“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

「さくら家」のしつけ

2012年06月20日 06時02分04秒 | 育児
 「さくら家」と「ちびまる子ちゃん」こと「さくらももこ」の家族です。
 6/17放映のちびまる子ちゃんは親友のたまちゃんへ送る誕生日プレゼントのお話でした。

 まる子は流行のチェック柄バッグをプレゼントしようと貯金をはじめました。
 お小遣いだけでは足りないので、お母さんとお父さんのお手伝いをいつになく一生懸命行い、何とか目標額に到達。

 いざバッグを買いにお店へ・・・その途中にある駄菓子屋で誘惑に足止めされました。
 といっても、これもたまちゃん関係。
 くじの3等のブローチを気に入っていたたまちゃん。
 お金にちょっと余裕があったので、くじにトライするまる子。
 何回目かで当たってブローチをゲットするも、気がつくと残金ではバッグが買えなくなっていました。
 ドジなまる子らしいエピソードです。

 ベソを掻きながら帰宅するまる子。
 おかあさんに「お金貸して!」とねだるも、母は「残りのお金で買えるものにしなさい」との返答。

 再度お店へ向かうまる子。
 ウインドウを覗きながら立ち尽くすまる子の横をおばあちゃんが通りかかる。
 事情を聞き、しばらく考えていたおばあちゃんに名案が浮かびました。
 裁縫関係のお店でチェック柄の生地を購入し、自分で作るよう促したのでした。

 帰宅後、おばあちゃんの指導の下、まるこがバッグを自作します。
 いつの間にか家族が集まりワイワイがやがや・・・そして完成。

 翌日学校でたまちゃんにプレゼントすると、「世界にたった一つのバッグをありがとう」と感謝感激。
 クラスのみんなが集まってきてやんややんやと盛り上がりました。

 というお話です。
 おそらく、通りかかったのがおばあちゃんではなく友蔵じいちゃんだったらお金を出してしまったでしょう(笑)。
 私が親だったら、泣いている子どもを前にしてお金を与えてしまうだろうなあ、と思いながら見ていました。
 でも、お金を与えず、できる範囲で、ダメなら自分が汗をかいて手作りするよう仕向けた「さくら家」の女性たちは素晴らしい。
 モノで解決しがちな自分自身を反省させられたアニメでした。

「子どもの『心の病』を知る」(岡田尊司著)

2012年06月17日 06時58分19秒 | 心の病
著者は精神科医です。その方面の著書が多数ある一方で、小説家という側面もある多彩な方。

新書にしては342ページとボリュームがあります。
心の問題を乳児期から成長段階別に概観する内容ですが、文章が上手なので硬い内容ながらもストレス無く読み進められました。
例を挙げての解説もあり理解を助けてくれます。手軽に病気のイメージをつかむには格好の入門書だと思います。
「うつ病」は治療で落ち着くけど再発しやすい病気、「統合失調症」は再発を繰り返すと人格が崩壊していく慢性・進行性の病気、等々。

ただ、個々の疾患について詳しく知りたい方には物足りないかもしれません。一方、ふだんよく相談を受ける「夜泣き」などは簡単すぎる記述です(毎日寝不足のお母さんには深刻な問題なのですけど)。

一つ気になったのは、例示する患者さんの外見の記述が文学的なっているところ。まあ、小説家という側面が顔を出してしまうのでしょう(苦笑)。例えば・・・

「丸顔に、愛くるしい目鼻立ちの少女は、打ちしおれた様子で診察用の丸椅子に座っていた。深く自分の行いを反省し、悔恨しきりといった様子だった。リラックスさせるように話しかけると、少女は緊張気味に、おちょぼ口のふっくらと下唇を僅かに震わせながら、少しずつ今日の日に至る経緯をぽつりぽつりと語り始めた。」(P275「祭りの後」)

「19歳のR子は、フランス人形のように色白で、整った顔立ちをした、美しい少女だった。19歳という年より幼く見える顔つきは、見るからに繊細だが、いくぶん表情に欠け、冷たい印象もある。」(P294「時間の止まった少女」)


