goo blog サービス終了のお知らせ 

“子ども”を取り巻く諸問題

育児・親子・家族・発達障害・・・気になる情報を書き留めました(本棚4)。

“スマホ依存”を脱出する方法

2025年05月16日 09時23分55秒 | 教育
少し前に「スマホは子どもの脳に悪影響を与える」というブログを書きました。
やはり五感を駆使したリアル世界の人間同士のやり取りをして、
失敗と成功を繰り返し経験しなければ、
コミュニケーション力は育たないようです。

悪いとわかっていても“依存状態”に陥っていると、なかなかやめられません。

ではどうしたらやめられるか?
いろんな人がいろんな事を言ってますが、
ここではApple創始者のスティーブ・ジョブズの方法を採り上げた記事を紹介します。
「30日コースのスマホをやめる方法」も取りあげられています。
詳しく知りたい方は、ぜひ原著をお読みください。


▢ だからジョブズは子供にスマホを持たせなかった…著名人が次々とやっている「スマホ断ち」の正しいやり方脳をむしばむ「スマホにさよなら」…最新メソッドがあなたを救う
キャサリン・プライス:科学ジャーナリスト
プレジデント 2025年4月4日号)より一部抜粋(下線は私が引きました);

・・・気鋭の科学ジャーナリストが考案した、4週間でスマホ依存から抜け出す方法を紹介する。

▶ ご褒美が50回に1回でも その行為をやめられない
 スマホは生活に不可欠な存在だが、多くの科学的データがこのデバイスには依存性があり弊害も大きいと示す。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが、自分の子供をスマホやデジタル機器から遠ざけていたのは有名な話だ。ジョブズはニューヨーク・タイムズ紙の取材に答え、自分の子供たちが「家のなかで使うデジタルテクノロジーは制限している」と答えている。ビル・ゲイツ夫妻は、自分の子供たちに14歳になるまでスマホを持たせなかった。
 ある調査によるとアメリカ人のスマホ利用時間は1日平均4時間以上、1年に換算すると60日になる。また、約80%の人は起床後30分以内にスマホをチェックする。約半数は夜間にスマホをチェック。80%以上は“起きている間中”スマホを手元から離さない。10人に1人は、なんとセックス中にスマホを見るというのだ。
 “スマホ依存”は脳の構造と機能を変質させる。このことが、記憶力や集中して何かに取り組む能力を低下させていると科学者たちが警告している。
 なぜスマホ依存が起きるのか。スマホは、不意に良い知らせを届けてくれる(好きな人からの予想外の誘いなど)。こんなとき、脳内ではドーパミンが分泌される。予想不可能な状況で報酬を得ることを心理学用語で「間歇強化」という。実はスマホ以外にもこの「間歇強化」を引き起こす強力な機器がある。それはスロットマシーンだ。いったん、脳内で行為と報酬が連結すると、たとえご褒美が500回に1回でも、人はその行為をやめられない。
 スマホは新着情報で感情を掻き乱す。現代人はスマホから目を離すたびに、何かを見逃すのではないかという、FOMO (Fear of Missing Out)と呼ばれる不安に支配されている。スマホを確認して一瞬気が晴れても、スマホを置くとまた不安に襲われるのである。
 アメリカではiPhoneが登場した2007年から10年までの10年間で、10代の飲酒、ドラッグの摂取率が下降した。専門家は依存対象がスマホに移ったと見ている。「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌に掲載された報告は「『いいね』をつける、リンクをクリックする、どちらの行為でも、身体的健やかさ、メンタルヘルス、人生に対する満足感がその後低下すると予見できる」と伝える。多くの研究がSNSの使用時間が増えるほど幸福感が減少すると警告している。若者への影響はダイレクトで、スマホの登場以来、10代のうつ病、自殺率が増加している。
 スマホは本質的にユーザーを依存させるために設計されているといっても過言ではない。「いいね」を押すと送りこまれるクッキーというファイルにより、「DNA誕生以来、最大級の個人データ」がFacebook、Google、Amazon、Appleに集積されている。リンクや広告を目にするたびに、脳はクリックすべきか否かの一瞬の判断を迫られる。それを繰り返すと、脳は疲弊し、集中しにくくなるように回路を強化していく
 本来、人間には、一見無関係な物事の共通点を発見し思考を深める力がある。これが“閃き”を生む。だが、スマホに没頭していると周囲で起こることへの認識も処理もできず、“閃き”も生まれにくくなる。また、一般に言われているマルチタスクは実は不可能であり、その実態は断続的に集中が途切れる状態であることが科学的に理解され始めた。さらに、スマホが発するブルーライトは脳内でのメラトニンの分泌を阻害するため、就寝前の使用は睡眠を妨げる。本来必要な7~8時間を下回る睡眠時間が10日続くと、脳は24時間不眠時と同等に機能低下するという研究もある。
 心理学者のミハイ・チクセントミハイは、一つの物事に集中して時間感覚がなくなる状態を“フロー”と名付けた。スマホに依存する人はこの“フロー”を体験しにくくなる。本来、人間に備わっているはずの創造性をも失ってしまうのだ。スマホを完全にやめてしまえというのではない。本来あるべき良好な関係を築くことが大切なのだ。筆者が試行錯誤の末に考案したそのためのメソッドを抜粋し紹介する。

