有吉佐和子の「悪女について」を再読して、小説構成のうまさと、どこかミステリアスなストーリー展開と、人間というのは、超多面性、というより無限の多面性をもつ生き物なんだ、と再認識した。
もしも、あなたが、50人の人と知り合いならば「50通りのあなたがいる」 30億人の人が知っていれば「30億通りのあなたがいる」ということになる。つまりは、人というのはわからない、自分というのもわからない、ということになる。
鈴木君子という八百屋さん生まれの娘は、まず、母親は養母だと嘘をつく。父はどこか高貴な人で、事故で死んでしまった、と嘘をつく。これが彼女が(お金という意味で)成功していく始めである。次に、名前を変える。富小路公子とどこか家族っぽい名前に変えるのである。これはペンネームと同じようなものだから、嘘とまではいかないが、ベースとして一番最初の嘘のうえに成り立っている。16歳の頃には三人の男とうまく交際する。それぞれに嘘はついていないのだが、他に交際している男性がいないかのように振舞う。彼女は朝も、昼も働き、夜は夜学に通い、簿記の一級までとる。税理士もできるのである。常に法律の本を読んでいる。
やがて第一番目の子供を妊娠し、これを三人の男にそれぞれ告げるが、自分で育てる、迷惑はかけない、という。ところが二番目に付き合っていた男の戸籍に入れてしまう。結婚届もだしている。これが大きな二番目の嘘である。男親は慰謝料や養育料として5000万円を渡す。
大金を手にした彼女は、ここから大躍進していくのである。三番目の男は宝石店で成功している。彼はラーメン屋からのしあがった男である。男に宝石の見分け方を教えてもらいながら彼女はラーメン屋、宝石店と働き、宝石の鑑定のしかたをおぼえていく。やがて、彼女は手切れ金としてはラーメン屋をもらうのではなくて、逆に買い取るのである。すでに隣の土地は買ってある。日本橋の一等地である。値上がっていく土地を担保に彼女は大きなビルを建てる。
と、このようにのしあがっていくのだが、どうやら彼女が死ぬまで週に1度か2度会う、本当に好きな男が三人の中にいたらしい。富小路公子について27人の人がそれぞれに語るのである。ほとんどの人が彼女を絶賛している。読む側はそのそれぞれの語り手の内容を吟味しながら読んでいくことになる。そこで、「あれ?」と思うことが出てくる。こんなところが有吉佐和子はうまいのである。謎解きをしている感覚になる。また、27人の職業から、その職業の内容を知ることにもなり、教養小説としても読める。普通知りえない世界の職業的な説明もしてくれる。例えば、宝石について。あるいは服飾について。あるいはダリアについて。
以前読んだときは興味もなかったことが今回は興味をもって細部まで読めるようになっている。おそらくまた忘れてしまうのだろうが。
「青い壺」に続いて読んだのだが、今日は朝から図書館に行って、「開幕ベルは華やかに」を借りてきた。僕にとっては村上春樹の唯一読んでいない「スプートニクの恋人」を読み始めたのだけど、これは自分の所有物なので、先に、「開幕ベルは華やかに」を読んでしまおうと思っている。
もしも、あなたが、50人の人と知り合いならば「50通りのあなたがいる」 30億人の人が知っていれば「30億通りのあなたがいる」ということになる。つまりは、人というのはわからない、自分というのもわからない、ということになる。
鈴木君子という八百屋さん生まれの娘は、まず、母親は養母だと嘘をつく。父はどこか高貴な人で、事故で死んでしまった、と嘘をつく。これが彼女が(お金という意味で)成功していく始めである。次に、名前を変える。富小路公子とどこか家族っぽい名前に変えるのである。これはペンネームと同じようなものだから、嘘とまではいかないが、ベースとして一番最初の嘘のうえに成り立っている。16歳の頃には三人の男とうまく交際する。それぞれに嘘はついていないのだが、他に交際している男性がいないかのように振舞う。彼女は朝も、昼も働き、夜は夜学に通い、簿記の一級までとる。税理士もできるのである。常に法律の本を読んでいる。
やがて第一番目の子供を妊娠し、これを三人の男にそれぞれ告げるが、自分で育てる、迷惑はかけない、という。ところが二番目に付き合っていた男の戸籍に入れてしまう。結婚届もだしている。これが大きな二番目の嘘である。男親は慰謝料や養育料として5000万円を渡す。
大金を手にした彼女は、ここから大躍進していくのである。三番目の男は宝石店で成功している。彼はラーメン屋からのしあがった男である。男に宝石の見分け方を教えてもらいながら彼女はラーメン屋、宝石店と働き、宝石の鑑定のしかたをおぼえていく。やがて、彼女は手切れ金としてはラーメン屋をもらうのではなくて、逆に買い取るのである。すでに隣の土地は買ってある。日本橋の一等地である。値上がっていく土地を担保に彼女は大きなビルを建てる。
と、このようにのしあがっていくのだが、どうやら彼女が死ぬまで週に1度か2度会う、本当に好きな男が三人の中にいたらしい。富小路公子について27人の人がそれぞれに語るのである。ほとんどの人が彼女を絶賛している。読む側はそのそれぞれの語り手の内容を吟味しながら読んでいくことになる。そこで、「あれ?」と思うことが出てくる。こんなところが有吉佐和子はうまいのである。謎解きをしている感覚になる。また、27人の職業から、その職業の内容を知ることにもなり、教養小説としても読める。普通知りえない世界の職業的な説明もしてくれる。例えば、宝石について。あるいは服飾について。あるいはダリアについて。
以前読んだときは興味もなかったことが今回は興味をもって細部まで読めるようになっている。おそらくまた忘れてしまうのだろうが。
「青い壺」に続いて読んだのだが、今日は朝から図書館に行って、「開幕ベルは華やかに」を借りてきた。僕にとっては村上春樹の唯一読んでいない「スプートニクの恋人」を読み始めたのだけど、これは自分の所有物なので、先に、「開幕ベルは華やかに」を読んでしまおうと思っている。
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