そして、この本の白眉は「あとがき」です。

躓きこそが成長を生む
 人生には本当に多くの困難がひそんでいる。大人になって自立していく過程においても、子どもを育てる中でも、悩みは尽きないものである。小さな困難から大きな困難まで、さまざまであるが、どんな困難でも、出会った本人には、とても深刻なものに感じられる。出口が見つからずに、どうなるのだろうかと途方に暮れることもある。それに打ち負かされそうになってしまうこともある。
 そんなときは、一旦立ち止まって休むことも大切だ。動き続けているときには見えなかったことも、立ち止まって初めて見えることもある。進むことばかりが人生ではないのだ。思い切って何もかも忘れ、のんびしとした時間を過ごしてみることだ。どうしてもしなければならないと思っている心の縛りを、一旦解いてやろう。
 そうするだけで、落とし穴に落ちたような心の状態は、楽になっていく。すり切れ、疲れ果てていた気分が、余裕を取り戻していく。元来持っている治癒する力が働き始める。取り憑かれたようにとらわれていた自分の姿に気づけるようになる。人生は決して一つの尺度だけで測られるものではない。もっと自由に生きていいのだ。
 そして、時が来たら、再び勇気を持って進んでほしい。ずっと立ち止まってばかりでは、心の筋力が衰えてしまう。現実に向かい合って欲しい。失敗や挫折を恐れずに、チャレンジして欲しい。失敗しても、失うものなど何もない。だが、試みなければ、チャンスは失われてしまう。一度失敗したことが厭であれば、他の何かを試みてもいい。可能性は一つではないのだから。
 試行錯誤を続ける中で、きっとあなたは新しい発見に出会うだろう。自分というものの弱い部分や限界に気づくかもしれないが、思いがけない可能性や長所を見つけ出すこともある。
 あなたが直面し、あなたを悩ませている問題は、決してデメリットだけをもたらすものではない。今が苦しくても、それにキチンと向かい合い、対処していくことが、きっと次なる大きな成長を生む。あなたに降りかかっている問題は、飛躍のための試練なのである。問題があるからこそ、人は同じ自分に甘んじず、成長していける。見守る親や周囲の人も、試練を乗り越えることで強く育っていけるのだ。
 絶望を味わうような病気や挫折でさえ、けっしてマイナス面ばかりではない。病気や挫折を経験したがゆえに、得られるものも大きいのである。一時的に、落胆と哀しみも大きくて当然だが、人は驚く程大きな回復力と順応力を持っている。ましてや、子どもや若者の潜在力は計り知れない。失われたものに囚われ続けるよりも、新しい世界に目を向けることが、希望を取り戻す近道なのである。


名文であり、感動しました。

「子どものうつ」に気づけない!(傳田健三著)

2012年06月11日 21時39分16秒 | 心の病
 佼成出版社、2007年
 副題 ー医者だから言えること、親にしかできないことー

 著者は児童精神科医で、現在の肩書きは北海道大学教授
 内容は、系統立てて記述する教科書タイプではなく、事例を中心に解説していく読み物タイプ。
 堅苦しさがなく、すいすい読み進めることができました。
 合同家族面接の経緯などは現場からの実況中継を聞いている感覚で、自分もそこに参加しているかのような錯覚さえ覚えました。

 親子関係の重要性を説き、著者自身の family affair についても触れ、専門家も一人の親としては決してその道の達人として振る舞えるわけではないことを告白しています。
 全編を通して感じたのは、成長期・思春期の子どもの心のひたむきさと脆さ、それを支える親の大変さと切なさ、でした。

 「子どもを見守ると云うことは、子どもに手をかけたいという気持ちを我慢し、失敗したらかわいそうだという親心を抑え、親に頼ってくれない寂しさをこらえつつ、同時にその成長と自立をかみしめながら、温かい眼で観察することなのです。
 という文言は身につまされました。
 思春期の子どもを持つ、悩める親へのエールですね。


メモ
 気になった部分を抜き出し書き出し。

■ うつ病と診断した患者家族への説明
①今の状態は怠けや逃避ではなく、うつという身体の病気であること。
②十分な休養と薬物療法が必要であること。
③今の状態は3ヶ月くらいで改善するが、薬はその後もしばらく飲み続ける必要があり、治療の全体としては1年くらいを考えること。
④うつの症状として、ふと「生きていてもしかたがない」などという考えが浮かぶかもしれないが、決して早まったことはしないこと。
⑤治療中、症状に一進一退があるが、あまり一喜一憂しないこと。
⑥重大な決断は、治療終了まで延期すること。
⑦今後どうしたらよいか一緒に考えていくこと。

