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新薬開発不振、巨額賠償、臨床不正…創業230年「武田薬品」に暗雲

2014-08-12 19:08:42 | 企業・産業
新薬開発不振、巨額賠償、臨床不正…創業230年「武田薬品」に暗雲
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20140810533.html へのリンク
2014年8月12日(火)11:17
産経新聞

 国内製薬最大手の武田薬品工業が“内憂外患”の試練に直面している。主力薬の特許切れに加え、巨額の資金を投入してきたM&A(企業の合併・買収)が思ったような効果をあげず、業績の伸び悩みが顕著になってきた。新薬開発の状況が悪化する中、先月末には臨床研究への組織的な不正関与も判明した。創業230年を越える老舗企業に暗雲が立ちこめている。

 ■株主のいらだち

 「外資に乗っ取られるような姿がグローバル化か」

 6月27日に大阪市内で開かれた武田の株主総会で、株主のいらだちはピークに達した。創業家の一部やOBなどで結成した「タケダの将来を憂う会」代表を務めたOBの原雄次郎氏らが英製薬大手出身のクリストフ・ウェバー氏の社長就任案を激しく追及し、長谷川閑史社長(総会後に会長就任)に痛烈な批判を浴びせた。

 武田はM&Aなどを通じた海外展開の強化に伴い、外国人を含めた外部からの取締役や上級幹部の起用を加速していた。一方で、研究職の幹部らの離職などもあり、武田の発展を支えてきた創薬など中核技術の流出への危惧が現場に広がった。原氏らが「憂う会」を立ち上げたのは、こうした現在の武田への懸念が背景にある。

 ■外資批判の裏に…

 総会で、批判の矢面に立った長谷川氏は「成長が見込める新興国市場に打って出るには海外で経営した経験のある人物が必要だ」とウェバー氏起用の理由を説明し、最終的には賛成多数で承認にこぎ着けた。取締役7人のうち3人が経営幹部会議の定例メンバーの9人のうち5人が外国人となり、社内の国際化が一段と進むことになった。

 その半面、海外展開は思いようにいかない。武田は米ミレニアム・ファーマシューティカルズやスイスのナイコメッドなどを計約2兆円で買収したが、「巨額投資に見合うだけの成果は得られていない」(出席した株主)との見方が強い。

 実際、武田の稼ぐ力の衰えは鮮明だ。糖尿病治療薬「アクトス」など主力薬の特許切れが相次ぎ売り上げの伸びが鈍化。平成26年3月期は4期ぶりに営業増益に転じたとはいえ、工場統合などコスト削減などが主な要因で、M&A戦略は十分に実を結んでいない。

 総会では、なかなか期待した利益をもたらさない武田のM&A戦略、業績低迷への不信感が、長谷川氏が推すウェバー氏の社長就任反対の形となって表れたともいえる。

 総会の最後に一人の株主が質問に立った。「武田でございます」と名乗ったその株主は、創業家一族の一人。穏やかな、だが芯の強さを感じさせる口調で長谷川氏に向けて語りかけた。

 「本当に順風満帆。報道などでは心配事もいっぱいあるが、今日の長谷川氏を見れば心配事はまったくない。素晴らしい将来が期待できる。だが、もしそれが実行できなかったら総退陣する覚悟はあるのか」

 創業家から経営陣に突きつけられた“覚悟”。長谷川氏は「実績が期待通りにあげられなければ、そこで責任を取るのは当然。ウェバー氏もそういう気持ちで社長就任を引き受ける」と応じざるを得なかった。

 ■新たな火種も

 とはいえ、武田は昨年、アクトスの後継と位置づけていた糖尿病薬の開発中止を表明。7月には将来の収益源として期待されていた前立腺がん治療薬の開発を中止すると発表。収益の柱である新薬開発の状況は悪化しており、20年3月期に3500億円以上あった最終利益は27年3月期に850億円に落ち込む見通しで、“約束した”業績回復への道筋は描けていない。

 新たな火種も表面化している。4月にはアクトスの発がん性リスクに関し、米連邦地裁の陪審が武田に60億ドル(約6千億円)の賠償を命じる評決を出した。他の裁判所では武田の主張が認められてはいるが、訴訟に対応する費用がかさむ。

 6月には降圧剤「ブロプレス」を使った医師主導の臨床研究をめぐり、武田側が京都大などに約37億5000万円を提供し、参加医師の選定や学会発表資料の作成など、公正性に疑念を生じさせかねない関与や働きかけがあったことが第三者機関の調査で判明した。臨床研究に対する製薬企業の関与は根深いものがあるとみられるだけに、問題が拡大する可能性もある。

 「一石を投じることはできた」と原氏らが話すように、株主から経営陣に注がれる視線はおのずと厳しくなるのは確実だ。株主が納得できる業績をきちんと示さない限り、「総退陣」の言葉が重みを持ってのしかかってくる。(橋本亮)


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