砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

『変わらぬ世界の物語/悲しい恋の物語』

2004年11月15日 | ログ

自動的に走る自転車に乗った蜥蜴と鴉が一匹一羽。

傷一つなく舗装された路面を伝い、果てない地平を走って目指す。

「遠いですね」、と鴉。

「果てがないからな」と蜥蜴。

その言葉に嘘はなく

この道に終わりの果てはないだろう。

「・・・何で走ってるんでしょうね。私たち」

「気にするな。霊長類が分からぬ事を爬虫類と鳥類が気にしても始まらない」

ガタガタと自転車が揺れている。

綻びのない平坦な道。揺れは変化のない道程を嫌がる無機物の抵抗か。

「・・・つまんないですね」

鴉が嘆く。今見ている風景は10分後も同じだろうし多分、今日も明日も明後日も同じだろう。

「気にするな。嘆いても悔やんでも喚いても叫んでもこの道は平坦なまま、果てなく続く道だろう」

蜥蜴は背中に背負ったラジオの電波を解析し、沈みたがり屋の相棒に助言する。

「空鴉よ。今受信した霊長の歌によると旅に終わりはないが、終わらせることは出来るらしい」


”旅人に尋ねてみた どこまで行くのかと いつになれば終えるのかと

 旅人は答えた 終わりなどはないさ 終わらせることはできるけど


爬虫類は外見に似合わない高いトーンでその歌を口すざんだ。

「はぁ・・・なるほど。けど旅人さんは旅を終えた後、一体どうするんでしょうね?」

「さてね。きっと旅した記憶を思い出しながら南の島でバカンスでもして一生を終えたんだろう」

「もしそうなら私たちには全く参考になりませんね。ここにはパイナップルもココナッツもありませんから」

鴉はカァ、と嘆息し愛読書であるロミオとジュリエットを取り出した。

「なぁ空鴉よ余計なお世話だが今時シェイクスピアはどうかと思うぞ」

「いいじゃないですか砂蜥蜴。真実の恋って憧れません?」

「いーや全く」

”書を読んでも、話や歴史で聞いたところでも、真実の恋というものは

 決して都合良くいったことはないらしい

シェイクスピアの言葉たぜ、と皮肉屋の相棒が笑う。

「恋物語ねぇ・・・。今日も一つ語ってみようか空鴉?」

鴉は頷き、愛する古典文学を水色のポーチへとしまう。

空には変わらぬ七つの月。二人は互いの呼吸を合わせ、誰にも届かぬ恋を語る。




゛『・・・・がいします』

  わずかに灯る、しかし真実を確信させるには十分すぎる声

 『・・・願いします』
 
  涙は頬を伝うことなく蒸発する。既に肉体は溶解寸前まで熱を発生させていた

 『・・・・殺して・・・・・下さい』

  それは、本当に純粋な、恋心だったのかもしれない

  息は乱れ、意思とは関係なく再生する手足の痛みに耐えて、彼女は自分の愛する人に生涯で唯一の願いを口にした

 『・・・・あたしを・・・・殺して下さい・・・・・・・』

  剣の先が僅かに上がる。

  言葉はない。涙もない。

  そんなのは、悲しすぎるから

  幻想かもしれない。単なる勘違いなのかもしれない

  それでも、確信し、理解していた

  その身が堕ち、魔女の呪いに狂おうとも

  この子が自分を好きでいてくれたことを

  今さらに気づき、そして二度と忘れないようにと心の一番深い場所に刻んだ

  彼女は俺を愛してくれた

  こんなにも追い詰められて、苦しんで

  それでも自分を愛してくれた

  だから・・・

  瞳は逸らさず、正眼で見据えよう

  吐く吐息は謝罪でなく感謝を乗せて

  踏み出す一歩はそれまで歩いた道のどれよりも重い

  だが、最後まで走り抜いて見せよう。悲劇はここで終わりにしよう

  舞うように天を駆ける

  彼女が微笑む。その笑みはとても美しく

  そして愛しいものだった

  だから言おう。例えその幸せが一瞬だとしても

  互いの心が繋がっていると、証明するために

  この言葉を捧げよう

 『ごめんな、気づくのに時間が掛かりすぎちまった』

  そして

 『本当にありがとう、俺なんかを好きでいてくれて』

  振るわれる剣の軌跡はその英雄の生涯において最も鋭く

  そして優しいものだった



歌が終わる。即興で言葉を交わし作られたのは悲しい恋の歌だった。

「・・・って。何で悲恋にするんですかあーたは!?」

「偉大な劇作家の教えに従ったまでだよ。『真実の恋というものは決して都合良くいったことはないらしい』、だ」

歌を終え、再びラジオの受信を始めながら蜥蜴は言う。

「それにさっきの霊長の歌でもこう歌っているぜ」

 ゛あなたに逢えた それだけでよかった

  世界に光が満ちた