▶ スマホ断ち実践編:4週間でスマホ依存から抜け出すメソッド

● 1週目 テクノロジーの選別をする
以下のプログラムの実践は、順序を自由に入れ替えてかまわない。ただし、あらかじめ4週間のうちどこかで、24時間のスマホ断ちの予定を決めてしまうようにする。ここでは、3週目の週末に予定する。

1日目(月) スマホの使用時間計測アプリをダウンロードする

2日目(火) いまの付き合い方を把握する
自分のスマホとの付き合い方を予想し、それと実際の使用状況を比較するのが目的だ。いきなりスマホを控えようとして失敗するのは、達成のイメージが明確でないことも大きい。
以下の質問に対する答えをメモする。
・スマホの好きなところは?
・スマホで困るところは?
・使用時間が増えたことで、どんな変化があったか?
・どうなっていれば、スマホ断ちは成功と思えるか……など。

3日目(水) 注意を始める
今日1日かけて、スマホの使用状況を観察してみよう。
・ほぼ確実にスマホを見るのはいつ?
・そのときの姿勢、きっかけは?
・手に取る前と後の心理状態……など。

5日目(金) SNSのアプリを削除する
SNSは適度に使うことができれば理想的だが、それをスマホで実現するのは難しい。スマホ上のSNSのアプリは、私たちを病みつきにさせるようにできているからだ。削除に迷いがあるなら、こう考えてみる。
1.(スマホのSNSのアプリとそのデータは)いつでももとに戻せる。
2.好きなときにチェックできる。
アプリを使わなくても、スマホやパソコンのインターネットブラウザでは、いつでも見られる。
昼夜を問わず、常にスマホをチェックしているスマホ依存から抜け出して、本来の自分を取り戻そう。

6日目(土) リアルな生活に戻る
スマホの使用時間が減れば、その時間をどのように利用したいかを具体的にイメージする。スマホに逆戻りするのを防げる。
・ずっとやってみたかったことは……。
・子供の頃、夢中だったこと/もの。
・自分がフローに入れるとわかっている行為は……。
・もっと一緒に過ごす時間を持ちたい人は……。
書き終えたら、この4週間のうちにできそうなことを具体的にリストアップする(日帰り旅行、ハイキング、習い事を始める、美術館へ行く、絵を描く、友達と会う……など)。

7日目(日) 身体と向き合う
本来、心と身体が連動していることを味わう。つまり身体を動かしながら、同時に楽しさも感じることを実践する(スマホを持たずに散歩、ヨガ、キャッチボール、マッサージを受ける……など)。

● 2週目 癖を矯正する
習慣を完全に断つことはできないが、変えることはできる。2週目では習慣を変えるために生活や環境を整えることに取り組む。

8日目(月) 通知にノーと言う
ホーム画面やロック画面に1日に何度も現れるすべての通知をオフにする。スマホの設定画面を開き、電話とメッセージアプリとカレンダー以外のすべての通知機能をオフにする。アプリの小さな赤い吹き出し/バッジや新着メールの受信を告げる通知音や赤バッジもすべてオフにする。メールアプリの自動受信設定もオフにする。

