多く,その目的も多様です。たとえば,経営多角化,市場占拠率の拡大化,経営の合理化などがあります。合併の種類には,「吸収合併」と「新設合併」があり,日本では吸収合併が多いといわれています。
 吸収合併とは,会社が他の会社とする合併であって,合併によって消滅する会社(甲社)の権利義務の全部を合併後存続する会社(乙社)に承継させるものをいいます(2条27号)。そして,効力発生日に甲社の権利義務を乙社が承継します(750条1項)。このように乙社が甲社を吸収するので吸収合併といいます。
 一方,新設合併とは2つ以上の会社がする合併であって,合併により消滅する会社(A社・B社)の権利義務の全部を合併により設立する会社(C社)に承継させるものをいいます(2条28号)。そして,C社の成立の日にA社・B社の権利義務を承継します(754条1項)。このように新たにC社を新設するので,新設合併といいます。
予想問題
 次の記述のうち,正しいものには○,誤っているものには×を記入せよ。
1 合資会社の社員には,無限責任社員と有限責任社員がいるが,合名会社の社員は全員有限責任社員である。
2 合資会社の有限責任社員が無限責任社員になった場合,無限責任社員になる前に生じた会社の債務については,その責任を負う必要はない。
解答・解説
1 合資会社の社員には,無限責任社員と有限責任社員がいるが(576条3項),合名会社の社員は全員有限責任社員ではなく,全員「無限責任社員」である(576条2項)。×
2 有限責任社員が無限責任社員になった場合,無限責任社員になる前に生じた持分会社の債務についても無限責任社員としてこれを弁済する責任を負う(583条1項)。×



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