雲一つ流れる深い夜の空を見上げながら一匹はかく歌う。

鴉はカァと嘆息し、再び恋の古典の扉を開く。

自動で走る自転車を乗り従える一羽と一匹。

整えられたレールを進み、果てない道を果てなく走る。

ガタガタと自転車が揺れている

震えの意味は変わらぬ道への欲求不満か。それとも蜥蜴の下手くそな物語への批判だろうか。

空には変わらぬ七つの月。この夜は今日も明日も明後日もも同じ形で月を描くだろう。

それでも皮肉屋な爬虫類とマイナス思考の鳥類は、今日も明日も明後日も。

馬鹿話に華を咲かせ、誰にも届かぬ言葉を作るだろう。

退屈な毎日を埋めるため。変わらぬ今日を変えるため。

彼らは下手くそな物語を歌うだろう。

果てない道に笑いながら。



平等

2004年11月13日 | ログ
私は不平等を認めます

金も地位も、愛さえも手に入らない私を認めます

だから

お願いだから

その汚れた笑顔で、世界は平等なのだと歌わないで下さい

テイデン

2004年11月13日 | ログ
「あ」

という間に身体の命令系統がシャットダウンしていく

まるで身体中が停電してみたいだ

「ず・・・」

あは。

当然だ。だって、肩から下がキレイに裁断されてる。

配線が繋がっていないのに、電気が流れたら、ヘンだ。

だ、から、

自、ブン、が、

暗く、なってくの、は、当然の、こ、とだ、・・、・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブン

僕は

2004年11月08日 | ログ
僕は

僕を必要としてくれる世界を望むけれど

僕は

僕がいなくなった事で困ってしまう世界は

危ういと思ふ

それでも僕は

僕を不可欠とする世界を望むだろう

僕は

僕が大事だから

BLOG-FRIENDS#2に参加します

2004年11月08日 | ログ

空鴉「BLOG-FRIENDS#2に参加しますよー」

蜥蜴「参加表明遅すぎ」

空鴉「それは言わないお約束です。二瓶さん、参加者の皆さんよろしくお願いします」

蜥蜴「どのジャンル・創作形態でどの程度の分量を予定しているか明記していただけると助かります、と書かれてるが?」

空鴉「えーと・・・中の人の予定では

   ジャンル『不明』

   創作形態『不明』

   分量『手の平サイズ』となっておりますです」

蜥蜴「つまりは真面目に答える気はゼロと」

空鴉「違いますよぉ!!無計画でメモ帳が真っ白なだけですってば!!」

蜥蜴「なお悪い」

空鴉「うー。締め切りは11月15日までです。参加したい方は二瓶さんの所までどうぞ。速く書かないと間に合いませんよー」

蜥蜴「オマエガナー」

有意義な休日

2004年11月07日 | ログ
今日はお祭りがありました。

太鼓の音と子供たちの歓声が風に乗って聞こえてきます。

僕はその音色を楽しみながら。

一人、冷蔵庫の氷を乾いた唇に張り付かせて遊んでいました。

もちろん寂しくなんてないです。えぇ、もちろん。


・・・・ぎゃふん。

日記

2004年11月04日 | ログ
カウボーイが勝ちましたね。

僕は彼が大好きです。やっぱりアレだね。

世界の覇者が愚か者なのは物語の王道です。アメリカ人は分かってるなぁ。

IQテストしてみました

2004年11月03日 | ログ
テレビ朝日のヤツ


蜥蜴「結果は税理士、銀行員タイプらしいです」

空鴉「中の人は確かに会計学部所属ですが簿記とか経済学の授業はスルーですね。単位が・・・」

蜥蜴「まぁゴルゴ13読んでる方が楽しいからな」

空鴉「ダメ学生の鏡ですね」

蜥蜴「言語がマックスだった点に大喜び」

空鴉「知覚が偉い低いですけどね」

蜥蜴「仕方ないじゃん。図形をイメージとかは無理なんだよ。無理」

空鴉「まぁ、こういうのが好きな人はどーぞです」

男は・・・

2004年11月02日 | ログ
男がまだ幼かった頃
男は考古学者になりたかった

親は優しく言葉を吐いて
事実と論理で夢を砕いた

男が本を愛した頃
男は小説家を志した

男のノートは静かに笑い
男の言葉で夢を砕いた

男が恋を知った頃
男は唯一の恋を願った

世の女性は不敵に笑い
何も奪わず夢を砕いた

男が大人となる頃に
男は何も持たなかった

世界は彼に何も与えず
けれど奪わず夢を砕いた

男は今日が終わる頃
明日を希望し眠りにつく

女神は静かに胎動し
夢を叶えず砕くだろう

『猫の一日 / 殺人観察』

2004年11月02日 | ログ


我輩は猫である。名はサツジンキ。
人に付けられた名ではない。否、名ですら有り得ない。
それは我輩の性質を示す記号であり、我輩だけが知る誰も呼ばない記号である。