張成沢氏処刑 側近らにも粛清拡大
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20131214086.html
2013年12月14日(土)08:16
産経新聞
【ソウル=加藤達也】張成沢氏の死刑執行を受け、今後、張氏の側近らに“血の粛清”が広がる可能性が出てきた。
北朝鮮の朝鮮中央通信は13日の記事で、張氏が「敵に買収されて変節した者」や「背信者ら」と「グルだった」と主張。さらに、張氏に先立って公開処刑されたとみられている朝鮮労働党行政部の李竜河(リ・リョンハ)第1副部長と張秀吉(チャン・スギル)副部長について言及している。
張成沢氏は公判で、「(2人をはじめとする)腹心は私に従うだろうと思った」と述べたとされ、記事は2人が“従犯”として処刑されたことを示唆している。
同じ記事では、2009年11月の貨幣改革(デノミネーション)失敗の責任を追及され、10年に処刑されたと伝えられる朴南基(パク・ナムギ)・国家計画委員長(当時)についても、「(張成沢氏が)そそのかして数千億ウォンの通貨を乱発して途方もない経済混乱が起こるようにした」と指摘。処刑を張氏と関連づけて正当化しようとしている可能性がある。
ただ、粛清を免れている側近もおり、粛清の範囲や理由、排除の方法など不明確な部分が多い。
張成沢氏処刑 正恩氏、冷徹に基盤固め 父死去2年、内外に継承強調
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20131214085.html
2013年12月14日(土)08:16
(産経新聞)
【ソウル=名村隆寛】北朝鮮が、「反党・反革命的分派行為を働いた」として全職務から解任した前国防副委員長、張成沢(チャン・ソンテク)氏を解任からわずか4日で処刑した。17日に控える金正日(キム・ジョンイル)総書記の死去2年を前に金正恩(ジョンウン)第1書記は、後継体制の完成とともに「叔父であれ逆らう者は容赦なく処断する」という極めて強硬な姿勢を内外に示した。
◆敬姫氏の姿確認
ラヂオプレス(RP)によると、北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは13日夜、金第1書記の記録映画を放映したが、その映像の中に金総書記の実妹で、張氏の妻だった金敬姫(ギョンヒ)氏の姿があるのが確認された。張氏の姿はなかった。金敬姫氏は9月10日を最後に北朝鮮メディアで動静が報じられておらず、夫の事件に関連して失脚したとの説もあった。
朝鮮中央通信などによると、張氏の処刑は、2004年4月以降に共和国刑法第60条に盛り込まれたとみられる「国家転覆陰謀(クーデター計画)」が適用された。北朝鮮メディアは、8日の連行時の模様に続き、13日には死刑判決(12日)が下された際の手錠をかけられうつむく張氏の生々しい写真も公開した。
◆過去に比べ露骨
北朝鮮では1956年に、中国で活動した延安派とソ連派が、67年には日本統治時代の朝鮮半島で抗日活動に携わった甲山派が、いずれも金日成(イルソン)(主席)派に対立するグループとして粛清された。金主席死後の金正日体制でも、姜成山(カン・ソンサン)首相らへの処分があったが、大々的な公表はせず、むしろ秘密裏に行われていた。
張氏の処刑は、過去の粛清に比べても極めて露骨だ。しかも、処刑対象が最高権力者(金第1書記)に近い親族であり、65年にわたる北朝鮮の政治史の中で特異な事件といえる。
北朝鮮はクーデター計画について明言し、「朝鮮人民軍最高司令官(金第1書記)の命令に従わないという反革命的な行為」を張氏が犯したことを強調している。反逆者、つまり金第1書記に逆らう者は親類であろうが、後見人であろうが処断するという“冷徹”な金第1書記の意志をはっきり示したことになる。
張氏の解任や処刑を伝えた北朝鮮メディアは、「主体革命偉業継承の転換局面が今開かれている」とし、金総書記死去から現在まで「権力継承」の作業が続いていたことを示唆した。金主席が行った粛清の後と同様に、北朝鮮は金第1書記への「絶対忠誠」「団結」を強調している。
