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水月光庵[sui gakko an]

『高学歴ワーキングプア』著者 水月昭道 による運営
※お仕事連絡メールに一両日中の返事がない場合は再送願います

それこそが「高学歴ワーキングプア」 01

2019年04月19日 | 庵主のつぶやき
高学歴ワーキングプアがなぜこれほど多く生まれているかといえば、ひとえに需給バランスが崩れているから。

教育機関は、営利を目的としてないから税制上も優遇され助成金を得られているが、一方で、だからこそ必要な教育研究費や設備資金の捻出がなかなかに難しくなるという現実もある。なにせ、営利を考えないという前提があるから。
その状態で、十分な教育の質的保証も無論要求される。
質の高い教育を行うには、高度な人材が必要だが、必要数全部を雇うとなると当然だがコスト高となる。それは、営利を目的としない以上、資金繰りに難(多大なリスク)を伴う。

だがもし、市場にそうした高度な能力を持っていてさまざまな潰しがきく優れた人間が山ほど(国策で増やされて)居て、しかも、そのほぼ全員が高等教育の場に仕事を欲している状況であり、且つ、高度人材は必要だが金は無い大学がそれでもデキル教育・研究者を欲しているとしたら、どういうことが起こるか。

「金は出せませんけど、それでも来てもらえますか?」
「本当はちょっと困るんだけど、背に腹はかえられぬ」
こんな形で引き受けざるを得ないのではなかろうか。

それこそが「高学歴ワーキングプア」なのである。<続く>

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貧困よりも誇りの消失が高学歴ワーキングプア問題の本質

2019年04月16日 | 庵主のつぶやき
みわよしこさんが、文系女性研究者の自死と社会保障制度を絡めた論考をなされている。みわさんは、いつも真摯な記事づくりをしていて尊敬申し上げているが、今回は少しばかり論点がずれているかもしれない。

というのも、現在の若手・中堅研究者をめぐる困窮は、貧困だけがその中心にあるのではないからだ。いや、正確には、貧困が彼ら彼女らを追い詰めているものの中心なのではない。
そうではなく、自分のすべてをかけて働いている現場において、ただその立場が正規雇用されたものでないということだけで、一切の誇りが瞬時に消し飛ぶような事態に直面し続ける環境こそが問題なのだ。

もとより、研究者になるような人種は、生活などは最低限が確保されていれば別に不満などない。つまり、食べること以外の時間の過ごし方がどれだけ充実しているかということのほうを問題としがちである。それは、研究であり教育である。そこでそれなりの成果を挙げているにもかかわらず、数年経てば任期切れや、場合によっては突如雇い止めといった事態に直面してしまう。その度に、誇りはズタズタになる。

公募にしても、いまや五十や百の落選は当たり前になっている。大学ごとに毎度書式は異なり、しかし盛り込むべき内容は同じという、いわば二度手間三度手間を要求されながら書類を仕上げても、まずお祈りメールの憂き目にあうばかり。それでも三十代まではまだ耐えられる。だが、四十代に入ると、いつ先が見えるのかという不安のほうが圧倒的に膨らんでいく。このあたりがひとつのデッドラインとなってくる。

この世界は、正規雇用されたことがない研究者に対しては救済システムが働かない。どこかで一度でも専任教職員として雇われていれば、「次の移り先」の斡旋にあずかることなどもあるのだが、そういうものと縁が一切ないのが彼ら若手・中堅の任期付研究者の置かれた実態である。いわば、究極の都合の良い使い捨て人材と位置付けられがちだ。だから、知らないあいだに心が疲弊していく。この心の穴を埋めるものは、誇りの回復しかないのだが、それが敵わない環境に置かれ続けることでついには折れてしまう。

このような苛烈な世界での生き残りをかけ、当事者はお互いをライバル視しがちだが、本当は連帯すべき仲間とみなした方が可能性が広がることだろう。当事者以外にとっては、まさに人ごと。そしてかつての非正規であっても、ひとたび正規に成り上がってしまえば、これまた人ごとに映りだすのか、自分はあなたたちとは違うとばかりに冷たくあたられだすことだって珍しくないわけで。当事者同士がもし支えあえないとすれば、この地獄を脱することなどほとんど不可能になってしまうだろう。いまのところ、有効な解決策が見当たらない中、これ以上の悲劇が起こらないことを願うばかりだ。相談できる場所などがあれば、とも思う。そういう場を一緒に作れれば、とも。

