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自閉症の機序に迫る点鼻薬が治験へ

2017年12月08日 11時01分18秒 | 子どもの心の問題
 自閉症を薬で治療する時代が来るのでしょうか?

 現在自閉症の一因として「15番染色体異常」「脳内セロトニン減少」などが明らかになっており、そのモデルマウスを使ってセロトニンを増やす薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:SSRI)を治験研究が進行中。
 さらにオキシトシン点鼻薬も他者への信頼感が高まったり社会的相互作用を促進する効果があることが分かり、ASD研究への応用が示唆されています。
 近年では腸内細菌叢との関連も検討されているようです。

■ 自閉症の機序に迫る点鼻薬が治験へ 〜発達期の脳内セロトニンやオキシトシン、腸内細菌が関与
2017.11.30:日経メディカル
2017/11/30 塚崎 朝子=ジャーナリスト
 社会的コミュニケーションや想像力の障害、こだわりを主徴とする自閉症スペクトラム障害(ASD)。いまだ原因不明の発達障害で治療法も確立していないが、最近の研究で神経伝達物質のセロトニンやオキシトシン、腸内細菌の関与が明らかとなり、発症の根本に迫る薬剤の開発が進んでいる。
 今年6月、理化学研究所脳科学総合研究センターと日本医科大学の共同研究グループは、モデルマウスを使った実験で、発達期における脳内セロトニンがASDの発症メカニズムに関与する可能性が明らかになったと発表した。この結果は、 米国科学振興協会(AAAS)が発行する『Science Advances』(Sci Adv. 2017 Jun; 3: e1603001.)に掲載された。
 ASDは、他者の意図を直感的に汲み取ることが苦手で、相手や場の状況に合わせたふるまいができないといった対人コミュニケーション障害を主徴とする代表的な発達障害で、有病率は100人に1人と患者数は比較的多い。発症には遺伝的素因が関係し、行動パターンによって診断されたASDの40~60%が遺伝性とされ、異なる遺伝子異常の疾患群が混在していると考えられている。

脳内セロトニンの減少が発症に関連
 ASDの発症に関与する幾つかのゲノム異常が突き止められており、ASD患者には15番染色体において重複異常が頻出している一群があることが知られている。また先行研究で、ASD患者の脳内においてセロトニンが減少することが示されているが、これらの異常が発症に関連するメカニズムは明らかではなかった。
 研究グループは、まずヒトの15番染色体重複と同じゲノム異常を持つモデルマウスを作製した。ヒトでもマウスでも、セロトニンは中脳にある神経核の1つ、縫線核のセロトニン神経細胞から放出される。PETイメージングにより、このモデルマウスの脳活動を測定したところ、縫線核の活動低下を確認した。また、セロトニン神経細胞に対する電気活動では興奮性の入力が低下しており、脳内セロトニン神経機能の低下が示唆された。さらに、感覚刺激応答の実験で、ヒトのASDとの相同性を確認した。
 出生直後からセロトニンが減少しているこのマウスに対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチン(国内未承認)を、生後3日齢から離乳(生後21日齢)まで長期間投与したところ、体性感覚皮質の抑制性入力および、縫線核のセロトニン神経への興奮性入力が改善し、脳内セロトニン量が回復した。
 さらに15番染色体重複モデルマウスにみられる社会性行動異常が、セロトニンを増やす療法によって改善するかどうかを行動試験で調べたところ、フルオキセチンを投与した仔マウスでは、鳴き方の発達の遅れ(コミュニケーション障害)が改善した。また、空間学習に基づく繰り返し行動異常は改善しなかったものの、社会性の行動指標(社会性相互作用)は改善した。
 研究責任者の1人、日本医科大学大学院医学研究科薬理学分野教授の鈴木秀典氏は、「発達期におけるセロトニンの重要性を示しているだけでなく、脳内セロトニンがバイオマーカーとなり、発達期に不足しているセロトニンを増やすことの有用性が示された」と話す。
 現在、非定型抗精神病薬のリスペリドンとアリピプラゾールに「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」への適応が承認されている。成年期以降ASDにおいても、二次的なうつ気分や社会不安障害、強迫性障害などを併発している場合にSSRIなどの抗うつ薬が投与されることがあるが、ASDの中核症状を改善する科学的根拠がある根本的な治療薬はない。 
 鈴木氏らの研究成果から、SSRIが発達期におけるASDの根本的な治療薬となる可能性も示唆されるが、SSRIは副作用リスクも高く、小児に対する安全性は確立していない。鈴木氏は「発達期にセロトニンを増やすことの有用性を証明することが研究目的であり、SSRIはそれを示すための手段にすぎない。薬によらず、欠乏しているセロトニンを増やすための食事や環境などがあれば、理想的だ」と語る。

