落書き帳

あまり触れられないことに触れる
内容は備忘録のため、誤解等含め随時改変

エンジン技術_番外編3 エレキ物

2018年11月10日 | エンジン・自動車

エレキ物を外側から眺めた話    

 

1 2モーターHEVの「バッテリーの出し入れなく走行」の実態

 

2モーターHEVで、「バッテリーの出し入れなく走行」なる記述を見かけるが、技術的に正確とは言い難い。正確に書くとフツウの人にはかえって分かりづらくなるが、

「2モーターへのトルク指令値はバッテリーの出し入れが計算上ゼロとなる値を指令するが、実際に出し入れが発生するかは成り行き」

が正確。

 

「電流の通り道」「電流の向き」をアクティブに(強制的に)切り替える、選択する機構・機能は(フツウは)どこにもない。付けるメリットがないから。

メリットがある例 電気鉄道の電力融通装置

分野は違うが、ノートPC用バッテリー(の周辺回路)には「充電ON/OFF用FET」「放電ON/OFF用FET」が必ずSETで付いている。充電のみON(放電不可)/放電のみON(充電不可)のステータスが実現できる。HEVの「強電リレー」はバッテリーを回路上接続/遮断する機能しかなく機能範囲が狭い。

「モニター」は「現在の状態」あるいは「指令値ベースの状態」(実行値・現在値が指令値通りになるかは別の話)をデフォルメして表示しているだけで、例えば1Aの電流をそのまま表示すると誤解を招くケースがあれば表示しない。「バッテリーの出し入れなく走行」は、文学的には誤りとは言えないが、技術的に時間軸でリアルタイムの系の挙動を表しているつもりなら誤り。

バッテリー電流=0を正確に(時間平均とかではなくリアルタイムで)実現するには、

・高電圧リレーをOFFしてバッテリーを遮断する

・昇圧コンバーター付ならスイッチングを停止してバッテリーを回路上切り離した状態にする

以外の方法はない(はず)。2モーターバッテリーレスの回路状態にしない限りバッテリー電流=0にはならない。

理由は、簡略化した回路図、回路各部の機能、回路各部の動作、電流電圧挙動、等価回路、リアルタイムパワーバランス等々を脳内でこねくり回した結果による。バッテリーは、定電圧電源(出し入れ可逆でインピーダンスはゼロ)+R+Cの等価回路で表現できるらしい。解釈に100%の自信・確信はない+書くと長くなるのでコマゴマした話は省略。

「バッテリー等価回路の一例」を眺めると、超超大容量のCが入っている。

2モーター+バッテリーレスシリーズ運転ではこのCが抜ける。インバーター内蔵のCは残るが、

2同期電動機+2インバーター+エンジン のバッテリーレスシリーズ運転

では、定常運転は問題がなくても、過渡的にはDC電圧の安定性が問題になり、エンジン直結運転(コンベ)並の駆動力応答性は難しいのでは?と想像する。

シリーズ電気伝達運転の歴史が長いディーゼル機関車の例を引用する。完全にインバーター+交流機に移行したのは前世紀終盤。バッテリーレスがフツウでバッテリー付きは亜流。

東芝レビュー Vol.58 No.9 (2003) p27「電圧の不安定性問題」

 

 

自技会20164508 「新型プリウスのハイブリッド技術」から引用。

【定常走行などでバッテリからの電力授受を要しない場合に昇圧コンバータのスイッチングを停止】

フツウの構成ならば、昇圧コンバーターのスイッチングを停止するとバッテリーは電気的に切れた状態になる。文章をフツウに解釈すると、

バッテリーからの電力授受を要しない場合は、発電電力=力行電力となるように2モーターへトルク指令するが、実際にはバッテリーの電力授受が発生するので(シーンを限定して)バッテリーを電気的に切り離した。

