寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

相続人って誰なのよ⑨(養子縁組すると)

2010年06月02日 | 相続制度

テーマは、養子縁組です。
養子縁組をすることで、相続関係がどの様に変わるのかをご説明します。

まず、養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組の2つがある、という点からスタートしましょう。

普通養子縁組とは、そのまま、ふつーの養子縁組です。

要件をかなり大雑把にご説明すれば、

成年に達した人が、自分より年下の人を養子とする養子縁組をする旨の届け出を市役所に出す、です。

一方、特別養子縁組とは、特別な養子縁組です。
その「特別さ」は、養子縁組をするための要件と養子縁組をしたことによる効果に表れます。

主な要件としては…

・養親は夫婦でなければならず、その両方と養子縁組する。
・養親になる夫婦は20歳以上であり、どちらか一方は25歳以上でなければならない。
・家庭裁判所の審判により養子縁組をしなければならない。
・原則として、養子となるものが6歳未満でなければならない。

…などなど。もちろん、これ以外にもあります。

しかし、普通養子縁組と特別養子縁組とで、相続との関係で最も重要なのは、その効果の違いです。

具体例でご説明します。

AB夫婦がいました。ABに子はいません。
XY夫婦もいました。XYには、子Zがいました。

さて。

ABがZと養子縁組をした後に、Aが亡くなりました。
この場合、Aの相続人は、BとZです(配偶者別格+第一順位相続)。
この結論は、普通養子縁組と特別養子縁組とで変わりません。

違いが出るのは…。

ABがZと養子縁組をした後に、Xが亡くなりました。
この場合、Xの相続人は誰でしょうか。

Yは、配偶者別格により、相続人です。
では、Zは?

○ABがZと普通養子縁組をした場合、ZはXの相続人であります。
○ABがZと特別養子縁組をした場合、ZはXの相続人ではありません

つまり、普通養子縁組と特別養子縁組との効果の違いは、実方(XY)との親子関係が残るか否かです。

普通養子縁組は、残ります。
特別養子縁組は、完全に切れます。したがって、相続関係も切れます。

視点を変えて、今度はZに亡くなって頂きます。
死亡時点で、Zは未婚で、子どもも居なかったとします。

すると、Zの相続人は…

○Zが普通養子縁組をしていた場合、Zの相続人は、ABXYです(第二順位相続)。
○Zが特別養子縁組をしていた場合、Zの相続人は、ABです(第二順位相続)。

親子関係が、残るのか切れるのかの違いです。

さて。
今回まで、「相続人は誰か」をテーマにしてご説明してきました。
次回からは、「相続人がすることは何か」をテーマに、ご説明します。
具体的には、相続放棄のやり方や、遺産分割協議の成立要件などについてです。

…「相続人も大変です①‐1(放っておいたら?)」につづく。