9日目(火) 人生が変わるマジック=アプリを整理する
ホーム画面に残しておきたいアプリかどうかを判断する。すべてのアプリを「注意を奪う恐れがあるか」「日常生活の質を向上させうるか」の観点から判断し、6つのカテゴリーに分ける。
1.ツール系アプリ:地図、写真管理、カメラ、セキュリティ・ウイルス対策、銀行、天気、音楽、電話など日常生活に役に立つツール系アプリだけをホーム画面に残す。アプリがホーム画面におさまらないなら、フォルダをつくって入れる。もしくは、すべてのアプリをフォルダに入れてしまう。
2.ジャンクフード系アプリ:SNS、ニュース、ショッピング、ブラウザ、メッセージ、ゲーム、メールなど。注意を奪うリスクが大きいか、生活の質をより向上させてくれるかで判断し、リスクが大きければ削除。メリットが大きければ、ホーム画面の2ページ目にフォルダをつくって、入れる。
3.スロットマシーン系アプリ:SNS、マッチング、ショッピング(通販)、ゲームなど。スロットマシーン系とジャンクフード系アプリは、以下の特徴がある。「アプリを開くときに期待感がある」「なかなかやめられない」「使い終わったあと、落胆、不満、自己嫌悪が残る」。即刻削除してしまおう。
4.がらくたアプリ:インストールしたけれど使っていない「がらくたアプリ」は要削除だ(いつでも再インストールできる)。削除できない人は一つのフォルダにまとめ、ホーム画面の3ページ目に置き、起動までにひと呼吸置き、思い直す機会と時間をつくる。
5.機能特化型アプリ:iPhoneを探すアプリなど、特定の目的に特化しているがツール系ほど日常的に使うものではないアプリ。
6.削除できないアプリ:構造上、削除できないアプリなどは、3ページ目のフォルダに入れる。整理を終えるとスマホの画面はスッキリするはず。

10日目(水) 充電場所を変える
充電場所は寝室以外にする。起きてすぐや寝る直前に反射的にスマホをチェックする習慣から抜け出す。

13日目(土) 境界を定める
夕食の席や寝室にはスマホを持ち込まない。また、朝、スマホを起動させる時間を決める。少なくとも自分の起床時間より1時間は遅くする。

● 3週目 脳の力を取り戻す
主にマインドフルネスを使ったトレーニングで、スマホ依存による悪影響を取り除き、集中力や創造力を上げる。

15日目(月) 動きを止める、深呼吸する、いまに意識を向ける
スマホに手を伸ばしそうになったら、このタイトルの通りのこと(これがマインドフルネス)を行う。

16日目(火) ぼーっとする練習をする
スマホに使いがちな時間(エレベーターの中、信号待ち、タクシーに乗っているときなど)は、あえて頭の中を空っぽにする。天井を眺める、周囲の人を眺める、食事をよく味わう。窓から空を見上げるなど、スマホに手を伸ばさない限り、何をしてもいい。

17日目(水) 集中力を鍛える
1日のなかに集中する時間をつくる。紙の本を読む読書はリラックス効果もあり有益だ。2桁の暗算、手紙を書く、好きな音楽を集中して聴く、など。

19日目(金) スマホ断ち体験に向けて準備する
週末の24時間スマホ(デジタル機器すべて)断ちの前の準備をする。この間はスマホの電源を切るため、地図を印刷するか用意する。周囲の人たちに周知する。必要な連絡先を書き出しておく。留守番電話・自動応答メッセージをセットするなど。

20~21日目(土~日) スマホ断ち体験 
必ずしも週末でなくても、いつどこで行ってもいい。スマホの電源を落とし、目につかないところに置く。とにかく行動を起こして「偶然の幸運」が起きる余地をつくる。
4週目とそれ以降 新しい付き合い方をつくる
これまでの取り組みで自覚できたことを、確固たるものにする。うまくいけば、スマホを断つ以上の成果が得られる。

