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おいしいコーヒーが飲みたい

古老夜這いを語る

2017年09月23日 | 日記
 わしらの若いころにはよばいをしたよ。山向こうの村に評判のべっぴんがおっての。夜ごとかよったものぢゃ。そりゃ、向こうの若いおとこたちはおもしろくないから、真っ暗な峠で待ち伏せしとる。それをたたきのめしていくのよ。ははは。

 むすめの家のそばまでいくと、こう身を低くしてな、よばうのよ。ほー、ほー、ってな。するとむすめが、寝ている親の目をぬすんで出てくる。ふたりで林の奥へな。むすめをだいて、こう、こういうぐあいぢゃ。むすめはもう、ゆめみごこちになってしまう。そこへ、おたふくさまがどこからともなくあらわれるのぢゃな。そのすがたは、とてもことばでは言えん。この世のものではないよ。おたふくさまは、若いむすめが好きでの。目をとじてよこたわっているむすめを、あれはやはり舌なんぢゃろ、なめまわすのよ。やがておたふくさまは、またどこへともなく消えてゆく。わしはそのおさがりをいただくというわけぢゃ。そうすると、体じゅうに豊年満作の気がみなぎるのよ。そんじょそこらの男にできることぢゃないよ。

 おたふくさまはもうおらん。どこにも気配もみえん。殿下がいらしたころからよ。この県にもご来駕を、というので代議士がさかんに運動して、鉄道が引かれる、市庁舎が新しくなる、公会堂ができる。ついに殿下がおいでになる。学童が整列してお出迎えぢゃ。おたふくさまがいなくなったのはちょうどそのころぢゃったな。