北強硬派、正日氏の遺訓で支配
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20131214084.html
2013年12月14日(土)08:16
産経新聞
私は、朝鮮労働党政治局拡大会議が張成沢氏に「反党反革命分子」の烙印(らくいん)を押したとの北朝鮮の初の公式報道に接したときに、彼はまもなく死刑に処されるのではないかと判断した。
なぜなら国家の上に党があり、党の上に首領がいる北朝鮮で「反党反革命」は誰であっても容赦されない反逆罪の代名詞だからだ。
今回の張成沢氏処刑は金正恩氏の唯一指導体制確立のための措置ではない。その逆である。叔父の張成沢氏が隠然と力を持った金氏一族の政治に押され、張成沢氏の穏健派勢力と対立してきた強硬派勢力の“奇襲クーデター”である。
金正日時代に「小枝切り」(一族の処刑)はあり得なかった。これが公然と行われたのだ。権力に力がみなぎっていた金正日時代は小枝を牽制(けんせい)すれば十分だったが、金正恩政権は小枝を根こそぎにしなければならないほど統治力が弱いということである。公開か非公開かもまた政権の力の差であろう。
北朝鮮では首領だけでなく特権層も世襲される。ほかならぬ首領、金正恩一党が張成沢一党の世襲、増殖を恐れたのだ。
張成沢氏処刑を通じ金正恩体制の変化を一言で要約すれば、金正恩氏は強硬派に囲まれた“首領の演技者”になったということだ。強硬派は、生きている金正恩氏の権威に服従しているのではなく、死んだ金正日氏の遺訓で北朝鮮を支配しようとしている。
張成沢氏の粛清後、労働新聞などの媒体は金正恩氏の唯一指導体制を今更のように強調している。誰もその世襲を疑ったり否定したりする者はいなかったというのにである。何より見苦しいのは、昨日まで指導者の叔母の夫だった張成沢氏に向かい、一般の住民の怒りまでも動員していることだ。
張成沢氏は女性問題などの放蕩(ほうとう)な私生活まで罪状に挙げられた。金正日氏の妹である金敬姫(キム・ギョンヒ)氏と張成沢氏の不和はすでに以前から知られていた。しかし北朝鮮では首領やその姻戚の私生活は口外すること自体、厳格な法に問われる。このような暴露は、北朝鮮住民にとって類例のない衝撃である。
金敬姫氏は夫から無視されるほどのみすぼらしい女だったのか? 首領は絶対神だが、親戚は人間以下に堕落していたということなのか?
政治局拡大会議で首領一族の聖域を侵してまで張成沢氏を中傷するというのは、金敬姫氏の名誉も奪う極度の冒涜(ぼうとく)、軽蔑である。強硬派勢力の野望が、金敬姫氏の人格までおとしめてしまった会議だった。
金正日時代は、内部粛清は徹底的に隠蔽(いんぺい)し外に漏れないよう厳格に管理されていた。その北朝鮮が8日の張成沢氏全職解任を対外通信社の朝鮮中央通信で先に報道し、朝鮮中央テレビや労働新聞といった国内媒体の報道を翌日に回した。国内で報じることができなかったのは、その時点ではまだ、対内的に説明を要する部分が多くあったことの証左といえる。
張成沢氏処刑 「国家転覆画策」即執行
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20131214082.html
2013年12月14日(土)08:16
産経新聞
【ソウル=加藤達也】北朝鮮の国営朝鮮中央通信は13日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の叔父で後見人とされた前国防副委員長の張成沢(チャン・ソンテク)氏(67)が処刑されたと伝えた。12日に開かれた特別軍事裁判で、クーデターを画策した「国家転覆陰謀行為」の罪で死刑判決が下され、即時執行されたとしている。北朝鮮が指導層の軍事裁判や刑の執行を公表するのは極めて異例。
張氏は8日に全役職から解任されたばかり。金正日(ジョンイル)総書記の死去から2年となる17日を前に、対中関係や経済建設面で強い権限をふるってきたとされる張氏を処刑し、金第1書記の独裁体制構築の総仕上げを急いだものとみられる。特別軍事裁判所は秘密警察の国家安全保衛部に所属。同通信によると裁判所は、張氏が「政権への野心に狂って分別を失い」、軍を動員してのクーデターを画策していたと指摘した。
