眼を開けば僕がいる。 **BNCTに夢を託して**

悪性脳腫瘍の妻との闘病生活を最新の治験療法(BNCT)や免疫療法の体験を交えて・・・。

パーソナライズド・メディシン

2010-04-27 14:41:22 | 日常
先日、日経メディカルに興味深い記事が掲載されていました。
(論旨を変える事のない程度で編集させて頂きました。)
指数関数的に変化・変遷する現代社会ですが、生命科学の分野においても例外ではありません。
DNAの二重らせん構造に遺伝情報が隠されている事が発見されたのは1953年です。
そして1990年に始まったヒトゲノムプロジェクトにおいて13年の歳月と30億ドル以上の経費をかけて、
人間のゲノムのすべての塩基配列を解読するのに成功しました。
その後の技術的進歩によって2008年の終わりには、すべての塩基配列の解読を
5000ドルで24時間以内にできるまでになったのです。
このような生命科学の急速な進歩は、既に現場の医療を変え始めているのです。

「Business Week」誌によると、たいていの薬は服用者の50%くらいにしか効かず、
ある統計によれば2008年にアメリカで処方された3000億ドルの処方薬のうち、
約1500億ドル分は、その薬が有効でない患者のために使われたとのことです。
しかもその上、効かない薬で引き起こされた副作用を治療するために、
何百億ドルもの医療費が費やされたそうです。
こうした状況を打開する方法は、ある薬が効く人と効かない人の遺伝子の違いを調べ、
効く遺伝子を持っている人だけに当該の薬を処方すればよいのです。

現在では、技術的にも経済的にも充分に可能なことです。
アメリカのベンチャー企業Navigenics社ではオンラインで申し込んでから7日で検査キットが到着し
唾液サンプルを送り返して11日後パスワードで保護されたウェブサイトで結果が見られるようになるそうです。
999ドルの費用で脳動脈瘤をはじめとする28の疾患にかかるリスクの有無を分かりやすく
説明してくれます(2010年3月現在)。
究極の個人情報である遺伝子情報を取り扱うことなしには成り立たないパーソナライズド・メディシンが
根付くためには「自分の体は自分で守る」という意識改革が必要かもしれません。

4月24日の毎日新聞に金沢大・子どものこころ発達研究センターの以下のような発表が配信されています。
「オキシトシンは出産時に大量に分泌され、子宮や乳腺の収縮などに作用、陣痛促進剤などとして使われ、
他者を認識したり、愛着を感じる機能に関係するとの研究結果も最近出され、知能の高い自閉症の
アスペルガー症候群で効果が実証されたとの報告もある。」
この報告を読まれた同センターに通院する20代の男性患者のご両親が
08年にオキシトシンの点鼻薬を輸入し数カ月服用したところ、
(1)主治医の目を見て話す(2)対話で笑顔を浮かべる(3)IQテストが受けられるようになるなど症状が改善、
10カ月間投与し改善状態の持続も確認できたそうです。

男性は3歳で自閉症と診断され、服用前は他者と目を合わせず、
質問におうむ返しの反応しかできなかったそうです。
お子さんの障害、病態そして成長をつぶさに観察し積極的に情報収集を行い、
適用例もない薬剤の手配および投与に至る決断をされたご両親に敬意を表します。
お子さんに対する深い愛情と治療に対する前向きな姿勢には感動を覚えます。
つまるところ私達は如何に「患者力」を磨き上げていくか
という事にかかっているのだ、という想いを新たにさせられました。


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2 コメント

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『患者力』が試される・・・同感 (かめ)
2010-04-28 15:43:14
貴重な情報の発信ありがとうございます。

『患者力』って聞いたことあります。ポラリスさんが奥様のために
リサーチしてることが皆に共有されることを願ってます。
返信する
に貴重な情報ありがとうござい (そよかぜ)
2010-05-15 10:43:42
ます。ご紹介の内容を「理解」するのには、「生命科学」というか、「生化学」の基礎
知識が必須ですね。仕事との関わりで関係
する書物を紐解くことがありますが、丸暗
記では思いもよらなっかたことが、一つ一
つ理解が進むと(スマイル)、知的好奇心
がかきたてられます。いつもありがとうご
ざいます。「患者力」は「家族力」を包含
した意味合いだと思います。季節感を錯覚
するような日々が続きます。奥様共々ご自
愛下さいませ。
愛くださいね。
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