江花和郎@ブログ

2005~2011年連合新潟会長を務める間書いたブログをその後も時々更新しています。

お金よりもサービスへ

2012年08月31日 | 
金子勝氏(慶應義塾大学教授)が送って下さった最近の著作『失われた30年~逆転への最後の提言』(NHK出版新書)の一部を紹介します。
4章あるうちのひとつ「社会保障と財政」の章です。

まずは行き詰まっている現制度の延長線上の「一体改革」を痛烈に批判し、社会保障全体のビジョンと新しい年金制度を提言しています。(実はすでに1999年に神野直彦氏とともに発表しているのですが)

日本の社会保障制度は、「現金給付」に重心が置かれているが、これを「サービス(現物)給付」に重心を移し、現金給付は病気や失業、高齢退職などで賃金を失ったときの代わりの社会保険に純化する。
そして医療、介護、育児、教育などの現物(サービス)給付は地方政府の役割、社会保険部分は社会保障基金をつくって現金給付、中央政府はミニマム保障を引き受けるという3つの福祉政府体系の形を提言。

年金は40年かけて旧制度から新制度に移行します。
どんな働き方にも「所得比例年金」を支給するので、賃金の一部を源泉徴収で社会保障基金に納めます。
アルバイトでも、短期間でも、働けばその分の所得比例年金がもらえる。
中央政府負担のミニマム年金とのトータル額は少しでも働けば増える。
所得比例年金が十分に多い人にはミニマム年金は支給されない。

フランスやスウェーデンなどの制度の日本に合うところをミックスした提言だそうです。
日本では世代間対立が煽られ、自己責任論が頭を持ち上げていますが、例えばフランスでは一昨年年金支給開始年齢を60歳から62歳に引き上げようとしたとき、高校生が反対して暴動を起こし国民の7割がこれを支持しました。
「年金の支給開始年齢を引き下げて、若者に仕事を譲ってほしい」というわけです。

ここで詳細を報告するわけにはいきませんので、是非この本を実際に手にとってお読み下さい。
この他に、エネルギーやTPPに関する『最後の提言』が書かれています。
日本は今重大な岐路に立っています。
将来社会を考えるための重要な提言だと思います。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お元気ですか。 ()
2012-09-11 14:18:20
ご無沙汰いたしております。お元気ですか?
久しぶりに江花先生のブログを拝見しました。光陰矢の如し、お世話になってからすでに20年が経とうとしています。
また、新しいポストに就任され、おめでとうございました。
近況報告ですが、最近、自分の中国語知識を活かし、学習者の皆さんに少しでもお役立つように、「中国語365」(http://ameblo.jp/dailychinese/)というブログを開設いたしました。よかったら奥様に見ていただければと思います。
続けることは大変ですが、挫折しないように頑張りたいと思っております。ご指導・ご応援のほと、よろしくお願いいたします。
ご家族の皆様によろしくお伝えください。
ご挨拶まで。
(7月の連絡文の再送です。)
返信する
ありがとう (江花和郎)
2012-09-13 17:19:06
郭さん、お返事もしないままですいませんでした。
新しい運動任務に元気に取り組んでいます。
20年になりましたか。ご苦労も多かったけど、郭さんは、頑張っていますねえ。
またお会いできる日を楽しみにしています。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。