『お母さま』(未知谷刊)表紙
月刊『りらく』7月号「りらく図書室」にて『お母さま』が紹介されました。ここに引用させていただきます。
詩人、ラビンドラナート・タゴールは、アジア初のノーベル文学賞受賞者であり、
タゴールが作詞作曲した「もろ人の心動かしたまう方よ勝利あれ」は、インド国歌となっている。
本書は、タゴールのベンガル語詩集から選ばれた詩25編と、「物語集」および「ささやかな
書き綴り」からの物語2編による構成となっている。
坊やがききます
「ぼくはどこからきたの
おかあさまはぼくをどこで
ひろってきたの」
母はなかば泣き、なかば笑って
坊やを胸にだきしめます。
「わたしの心の奥ふかく、希望のように
あなたはかくれていたの」
(略)
あなたを見つめ、その神秘にうたれます
みんなのものだったあなたがどうして
わたしのおさなごになったのか
坊やはわたしにやどり
この母のおさなごとして
あなたは最上のほほえみでこの世にあらわれました
「誕生のはなし」より
タゴールの妻ムリナリニが5児を遺し29歳の若さでこの世を去った時、
母を亡くした子供達のために作った詩のひとつである。
詩人の母語、ベンガル語で、「いのち」とはプランで、この言葉は同時に
心の深部という意味もあるという。
第三章におさめられた物語「幸福の王妃と不幸の王妃」の中の
「わたくしがのぞんでいたのは、不幸の王妃のかなしみだったのです」という
幸福の王妃の言葉の中に、深淵な魂の息吹を感じた。
タゴール作品の、奥深く、澄んだ泉のように、こんこんと存在する母なるもの、
愛と調和に満ちたあたたかな柔らかな世界を味わえる一冊。
「りらく図書室」より