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高学歴ニート・フリーター

2019年04月15日 | 庵主のつぶやき
林修先生の番組の影響で、「高学歴ニート」というワードでの盛り上がりがあったようだ。
関連してというわけでもないが、「高学歴ワーキングプア」というタイトルの本は、当初、「高学歴ニート・フリーター」として進行していたのだが、当時、「ワーキングプア」という言葉が世に広まり出していたこともあって、「ニート・フリーター」をこれに差し替えてみたところまさに、若手研究者の困窮する現状の表現にピッタリとハマったという経緯があって、最終的に「高学歴ワーキングプア」とのタイトルが決定したのである。

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高学歴ワーキングプア問題、深刻化

2019年04月12日 | 庵主のつぶやき
胸が痛むニュース。
哀悼の意を表します。

「文系の博士課程「破滅の道。人材がドブに捨てられる」 ある女性研究者の自死」、朝日新聞デジタル、2019年04月10日

昨年は九大でも。
この先、10年ほども似たようなことが続くのでは。想像したくないことだが。
大学院重点化政策で増えた院卒者は、そろそろ人生の後半へとさしかかってきた。
その下の世代は大学院進学を忌避しはじめたから、その後この問題は、自然消滅で忘れさられていくはず。

こんな無茶苦茶な制度設計(大学院重点化)を進め、安易にそれに乗っかった連中に、一言ぶつけたい気分。だが、その対象も既に隠居していたりする。月日は流れ、当事者らも老い、取り残されたノラ博士だけが彷徨い続ける。どうにもならないとはこのこと。

本庶佑先生や山中伸弥先生の存在が唯一の救い。でもそこは理系の話。文系は金を稼ぐこともできないため絶望的。

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事件の涙「そして、研究棟の一室で~九州大学 ある研究者の死~」

2018年12月24日 | 庵主のつぶやき
事件の涙「そして、研究棟の一室で~九州大学 ある研究者の死~」
2018年12月28日(金) 午後10時45分(25分)

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92894/2894212/index.html

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追悼 ホーキング博士

2018年03月16日 | 庵主のつぶやき

著名な宇宙物理学者・ホーキング博士逝去の報が世界を駆け巡るなか、本当に大勢の人が博士に弔意を示しておられます。

私たちがどこから来て、どこへ行こうとしているのかを、明らかにしようと生涯を捧げてくださった博士。心より哀悼の誠を捧げます。

思えば、博士のベストセラー『ホーキング、宇宙を語る』を手にした頃、たしか私はバイク便ライダーでありました。大学を中退し傷心を抱えながら手にしたこの書は、悩みで固くなりがちな心を解きほぐしてくれる優しさと刺激に満ちたものであったとうっすらながら記憶が残っています。
一方、著者については何年経っても鮮明に思い出せるほど、その経歴や生き方に衝撃を受けたものです。
ALSという病を知ったのもそれがもちろんはじめてのことでした。

それから約二十年後、自分自身がその病にかかわるテーマで研究をしていようとは、当時夢想だにできませんでした。



ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
クリエーター情報なし
早川書房




博士がその本質に迫ろうと試みたこととは次元を異にしているとはいえ、まさに人生とはどこでどうなるのか、本当に一体どこから来てどこへ向かっているのか、ひとりの悩める人間としての疑問はつきません。まったくわからないことばかり、と振り返ってしみじみ感じ入っておることです。

少し悲しい知らせのなかでではありますが、僅かながら心が軽くなるニュースも個人的に届いたりして、こうしたご縁の妙にまた不思議さも感じています。
ホーキング博士と同じ病を抱えた、さる患者さんと数年をかけ共同研究をした論文をとりまとめ博士学位論文として提出した研究者から、一冊の本が届いたのです。

『コミュニケーション支援のフィールドワーク』、日高友郎、ナカニシヤ出版


実は私もそこに多少関係していましたので、このタイミングで、というところで驚いています。

ホーキング博士は、わたしたちがこの宇宙に存在する理由を探ろうとされましたが、私たちは「困難や苦しみを抱えながらそれでもなお笑うことを可能とする人生のおくり方」をここで模索しておりました。
その成果をホーキング博士に捧げたいと思います。優れた先人の導きに感謝するとともに、たゆまぬ努力で数多くの知見を一冊の本としてまとめあげられた研究者・日高友郎博士に敬意を表します。

