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弘前読書人倶楽部

弘前読書人倶楽部のオフィシャルBlogです。
「イベント情報」などを発信します☆

『田中角栄のふろしき』

2019年12月05日 | 日記


 田中角栄は〝日本列島改造論〟や〝我田引鉄〟などで内政のイメージが強い政治家だが実は外交こそが、その本領だったという話を以前に耳にして、膝を叩いた覚えがある。本書はそれを証明したかのような良書。
 1971年、52歳の通産大臣は就任するや否や、8年もの長きにわたって日米関係の最大の障害であった日米繊維交渉を僅か3ヶ月で決着させてしまう。
1972年には首相として日中国交正常化を実現する。前年にニクソンの電撃的訪中が世界を驚かせたとはいえ、当のアメリカはまだ国交を結んでいない時期にである。さらにアメリカ一極支配のエネルギー供給体制に風穴を開ける資源外交を展開する。
 フランスのメスメル首相とは石油の海外での共同開発から、濃縮ウランの加工をフランスに委託するところまで踏み込む。後から考えれば、これがアメリカの虎の尾を踏んだと言う。
 そして英国では北海油田の開発に食い込みを図る。しかし英国から日本まで運ぶにはコストがかかり過ぎる。そこで角栄は〝石油スワップ〟という奇策を捻り出す。まず日本が石油権益を譲り受け採掘する。この石油を国際石油資本のBPに渡してBPはこれをヨーロッパでさばく。その代わりにBPがアジアに権益の持つ鉱区で採掘された石油を日本に回してもらうという壮大なプランだ。日本は石油調達ルートの多角化に道が開け、英国は北海油田の開発に日本の技術と資金を呼び込める。しかしこの妙案も情報漏洩が原因で日の目を見なかった。
 モスクワでは「領土問題は解決済み」というソ連の公式見解を突き崩す。「未解決の問題に北方領土問題は含まれる」「含まれるんだな」「そうだな」と迫る角栄にブレジネフ書記長は遂にダー(イエス)と答える。
 午後6時~、午後7時~、午後8時~と自分はほとんど呑まず喰わずの宴会を3回こなし10時過ぎには就寝する。が、夜中の2時には起床して役所が用意した山のような資料を読み込んで頭に叩き込むことを毎日の日課としたという。
 数字には抜群に強く、人に対する気配りは尋常でなく、人間的な迫力は物凄かったという。相手がアメリカ人であろうがロシア人であろうが、こういう人間の交渉力が通じないはずが無い。むしろ国内の縁故序列が通用しない、トップの才覚力量に大きく左右される外交の場でこそ角栄はその力を発揮しえたのではないか。この一代の風雲児の毀誉褒貶は尽きることがないが、ロッキード事件でアメリカに後ろから撃たれたという説には、ある程度の信憑性を感じざるを得ない。
 本書は首相秘書官の小長啓一の証言を中心に日経の記者が綴ったものだが、一気に読める。ただエピローグとその直前のエピソードは、本文がリアリスティックで面白いだけに、少々残念だ。

〈前野雅弥 著 日本経済新聞出版社 2019年〉
田中久元


弘前読書人倶楽部12月イベントのご案内

2019年12月05日 | 日記

12月のブックトークは、恒例の「私の今年の一冊」を行います。皆様に、今年一番感銘を受けた本などをご持参いただき、ご紹介いただくという企画です。会員同士、たくさんの読書体験を共有できればと存じます。
 師走のお忙しいさなかとは存じますが、是非ともご参加下さいますようお願い申し上げます。

             
             
日時 12月22日(日)午後4時から

場所 弘前読書人倶楽部 036-8203弘前市本町69

会費 2000円(会員以外は3000円)

*出席の方は12月19日までに、お電話かFAXでお知らせください。
(0172-33-4033)