■ うつを発症した子どもの家族に求められる変化
①子どものことを観察し、理解し、コミュニケーションをとる。
 子どもは依存と自律のはざまにありながら、心理的親離れと独り立ちを課題にしている。
②子どもの危機は家族全体の危機である。
③お互いに自分の意見を伝え合う。
④新しい視点から問題を捉え直す。

■ 医者は自分の家族を治療できない
・人の話を上手く聞けるのは、結局他人事だから。

■ 「見守ること」の難しさ
・子どものためを思ってすることが、子どもにとってはお節介であり、勧奨であり、大きなお世話。
・親は、子どもを見守りながら、必要なときのみ手を貸すという、とても大変な作業を行わなければならない。
・子どもが思春期を迎えたら、相手を独立した一人の人間として尊重することが必要。
・子どもを見守ると云うことは、子どもに手をかけたいという気持ちを我慢し、失敗したらかわいそうだという親心を抑え、親に頼ってくれない寂しさをこらえつつ、同時にその成長と自立をかみしめながら、温かい眼で観察すること。
・親を責めてもよいことがないのは、責められて落ち込んでいる親を見て、子どもはなおいっそう申し訳ないと自分を責めてしまうから。

■ 「絶対受容」と「ほどよい母親」
 子どもの問題をすべて母親の愛情不足が原因だと指摘し、スキンシップと絶対受容を実践するように指導されることがあるが、帰って逆効果となることもある。
 親がこのような対応をすると子どもは「退行現象」を起こし、ワガママになったり、赤ちゃん返りをしたりするようになってしまう。
 イギリスの小児科医&精神分析医であったウィニコットは、適切な母親の養育の姿を「グッドイナフ・マザー(ほどよい母親)」と呼んだ。要するに、少しおっちょこちょいで、さほど神経質ではなく、愛情のある母親のこと。

■ 父親の寂しさ
 現代の父親は私も含めて、家でとても寂しい思いをしている。居場所がないのである。
 父親の寂しさは社会全体の問題。

■ 子どもに問題が起きたときの十ヶ条
①両親で何度もじっくり話し合う
②適度な反省は必要だが、必要以上に自分たちを責めない。原因を追及しすぎない。
③これから何をすべきかを考える。これまでの自分たちの方法でうまくいかない場合は、別の方法を考えてみる。
④誰かに相談する。一人であるいは両親のみで問題を抱え込まない。
⑤相談機関の医師、カウンセラー、相談員などと信頼関係を築き、情報を交換し合って、協力していく。父親も相談機関に可能な限り行く。
⑥子どもの立場になって考える。子どもが病気の場合、病気について十分理解する。
⑦子どものよいところ、プラスの側面を見る。子どもが現在できている部分を評価する。
⑧子どもが思春期に達したら、これまでの対応を改め、一人の人格として尊重する。
⑨最終的には、自分たち両親が対応し、自分たちが支え、自分たちが状況を変え、自分たちが変わっていくしかないのだと腹をくくる。自分たちが解決のためのキーパーソンであると認識する。
 誰かにすべてを頼りたいという過剰な依存はあきらめ、なおかつ何でも自分で背負い込むという意地も捨てるべし。
⑩全てを一気に変えることは考えない。小さな変化を大事にする。今、ここから、できることから始めていく。
 逆転満塁ホームランを狙わずに、バントでコツコツと1点ずつ返していくという心構えが必要です。