22日目(月) 体験を振り返る 
24時間のスマホ断ち体験を振り返り、観察、思考、感情、追求という一連の質問に自分の言葉で答える。大変だったこと、嬉しかったこと、意外だったことなど。
キャサリン・プライス著、笹田もと子訳『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(角川新書)スマホとの新しい付き合い方を提案。たった4週間の無理のないメニューで、脳の本来の力を取り戻す実践的ガイド。

27日目(土) デジタル休暇に取り組む
自分に合った方法で定期的にデジタル休暇を取る。そのためにいくつかのヒントがある。
機能ごとにスマホを使い分ける。機能とは目覚まし時計、電子書籍リーダー、音楽プレイヤー、デジカメなどだ。“家用スマホ”をつくる。機種変更をするときに古いものを手元に残してツール系アプリだけが使える“家庭用スマホ”にする。その他、マナーモードやサイレントモード、をもっと頻繁に使ってみる。よく使う場所の地図は、オフラインでも使えるように、あらかじめダウンロードしておく……など。

29日目(月) 維持する仕掛け
スマホとのいい関係を維持するためには、定期的な自己チェックが欠かせない。日にちを決めて、その都度、使用状況を振り返る。

30日目(火) おめでとう!
メソッドの前後でスマホに対する印象はどう変わったか、「スマホ断ち」で学んだこと、嬉しかったことをメモにする。
書き終えたら、2日目のメモと比較してみる。やり切った自分を讃える時間をしっかりとつくる。


<参考>
・キャサリン・プライス著、笹田もと子訳『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法

新型コロナが園児の発達に与えた影響

2025年05月15日 16時04分13秒 | 教育
新型コロナ禍では、外出制限、マスク着用、黙食など、
幼児にとって窮屈な生活を強いられました。

それらがコミュニケーションの発達に悪影響を与えるのではないか、
と懸念されてきました。

その結論的報告を扱った記事が目に留まりましたので紹介します。

やはり、発達に悪影響を与えていたことが判明しました。
が、それ以前の評価と比較すると、
実は新型コロナ禍以前から発達が遅れがちであることも判明。
つまり、新型コロナだけのせいにはできないことがわかりました。

報告ではスクリーンタイムが長くなった影響もあると考察されています。
推して知るべし。

診察室でもスマホ・タブレットを手放せない幼児を時々見かけます。
オーストラリアでは「子どものスマホ禁止令」が出されましたね。


▢ COVID-19パンデミックは園児の発達に影響
2025.5.13:Growth Ring)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生後(2021〜2023年)の園児は、パンデミック発生前(2018〜2020年)の園児と比べて、言語・認知発達、社会的コンピテンス、コミュニケーション能力・一般知識の平均スコアが有意に低いとする研究結果が、「JAMA Pediatrics」に3月10日掲載された。
 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院社会福祉学分野のJudith Perrigo氏らは、2010年から2023年にかけて米国19州、390学区の園児47万5,740人(平均年齢6歳、男児51.1%)を対象に反復横断パネル研究を実施し、COVID-19パンデミックが園児の発達に与えた影響を調査した。発達状況は、Early Development Instrument(EDI)により、
1)身体的健康・元気さ(13項目)
2)社会的コンピテンス(26項目;ルールを守れるか、他の児とうまくやれるかなど)
3)感情的成熟度(30項目;衝動的な行動が見られないかなど)
4)言語・認知発達(26項目)
5)コミュニケーション能力・一般知識(8項目)
ーの5領域について評価した。
 中断時系列分析を用いてパンデミックの前後でのEDIスコアの1年当たりの変化(線形の傾き)を評価した。
 その結果、パンデミック前コホート(2018〜2020年、11万4,359人)に比べ、パンデミック後コホート(2021〜2023年、8万5,827人)では、言語・認知発達(平均変化量−0.45、95%信頼区間−0.48~−0.43)、社会的コンピテンス(同−0.03、−0.06~−0.01)、コミュニケーション能力・一般知識(同−0.18、−0.22~−0.15)が有意に低下していた。
 他方、感情的成熟度は有意に上昇していた(同0.05、0.03~0.07)。
 身体的健康・元気さについては、有意な変化は見られなかった(同0、−0.01〜0.02)。
 さらに、2010〜2015年、2016〜2017年、2018〜2020年、2021〜2023年の期間それぞれにおけるEDIスコアの1年当りの変化を推定したところ、すでに2018〜2020年には、全ての領域でEDIスコアが大幅に低下していた。
 特に、言語・認知発達、コミュニケーション能力・一般知識での低下は顕著であり、2016〜2017年と比較した2018〜2020年のスコアの平均変化量は、言語・認知発達で−0.28(95%CI 0.26〜0.30)、コミュニケーション能力・一般知識で−0.13(同0.10〜0.16)であった。
 著者らは、「園児の発達の悪化は、すでにパンデミック前に始まっていた。これには、スクリーンタイムの増加などさまざまな要因が考えられる。このことは、貧富の差の拡大、早期教育関わるスタッフの能力の向上が容易でないこと、ケアや教育へのアクセスに格差が存在することなど、米国における幼児の発達に関する問題が広範囲に及んでいることを示すものだ」と述べている。(HealthDay News 2025年3月13日)

