スキューバ用タンクへの酸素の充填は法的にとっても面倒なのです。今回の記事はその面倒な法律について。
まず、口から吸う目的での酸素は「医療用」酸素という扱いとなるので、医療用酸素の購入が必要。
医療用酸素は正式名称「日本薬局方 酸素」であり、購入には医師の処方箋が必要になります。個人で医療用酸素を購入する手段はそれだけ。在宅酸素療法が必要な人に対して酸素が処方されます。酸素の処方を必要とするような人はそもそもダイビングすることはできないので、医者だからといってダイバーに酸素を処方することはできません(自由診療扱いであれば法的には可能)。というわけで、個人の名義で医療用酸素を購入するのは難しい。
では、法人名義ではどうか。
法人に対しては医薬品卸売会社が酸素を販売しています。
薬事法の規定で医薬品卸売会社が医薬品を販売できるのは
1.医薬品の製造販売業者、製造業者、販売業者
2.薬局、病院、診療所、飼育動物診療施設
3.その他薬事法施行規則で定める者
に限られています。
つまり、原則として卸売会社は医薬品を医療機関にしか販売できない。例外は3番目の「その他」になり、どの場合に「その他」に該当するかは医薬品を扱う業種ごとに決められています。
医薬品販売の相手先について、平成23年3月31日の厚生労働省医薬食品局総務課事務連絡の事例26で「スキューバダイビング業者、プール営業を行う事業者等に対し、人命救護に使用するための医療用酸素を販売する場合」とあります。
ということで、ダイビングショップであれば酸素を充填してもらえる。法人でなく個人事業主でも大丈夫なので、どこのダイビングショップでもOK。
なので、ダイバーが医療用酸素を充填してもらおうと思ったら、ダイビングショップの名義が必要になります。卸売業者の販売先なので、個人への販売ではなく業者への販売という形をとらないといけない。処方薬なのに処方箋がないので、個人で購入というわけにはいかないのです。
以上が医療用酸素に関する法律について。
もう1つ、医療用とは別に、工業用酸素というものがあります。これなら薬事法の縛りを受けない。工業用だからといって純度の低い酸素を使っているわけではなく、実際には同じように作られた酸素が違うラインで充填されているだけなので、吸っても大丈夫。
工業用というといかにも口にしてはいけないもののように感じるかもしれませんが、原料は空気。空気を超低音にして液体にし、沸点の違いを利用して取り出しているだけ。何かの薬品を使って作り出すようなものではないので、原料から考えても安心です。
医療用と工業用で純度などの規定をされている大元の規格が異なります。以下は2016年11月時点のもの。
医療用:薬事法 日本薬局方 (第十七改正日本薬局方 p804)
工業用:日本工業規格 (JIS K1101:2006)
とはいえ、たまたまではありますが両方とも純度の規定は99.5%以上となっていて一緒。たまに「医療用の方が純度が高い」と言われているのを聞きますがそんなことはありません。ただ医療用の場合は、酸やアルカリ、二酸化炭素、酸化性物質、塩化物なども検査し、これらが検出されないことも確認しているようです。
ちなみに、大規模災害が起きる度に「医療用酸素が不足している場合は工業用酸素を使用してOK」というお触れが出されています。
DAN JAPANの人に聞いた話によると医療用と工業用の大きな違いとして、医療用の場合、使い終わったタンクに入っている酸素を真空引きで完全に取り除いてから充填する決まりになっていて、工業用酸素の場合はそういった決まりがないので継ぎ足しで充填されるようです。日本薬局方にもJISにもそういった記載は見つからなかったので確証はないけれど。酸素以外のガスを充填することなんてないので実際には工業用酸素でも純度が下がることはなく問題ありませんが、工業用酸素は溶接などに使うことを想定されていて、明らかに人間が吸う用途と分かってしまうスキューバタンクに工業用酸素を充填してもらうことはできないと思います。
なので、もし工業用酸素をスキューバ用として使おうと思ったら、工業用酸素の親瓶を手に入れてそこから自分でスキューバ用タンクに移充填するくらいしか方法が見つかりません。ちなみに酸素の移充填は高圧ガス保安法に触れます。設備と資格が必要。無資格の移充填は空気ならグレーゾーンですが、酸素はアウト。
以上、酸素を充填してもらえる方法をまとめると、医療機関で働いているとか職場に工業用酸素の親瓶があるとかいう特殊な環境にある人でなければ、「スキューバダイビング業者の名義で医療用酸素を充填してもらう」というのが一番現実的かと思います。
酸素に関わる法律はとても面倒ですね。
ちなみに自分の場合は、上に書いた特殊な環境で仕事をしているので、スキューバダイビング業者の名義は使っていません。
