寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑬(包括遺贈に注意)

2010年06月01日 | 自筆証書遺言

前回、遺贈の種類についてご説明しました。

特定の財産を遺贈する特定遺贈と、財産の全部又は割合的一部を遺贈する包括遺贈の2つです。

そして、包括遺贈を受ける人(包括受遺者)は、民法990条により、大雑把に言って「相続人として扱われる」と規定されています。

この事との関係で、包括遺贈には、注意点が2つあると指摘しました。
それは、「相続人にとって嫌」な問題と、「包括受遺者にとって嫌」な問題の2つです。

これは、包括受遺者が第三者(相続人以外)だった場合には、より深刻な問題になると考えられます。

以下、Aが、「俺の財産の半分をCにやる」という遺言書を作成して亡くなった場合を例に、2つの問題をご説明します。
Aの相続人を、XとYにしましょう。

・「相続人にとって嫌」な問題

X・Yは、990条によりAの相続人とされたCを、「俺の財産の半分(Cの取得分)」を決めるために、遺産分割協議に参加させなければならなくなります。

つまり、遺産分割協議に第三者を参加させなければならない、という事です。

これは、嫌なのではないでしょうか。
遺産分割協議では、何となくわだかまっていた親族間の問題が出てきがちです。
そこに第三者を入れなければならないとなると、あまり気持ちが良いものではないと思います。

・「包括受遺者にとって嫌」な問題

包括受遺者Cは、Aの相続人として扱われます。
それは、包括受遺者が、990条により「相続人と同一の権利義務を有する」とされているからです。

したがって、Aが遺した借金も、X・Yと共に、承継する事になります。
つまり、「俺の財産」には、プラスの財産(権利)もマイナスの財産(義務)も含まれるという事です。

特定遺贈では、その財産を貰って終りというのが基本なのです。
したがって、特定遺贈の対象は、プラスの財産のみです。

一方、包括遺贈では、そうはいきません。

いかに親しく付き合っているとは言え、他人が幾らの負債を背負っているのかは解らないのが普通ではないでしょうか。

包括受遺者にとっては、寝耳に水になる可能性があります。

…「自筆証書遺言の身だしなみ⑭(受遺者としては)」につづく。