ALSの患者さんや後進の研究者の励みとしていただけるものへ仕上がることを願って、日高博士は日々筆をとられたようです。

なお、日高先生が仕上げられた学術書のほかに、一般書として下記本も刊行しております。本書についても、患者さんから実に多くのレクチャーを賜った次第です。

心の荷物を降ろすには自力だけでは難しい。であれば、他の力の働きに目を向けてみるのはどうだろか。この世で救われる縁を頂いている我が身に気づけるかも。
朝日新聞出版


「他力本願」という言葉は、ニュアンスとしてはちょっと悪い感じをもたれがちですが、自分の掌の上にない困難に直面したら一旦そこから離れ、次にはまたその流れのなかに身を投じながらも、苦しいなかにも再び笑えるかもしれない一瞬を掴むきっかけにしよう、という意図がここにはこめられています。
商業的にはこれまでのところ本書は苦労が絶えませんが、読後に心が軽くなることを願って、関係者とともに形作られた一冊です。よろしければ、ぜひお手に取っていただけましたら幸いです。

合掌





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『お寺さん崩壊』 重版御礼 2017年1月6日

2017年01月06日 | 庵主のつぶやき

さきほど、担当編集者から「増刷です。おめでとうございます」との嬉しい連絡が。

お手にとっていただいた読者の方々へ、心より感謝申し上げます。

合掌

お寺さん崩壊 (新潮新書)
水月昭道 著
新潮社

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ふたば書房さんよりご紹介 『お寺さん崩壊』

2017年01月05日 | 庵主のつぶやき
明けましておめでとうございます。

本年が清々しい一年でありますようお念じ申し上げます。


『お寺さん崩壊』を、京都のふたば書房社長さんよりご紹介いただきました。ありがとうございます。

八条口店にはよくお邪魔させていただいております。ラインナップが独創的で楽しませていただいております。

合掌


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『お寺さん崩壊』 動きは上々。多謝。

2016年12月19日 | 庵主のつぶやき
拙書『お寺さん崩壊』、15日の発売日から数日を経て。動きは上々。多謝。読者に感謝。

10月末に『寺院消滅』の著者が新刊を刊行している。
『無葬社会 彷徨う遺体 変わる仏教』
これがまた評判のようで。
自分の校了日が迫っていたこともあり、これから手にとる予定。
それにしても大都会では、地方寺院住職あたりには想像もつかないことが起こっているのか……。

無葬社会 彷徨う遺体 変わる仏教
鵜飼 秀徳
日経BP社


同著者の『寺院消滅』は、お寺さんをめぐる全国的な状況が俯瞰できる良書。
寺院消滅
鵜飼 秀徳
日経BP社


拙書『お寺さん崩壊』は、個々のお寺さんが具体的にどのような難問に直面し、そこにどんな独自のドラマが見られるのかを浮かびあがらせている点で、先の書との差別化を果たしている。

お寺さん崩壊 (新潮新書)
水月昭道 著
新潮社


上記三点、あわせて手にとって頂くと、「お寺さん」を取り巻く広く社会的な動向だけでなく、身近な地方寺院(お寺さん)ならではの物語や人間模様などについても概観できる。はず。。

菩提寺の先行きに暗雲が垂れ込めるなか、それぞれの「エンディング」をどう捉え、何をすべきなのかを考えるヒントとして欲しい。

合掌

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新刊『お寺さん崩壊』(新潮新書) 2016年12月15日発売

2016年12月12日 | 庵主のつぶやき

ご案内

新刊『お寺さん崩壊』(新潮新書)

早ければ、2016年12月14日夕方には都内書店に配本予定とのこと。
主要都市では16日あたりのもよう。

今回は、新潮社で「仏壇」シリーズを手がける名物編集者・金寿煥氏に大変お世話になった。
(「仏壇」シリーズ、については下記を参照)
※「文壇があるなら『仏壇』があってもいい」
このシリーズに加われて誉れ。

お墓やお仏壇を普通に守ることが難しい時代。
自分のあとのこともどうなるかわからない。
「ある」のが当然と思われていた「お寺さん」は、今後次々に消滅していくことが確実視されている。

菩提寺も危うい!

そんななかで、いつか確実に来る「その日――人生の最後」をどう迎えたらよいのか。
本書で思考実験をして、その日に備えて欲しい。


お寺さん崩壊 (新潮新書)
水月昭道 著
新潮社

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