■ 親子の合い言葉
・「あせらず」「あわてず」「あきらめず」
・今、ここから、できることから始めよう
・ジャマイカ療法:「じゃあ、まあ、いいか~」

■ 「うつ」と「単なる落ち込み」との違い
1.一定の骨格を有する
 うつは決して一つの症状だけではなく、いくつかの特有な症状を骨格とした複合体験。本質的な症状は、身体と精神の両面に現れる7つの症状から也、全体のエネルギーが低下したような状態。
① 睡眠障害:途中で目が覚める、朝早く眼が覚める
② 食欲障害:食欲がない、体重減少
③ 日内変動:朝の調子が悪く、夕方から楽になる
④ 身体のだるさ:身体が重く、疲れやすい
⑤ 興味・感心の喪失:好きなことが楽しめない
⑥ 意欲・気力の減退:気力が出ず、何事もおっくう
⑦ 集中力の低下:集中できず、頭が働かない
2.一定の強さを有する
 軽症であってもいくつかのまとまった症状がしぶとく持続する強さを有する。ただし子どもは大人と比較して「抑うつ気分」を訴えることが少ないことに注意。
3.一定期間持続する
 最低2週間以上持続する。

※ うつと不登校を見分けるポイント:
・学校へ行かなければならないというプレッシャーがない状態においても、うつ症状が存在するかどうか。日曜日でも夏休みでも同様の状態が続くなら、うつを疑うべき。
・最もリラックスできる状況で自分の好きなことを本当に楽しめるかどうか。昼夜逆転した子どもが、深夜に好きなインターネットやゲームを楽しんでいるのであれば、うつ病ではないかもしれません。
・明らかな心因(例えばいじめ)があったとしても、うつ病の中核症状がそろっているのであれば、心因を契機にうつ病が発症したと考えるべき。

■ うつ病の診断基準(アメリカ精神医学会)
 以下のうち5つ以上が2週間以上持続。少なくとも1つはA症状
A.
(1)抑うつ気分・・・子ども、青年はイライラ感でもよい
(2)興味・喜びの減退
B.
(3)食欲不振、体重減少(ときに過食)
(4)不眠(ときに過眠)
(5)精神運動性の焦燥、または制止
(6)易疲労感、気力減退
(7)無価値感、過剰な罪悪感
(8)思考力・集中力減退、決断困難
(9)自殺念慮、自殺企図

■ うつ病の分類
1.うつ病性障害(うつ病)
①大うつ病
②気分変調障害:軽症のうつ状態が長期間(児童・思春期では少なくとも1年間)持続
2.双極性障害(躁うつ病)
①双極型障害:うつ病と重症の躁状態を繰り返す
②双極型障害:うつ病と軽症の躁状態を繰り返す

■ うつ病治療の七原則
(1)軽いけれども治療の対象となる「不調」であって単なる「気のゆるみ」や「怠け」ではないことを告げる。
(2)できることなら、早い時期に心理的休息をとるほうが立ち直りやすいことを告げる。
(3)予想される治癒の時点を告げる。
(4)治療の間、自己破壊的な行動(例えば自殺企図など)をしないことを約束してもらう。
(5)治療中、症状に一進一退のあること(三寒四温的な起伏のあり得ること)を繰り返し告げる
(6)人生に関わる大決断は、治療終了まで延期するようアドバイスする。
(7)服薬の重要性、服薬で生じるかもしれない副作用をあらかじめ告げ、関心のある人にはその作用機序を説明する。

 アプローチの基本;まず心身ともに疲れ果てている子どもに休息を勧め、干渉的にならないように傍らに寄り添うこと、そして症状を確認しながら、つらかったこれまでの状況を理解し、元気が出てきたら、あせらずに少しずつ、これからできることを共に考えていくことに尽きる。回復期は自分のできる力の60~70%程度にセーブする感覚で。

