腕時計を買うことにした。
最近とみに時間感覚が衰えてきているという感覚がある。
かつては困ったことのない「何時に家を出るから、あと何時間あるから、あの仕事を終わらせられる」的な計算が困難になって来ている。
そして更に現在時刻を覚えていられない。
現在時刻は「覚えて」いるものではないとは思うが、「さっき何時何分だったから、今は何時何分くらいだろう」という推測を働かせるときの「さっき何時何分だった」が思い出せないのだ。
それで日に何度も時計を見て、あと何分の余裕があるのか、ということをいちいち計算する。
家にいるときは何度も時計を見れば良いのだが、それが出先になるとその度にデカいiPadをカバンから引っ張り出し、時計を見て、カバンにしまう。
カバンにしまった瞬間に「えっ?それで今何分だって?」ということもある。カバンにしまう際にポケットの中に入っている通帳が目に入り「ああ、帰りに銀行寄らないとな」などと考えたせいである。
それで、家にある使ってない腕時計を復活させて使おうと思い立った。電池切れになっている古い時計だ。
ついでに子(下)が模試を受けるときに腕時計が必要だというので、子の動かなくなっていた時計の電池も交換してあげよう。
子の時計の蓋を開けたときに、衝撃のせいか分からないが、時計の針がバラバラになってしまった。えーナニコレ!?
もう一度乗せてみればいいのかな?と考え、ネットで調べて分解して、針を乗せてみる。秒針が入らない。
分解しているときに不明点が出たので、私の時計も分解してみる。
この辺まで書くともうオチが見えてきたと思うのだが、その通り。
私は2つの時計をダメにしてしまったのである。
私の「思い立ったらやらずにはいられない性質」が裏目に出た結果である。
子の時計は子がお年玉かなんかで買ったものだったので、責任を感じて時計修理に持っていったら、針は入ったが時計は故障しており、修理には1万円以上するという。子が「じゃあいいや」というので修理はやめた。(だから私が分解したせいで壊れたわけでもなさそうだが、子は多分私のせいだと思っていると思う)
私の時計はそもそもホームセンターの時計コーナーで売っているような安時計だったのと、そういう心持ちで扱ったせいで針が曲がったりしてしまったので、はなから修理対象ではない。
それであきらめて、時計を買うことにした。
子は模試以外では時計はいらない(スマホで足りてる)ようなので、模試の時には私のを貸して使ってもらうことにして、文字盤の見やすい、安くて軽くて邪魔にならないやつを買おう。
ヨドバシカメラの時計コーナーに行く。
1000円くらいの安いのからブランドの何十万みたいのまでずらりと揃っている。
1000円〜3000円くらいの時計を買う気マンマンだったのだが、これだ!というものはなく、そうするとだんだんと「安っぽくても時計は時計。これが1000円っていうのは誰かを搾取した結果なのだろうか」とかいう方向に頭が働いてしまう。じゃあ、ってんで、6000円〜1万円くらいのコーナーに行ってみるが、こちらも微妙で、「悪くはないが、これに1万円もかけるのか・・?」という塩梅。
そこで20万もするようなのも見てみたが、こっちは逆に「悪くない」どころか一切物欲の湧かないデザインである。然るべき人がつけていればカッコよく見えるのかもしれないねえ。という感想しかない。
それでウンウン言った挙句に「ここには欲しいものはない」という結論に達した。
どれどれ、レッスンまであと多分30分くらい時間があるだろうから、東急の時計屋にでも行っていようかな?でも、ああいうところって気がひけるんだよなあ・・・
などと思いながら、通りかかったJRの時計を見ると、なんとレッスン7分前であった。
ぎゃーーーー!!
走った、走った。
走りながら「あと何分あるの?!」と思ったが、iPadを出したりする時間はないからとにかく走った。
レッスン時間2分すぎにスタジオに到着。
「自転車とお弁当があるのに先生の姿がないから、どっかで倒れてるかと思った!!」とホッとされ、平謝りに謝る。
おかしいな!?何で30分もあるって思ったんだろう?
そもそも何時間の余裕があったんだろう?
とあれから何度も考えてみたが、時間の記憶は曖昧で(多分「なんとなく余裕を持って」出ただけだったのだろうと推測)、何が悪かったのか分からなかったが、さっさと腕時計を買って、頻繁に時間を確認するようにしようという決意だけは新たにしたのだった。
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