法廷で張氏は「国の経済と生活の破局が広がっているにもかかわらず、現政権が何の対策も講じることができないという不満を軍隊と人民に抱かせようとした」と、クーデターを図ったことを認めたとしている。
朝鮮中央通信はまた、張氏は「クーデター実行の時期は決めていなかったが、経済が完全に落ち込み、国家が崩壊直前に至れば、全ての経済機関を内閣に集中させて自身が総理に就任するつもりだった」とも陳述したとし、経済部署を中心に権力掌握を図り、「誰も触れられない『小王国』に仕立てた」と強調した。さらに張氏を「万古の逆賊だ」と指弾し、最高量刑の死刑を適用。起訴事実は「百パーセント立証され、被告によって全面的に認められた」と判決を正当化した。処刑方法は明らかにされていないが、韓国の国家情報院は「機関銃で射殺された」との見方を示した。
張成沢氏処刑 判決から読み解く粛清 張氏の政策、完全に否定
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20131214083.html
2013年12月14日(土)08:16
産経新聞
北朝鮮国営メディアは張成沢氏の処刑に至った判決について詳細に伝えた。その「罪状」を読み解くと、張氏が進めた中国に依拠した経済路線と外交政策の“否定”が浮かび上がる。(桜井紀雄)
「仕方なく席を立ち上がっておざなりに拍手し、傲慢に振る舞い、軍と人民の怒りを呼んだ」。約18分間読み上げられた「罪状」で真っ先に挙がったのが、金正恩第1書記が金正日総書記の後継者として登場した2010年の朝鮮労働党代表者会での態度だ。
◆軍の怒りを“代弁”
張氏は金総書記の長男で中国などで活動する金正男(ジョンナム)氏を世話した経験もあり金第1書記の後継者就任に慎重だったといわれる。「正男氏側に立っている」との臆測がつきまとってきた。「判決」は「後継問題を妨害する大逆罪を働いた」と糾弾。莫大(ばくだい)な資金を投じて進む記念碑設置など金第1書記の偶像化を「黙殺した」ことも罪に挙がった。
経済をめぐる軍部との軋轢(あつれき)も垣間見える。
経済立て直しに向けた権限の自身への集約が、金総書記時代の「国家機構を無視し、内閣機関を自らの下に属させ、外貨稼ぎを牛耳った」とやり玉に挙がった。金総書記時代の法令を「修正すればよい」と発言したとされることも「妄言」だと切り捨てられた。
張氏が目を付けたのが、軍部が持つ鉱山開発など「外貨利権」だった。次々に利権を剥奪し、対中貿易を通じ財源確保を図ってきたとされるが、「石炭など貴重な資源をむやみに売り飛ばさせた」と指弾された。張氏失脚の背景に、利権を奪われた軍部の反発を指摘する見方があり、判決は半ばこれを裏付けた形だ。
◆対中接近いらだち
国の名指しこそしないものの、「罪状」からは張氏の対中姿勢へのいらだちがうかがえる。
「売国行為」の一つに挙げるのが、北東部の経済特区、羅先(ラソン)港の使用権を中国やロシアに「50年期限で売り飛ばした」ことだ。「外部世界の『改革家』との認識を利用しようと妄想した」との言及もある。
「改革家」はまさに中国で広く持たれている張氏に対するイメージで、昨夏の胡錦濤国家主席(当時)との会談など中国側も張氏の存在を重視してきた。
そして「途方もない経済混乱」を招いた09年のデノミネーション(通貨呼称単位の変更)は「背後で操った」とされた。張氏の経済路線を否定した上で、失敗した政策の責任は全てなすりつける意図が浮かぶ。
軍部と決定的に対立しても核やミサイル実験に反対し、米韓などとの交渉を引き出そうとしてきたとされる対外姿勢もまた、「米国とかいらい逆賊一味(韓国)の『待ちの戦略』に便乗し、国を崩壊させようとした」と、「反党・反国家・反人民的罪悪」の一つに結論付けられた。
北朝鮮情勢に詳しい李相哲龍谷大教授は「張氏の政策は限られた現状ではある種、常識的といえた。ブレーキ役を失った政権はさらに強硬策に傾きかねない」と指摘する。