最近読んだ本の中で一番興味深かったのが浅田次郎さんの『一路』です。
未読の方のためにあえて説明しますと、時代は14代将軍家茂治世のころ、
題名になっている一路、主人公の小野寺一路19歳が不慮の死を遂げた
父に代わって西美濃田名部郡から江戸までの参勤交代の御供頭(おとも
がしら)の役目を仰せつかる。江戸で学問と剣の修行に明け暮れていた
一路が唯一頼りにしたのが200年以上も前の家伝で「参勤道中は江戸
見参の行軍」と断じた古書。
それをたよりに中山道を江戸まで参勤道中を差配する物語で上下2巻を
息も尽かさず読ませてくれます。
私が知っている中山道は11宿すべて山の中といわれる贄川(にえがわ)
から馬籠までですが、あらためて中山道の険しさ、参勤交代の道中の厳しさ
を教えられた気がしました。
浅田ストリーのおもしろさ、痛快さ、奇抜さは読み手に任せるとして、私は
読みながらかつて中津川のそばの岩村の知人宅でごちそうになった「ほうば
寿司」のことを何度も思い出しました。ご主人みずから早朝にほうばの葉を取
りに山へ入ってくださったと聞き、感激しながら頬うばった寿司の旨かったこと。
そういえば、『一路』では殿様をはじめ参勤道中の一行がどんなものを食べた
のかはあまり記述がないのが残念でした。
さらにつけくわえると、『一路』の一路が主人公の名前に由来すると考えるのは
早計ではないか、とか、本当の主人公は蒔坂左京大夫(まいさかさきょうだゅう)
ではないかなどと考えさせられるのも楽しみでした。