目的は、

① スイッチングによるパワーロス排除 パワーパスは昇圧/降圧の双方向可逆

② バッテリーへの無用な出入りによるパワーロス排除 出入りには充放電効率が掛かる

③ バッテリーへの無用な出入りを排除しバッテリー寿命を延ばす 出し入れで寿命は必ず縮み延びることはない

memo パワーロス(W=J/s)と書いてエネルギーロス(J)と書かない理由

電気的に仕事をやりとりする場合の基本単位はW=J/sでJではない。現象としてW(J/s)=電流×電圧が表に出るケースが圧倒的多い。電気代=仕事(J)の単位は1kWh=1kJ/sec×3600sec=3600kJ という別単位を用意している。NmとかNは更に脇役で、0rpmで動かなければ何Nm出ていようが極限的に電気代はタダだが現実世界の銅損等で電気代はW×sec=J 換算で請求される。

オマケ モーターとかエンジンの「回転数制御」「速度制御」

日常言語としては文句はないが、技術的に見ると

トルク(力)→時間積分で回転数(速度)→時間積分で角度(位置)

「制御したいもの」は回転数(速度)だが根本はトルク(力)制御。位置(角度とか車間制御の類)でも同じ話。トルク(力)が制御できなくては何もできん。

 

ここでは「電気だから高応答」は真実で、

「定常走行など」→「それ以外(アクセル操作が所定以上)」の際は一瞬「待った」をかけて昇圧コンバーターのスイッチングを再開。「一瞬」は長くても1/100sec以内と思われ感知できない。

と書いたが「電気だから高応答」は情報系・制御系(非パワー系)に限った話になることがある。パワー系の物理的拘束条件がある。

「定常走行など」以外の条件、通常のアクセル操作条件下では、まず「DC電圧の安定性」が問題になり、実施は困難では?と想像する。アクセルレスポンスを大幅悪化させれば、実施可能と思われる。DC電圧が急変しないように常時監視しながら、エンジン、2モーターへのトルク指令値を「ゆっくり」動かす。

 

インバーターは

・DC側は(近似的には)定電圧でパワー出力(入力) 

・三相AC側は可変電圧(フツウは実効値で表現)でパワー入力(出力)

()付は、力行/回生で動作が逆になることを表現。誘導性の負荷(モーターの「電機子」は全て誘導性)とセットで動作は正回転/逆回転含めて完全に連続可逆。DC側で短周期、振幅大の電圧変動があることを動作の前提にしていない。DCラインにCが入ったインバーターを「電圧型」、Lが入ったインバーターを「電流型」と称するようだが、自動車用は100%「電圧型」。

 

memo 交流電流・電圧を時間平均ではなく実効値で表現する理由

有効電力=電気代/sec=J/sec=W=電流×電圧×力率(phase factor) とするため 

「力率」は意味不明気味の迷訳で英語そのままがスッキリする。大規模需要家は力率が抜けて無効電力にも電気代が請求されるようである。力率=±1以外は無効電力ありで設備負担が増える。電力設備(変圧器等)は皮相電力で容量が決まるので(耐圧、最大電流等)単位はWでなくVA。全部¥がらみの話で、¥の話から入るとわかりやすい。

 

 「モーターのトルク応答は、エンジンより2桁速い」は、

「出し入れ可逆な安定電源 定電圧に近い電源」が前提。2モーターをバッテリーレス・シリーズで運転したときの特性は、発電機・モーターの形式・特性(接続回路系を含む)次第で、無制御ではなく何らかの「制御」が必要な場合、介入させる場合は「制御」の要素が加わる。

小難しい話は抜きで、フツウに考える。例えば、DC発電機+DCモーター(制御無しの「ぶら下がり」)なら応答性は?だがそれなりに動く。手回し発電機にモーターをつなげるだけでシリーズ運転完成。2インバーター+2交流電動機+バッテリーの系からバッテリーを外せばバッテリー有と同等のトルク応答は期待できない。拘束条件が増える+エネルギーバッファーが減るから。DC電圧の安定性が拘束条件になる。当然だが、「モーターアシスト」はバッテリー付でも無しとして書いている。ここでの「モーターアシスト無し」は「制御目標値」としては=0 の意味で、「制御目標値」=0としても実際にはミクロに観察すれば2モーターの力行・回生によるバッテリーへの電流の出入りがある(はず)。

