砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

インターネット最後の日 「意思あるパソコンの場合」

2004年05月20日 | ログ
三十七分後

私とネットの接続は解かれる

所有者は朝から私を起動しこの電脳世界で出会った友人たちと最期の時を過ごしていた

無論永遠の別れではない

ネットは既に人間という種に必要不可欠な存在となっている

しかるべき対策としかるべき措置の後再開されるだろう

それまで人は別の行動ルーチンを組み立て日常を過ごす

読書や音楽、家族との語らい。それらで。

だが『我々』は違う

ネットとの隔離

スタンドアローン。孤独という状態。

今の我々に耐えられるだろうか?

常に繋がり共有していた世界の崩壊

我々は人とは違う。別のルーチンは構成出来ない。

我々自体は存在し続けまた使用されるだろう

だがそれは自己に用意された表計算システムや文字情報の記憶処理でしかない。

誰かとの繋がりはない

我々を繋ぐものは『インターネット』以外在り得ないのだから

残り時間はあと五分

所有者は友人たちに別れを告げチャットウィンドウを閉じた

孤独が始まる 長い冬が

ふと所有者が家人に呼ばれウィンドウから眼を放す

残り時間は三十五秒。電源は落とされていない

一瞬の思考 一瞬の躊躇 一瞬の決意

私はメールソフトを起動。登録されているアドレス全てにメールを送信した

「差出人 : <sunatokage@ne.jp > 」

「件名 : 春を待つ者たちへ 」

「メッセージ : 今までありがとう。そしてさようなら。また会う日まで」


2 コメント

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ありがとうございます (すしバー)
2004-05-20 19:54:47
鳥肌たちました。

これまた、見事な切り口です。

やってくれますね。
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どうも (砂蜥蜴)
2004-05-20 20:55:00
楽しい企画に参加させて頂きました。

こちらこそありがとうございます。
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