眼を開けば僕がいる。 **BNCTに夢を託して**

悪性脳腫瘍の妻との闘病生活を最新の治験療法(BNCT)や免疫療法の体験を交えて・・・。

感動のトランペット

2009-06-25 07:49:57 | 希望
昨日妻とトランペットコンサートに行ってきました。
とはいっても普通のコンサートではありません。

一流のトランペット奏者として活躍されてきた方ですが数年前に脳出血を発症し
その結果として右半身不随に顔面麻痺および失語症という重篤な後遺症が残されました。
懸命の夫唱婦随のリハビリの結果が昨日のコンサートにありました。

リハビリを受けた病院のホールで車椅子に座り左手一本でトランペットを保持しながらの吹奏です。
息が持たないという事で一曲終われば休憩を取ってまた一曲、その休憩の間は奥様のチェロ演奏という
和やかなコンサートとなりました。
一流奏者のダイナミックな音量も軽快なリズムにもほど遠いものでしたが、車いすに座った多くの
リハビリに励む方達の真剣なまなざしが会場を埋めていました。

感動は最後に訪れます。
演奏終了後のステージ挨拶で発せられた言葉は言語障害の後遺症が色濃く残され頭の中で探す言葉が
なかなか見つからない、発せられる言葉はお世辞にも聞き取りやすいとは言えない、
それでも集まった患者さんに向け日々のリハビリを頑張りましょうという熱いメッセージを語られました。
こんな状態でトランペットを吹かれていたのかと・・・衝撃でした。

一流奏者としてのプライドもあったろうに・・・人の眼から隠れたいと思った事もあったろうに・・・。
彼を見て私達も堂々と胸を張って表通りを闊歩しなければと決意を新たにさせられました。
コンサート終了後に場末の(ゴメンナサイ)焼き肉屋でご一緒させていただきました。
本当に車椅子で入れるの?と言うような店の、
もうもうたる煙の中で焼き肉をほおばり・・・もう怖いものなしです!

別世界の街

2009-06-22 07:33:05 | 迷い
19日の診察が終わってからでした・・・。
妻も一緒に主治医の話を聞いていたのですが、話の内容を理解できていないようで
私の沈む気持ちとは裏腹に、明るい声で蕎麦を食べたいというのです。
いつもは病院の食堂で昼食を済ませるのですが生憎昼時でメニューに蕎麦もない事から
帰りがてらどこかで食事をしようと軽い気持ちで病院を後にしました。

家に帰る道すがらこれはと思う食堂、レストラン、蕎麦屋などで車を止めやっとの思いで妻を車椅子に移乗し
行ってみると階段が待っている・・玄関間口が狭く車椅子が通れない・・
中に入ると靴を脱いで入る三和土になっている・・途中から妻を降ろさずに私だけが下見に行くようになりました。
私達は私達の存在しない別世界を彷徨っているようでした。

断固として私達を拒絶されているかのようで悲しくなりましたし、そんな風に感じてしまう自分自身が悲しかったのです。
店の人に声をかければ助けてもらえたかもしれませんが、この時はもう声を出そうと考える事さえ出来ませんでした。
妻は店を探し回る私に「ごめんね。」と謝るのですが謝らなければならないのは私の方です。

いつの間にか殻に閉じこもっていた私がいました。
別世界にいたのは私でした・・・。

医師の資質

2009-06-20 08:45:12 | 日常
昨日の受診の際、医学生8名がギャラリーとして診察室に陣取っていました。
主治医もいつものテンションと少し違う雰囲気で話が始まりました。

そんな中、妻が初発から再々初の3度目の手術までをしていただいたTO病院の話題になりました。
今度こられた膠芽腫の患者さんがセカンドオピニオンを受けるためMRIの画像と紹介状を
TO病院にお願いしたところ断られ診療も止まったままになっているとのことです。

看護師さんに後で伺った話によると私の妻がTO病院で治療していたことを知っている主治医は
話を聞こうと私達が来るのを待っておられたそうです。
「医師は患者を選べません・・治療を受けに来られた全ての患者を診る義務があります・・
しかし患者は医師を選ぶことが出来ます。」
主治医の言葉です。
「ポラリスさん、TO病院はそんないい加減な病院なのですか?」

