いよいよ、本格的な冬がやってきた。弘前読書人倶楽部入り口のガラスのサッシの向こう側でも、雪が狂ったように舞っている。ストーブを点けても、足元から寒さが駆け上がってくる。
そんな悪天候の中だったが、読書人倶楽部12月例会、第5回ブックトークが、無事終了した。

御着物姿が田邊奈津子さんです。
今日は、田邊奈津子さんに、本についてお話をしていただいた。田邊さんは、「早春の翼」という小説で、昨年の東奥文学賞大賞を受賞された。一昨年は準大賞だった。当代随一の書き手の一人である。
以前にもこのブログに書いたが、田邊さんは、かつて、弘前文学学校で学んでいた。僕の講義にも何回か出席してくれていた。「短編小説の書き方・読み方」というテーマで、志賀直哉の「剃刀」を題材にして講義をしたことがある。最初に、「この小説を読んだことがある人?」と生徒に尋ねたら、田邊さんが、「私、家が床屋なもんで」と言って、おずおずと手を挙げたことが印象に残っている。
今から思えば、畏れ多い話である。楽天の田中投手にピッチングの仕方を教えてようなものだ。お恥ずかしい。でも、この先彼女が、もっと大きな文学賞でもとって、華々しく中央文壇にデビューでもしたら、僕の性格からいって、あちらこちらで、「僕は昔彼女に文学を教えたことがある」と、臆面も無くい言いふらしてまわりそうだ。
今日は、田邉さんの読書体験をお話いただいた。柳田國男の「遠野物語」「遠野物語拾遺」、ジョージ・オーウェルズの「1984年」等々。
中でも、市井の民俗学者 田中忠三郎先生のお話には熱が入っていた。田中先生は、風土に根差した農民衣服の収集家として有名である。その土地ならではの生活を衣服を通して研究をされていた。
今日も、実際に、青森県南部地方に伝わる”まかない”と呼ばれる民俗衣装を、田邉さんは持ってこられ、当時の生活様式について、説明をされていた。
そういえば、文学学校時代の彼女の作品を何作か読んだことがある。どれも皆、土の匂いがした。
今年の7月からスタートしたブックトーク、順調に年内の分は終了した。年明けから、また再開する。講師には、同じく女流作家の古山和歌子さんを予定している。詳細は、このブログでも紹介するので、どうぞお楽しみに。