おじさん日記 ~Okinawa Self-Diving Log~

セルフダイビングのブログ。ログや写真や器材が中心ですが、その他ダイビングに関係ないことも好き勝手書いています。

EMは疑似科学 でも効果はある だからこそ問題の根は深い

2017-01-27 22:39:16 | その他
主にダイビング仲間が見てくれているブログなので誰も興味はないと思いますが、EMについて。調べて多くのことが分かったのでここでまとめます。主な目的は、自分の知識と思考を整理することです。

昨日ランチビュッフェでコスタビスタに食べにいったことをきっかけに知ってしまったEMという疑似科学。どうやら沖縄県内ではかなり広がっている様子。
http://blog.goo.ne.jp/diving-snowman/e/1eb085197a51b81d12e563373852e860
ランチビュッフェの記事のつもりが、EMについての方が長くなってしまった。

医療の専門家として、科学者の1人として、疑似科学に容赦はしません。でも他の疑似科学と違って、EMはただの微生物資材としての効果はあるんですよね。そのせいでいろいろと対立や混乱が生まれている様子。

1.EMは疑似科学
2.EMは微生物資材としては有用
3.だからこそ、現場で対立や混乱が起こりうる

の3点についてまとめていきます。

1.EMは疑似科学

EMを提唱している比嘉照夫という琉球大学農学部の名誉教授が発信している情報はたくさんあって、先日の記事を書いた後にいろいろと目を通してみたら、なかなか愉快なことを言っておられます。

「全世界でEMを空気や水の如く使えば、地球の整流力が高まり、系外にエントロピーが放出されますので、すべてが浄化され、現今の問題に対し、本質的な解決が可能」
http://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru97.html

「被爆者がEM・Xゴールドを1日30cc~50ccを目安に飲用を続けると、30日内外で、外部被爆はもとより、内部被爆(放射物質が体内に入った状況)も正常に戻る。」
http://dndi.jp/19-higa/higa_39.php

「野生動物の殆どが電磁波や地磁気などを感知し、行動することが明らかになりつつあり、EMの波動を強化すれば、対策が可能」
http://dndi.jp/19-higa/higa_76.php

「EMの本質的な効果は改めて述べるまでもなく蘇生の法則、すなわちシントロピーを支える抗酸化作用と非イオン作用と重力波と想定される三次元の波動作用によるものです。」
http://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru21.html

なかなかの暴走老人っぷりですな。当然、疑似科学エセ科学とかニセ医学とか、人によっていろいろな言い方をします。ここまでぶっとんでくれると素人でも騙されることなく真偽が判断できるからむしろありがたいかもしれないですね。

2.EMは微生物資材としては有用

しかしこの老人がメチャクチャなことを言っているからといって、このEMとやらの商品が効果がないかというと、そうではない。そこが多くの疑似科学と違うところ。

EM製品は微生物の発酵液です。つまり数ある普通の微生物資材の1つだということ。普通の微生物資材なので、それなりにうまく使えば効果は期待できます。単なる宣伝文句に躍らされずに試行錯誤を繰り返してうまくEMを使いこなしている農家の方も実際にいます。

当然EM以外の微生物資材もたくさんあります。微生物資材を扱っている肥料屋さんの例↓
https://kawai-hiryo.com/shop/products/list.php?category_id=18

EMの問題は、この単なる微生物資材を、何にでも効く万能なものとして広報していること。そしてやっかいなのは、場合によってはEMにも効果はある(もちろんあくまでも微生物資材として)というところ。比嘉照夫氏の「何にでも効く」「万能である」「波動」などという発言だけを聞いて信じる人はさすがにいないと思います。でも、EMを微生物資材として使った方が効果を実感した上で比嘉照夫氏の主張を聞くと、他の場合もすべてEMが効くかのように錯覚してしまって、気づいたら盲信しているってことがあるわけです。

3.だからこそ、現場で対立や混乱が起こりうる

爺さんがあまりにも激しいことを言っているので、EMなんてインチキだと思う人は多いでしょう。そんな人にとって、EMと名の付く商品はあまり買いたくないでしょうし、まあそう思うなら買わなければ良い。

