遺産分割には遡及効があります。
それは、遺産分割協議が成立したら、相続開始時にさかのぼって分割の効力が生じるという事です。
ただし、第三者の権利を害する事はできません。
今回ご説明するのは、平成17年9月8日の最高裁の判例です。
その内容は…
「相続開始から遺産分割までの間に、遺産である不動産から生じる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。」
~「コンサイス判例六法平成19年度版」(三省堂)より。
賃貸経営をしていたAが平成22年1月1日に亡くなりました。
賃貸経営の対象である不動産を「甲不動産」としましょう。
そして、相続人として、子であるBとCが居るとします。
BとCは、平成22年5月5日に遺産分割協議をし、甲不動産をBが単独で相続することで合意しました。
判例で問題になったのは、次の点です。
「甲不動産に関して、1月1日から5月5日までに発生している賃料債権は、誰が取得するの?」
普通に考えれば、この様になりませんか?
①賃料は、甲不動産を貸すことによって取得できる。
②甲不動産を他人に貸せるのは、甲不動産の所有者だ。
③遺産分割協議によって、甲不動産はB単独の所有物になった。
④Bは、遺産分割の遡及効によって、1月1日から甲不動産の所有者だった事になる。
よって。
①+②+③+④=1月1日から発生した賃料債権は、Bのものだ。
ところが。
判例は、「違う!」ッつってます。
その理由は、前回ご説明した事と関係します。
「ただし、第三者の権利を害せない」の部分です。
ややこしいです。
なので、次回、じっくりとご説明します。
…「相続人も大変です⑤‐2(遺産から出た賃料って?)」につづく。