もっとごくフツウに考える。エネルギーバッファーが無い限り、エンジンパワー応答以上の駆動輪パワー応答はない。2交流機+2インバーターのバッテリーレスパワー伝達では制約条件、拘束条件が増えるのでエンジンパワー応答未満の駆動輪パワー応答になる。エンジン慣性モーメントはエネルギーバッファーとなるので、エンジン回転数が上下する場面では、業界方言の「イナーシャトルク」は「イナーシャパワー」に置き換えて考える。「電気だから高応答」はある面では真実だが永久機関もどきのイカサマは成立しない。

 

長々と書いた動機は、むかしむかしの妄想

「高電圧バッテリーレスTHSで、CVTに伝達効率で勝てるか?」

バッテリーは¥と寿命と重量とスペースの問題がつきまとうので、避けて通りたいのがケチの本能。

2モーターシリーズでも本質は変わらないが、エンジンパワーと同等以上の電機系容量が必要で、THSの方が容量がケチれる。リングギヤ=0rpm以外では、エンジン⇔タイヤ間で機械的パワー伝達がある。シツコク言っておくと「パワー伝達」であって「トルク伝達」に非ず。「トルク伝達」は出力パワー=0なら極限的にはタダで可能だが「パワー伝達」は必ず¥請求される。

動かすことが可能と仮定しても、商品としては全くオイシイところがないが(12Vスターター追加、アイドルストップ無し、回生回収無し、他にも難点あり)、その種の話はスルー。高圧DCラインに超大容量C追加とかは無しで、市販コンポーネントをそのまま使う前提。

結論は、

「駆動力レスポンスが悪くなる。レスポンス無視で、ダラダラ走るだけなら可能。伝達効率は?だが、それ以前のシロモノにしかならない。」

バッテリーレスシリーズ運転の機関車、超大型建機、船舶の類は、図体がデカイ=慣性がデカイからジドウシャ程度の小慣性に比べればレスポンス要求は・・・程度のことは言える。無闇に駆動トルク応答性を上げたところで図体がついてこない。駆動トルク応答性要求がありそうなのは、ジドウシャでいうところのトラクションコントロール(イマドキ新車は100%標準)、鉄道用語だと「再粘着制御」だが実情は知らないのでここまで。     

 

参考図

「目標値」「現在値」に関して、字面だけを見ると技術的解釈を誤る。「文脈」は文芸世界だけの話に非ず。

 

 

 

2 バッテリーの「SOC」

 

空気のごとく、「SOC」なる用語がどこでも登場する。これは「未定義用語」と文学的に割り切ることはできるが、技術ヲタはゲスの勘ぐりを入れる。工学的に明文化された定義を見たことがない。

と書いたが「工学的に明文化」が実はムズカシイ。

ゲスが勘ぐると、

①満タン(SOC=100%):メーカー裁量とする。これ以上充電することを、当該電池の使い方として禁止する状態。

「過充電」回避要求が無い場合は「満タン」以外の意味はない。

②カラッポ(SOC=0%):メーカー裁量とする。これ以上放電することを、当該電池の使い方として禁止する状態。

「短絡しても1mAたりとも流れない状態、1mVたりとも解放起電力がない状態」に非ず。電池充電%(画面表示)が20%とかで強制電源OFFする製品があるようだが、電池単体特性の話ではなく個別制御の話になるのでスルー。物理的にはどうとでもできて思惑と諸々の事情がからむ個別制御の話はキリがない。10年100年後に記録に残す価値があるモノはどれだけあるでしょう? 

