俺が15の春、彼女は姿を消しただろう。

2013年05月15日 00時00分00秒 | 巻二十三 アイドル
昨日はまたもくだらぬアイドル論をぶったわけであるが、
アイドルの刹那的な魅力に惹かれ、
先のことはともかく目の前に起きていることを楽しもうというこの思想は
恐らく俺の過去のある経験が少なからず影響しているのではないかと
一夜明けて思ったのであつた。


中学生のころ、
生涯で最初に好きになったアイドルがいた。


岡田有希子、というその人の名前を今でも覚えている。




決して派手ではないし歌も上手くはないけど
とても賢くて真面目な子なんだろうなと思っていた。
グラビアのページにドキドキしたりもした。
学校帰りのレコード屋でアルバムを予約した時はかなり恥ずかしかった。



高校に入学した俺は
憧れの学校の、義務教育とは全く異なる開放的で猥雑な校風に浸りつつも
バンカラで野蛮な応援歌練習にだいぶ戸惑いながら
なんとか新生活の4月を乗り切ろうとしていた矢先、
1986年の4月だったな。


彼女が死んだ。自ら死んだ。
そんな無慈悲な夕刻のニュースは俺の耳に届くより早く全国を駆け巡っていた。


大好きなアイドルが
いわばそのキャリアが上昇気流に乗ったかと思われたその刹那、
突然この世から文字通りいなくなった。
15歳の世間知らずの少年には少々酷な経験であったのだろうか。知らぬが。


この時の記憶は俺の頭の中に刻み込まれてる気がしてならない。
美しきものの命は短い。比喩的な意味でも、直接的な意味でも。
俺だって誰だってどうなるか予測できたものではないのだ。

いつかじゃなくてこの今を、
理屈抜きで楽しまなければたぶん罰が当たる。怒られる。
彼女はたぶん怒ったりしないだろうけど。


ドキドキしながら買ったあのLP盤はまだ実家のどこかにあるはずだ。
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