女郎花は肺胞として接写される、
愛人としての
重い気分を外示して。
恋につまづくのはかんたん、愛におちるのはやっかい、それはなぜなのか。像が結ばれるにつれて銀塩のなかにいる有機体が、触角でとうとつに語ってくる、愛人としての重い気分を外示して。大好きになっても、だいじょうぶ。女郎花は肺胞として接写されるから。文脈は呼吸されるたびに枝分かれする。魂のメタモルフォーゼではとにかく杓文字でこまめに着信メールを掬ってやってください、肺気腫化する生活のあぶくだけでも。テーブルのうえにいつも『昆虫形態学』を放置しないで、胃もたれするから。ほら見てごらん、生きることは凶暴を背景におしやることだと言っている。尖った二つの下顎で、こなごなに排除論を嚙みくだきながら、アリたちが愛情をめいっぱいしょって、女郎花のめしべまでよじ登ってきた。心では、君を好きになれてよかったまで。