<原著>
・COVID-19 Pandemic and the Developmental Health of Kindergarteners
Perrigo JL, et al. JAMA Pediatrics. Published online March 10, 2025. doi: 10.1001/jamapediatrics.2024.7057

日本の小学校を世界から見たら?

2025年05月13日 08時13分34秒 | 教育
「外国の小学校では生徒が掃除をしない、委託業者がやる」
と聞いて驚いたことがありました。
小学校はどこの国にもあると思われますが、
はて、日本の小学校は特殊なのでしょうか?
それを扱った映画・記事が目に留まりましたので紹介します。

読んでみて、
「日本は学校教育・生徒に求めるモノが多すぎるのではないか?」
という素朴な疑問が残りました。

もう少し書くと、
戦前までの「軍隊教育」の影響を残しつつ、
戦後の「人権尊重」が中途半端に普及した状態。

みなさんはいかがでしょうか。


▢ 「小学生が教室を掃除するなんて」世界が驚嘆…米アカデミー賞候補ドキュメンタリーが映した日本の普通の光景『小学校~それは小さな社会~』の山崎エマ監督が伝えたかったこと
山崎 エマ:ドキュメンタリー監督
2025.4.10:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 日本の公立小学校に通う1年生と6年生の学校生活を春夏秋冬にわたって描いた『小学校~それは小さな社会~』とその短編バージョン。山崎エマ監督によるこのドキュメンタリー映画によって、世界各国で「日本の小学生はすごい」と注目された。その理由は――。

▶ 『小学校~それは小さな社会~』の短編版でオスカー候補に
 第97回アカデミー賞授賞式(アメリカ現地時間3月2日)では、ドキュメンタリー映画賞に日本の作品がノミネートされ、話題になった。東京都内の公立小学校の教育現場を取材した短編『Instruments of a Beating Heart』だ。
 『Instruments of a Beating Heart』は、山崎エマ監督が小学校を約1年間150日、のべ7000時間取材した長編ドキュメンタリー『小学校~それは小さな社会~』(劇場公開中)から生まれた短縮版。長編は世界中で上映され、ロングランヒットを記録。小学生たちがみずから掃除や給食の配膳をする日本の公立学校の“普通”を映し出し、日本人の集団行動の様子にも海外から高い関心が集まった。
 アメリカでは「アメリカでは子供たちは(学校の)掃除をしない。これは『自分たちのことを自分でやる』ということを学ぶための最高の見本だ」、フィンランドでは「コミュニティづくりの教科書だ」、ギリシャでは「日本の子どもたちの責任感がすごい。小さな子どもたちを信頼する先生もすごい」と感嘆と驚きの声が寄せられた。

▶ 日英にルーツを持ち、ニューヨーク大学で映画制作を学んだ
 今回のノミネートにより、初めて山崎エマ監督を知ったという人もいるだろう。父親がイギリス人、母親が日本人で、19歳で渡米し、日本とアメリカの二拠点でドキュメンタリー作品を撮り続けているという山崎監督に、アカデミー賞授賞式の様子や作品に込めた思いなどを聞いた。

