えりこのまったり日記

グダグダな日記や、詩的な短文、一次創作の書き物など。

二人の距離・彼女の時間

2017-12-22 06:15:00 | 書き物
最初の一週間は、あっという間に過ぎて行った。
主任になった先輩・大沢さんとは、挨拶を交わした程度で仕事ではそこまで関わらなかったから。
営業の仕事で、組んでいる人もいたし。
でも、その組んでる人に言われてしまった。
「松丘さん、主任になんかよそよそしくない?新人の頃は主任が指導してたって聞いたよ」
「…先輩…いえ、大沢さんも主任になったことですし、いつまでも新人気分じゃいけないと思いまして」
「そうか。ごめん、よそよそしいなんて言って」
「いえ」
よそよそしいか…
だって、どんな顔をしたらいいか、どんな話をしたらいいか、分からないんだもの。
だから、一言か二言であっさり、簡単になってしまう。
それが、人からはよそよそしく見えてしまうのだろうか。




翌週、月曜日。
昼休みにコーヒーを飲もうと給湯室に行くと、彼が一人でいるのが見えた。
どうしよう…ここで二人きりになるのは、嫌だ。
躊躇していると、彼が出てきた。
私を見て一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐ笑顔になる。
「お疲れさま。コーヒー飲むの?」
「あ、はい。お疲れさまです…」
「じゃ、お先に」
…行ってしまった。
何、あの笑顔。
ズルいよ、あんな素敵な笑顔見せられたら、また…
私は、強張ってる自分の頬を手のひらで叩いた。
しっかりしろ、自分。
惑わされないで仕事しなくちゃ。
それに、彼は私の自分勝手な告白を、やんわり断っただけ。
今だって、普通に接してくれた。
私ばっかり、つらい、って思うのは止めにしなくちゃ。



週末が過ぎて、彼が戻ってきて三週目。
ようやく、挙動不審にならなくなった頃に、遅れていた彼の歓迎会があった。
全体に仕事が立て込んでいて、なかなか出来なかったのだ。
課全体での歓迎会。
人数も多いし彼は主役。
皆が彼を囲む中で近くで話すなんて、出来るわけがない。
でも、あちこちで皆と改めて挨拶を交わしているのは、どこからでも見えた。
ほんの一瞬だけれど、私の前にも来てくれて。
「もう、教えることなんて何もないんだね。また、よろしくお願いします」と言ってくれた。
そこには、3年前と少しも変わらない彼がいた。
写真じゃない、生きて動いてる。
私の好きな笑顔をまた近くで見られた。
それだけで、思わず私も笑顔になっていた。
彼の目を見たとき、眼鏡の奥の彼の目が少しだけ見開かれた気がした。
思い出した。
どうして、彼を目で追うようになったのか。
誰かと笑い合う横顔。
目を細めてじっと見つめるくせ。
眼鏡の奥の穏やかな眼差し。
そんな彼を、もっともっと見ていたくなったから。
好きになった、から。


3年かけて、彼への気持ちを遠ざけた。
もう、忘れられた。
そう思ってたのに。
彼が戻って3週間。
今また、好きの気持ちが私の中にいっぱいになってる。
忘れるのに3年で、戻ってくるのは3週間…
ジタバタしていた3年は、いったいなんだったんだろう。

…もう、しようがない。
遠ざけた好きの気持ちを、手繰り寄せちゃったんだもの。
きっとまた、自分の気持ちに振り回される。
好きになって欲しいと欲張りになる。


ただ繋がっていたいと願った3年前。
彼が戻って来たことで、好きだとちゃんと自覚出来たこと。
たぶんそれが、3年の意味なんだ。












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