僕のようにEMをインチキ科学だと思う人の中には、家族や友人がEMの商品を使っていたら正義感にかられて止めさせようとする人もいるかもしれません。でも、これは考えもの。何故ならEM関連製品を微生物資材として正しく使う分にはそれ相応の効果はあってもいいから。使っている本人が効果がないと思えばやめればいいし、効果があったなら続ければよい。使っている人が効果あるって言ってるのにEMはインチキだからやめろって言うのはやりすぎ。これは、「EM→インチキ→全く効果がない」という狭い考えによるもので、この考えは正確ではありません。

まあでも、そのくらいだったらまだマシ。EMを使うのをやめるか、「確かにインチキっぽいけれど効果あるから使い続けようかな」となるかどちらかになるだけ。EMはただの商品の1つですから。EMを使うか使わないかだけを判断すれば良いだけです。

EMの効果を感じた上で比嘉照夫氏の言っていることまで信じ切っている人、いわゆる信者になってしまっている人は大変です。教祖は琉球大学の名誉教授ですからその肩書きだけで正しいと信じてしまう人もいます。何か反論したところで聞く耳を持ちません。それどころかこういう人たちは違う意見を言われると、自らの人格を否定されたかのように怒り出したりしますからね。

異なる考えがあることに気付き、そういう考えもあるのかと受け容れることができる人であればこの手のトラブルに巻き込まれることはありません。しかしそれができない人が多い。特に多いのが宗教絡み。宗教対立が原因となって戦争まで発展しています。お互いが「自分の意見が正しい」と信じ込んでいるからですね。実際に、それぞれの立場からすると、どちらも正しい。なのに、自分の意見と違っているからといって、「相手は間違っている」と思ってしまう。

比嘉照夫氏はEMのメカニズムを二元論で語ります。「役に立つものor立たないもの」「酸化or抗酸化」「崩壊or蘇生」「善or悪」といった感じ。この二元論というものは知識のない人にとっても分かりやすく聞こえる。本来ならばより深く考えなければならない事についても考える余地がなくなるので。「全て正しい」か「全て間違っている」の二元論になり、その考えはどんどん単純化されていきます。そして気づいたら盲信につながっていく。

比嘉照夫氏は、EMについて反論されると、それを「EMは全く効果がない」と言われていると捉える傾向があるようです。そしてそういう人を「敵」とみなし、「敵」を屈服させるためにただひたすらEMの成功事例を宣伝し続けているかのような印象です。比嘉照夫氏ははもう完全に「敵」「味方」の単純な二元論の中に生きてしまっています。


そして暴走老人は誰にも止められない。生きているうちはEM万能説を主張し続けるでしょう。こればかりはどうしようもない。御年75歳。今の時代、75歳はまだまだ若い。残念ながらしばらくは爺さんが琉球大学名誉教授の肩書き付きで詭弁を撒き散らす時代が続きます。

比嘉照夫氏が立ち上げたEM研究機構が中心となり、EMについては多くの関係団体があります。
http://www.emro.co.jp/em/

これは予想ですが、EM研究機構の内部にいる人も、多くは爺様の詭弁に悩まされているのだと思います。さすがにEM万能説を信じ切っている人は少ないと信じたい。いろいろと否定的な問い合わせが来るだろうし、「怪しいもの」と思われて買ってもらえないということも多々あるでしょうし、大変でしょうね。

実際、EM研究機構はホームページで広報する際に、比嘉照夫氏の言う「波動」「結界」「整流」といった言葉は一切使わずに微生物資材として紹介しています。

さて、EMはこれからどうなるか。爺さんが生きている限りは今の状況が続いていくでしょう。そして爺さんが死んだら宗教的な主張はなくなっていくでしょう。当然EM信者もある程度は残るでしょうが、大学教授の肩書きを持った爺さんならともかく、信者が大声を出すくらいでは説得力がない。自然と淘汰されていくものと思われます。