オキシトシンが社会的な相互作用を促進
 ASDは、DSM-5(米精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)に基づき、
(1)社会的コミュニケーションおよび社会的相互関係における持続的障害
(2)限定された反復する様式の行動・興味・活動
──の2つの中核症状で診断がなされるが、この中核症状をターゲットとしたオキシトシン点鼻薬の開発が始まっている。
 神経ペプチドであるオキシトシンは、視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から血中に分泌されるホルモン。よく知られた作用は、妊娠末期の平滑筋収縮や乳汁分泌促進であり、陣痛促進のための注射剤「アトニン」が国内でも製剤化されて販売されているが、点鼻薬は欧州でのみ授乳促進の目的で用いられている。
 オキシトシンは動物において、雌雄のつがいの絆など社会的な相互作用を促進させることも報告されている。2005年にヒトに投与することで他者への信頼感が高まったり社会的相互作用を促進する効果があることが分かり、ASD研究への応用が示唆されていたNature. 2005;435:673-6.)。
 当時、東京大学精神神経科准教授だった山末英典氏(現・浜松医科大学精神医学教授)は、それに注目した。ASD当事者にオキシトシン点鼻薬を連続投与する試験を行い、対人場面に表れる中核症状が改善すること、さらにこの症状改善が脳の機能改善を伴うことを世界で初めて実証し、2015年に報告している(Brain. 2015;138:3400-12.)。「ASDは男性に多い。オキシトシンは女性で豊富で働きやすいホルモンだが、男女を問わず脳内にオキシトシン受容体が多く分布しており、ASDの病態解明だけでなく改善に使えないかと考えた」(山末氏)。
 試験は、ASDと診断され、知的障害がなく向精神薬の服薬を行っていない20人の男性当事者(18~55歳)が対象で、短いビデオを見せ、登場する俳優が発する言葉の内容と言葉を発する際の顔や声の表情から、友好的に感じられるか敵対的に感じられるかを判断してもらった。こうした判断をする際に、ASD当事者は、顔や声色よりも言葉の内容を重視する傾向があり、その際には、脳の内側前頭前野活動が有意に弱いことが、それに先立つ山末氏の研究から明らかになっている(JAMA psychiatry 2014; 71:166-75.)。
 この試験結果を受けて、オキシトシン点鼻薬の安全性と有効性を確認する目的で、山末氏を代表研究者として、名古屋大学、福井大学、金沢大学、東京大学の4施設で大規模な臨床試験が実施された(現在、論文審査中)。
 さらに山末氏らは、帝人ファーマ社と新規改良製剤を共同開発し、2016年度から医師主導治験を行い、薬事承認を目指す計画を進めている。
 オキシトシンは、元々は内因性ホルモンであり、安全性が高いとされる。ただし、女性ホルモン(エストロゲン)と関わりが深く、相互作用もある。マウスの実験では幼若期にオキシトシンを長期間大量投与して、成熟後に性指向性が変化して雄なのに雌を求めないといった変化が生じたことも報告されている。
 このため、性徴を終えた成人を対象に開発を始めて、安全性を確認した上で小児での開発に移行する計画が立てられている。山末氏は、「ASDへのオキシトシンの効果には個人差があるが、治験で症状改善のための選択肢となることが証明されれば、ご本人やご家族の生活の制約が減り、社会全体への貢献が期待できる」と話す。
 なお、オキシトシン神経系は、セロトニン神経系下流にあるとされ、両者が相互作用することが明らかになっている。オキシトシンが作用する際には、セロトニン系も変化している可能性がある。

退行性ASDは腸内細菌叢が関与
 ASDには退行性(regressive autism:RA)という一群がある。中耳炎などの感染症の治療に関連して発症することが多く、しかも消化器症状を伴うことが多いことから腸内細菌叢との関係を示唆する研究もある。米国で複数のグループが、RAの小児と健常児とで、腸内細菌叢を調べたところ、Bacteroidales目やClostridiales目などの菌については増加傾向、また、Bifidobacteriales目の低下傾向があるといった有意差を認めている。
 さらに、中等症あるいは重症の胃腸症状を呈するRA患児18人を対象に米国で実施された非盲検臨床試験では、グラム陽性菌に強い抗菌力を有するバンコマイシンの8週間の経口投与が主要症状と消化器症状を改善させることが示されている。
 RA患者で多かった菌は常在菌で、環境を介して容易に感染しやすい。特に乳児は、床を這うなどして、そのまま経口感染する可能性がある。木沢記念病院(岐阜県美濃加茂市)中央検査センター長で岐阜大学名誉教授の渡邉邦友氏は、RAに関連する細菌はプロピオン酸産生菌が多く、これらが腸内で増えると、代謝物が血液脳関門を通過して神経系に達する可能性を指摘する。特に腸管免疫が未発達な状態にある乳幼児が抗菌薬を服用すると、腸内細菌叢を一変させる可能性があり、代謝が変化することがあり得る。渡邉氏は、「従来、ASDの環境因子として様々な物質や感染との関与がいわれてきたが、そうしたものは全て腸内細菌叢をハブとして発症につながっている可能性もある」と語る。
 2004年には、マウスにプロバイオティクスを投与すると自閉症様行動が軽減するという研究成果も報告された(Cell. 2013;155:1446-8.)。ヒトでの有効性を示す小規模な臨床研究は既にあるが、欧州では大規模な臨床試験が実施されており、成果が期待されている。

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