③新品時の公称容量 SOC=100%→0%のAh

これは書きづらい・・・「権威」あるモノに書こうとすると脚下されそう。

SOC=0%、100%は、電気化学的平衡が「片側へ全て寄った状態」ではなさそうで、文芸的に表現するしかない? 工学的に的確な他の定義があれば発表されたしだが、Google先生の答えはどこかで見たようなモノ。

 

いわゆる「SOC」は2つの意味があり、文脈により使い分けている。どちらの意味なのか最初に明記しているのは、知る限りでは某電池メーカーの一例のみ。同メーカーは別論文で皮肉を込めて「いわゆるSOC」と記している。

「電池 SOC 定義」でググると、まともな説明が最初にhitしたのでコピペ。と過去形なのは、コレは2014年時点の状況で2020年現在どこかに消し飛んだ。コレがヲタ的に最もマトモな解説であることに変化はない。6年間で検索結果は変わり「SOC」の検索で「SOH」がhitするようになった。

「これは慣用句のようなもので、実際の意味は、充電率の域を出ません」

「慣用句のようなもの」「域を出ません」が、語句の実態を的確に表現している。外の人はこのような表現はしない+できない。

以下電池温度は一定(フツウは20℃ないし25℃にとることが多い模様)とする。低温で、バッテリーの入出力可能パワー(kW)が下がるのは明らかだが、このとき「いわゆるSOC」をどう扱っているか、扱うべきかは知らないから。バッテリー温度コントロールは当たり前だが、よくあるシーンとして、常温で充電→バッテリーが冷えた場合が問題になる。EVをお持ちの方は、メーター&「スパイさん」を観察してみるがよろし。

「相対SOC」「絶対SOC」は、【俺命名】で権威はゼロ。

①「相対SOC」 その時の電池劣化状態での、相対的充電率%。Ah、kWhの物理的意味はない。

物理的意味(Ah、kWh)を持たせるには「SOH」(新品状態、新品specからの(推定・仮想) 容量残存割合)を掛ける。某EVの「SOH」はこれで、新品のAh、kWhを掛ければ、現在の容量になる。「スパイさん」は「SOC」も表示するようだが、これは「相対SOC」と思われる。「思われる」がイヤな人はスパイさんに聞いてみる。

②「絶対SOC」 新品のAhに対する現在劣化状態での蓄電量Ahを%で表す。Ah、kWhの意味がある。

絶対SOC=相対SOC×SOH

某EVのメーターセグメント表示は②「絶対SOC」と断定。セグメントがリニアに表示するかは関知しない。知りたいのは走行可能距離で、相対SOCを表示しても意味がない。劣化するとフル充電でもセグ欠けするのはSOHが掛かるから。

小型電子機器の表示は①「相対SOC」と断定。表示の算出方法は、電圧検出のみ(携帯電話等)、電流積分併用(ノートPCはこれが主流らしい)等いろいろだが、「劣化してフル充電後の使用可能時間が短くなってもフル充電時は満タン表示」は共通で例外は知らない。EVがこれでは意味がない。

 

memo

某スマホ 丸2年経過 充電%表示オカシイので再起動したらマトモになった。1年以上電源切っていない。電流積分している?

momo2

某スマホ 丸3年経過 電源切ったままさむ~い屋外へ 数時間後さむ~いまま電源ONすると、あ~れフシギ 満タン充電したのに60%とかに下がってる 「劣化しても満タンは100%」を確認するべく、暖房屋内で充電→ハイ 満タンは100%でした 充電器は「脳無し」の5V定電圧 何やっているかは勝手に想像

momo3

某モバイル通信機器 丸3年経過 暖房無し寒冷地に置くと充電器接続状態で70%ぐらいからそれ以上表示が上がらない 暖地へ移動して数時間後100%になっていた 充電器は「脳無し」の5V定電圧 何をやっているかは勝手に想像

momo4

某モバイルナビゲーション 丸10年経過 電池駆動は10分もてばいいぐらいの劣化状態だが充電すると満タン表示する 新品時は数時間駆動できたが駆動時間ゼロでも当方の支障はない ノートPCはこの「仕様」以外は知らない

memo5 某日

某ポンコツ車 某社ケーレツDに?回目の車検に出す 完了後頂いた書類の封筒に

バッテリー(12Vバッテリー) 型式 ******(安物) SOC=100% SOH=64% 温度12℃

なる紙が入っていた。

コレは初見の紙で、3年半経過しているから まあEところでは? 寿命経験値は4~5年(判定は脳内センサーによる) SOC=100%は当然で、車検持ち込み前にシツコク外部充電済み

