生きる目標

わたしは海外旅行が苦手である。

第一に飛行機が苦手である。
酔うのである。
着陸時のさあーっと気圧が変化する感じを思い返すだけで顔が青ざめて来るくらいに酔いがひどい。
だからスペインに行くとしたらゼッタイに1ヶ月の滞在は必要だったし、これからも「8日スペインの旅」的なものには行けっこない。
8日間で2回も飛行機に乗らねばならないなんて無理だ。

それから人見知り。日本人であろうと外国人であろうと初対面の人とのやりとりも苦手だ。
とどめにチップをいくら置くかとかいくら値切ればいいかとか考えるのも面倒で、そのくせ自己流で処理の出来ない小心者である。

素敵なところに遊びに行きたい！という欲望がないわけではないが、プラスマイナスで計算してみれば間違いなくマイナスが多い。
だから3時間くらいで行ける南の島以外にはスペインも含めて海外旅行には興味がない。

ただひとつ、ペルーを除いては。


ペルーは子供のころから気になっていた場所であった。
小学生が中学生の研修旅行か修学旅行で、何処だったのかはさっぱり覚えていないのだが「ものすごく素敵な石」を路上で買った。その黒地に猿のような宇宙人のような模様のついている石はずうっとわたしの宝物だったのだが、それが「ナスカの地上絵」を模倣したものだということが分かった時は雷にうたれたような衝撃であった。
「よく遊びに来る優しいお兄ちゃんが実はタイガーマスクだった」みたいなもんである。

それから時がたって私も大人になったのだが、ペルーは気にしていたが、熱愛中というわけではなく、なんとなく引っかかっていただけであった。本命は別にあり（スペイン）、優しいタイガーマスクのお兄ちゃんはたまに思い出す程度。
スペインにいたときもペルーいきたいなあ、とは思っていたけど本気で計画はたてなかったし、ちょっと気が向いて旅行代理店に行ってみた時には、たまたま情勢が不安定で今はやめたほうがいいと言われ、そうかー、とあっさりやめてしまった。結構高かったし（今思えば日本から行くよりスペインから行った方が断然安いし、飛行時間も短くて済むのに）。

そして、また再び時を経て、今。
今である。
ついにペルーの「地球の歩き方」を買った。
熱愛中である。
行くのか？
行かない。
ただ、めちゃくちゃ読み込んでいる。すみっこの「読者の投稿」まで読み込んでいる。
まだ完成していないが、旅のスケジュールまでたちつつある。
リマは適当にスルーで、
飛行機のダメージ回復次第ナスカ方面へ。
ナスカのセスナで酔うから2泊くらいはして、
メインはクスコとマチュピチュ。
マチュピチュ村に一週間くらい滞在して山登りもいこう。
出来たらチチカカ湖にも行きたい気もするが
20日（飛行機に往復のってもいい最短日数）の予定では足りないかもしれない。
とか。

行かないけど。

でもひょっとして上が6年生、下が3年生とかになったら行けないか？
と思いつき飛行機代調べてびっくり。想像はしていたが、家族4人で行ったりしたらすごい額になる。
安全性とかの問題の前に、借財をかかえる身としては、到底無理。

とすれば子が大きくなるまで生きながらえるしか他あるまい。
目標はあと15年後。53歳。
むむっ。なんとなくそのくらいなら生きていられるような気がするぞ？
本当に行けるんじゃないか？
そう思うとますます「歩き方」の読み込みにも力が入る。
スペイン語も勉強しなおすか。
マチュピチュ山にのぼるために踊るだけではない体力も必要だ。

この欲にまみれた前向きさは実を結ぶのだろうか。