――短編には次年度の入学式で「歓喜の歌」を披露することになった1年生たちの演奏者オーディションから練習風景、本番までが収められています。主人公は、大太鼓をやりたいと手を挙げたあやめさん。今回は、彼女と一緒にアカデミー賞授賞式に出て、いかがでしたか。
【山崎エマ(以下 山崎)】アカデミー賞というアメリカの映画界トップの舞台は、普段コツコツと日本でドキュメンタリー制作をしている自分からは全く想像ができないようなキラキラした場所でした。今、小学5年生になったあやめちゃんのアメリカ行きは本人にとっても親御さんにとっても大きな決断だったと思いますが、最終日にあやめちゃんから「こんなすてきなところに連れてきてくれてありがとう」という言葉をかけてもらって。残念ながら、賞は獲得できませんでしたが、大きな価値をもらったような気持ちでした。

――海外ではこの作品に対してどんな反応がありましたか。
【山崎】欧米では特に「自国の教育のあり方と全く違う」という反応が多かったです。日本の小学校のように、自分が属している集団に対する責任感や役割、プレッシャーがあるのは、日本独自のものだと思うんですね。欧米は個人主義なので、他の人と違うことをやって自分の強みや個性を見つけていく教育で、逆の入口からスタートする良さや違いを感じたようです。

▶ 「日本の先生は子どもに厳しすぎる」という感想もあった
――「子どもたちの等身大の姿に感動した」という声も多いですね。
【山崎】あやめちゃんを筆頭に、子どもたちの成長をリアルに感じられるという評価もありました。でも、絶賛だけではありません。なかには、「先生が子どもに厳しすぎるんじゃないか」という声もありました。それは、教育を「子どもがみずから考えるもの」として観た人が多いからで、私自身、日本の教育が全部良いというスタンスではないんです。
――それはどういうことでしょう。
【山崎】映画の中ではあやめちゃんが楽器の練習をする中、壁にぶつかって、乗り越える姿が出てきます。私自身、小学校の音楽会や運動会、文化祭などの行事ごとに、いろいろなことで壁にぶつかり、それを乗り越えて、「もっといけるよ」と導かれて、そこでもっと頑張ってみたら楽しい景色が待っていたという経験をしました。けれども、学校に行けない子たちもたくさんいる中、役割を与えて努力を求める日本的な教育の危うさももちろんあると思います。ただ、私は壁を乗り越えた結果、今の自分がいて、自分のことを信じてくれた大人たちがここに導いてくれたと思っているんです。

▶ 日本の公立小学校を卒業、その後アメリカへ行き気づいたこと
――山崎監督は公立小学校を卒業した後、中高はインターナショナルスクールに通い、19歳で渡米したそうですが、日本の教育の息苦しさみたいなものも感じたのでしょうか。
【山崎】そうですね。自分はいわゆるハーフだったので、自分だけ周りの子たちと違うと感じながら過ごした小学校時代でした。特に低学年の頃は「英語をしゃべってみてよ」とからかわれたり、同じ街、同じマンションに住んでいるのに、どう頑張っても自分だけ違って見られることに対して違和感がありました。でも、アメリカの大学(ニューヨーク大学映画制作部)に行って何年か経った頃、日本の公立小学校、日本のインターナショナルスクール、アメリカの大学と、環境をがらりと3回変えてきた自分をどう生かせるか、見つけることができたんですね。
――そこで見えてきたのはどんなことでしたか。
【山崎】まず、教育システムを3回変えたことで対応力がつきました。19歳で日本を出た理由の一つには、やはり日本を息苦しく感じ、世界が広く輝いているように見えたことはありました。自分が活躍できる場は日本じゃないと思っていた時期もありました。でも、当時は日本の良さに全く気づけていなかった。例えば、電車が時間通りに来ること、他者への思いやりや配慮があることが普通過ぎて、それをすごいと思えたことがなかったんです。でも、海外に行って初めてそういう日本の良さに気づいて、自分のアイデンティティや考え方の原点に日本の小学校があると思ったんです。