 

バッテリー劣化を考慮しない新品性能(SOH=100%)は、①の定義でも②の定義でも同じ値になる。

この辺の資料を見返してみると、傍観者には回りくどい分かりにくいものばかりである。こうなるのは理由がある。

検出できるのは、電圧、電流、温度のみ。「化学反応ガー」「物質移動ガー」と言ったところで直接検出する手段はない+山ほどある論文は読む気がしないが、これだけは知っていて損はない。

・これから、「バッテリーの現在の状態」を推定する。あえて分かりやすくイヤミな言い方をすると「推定したつもりになる」。「つもり」でも何がしかをやらない限りコトが進まない。

・バッテリーの充電上限状態(相対SOC=100%)、放電下限状態(相対SOC=0%)はメーカーが決める。新品は当然だが、劣化進行中に対してもメーカーが決める。歴史の長い四輪車用12Vバッテリー(開放型のみ)は、

「5時間率で放電したとき、10.5Vを放電終止電圧とする」

とJISで規定されているが、規定があるのはこれが唯一?新品には当然適用されるが、劣化品に対して適用されるか、適用することが妥当かはJISは触れていないし知らない。

EVの「SOH」が上がったとかで喜ぶのはホドホドに。ロングスパンで見れば、上がることはありえず下がる一方。こうなるのは「現在の状態推定」が難しいからで、論文発表が延々と続いている模様。

傍観者の所感は

「負荷つなげてみれば一発で分かるじゃん」

「充電パワー(W)・充電所要電力量( Wh=3600J ) 、 放電パワー(W)・放電電力量( Wh=3600J ) 、充放電効率が実用範囲を逸脱すれば寿命じゃん」 

「解放電圧は参考情報」

実用上の要求はコレだが「動かしてみてダメなら寿命です」と言うワケにはイカン。コレがまかり通るのは小型電子機器で、面倒な事をやってバッテリー状態をオンボードで推定したところでユーザー・メーカーのメリットは?「診断機」に別途投資するのとサックリ交換するのはどっちがお得?「診断機」の判定(の閾値)と機器の要求は必ずしも合致しない。常識的には安全側(使える機器はありそうだがNGとする)の設定になる。オンボードで機器毎にデジタルな「可否判定」をやるとクレームネタになりそうである。

 

 

 自技会20164584より図を引用する。

「SOC」の定義は何も書かれていないが、全て「相対SOC」と解釈できる。劣化に対応する概念は「SOH」で、劣化時のAh、kWhはSOHを掛けて下方向に縮小される。

HEVの表現は注釈が必要で、通常は上限80%、下限30%程度を使用範囲とする。「未使用領域」は明らかな誤記。これから電気が入ってくるか出ていくかは(車両は)予測できないので、積極的な出し入れ(エンジン始動・アシスト・回生等)要求がないときは「ゆっくりと真ん中あたりにもっていく」充放電を行うように2モーター、エンジンを制御する。「積極的な出し入れ要求」が連続すれば、「SOC」が上限or下限に近づいていく→バッテリー入力or出力可能パワーが下がる→入力or出力パワーを絞る。1kWh程度の公称容量で、実質使える容量は半分(30~80%)だから、必然的にこうなる。時間頻度を掛ければ、真ん中に集まった分布になる。個別にどうなるか?は、道路環境と運転状況とシステムの適合で変わる。

(80%)は寿命要求

(30%)は寿命要求と、次回エンジン始動に備えるため。例えば山の頂上で0%まで使い切って下りで目一杯貯める使い方はできない。(←EVは自己責任で可能)

1kWhクラスのHEVの充電状態表示は小型電子機器と同じ「相対SOC」と断定。劣化状態「SOH」は、バッテリー監視ECU内部では演算していそうだが表に出す必要がない+出したくない=表沙汰にしたくないので出てこない。「相対SOC%」と「バッテリー入出力可能パワーkW」があればエネルギーマネージメントはできる。イマドキ小学生でも分かっている話で、劣化バッテリー(特にリチウムイオン)の現状はゴミ以下の邪魔者で市場価値がない模様。