■ うつ病の薬物療法
 抗うつ薬は単なる気休めではなく、風邪に対する解熱剤のような対症療法でもなく、うつの本質的なところに効くと考えられている。
 いずれの抗うつ薬も有効な量を1~2週間飲み続けて初めて効果が現れ、副作用は最初の1週間に出現しやすいことをあらかじめ理解しておく必要がある。副作用が出現するのは服薬後3~4日がピークで、その後1週間程で次第に軽減していくのがふつう、効果はその後次第に現れる。
 薬物療法のコツは「使うのであれば必要十分な量を使い、効かなければ薬を変更するか使用を止める。中途半端な量を漫然と使わない」こと。
 子どものうつ病に対する第一選択薬はSSRIのフルボキサミン、第二選択薬はサートラリン(SSRI)かミルナシプラン(SNRI)、次にパロキセチン(警告有り)、効果なければ三環系・四環系抗うつ薬を使用する。
 治療期間の目安;薬物療法によりうつ状態が治って本来の状態にまで回復するのに平均3ヶ月、その後も同量を6ヶ月維持し、その後2~3ヶ月かけて徐々に減量していき、約1年で服薬中止、治療終了。うつ病が治っても1年間は無理をしないで少しのんびり生活することが大切。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)・・・効果は他の抗うつ薬と同等、副作用が少ないことが特徴
フルボキサミン:軽症から中等症が適応。抗うつ効果として不安や抑うつ気分に有効。他にもパニック障害、強迫性障害、社会恐怖、過食症などの不安障害に有効性が認められている。副作用として、消化器症状(吐き気、食欲減退、下痢、便秘など)、神経症状(不眠、手の震えなど)がある。副作用は服用初期に出現し、服用を続けると軽減していくのがふつう。
パロキセチン:まれに情動不安定や自傷行為を増加させる可能性があるとして2003年に使用禁忌となり、検討の結果2006年に禁忌が解除され警告へ変更された。
サートラリン:効果・副作用はフルボキサミンと同等。

SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
ミルナシプラン:軽症から中等症が適応。大人のうつ病に対してはSSRIと同等かそれ以上の有効性を有し、副作用もSSRI同様に少ない。

・三環系抗うつ薬:古くから使われてきた薬。中等症から重症が適応で副作用も強い。
・四環系抗うつ薬:三環系抗うつ薬の副作用の軽減を目指して開発された薬。副作用は比較的少なく、軽症から中等症が適応。

<著者の考える薬物療法の流れ>
 子どものうつ病に対してSSRIを用いるときには、特にはじめの1週間は最小限から始めて、慎重に経過を観察する。ごく希にイライラ感が増し、情緒不安定になる人(つまりSSRIが合わない人)や、くすりが効き過ぎて急激に躁状態になってしまい気分が不安定になる人がいるため。しかし、これはSSRIだけではなく他の抗うつ薬にも共通して見られる問題である。

「子どものうつと発達障害」(星野仁彦著)

2012年06月02日 09時50分23秒 | 発達障害
 青春出版社、2011年。

 最近気になる患者さんがいて、今まで手を付けてこなかった分野なので手元にあった入門書を読んでみました。
 著者は心療内科医(専門は児童精神医学)、肩書きは福島学院大学教授で、発達障害関係の著作がいくつもあります。
 この本も、わかりやすい言葉で丁寧に説明されており、好感が持てました。

 著者は「発達障害」を「発達アンバランス症候群」と呼ぶべきである、と主張しています。
 成人の痴呆症→ 認知症精神分裂病→ 統合失調症と、マイナスイメージのある文字を消してきたのに対して、子どもの病気には「障害」とマイナスイメージを固定するような表現がされることに私も違和感を持ってきましたので、賛同します。

 そして問題なのは、発達障害を抱える子ども達へのケアが不十分なために、合併症・二次障害を発症して将来の社会生活に支障が出ることを指摘しています。
 発達障害そのものは遺伝的要因が大きいとされています。
 しかし、近年の発達障害増加傾向や合併症・二次障害の発生は環境要因が大きいらしい。
 著者は「脳の機能障害が増えたからではなく、発展途上にある子ども達に不適切な子宮内膜環境、社会環境、家庭環境があり、それらの要素が複雑に絡まり合っている」と推論しています。

 大切なのは認識・受容してサポートすること。
 サポートのキーワードは「母子関係」そして肝は「母親の笑顔」。
 その母親の笑顔のためには「良好な夫婦関係」が必要と記しています。

 まあ、他の児童精神医学の書籍と同じ論調ですね。

 う~ん、ここでも父親が諸悪の根源のように書かれているのが残念です。
 日本の年間自殺者は3万人、そのうち7割が男性です。
 つまり、日本男性は社会に追いつめられ、家庭でも居場所が無く自ら命を絶つ傾向があります。
 その事実に触れられていません。
 その父親に「母親が笑顔でいられるようにサポートしましょう」と言葉で云ってもできるわけがないと思います。

 すると、子どもの問題はやはり「社会的弱者にしわ寄せが来ている」と云うことになってしまう。
 社会が父親に優しければ、母親も子どもも笑顔になれるはずなのに。