以上


11月ブックトークを終えて

2019年11月19日 | 日記
 「王道を行く」

 王道今月の講師は、聖愛高校のO先生。2013年、全員津軽地域出身という純血チームを率いて甲子園に出場し、2勝を挙げた時の部長先生だ。 それ以前には、助詞テニス部顧問として、全国大会にも出たことがあるという。
 実際の指揮をとる、監督やコーチの功績は大きい。選手一人一人を指導し、作戦を立て、采配を振るう。
 それとは、部長は、更に、その監督を含めたチーム全体を統括し、最大限の力を発揮出来るよう、環境造りに努める。競技経験の有無とは別次元の手腕だ。あまり表に出ることはないが、組織経営という点では、勝るとも劣らない評価がなされても、然るべきだろうとも思う。
 その先生の、読書遍歴を語っていただいた。若い頃から現在に至るまでの、感銘を受けた作家や作品を、時系列を追いながら紹介していただいた。
 特に、3人の作家について、詳しく言及された。加賀乙彦と、遠藤周作と、吉田修一である。3人の作品に共通しているテーマは、「人と罪と許し」だと、最後はまとめておられた。
 正直言って、僕は、そこまで深く考えて読んだことはない。加賀乙彦にせよ遠藤周作にせよ、書店経営に携わる身として、ほんの僅か囓った程度である。吉田修一に至っては、全く読んだことはない。
 それでも、今日のブックトークは感動した。ご自身の読書体験を、客観的に振り返り、底に流れる共通した価値観を見いだそうとする、その姿勢に打たれた。久々に、ブックトークの王道に出会ったような思いもした。
 このブックトークも、もう80回を超えた。実のところ、一時期は、社会的地位や肩書きにこだわって講師を選んでいたような気もしないでもない。その方が、確かに、参加者は増える。
 でも、先月・今月と、改めて目を見開かされられた思いだ。参加人数の多寡ばかりが価値ではない。多種多様な人達の、本との出会い・本への思いを聞いて、一緒に読書の素晴らしさを共有することこそが、このブックトークの最大の目的なのだ。
 来月は、年末恒例の、「私の今年の一冊」と題して、参加者全員に、今年読んで最も印象に残った本を紹介していただく予定だ。詳細は、改めて、このブログで告知する。読者の皆様も、是非、自分の一冊を持って、ご参加いただければ、幸甚の限りである。(6895)

弘前読書人倶楽部11月イベントのご案内

2019年11月05日 | 日記
 
 11月のブックトークを、下記の通り開催します。講師は、鎌田紳爾さんの紹介で、聖愛高校教諭の太田敦さんです。聖愛高校野球部部長として、創部してわずか12年のチームを、甲子園出場・勝利に導かれた方です。
 なにかとお忙しいこととは存じますが、是非、ご出席賜りますようお願い申し上げます。

                 
 日時 11月17日 午後4時から

 場所 弘前読書人倶楽部 036-8203弘前市本町69

 会費 2000円(会員以外は3000円)

 *出欠のお返事を11月14日までに、お電話かFAXでお知らせください。

                   (0172-33-4033)


                           弘前読書人倶楽部
                              代表 今泉昌一

10月ブックトークより

2019年10月29日 | 日記
 今月の講師は、造形家のS先生であった。
 今年度の全国公募展「流形展」で特賞を受賞された方だ。今日は、受賞作ではないが、以前にお創りになった作品を持って来てくれた。
 講話は、作品とは直接関係はない。早坂暁著の「華日記ー昭和生け花戦国史」の話をして下さった。考えてみれば、先生は華道家でもあった。

華日記―昭和生け花戦国史
著者 : 早坂暁
新潮社
発売日 : 1989-10


 S先生とは、弘前芸術鑑賞会でも、一緒に活動をしている。それ以前の、弘前市民劇場時代からのお付き合いだ。寡黙で、控えめな人だった。人前で話すようなタイプには見受けられなかった。
 それが、今年の1月、僕が推薦者になって、R法人会に入会した。R法人会とは、毎週火曜日の早朝、モーニングセミナーを行っている団体である。セミナーでは、会員を中心に各界各層の方々が、約40分間の講話を行う。自らの成功・あるいは失敗(こちらの方が多いかな?)体験から、学んだこと、気づいたことを、赤裸々に話してくれる。それを聞いて、参加者も、また自らを振り返るヒントを学ぶ、といったものだ。
 それ以来、S先生は、間違いなく変わった。何事にも積極的になった。人前でも、堂々と自分自身の意見を声に出して言うようになった。今日も、そのような先生だからこそ、講師を依頼した次第だ。 
 人間は変わる。かくいう僕も変わった。例えば、冒頭に挙げたルーティーンである。例えば、今日の」ブックトークもだ。もう7年間も、ほぼ毎月一度続けている。
 あるいは、先日もご紹介した議会報告会。これも、定例議会が終わる度に、初当選以来け、継続開催している。
 極めつけは、このブログ。ご覧いただいておわかりのように、毎日、高信をしている。酔っぱらって、不覚にも、日付をまたぐことはあっても、怠けて更新しなかったことは、やはり7年間ほどはない(はずだ)。
 実は、僕は、自他共に認める、三日坊主だった。「根気が無い」「だらしが無い」「無頓着だ」の三無主義を見事に具現化したような人間だった。朝令暮改は朝飯前、朝礼昼改・朝礼朝改だって日常茶飯事と言っても過言ではない。
 それが、とにもかくにも、いくつかのルーティーンを続けている。このことは、昔の僕を知る人にとっては、驚きに違いない。
 いや、性格そのものは変わっていない。僕は、今だってルーズな人間だ。ただ、意識することで、行動は変えることができる。S先生を見て、そして自分自身を振り返り、64歳も半年を過ぎた今頃になって、ようやく気が付いた。