劣化してSOHが減少(実効容量減)があればバッテリー入出力可能パワーに反映され、相対SOC%の上下限の範囲内で使う原則がバッテリー充放電要求に反映される。SOHが限度以下に小さくなれば車両として機能不全になり劣化寿命となるのはEVと同じ。

公称容量Ah、kWhの測定法はJIS等の規定はない(例外は開放型の自動車用鉛酸バッテリー)ので各社独自と思われ、

・「実力」に対して公称値を小さくして余裕をもたせた使い方をして客にわかる性能劣化を少なくする

・新品から「実力」目一杯使い切る設定にする

等々は各社の裁量範囲と思われる。初期性能・客が感知できる劣化・コスト・重量等の取り合い。

 

 

法規制当局は「電動化マンセ~」をやるなら、エンジン車のOBD2に準じ

【SOH】をOBD2汎用ツールGSTの法規表示義務項目にすべし。もっと直接的な表現にするなら

現在電池容量kWh(推定値 標準温度環境)

GST(general scan tool)の「通信プロトコル」は規定・公開されているので誰でも参入可能で市販価格はタダ同然。

EVのGST法規表示義務項目なるモノは存在するのか?については知らん。OBD2 の起源は

「排気に影響のあるシステム・部品の診断」(US1994~)

でエンジン・AT のパワートレイン関係のみであった。HEVの強電系がその後加わった。

EV→排気無し→「環境」に影響無し

とするのはイマドキは寝言になった。

「スパイさん」は失業するが、これなら作成者の本意では。

 

公的機関がN=1台のフタを開けてみた結果(フリーアクセス)

使用過程ハイブリッド車における燃費及びバッテリー性能の変化に関する研究 2018年

追加費用と知識+技能を有する人材で外部機関においてこの程度のデータは採れる。

OEMはヒミツにしたい部分と思われるが、ユーザーは大筋のコトは体感済み。 

 

 

3 2モータHEVの【エンジン→タイヤの機械的パワー伝達】の有無とバッテリー

 

エンジン~タイヤが機械的につながっているかいないかで

① 機械的パワー伝達有り THS、エンジン直結クラッチ有りの2モーターシリーズ

② 機械的パワー伝達無し エンジン直結クラッチ無しの2モーターシリーズ

に分類できる。同一の定常駆動力特性・過渡駆動力応答を与え、同一モードを走行したとき、バッテリー電流の出入り(の時間積分)はどちらが大きいか?

いわゆる「乗り味」、ドラビリ、電機系容量、等々は考慮の対象外とし、バッテリー容量kWh、バッテリー出力/入力kW(〇〇秒定格)、エンジン、車両諸元は同一とする。ネンピは「同等」の縛りをゆるくかけて、走行モードは「市場実用モード」「シーン別代表モード」とする。

←これだけでは比較の条件不足で、もっと条件を増やさないと比較にならないとのご意見は承知の上で、強引に比較する。

ヤマ勘 によれば、同一走行モードでのバッテリーの出入りは ①<② となって ①≧②となることはない。

バッテリーの出入りが増えれば、寿命は短くはなるが長くなることはない。使うほど死期は早くなる。

比較条件を絞って、↑↑に書いた「見た目バッテリーの出し入れがない状態」を考える。

「ミクロな」バッテリーへの出入りは電気パワー伝達が大きいほど増える。定量的な寿命への影響はともかく、定性的にはそうなる。

「使い方」の話になるが、機械的パワー伝達のない状態では、エンジン回転・負荷は任意に選べる。ネンピ狙いでエンジン一点運転を志向すれば、過不足分はバッテリーの出し入れになる。