まず、口から吸う目的での酸素は「医療用」酸素という扱いとなるので、医療用酸素の購入が必要。
医療用酸素は正式名称「日本薬局方 酸素」であり、購入には医師の処方箋が必要になります。個人で医療用酸素を購入する手段はそれだけ。在宅酸素療法が必要な人に対して酸素が処方されます。酸素の処方を必要とするような人はそもそもダイビングすることはできないので、医者だからといってダイバーに酸素を処方することはできません(自由診療扱いであれば法的には可能)。というわけで、個人の名義で医療用酸素を購入するのは難しい。
では、法人名義ではどうか。
法人に対しては医薬品卸売会社が酸素を販売しています。
薬事法の規定で医薬品卸売会社が医薬品を販売できるのは
1.医薬品の製造販売業者、製造業者、販売業者
2.薬局、病院、診療所、飼育動物診療施設
3.その他薬事法施行規則で定める者
に限られています。
つまり、原則として卸売会社は医薬品を医療機関にしか販売できない。例外は3番目の「その他」になり、どの場合に「その他」に該当するかは医薬品を扱う業種ごとに決められています。
医薬品販売の相手先について、平成23年3月31日の厚生労働省医薬食品局総務課事務連絡の事例26で「スキューバダイビング業者、プール営業を行う事業者等に対し、人命救護に使用するための医療用酸素を販売する場合」とあります。
ということで、ダイビングショップであれば酸素を充填してもらえる。法人でなく個人事業主でも大丈夫なので、どこのダイビングショップでもOK。
なので、ダイバーが医療用酸素を充填してもらおうと思ったら、ダイビングショップの名義が必要になります。卸売業者の販売先なので、個人への販売ではなく業者への販売という形をとらないといけない。処方薬なのに処方箋がないので、個人で購入というわけにはいかないのです。
以上が医療用酸素に関する法律について。
もう1つ、医療用とは別に、工業用酸素というものがあります。これなら薬事法の縛りを受けない。工業用だからといって純度の低い酸素を使っているわけではなく、実際には同じように作られた酸素が違うラインで充填されているだけなので、吸っても大丈夫。
工業用というといかにも口にしてはいけないもののように感じるかもしれませんが、原料は空気。空気を超低音にして液体にし、沸点の違いを利用して取り出しているだけ。何かの薬品を使って作り出すようなものではないので、原料から考えても安心です。
医療用と工業用で純度などの規定をされている大元の規格が異なります。以下は2016年11月時点のもの。
医療用:薬事法 日本薬局方 (第十七改正日本薬局方 p804)
工業用:日本工業規格 (JIS K1101:2006)
とはいえ、たまたまではありますが両方とも純度の規定は99.5%以上となっていて一緒。たまに「医療用の方が純度が高い」と言われているのを聞きますがそんなことはありません。ただ医療用の場合は、酸やアルカリ、二酸化炭素、酸化性物質、塩化物なども検査し、これらが検出されないことも確認しているようです。
ちなみに、大規模災害が起きる度に「医療用酸素が不足している場合は工業用酸素を使用してOK」というお触れが出されています。
DAN JAPANの人に聞いた話によると医療用と工業用の大きな違いとして、医療用の場合、使い終わったタンクに入っている酸素を真空引きで完全に取り除いてから充填する決まりになっていて、工業用酸素の場合はそういった決まりがないので継ぎ足しで充填されるようです。日本薬局方にもJISにもそういった記載は見つからなかったので確証はないけれど。酸素以外のガスを充填することなんてないので実際には工業用酸素でも純度が下がることはなく問題ありませんが、工業用酸素は溶接などに使うことを想定されていて、明らかに人間が吸う用途と分かってしまうスキューバタンクに工業用酸素を充填してもらうことはできないと思います。
なので、もし工業用酸素をスキューバ用として使おうと思ったら、工業用酸素の親瓶を手に入れてそこから自分でスキューバ用タンクに移充填するくらいしか方法が見つかりません。ちなみに酸素の移充填は高圧ガス保安法に触れます。設備と資格が必要。無資格の移充填は空気ならグレーゾーンですが、酸素はアウト。
以上、酸素を充填してもらえる方法をまとめると、医療機関で働いているとか職場に工業用酸素の親瓶があるとかいう特殊な環境にある人でなければ、「スキューバダイビング業者の名義で医療用酸素を充填してもらう」というのが一番現実的かと思います。
酸素に関わる法律はとても面倒ですね。
ちなみに自分の場合は、上に書いた特殊な環境で仕事をしているので、スキューバダイビング業者の名義は使っていません。
個人でも充填を受け付けてくれますよ。
特殊なダイビングで酸素が必要です。
ご教授ください。