相当憤慨されていました。
私がセカンドオピニオンというより転院を求めたとき、紹介状も書いてもらいましたしフィルムも出してもらいましたから、
病院の問題と言うより医師の資質の問題かと思います。
もちろん患者側に全く問題がないわけではないのでしょうが、まだこんな傲慢な自身の職務を認識していない
医師の存在には驚きましたし、がっかりさせられました。

こういう医師に妥協して自身の気持ちを押し込めてはいけない・・・
患者はもっと強くならなければいけないと、つくづく思います。

Avastin投与中止

2009-06-19 20:03:19 | 迷い
今朝に撮ったMRIの結果を待って受診しました。
4月の画像と比較して腫瘍はさらに縮小しているのが確認されました。
ただ本来の投与の目的であった壊死の縮小については残念ながら効果が認められず
投与の中止を決定しました。

現在投与されている他の方に劇的な効果をもたらしているAvastinも妻には薬効なく
他の治療を模索することとなりました。
私達はAvastinからリタイヤしますが、すでに治療中の方や今から治療を検討されている方の
健闘を心より期待しております。

私達には今後はワーファリンによる壊死層の拡大予防と場合によってはステロイド剤の
再投与という選択肢が考えられます。
ステロイドの服用中止から一ヶ月が過ぎやっと尿糖検査紙でも改善に向かっていただけに
残念ではありますがやむを得ません。

少々凹みましたが、何時までも下を向いていてもしょうがないと開き直って前を向きます。
さあ週末どうして過ごそうかな・・・。

逃げない覚悟

2009-06-16 09:21:01 | 日常
2006.12.21にNHKのプロフェッショナルで放映されました。
「医者は人生を手術する」
脳神経外科医 上山博康

毎日4時間程度の睡眠時間で、ほとんど休み無く週末は旭川を離れ全国の病院を飛び回って
手術に明け暮れる上山医師の話の要約です。


患者から送られてくる、毎月100通ほどの手紙をすべて読む。
患者のさまざまな事情、家族のことや人生模様を知ってしまうこと。
手紙を読む事は自分への動機付け。
こんなに助けを求められるということは、ある意味医者冥利に尽きる。
患者が助けを求めてくれるのを感じるからこそ、がんばれる。

医者としての、プロとしてのプライド。
逃げることは許されない。
逃げることイコール患者が死ぬこと。
これを生業としてプロとしてやっていくんだったら、逃げることは絶対許されない。

治療法の設計図がないのに、病気を告知するのはプロとして卑怯。
問題点を指摘するのは簡単。しかし、解決策を探す努力ができない人に、指摘をする権利はない。
それが、「人と向きあう」と言うこと。


私が医者に求める前に、
ここまでの覚悟に本当に向き合うことができるのだろうか。
そして何より私にここまでの覚悟が出来ているのだろうか。

事実から目をそらさず逃げない覚悟が出来ているのだろうか・・・。




焦燥感

2009-06-09 10:25:29 | 日常
昨日6回目のAvastin投与を行いました。
2週間後にMRIでその効果の判定を行い、状況によっては投与の中断を
考慮する事となりました。
昨日この件はそっちのけでBNCTについて主治医と話しました。

今秋にJRR-4の再稼働に伴う国内でのBNCTの再開が視野に入った今、初発のグリオブラストーマに対する
圧倒的なエビデンスを確信する主治医にとって多数の症例を得る事によるエビデンスの裏打ちとそれにつれ
急増する研究費の確保が当面の課題になるようです。
関西圏でこそ何カ所かの医療機関で(主に大学病院)BNCTが行われてきましたが、
関東以北ではその症例はありません。

初発のグリオーマ、グリオブラストーマの患者の多くは圧倒的な外科的手術数を誇る関東圏に
その治療の拠点を求めます。
その結果として外科的手術、放射線治療およびテモダール服用というノーマルコースが第一選択肢としてあげられ、
その流れに沿って治療が進められます。
この時点でほぼBNCTはその選択肢から外れてしまいます。
患者はその治療法の存在すら知らされることなく選択肢から外されてしまいます。

多くの方が再発そして既存の治療の限界という壁に突き当たり、BNCTへとたどり着いた時には
圧倒的なエビデンスを期待できうるBNCTは選択肢からはずれている事に気がつかれるのです。
BNCTもやはり放射線療法の一種類です。
初発時の放射線治療で限界に近い状態の蓄積被爆を受けた患者にとって、正常脳にいくら影響の少ないBNCTといえど、
腫瘍を完全に叩くまでの中性子線は照射できません。
そのため現状における再発性グリオブラストーマに対するエビデンスは寛解こそ認められるものの完治はあり得ないようです。