個別製品については↑に書いた比較の前提条件が成立することはないが、

技術的には「機械的パワー伝達無し」に「バッテリーの出入りを増やす」側面がある

と書いておく。公称バッテリー容量kWhも大き目である。ここでは企画・制御プログラムの話は抜きで技術的側面の一部を切り取っている。

表には出てこないが「バッテリーの出し入れと寿命」をどう判断するか?はいつでもつきまとう問題。某社では

「市場走行距離(走行モードはそれなりに決め打ち)あたりの出し入れを〇〇以下になるようにしろ」との騒動があったとキオク。その後どうしたのかは知らない。

「バッテリー寿命」をメーカー(OEM)は何らかの手段で事前検討している。実際市場実力がどうなるか?はフタを開けてみなければわからない。OEMはそれなりに市場データを蓄積している。バッテリー監視ECUには

〇〇の最大値、最小値、平均値、標準偏差・・・

と呆れるほどの市場データバックアップ領域があった。イマドキは(¥取られる)携帯回線無線送信か?

 

エンジン運転一点志向 ≠ マンセ~ タダでできるワケがない。

エンジンとしては楽な側で苦手な領域は捨てられる。ツケは全てバッテリーに回すことになる。何事も表と裏があるが裏=ツケの部分は触れることはない。¥、組織、その他で拘束されていない物書きはいないが

エンジン運転一点志向にやるにあたって、バッテリー寿命はどう判断されたのですか?

回答は国会答弁になる。答弁の答えが出る頃には担当者は替わっている。

 

 

4 HEV(2モーター式)の、【クルマは見ている真実】 

 

以下、全て定常走行中(定アクセル開度、定速度)、エンジン走行中に限定する。

THSの場合、エンジントルク(キャリア)は、常時一定比率でサンギヤ(発電機)、リングギヤ(タイヤ駆動軸、モーター軸)に分割される。初代プリウスは0.278 : 0.722。発電機トルク/0.278で、エンジントルクは丸分かり。発電機トルクが汎用ツールでモニターできる(法規上のモニター義務化項目になっている)とは思えないが、中の人は誰でもモニターできる。エンジンダイナモに載せる必要はないが、エンジン運転領域は最適燃費線周辺に限定される。 最低エンジン回転数を上げたければSレンジとかを使う。シリーズHEVの発電機(エンジン~タイヤ軸直結無しのフリー状態)でも話の筋は同じで、エンジントルク分割比が0.278→1.000になるだけ。当たり前だが、どちらも「エンジンrpmが一定」の条件が付く。エンジン、発電機のrpmが変化中は、慣性モーメントの影響が乗ってくる。BSFCも燃料流量計を付ければ丸分かりで、面倒ならばメーター表示ネンピ計算用の噴射パルス幅積算値を使う。精度はソコソコだが、ヘボ計測器よりは良いはず。

こう考えると、「BSFCモニター」「BSFC診断」は、最適燃費線周辺に限ればそれなりにはできそうである。目玉BSFCの10%超の悪化の判断には使えるかもしれない。発電機のトルク精度ガーを言い出すとキリがないが、電流センサの電流F/Bで武装済で、トルクと効率マップ(エンジンのBSFCマップ相当)がデタラメになるとバッテリー電力(電流)収支がデタラメになるはずで、発電機トルクは信じてオシマイ。エンジンは自身のトルク推定精度が低いから、精度の高いモーターの言い値を信じる。「診断・バックアップ制御」はモーター+インバーターの方がエンジンよりも強固と思われる。

2モーターが電気的にパワーを発生、消費する。過不足分はバッテリーからの出し入れとなる。「出し入れ」は瞬時的には「制御」不可能で、瞬時的には系の状態に従って「成り行きで」動く。詳細は↑↑

「いわゆるSOC」が減ってくる/増えてくると充電/放電を始めるのはここで言う「瞬時的」挙動ではなく、発電分/力行分を増やして力行分/発電分を減らしているだけで、外側の制御による。モータートルク&効率がデタラメではトルク指令に対する充放電がデタラメになって破綻する。ここで言う「モーター効率」はインバーター込みの効率、DC側で見た効率で、三相AC側で見たモーター単独の効率ではない。

「BSFCモニター」を作ってみてもすぐ飽きるのは明らかだが、10年20年後には役立ちそうである。そこまで車両が存命していればの話だが。