さて、私は比嘉照夫氏を老害・爺・ボケ老人扱いしておりますが、比嘉照夫氏にも功績はありますのでフォローはしておきます。

・商品開発力
乳酸菌や酵母などが共生する微生物資材を開発したのは紛れもなく比嘉照夫氏です。これは素晴らしい功績。農学部の大学教授に選ばれる上で、この研究の影響は大きかったと思います。また、その微生物群にEMという名を付けて、さらなる可能性を追求するのも悪くはないと思います。でも、追求して不都合な結果が出たらそこは潔く認めないと。EMへの愛情が強すぎたのでしょうね、科学的根拠もなくEMの効果とされるものが増えていき、最終的に万能薬かのような扱いをしてしまうようになりました。
・宣伝力
良いのか悪いのか、EMがこれほど広まったのは比嘉照夫氏の広報のおかげです。大学教授の肩書きであの自信満々の講演、実例の紹介、県内紙の好意的な報道。そして、仲間を呼び込む全国的組織の広報団体まであります。そのおかげでEM研究機構はどんどん大きくなって、なんと2006年にはホテルコスタビスタを開業するに至ります。http://www.emro.co.jp/hotel/index.html
微生物資材の製造販売会社がリゾートホテルを開業するなんて普通は考えられない。良いのか悪いのか、比嘉照夫氏の広報でEM関連商品の売れ行きがよかったのでしょう。

EMにはこういった様々な問題がありますが、心配なのは現場でEMを使いつつ試行錯誤して頑張って良い農産物などの商品を作ろうとしている方々に、いつか大きな迷惑がかかるリスクがあるということ。今でも、EMと書いてあるからこそ胡散臭いと思われることはあるかもしれません。ただ、少なくとも沖縄県内ではEMは好意的に受け入れられている印象があるので、むしろ宣伝効果が勝ってEMを使っていなかったときよりも売れているのかもしれません。

でも、メディアがもし「EMは疑似科学だ」として問題を扱うようなことがあって話題になれば、EM関連商品は一瞬で消費者からそっぽを向かれてしまい、突然全く売れなくなるリスクがあります。大きな風評被害になる前に、うまいこと爺さんが死んで、微生物資材のみを研究・販売する会社になってくれればいいなと思っております。

あと、心配しているのは藁をもつかむ思いでEMを頼って来る方がカモになる可能性。例えばがんは発見した時の状態によって、切除できる場合もあればできない場合もあります。完全に治すことはできなくても、残された時間を長くするために抗がん剤を使うこともあるし、その抗がん剤ですら使わないほうが良い場合もあります。

そんな時に出てくるのが、「ガンに効く」「ガンが消える」という何かを売ろうとする悪いヤツ。当然効果はありません。そんなものあったら病院で使っています。患者さんもうさんくさいとは思いつつも、「もしかしたら」と藁をもつかむ思いで高額な商品を買い、中にはその商品だけを信じ切って病院にこなくなってしまう方もいらっしゃいます。

比嘉照夫氏は、この記事の最初の方に書いたように「被爆者がEM・Xゴールドを1日30cc~50ccを目安に飲用を続けると、30日内外で、外部被爆はもとより、内部被爆(放射物質が体内に入った状況)も正常に戻る。」http://dndi.jp/19-higa/higa_39.phpという主張をしていらっしゃいます。当然、これは微生物資材のEMでは不可能なことで、明らかにインチキです。それでも、福島などで放射線に対する不安を感じている人の中に、EMを唯一の救世主のように思い込んでしまう人が出てくるかもしれない。

このように、弱っている人の藁にもすがる思いにつけ込んで、金を取る手口があります。医療の専門家としても、単に一人の人間としても、この類の商売は許せない。

話がそれましたがまとめます。

1.EMは疑似科学
2.EMは微生物資材としては有用
3.二元論に陥らないことが大切


以上。

今回、意外に近所で盛り上がっている疑似科学を、体験する形で知ることができて楽しかったです。


2 コメント

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ダイビング仲間にも (かとー)
2017-01-28 21:05:58
興味深く見てる読者がここにいるよ~ ̄∇ ̄
暴走老人って表現さ!笑
微生物の効果により農作物が割かし美味しく育つくらいで留まればよかったのにね( ´_ゝ`)
爺様、IラブEMってやっちゃうくらいだからかなり愛着あるはずね~
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オジイ (snowman)
2017-01-29 12:05:43
かとちゃん、見てくれていたのねー!
今回のような自分の思考の整理のための記事は、堅苦しくて難しくて面白くもない内容なので、誰も興味ないだろうなと思って書いているのだけれど、それでもやっぱり読んでくれる人がいるって分かると嬉しいね。

自分が開発した微生物資材が役にたって、そんな微生物たち(EM)を愛してさらなる研究を続けるオジイ。それだけなら皆から愛されるオジイだと思うのだけれどね。残念ながら詭弁だらけの迷惑爺さんになってしまったようです。。
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