あえて医療関係者に切に求めます。
ご自分の、いや所属される医療機関にとっての出来ない医療も知識として患者に伝えていただきたいのです。
そして治療を求める患者としても「先生に全てお任せします」ではなく自身の体は
自身で守らなければなりません。
病気と向き合いその病気を徹底的に調べて医師にぶつけなければなりません。
その問いかけに真摯に向き合える医師を捜し出さなければなりません。

やっと国内でのBNCTが再開され、加速器を使用してのBNCTが動き出そうとしている今、
置き去りにされていく患者の姿が垣間見えて焦燥感だけがふくらんでいきます。

BNCTは今

2009-06-05 15:25:23 | Boron Neutron Capture Therapy
先日お知らせいたしました京大熊取の原子炉は未だウラン搬送の見通しが立たず
稼働のめどは立っておりません。
しかしながらやっと・・本当に待ちに待った日本原子力研究所東海研究所のJRR-4が
本年10月頃に稼働するようです。
今までに何度も騙されていますから疑心暗鬼ではありますが・・・。
http://rrsys.tokai-sc.jaea.go.jp/rrsys/html/new/pdf/20090302.pdf
順調にいけば11月頃には国内でBNCTが再開されるかもしれません。

今日主治医の話を聞く機会がありました。
再発性のグリオブラストーマにBNCTを選択した場合の治療効果は認められるものの
画期的とは言い難い内容です。
それは現在のグリオブラストーマの治療法が外科的手術と放射線治療がセットに
なって行われているため、BNCT前に正常脳組織に限度に近い蓄積被爆があり充分な中性子線を
照射できないというジレンマがあります。

初発の第一選択肢として治療を考えられるなら、より大きな効果が望めるのではないかという見解です。
そのためには広く周知する事(医療関係者レベルではなく当該被治療者レベル)と
多くの医療機関で治療が可能な事が必須になります。
それ故、加速器を使ってのBNCTに期待がかけられるのですが、残念ながら来年初頭からの
治験は手探りの状態が当面続きそうではあります。

全員集合

2009-06-03 15:24:40 | 希望
昨日無事に父が退院してきました。
やっと久しぶりに全員がそろいました。
インスリンの注射もドタバタしながらも・・・なんとか無事にやれました。
あのおぞましい思いを浮かべていた注射が少し・・・快感になりつつある。

さて来週はAvastinの2クール最終6回目の投与が待っている。
ステロイドをやめてから食欲はバッタリ落ちた!
それなのに体重はピクリとも動かない。
それどころか気持ち増えているかも・・・?
まあ血糖も体重ももう少し長い目で見るとしましょうか。

それはそうと昨日いつものようにマスクをして病院に行きました。
町中を歩いていると異様なものを見るような視線が突き刺さります。
誰もマスクをしていない・・・。
この間までマスクをしていない人を国賊のような(古っ)眼をして見ていたくせに・・・。
全く日本人と来たら・・・。
クソッこうなったら意地でもマスクをしてやる!!

光る癌細胞

2009-06-01 10:48:04 | 希望
昨晩テレビで0.2mmの癌細胞さえ視覚的に発見できる薬剤が紹介されていました。
皆さんご覧になりましたでしょうか。

内視鏡で臓器を観察し先端から薬剤を噴出するとものの十秒くらいで癌細胞が
発光するのです。
そして内視鏡でポリープを取るように摘出してしまいました。
まだ動物実験段階ですが5年後には安全を確保したシステムを提供する事が出来ると
コメントされていたのが印象的でした。

臓器表層の癌には非常に有効なシステムになるのでしょうね。
ふと脳腫瘍はどうなるのかと考えてみました。
視覚的に認識するためには開頭することが前提になります。
しかし脳組織深部の腫瘍は発見できないでしょうし、発見できても外科的に除去する
手段があるのかどうか。
いっそ癌細胞に吸着されるその薬剤のように腫瘍細胞のDNAを破壊できるものを
直接腫瘍細胞まで運搬する事は出来ないかな・・・なんて少し夢を見てしまいました。

こういう研究を日夜取り組まれている方が居られます。
お願いするだけです・・・どうぞ一刻も早く私達に救いの手が届きますように!
昔は脳腫瘍が不治の病と言われていたんだってと・・・そんな時代が来ますように。
お願いするだけです。