寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑭(受遺者としては)

2010年06月03日 | 自筆証書遺言
前回、包括受遺者が、相続人と同一の権利義務を有するということの意味について、2つに分類してご説明しました。

その中で、包括受遺者は、遺贈者の負債を、遺贈者の相続人と共に承継する可能性があるというご説明をしました。

今回は、受遺者の立場から、特定遺贈・包括遺贈の放棄等はできないのか、という事のご説明をします。

…と言いますか。

特定遺贈・包括遺贈を問わず、「あげると言われたモノは必ず貰わなければならない」などといった強制は働きませんから、受遺者側で放棄をすることは出来ます。

しかし、特定遺贈と包括遺贈とで、放棄等をするための手続などが異なります。

したがって、以下、その違いについてのご説明です。

特定遺贈はいつでも放棄が可能です。
とくに方式は定まっていませんので、「オラいらね」の意思表示で効力が生じます。

一方、包括遺贈では、990条があるために、その放棄は相続人と同様の制約があり、また、相続人と同様の手続をとらなければなりません。
その制約や手続とは、民法915条と同938条です。

民法915条
「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続について、…放棄をしなければならない。…」

民法938条
「相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」


「相続人」を「包括受遺者」、「相続」を「包括遺贈」と読み替えます。

ちなみに、3か月以内に放棄の手続をとらなかったら、その包括遺贈を認めた事になります。
これを、「単純承認」と言います。

…「自筆証書遺言の身だしなみ⑮(相続人への遺贈では)」につづく。