祈りを、うたにこめて

祈りうた・いのちうた(伴走  がんの告知③)

がんの告知③


 〈がんなど、重い病の告知について、「死」を見据えて書かれたものは多くないようです。わたしもうろたえました。妻は、毎年の特定健診で知らされました。思いがけなかっただけに、驚きは大きいものでした。妻のほうがもっと大きく衝撃的であったにちがいありません。すぐに生と死を見据えることはできませんでした。
  これからが「生き方」「夫婦のあり方」「信仰への姿勢」など、人生の柱となることへ向き合う、そのときです。―二〇二二年十月〉



―もしもがんにかかったら告知してほしいと思う?
何年か前 そんなことを言い合った
はんぶんは冗談
はんぶんは本気の問答だった

がんは 一生の間に二人に一人がかかる病というが
死が臭う病だと まだまだ嫌われ者
―がんだって病気のひとつ 
そんな時代は遠くないことを祈る

―ぼくは告げてほしいな 旅支度をしたいから
―わたしも同じ ちょっと怖いけれど
はんぶんは本気
はんぶんは冗談の問答だった

医師の告知が 
今日 
妻へ そしてぼくへ来た
問答無用の失礼さで




告知を受けた日
義理の娘が熱を出した 子どもはまだ赤ん坊
―たいへん、可哀想に
 うずくまってなんかいられない!

妻は立ちあがって台所へ行き
りんご一個をすりおろし もう一個を煮た
シチューをつくり
煮ころがしの里芋、大根とコンニャクを煮返した

―もっと早く気づけばよかった
そう悔いながら
二階への階段を
のぼったりおりたりした



◆言葉に愛を宿したい。
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