▶ 日本人は自己批判が強く、良い面を誇ることができない?
――山崎監督の感じた日本の良さと弱点はどんなことでしょうか。
【山崎】全部が紙一重だと思います。例えば小学校では、集団生活が強要され、連帯責任や同調圧力があるのは悪い点とよく言われますよね。でも、他人を自分のことのように感じる思いやりとか共感、協力し合うことはすてきなところ。コロナ禍で日本の結束力が強かった理由としても指摘されていましたよね。
 ルールを破ろうとする人たちへの厳しさにも良い面と悪い面があって、“マスク警察”みたいな暴走もある一方、コロナ禍における死者数は少なかった。それに、日本は自己批判が強いんですよね。世界から見ると「日本はすごいね」とほめてもらえるのに、なんで日本社会にはこんなに幸せじゃない人たちが多いのでしょう。
――日本人の自己批判が強いのは、なぜだと思いますか。
【山崎】課題を受け止めつつも、良いところに気づいて誇りを持つ。そのバランスが取りにくいのかなと思います。だから教育についても、「日本の教育は全部ダメ」みたいな空気がありますよね。私自身、日本の悪いところしか見えなかった時期もありましたが、日本の“良いとこどり”して生きていけたらいいなと思うようになりました。
 今の社会で何をできるか?と考え、ドキュメンタリーや映像を通じて自分ならではの視点で気づきを提供できたら……と思い、日本に帰ってきたんです。世の中のルールなど、何かを変えるには時間がかかりますが、映画を見て“気付く”ことは一瞬でできる。同じ環境でも視点を変えるだけで幸福感や誇りを持てるし、本当の課題に集中できる。「全部ダメだ」という空気は損だから、課題と同時に良いところも伝えたいなと思います。

▶ 「教師はブラック労働だ」というイメージを変えたい
――「学校」や「教育」を題材にした作品はフィクション、ドキュメンタリー含めいろいろありますが、なぜこの作品がこんなにも話題になったのだと思いますか。
【山崎】教育に関して、不登校などの課題を取り上げてくれる方は他にもたくさんいらっしゃる。一方、職員はブラックだというニュースばかりが流れていて、教員のやりがいとか生きがい、人間らしい悩みなどは取り上げられていないですよね。そうした社会の真ん中を映画にしたいという思いが私の原動力になりましたし、世界の人も見たことがないから、評価していただいているのだと思います。

▶ 子どもは大人が用意した“箱”でたくましく成長していく
――実際に1年間取材をされた中で、日本式の教育で子どもたちは成長していると感じましたか。
【山崎】そうですね。子どもたちって大人が決めた“箱”、教室や学校という箱の中ですくすくと育っていくと思うんです。だからこそ、先生たちだけではなく、教育のことを決める私たちにも責任があることを感じます。映画で映し出したように、コロナ禍でどうなるかわからない状況でも、子どもは成長していけるんですね。だからこそ大人たちが用意する箱の中身が大事で、社会全体が自分ごととして未来のことを考えていけたらいいなと思います。

▶ ドキュメンタリー監督としてのやりがいと今後のビジョン
――ドキュメンタリーだから描けるもの、伝えられるものをどうとらえていますか。
【山崎】日本におけるドキュメンタリーの定義は、海外から見るとまだまだ狭い。でも、逆にまだまだ可能性があると思っています。実際に存在している人たち、存在している環境を使わせてもらって何かを表現するんですけど、単なる記録ではなく、そこに何百、何千時間もいたから感じ取れたものを自分なりに凝縮した真実として届ける。そのために自分の人生の莫大な時間をかけ、持てる限りの責任感と能力を注いでやる。だからこそフィクションでは絶対撮れないような言葉や表情、人の姿が撮れる。それがドキュメンタリーで、そのストーリーに「。」(マル)はつかないし、観た人が自分もその場にいるかのような体験ができる。映像と音だけで勝負することに大きな魅力を感じています。今回、ドキュメンタリーを観たことがないという皆さんが劇場で観て下さっているのもうれしいです。
・・・

<参考>

スマホは子どもの脳をダメにする?

2025年05月12日 11時42分51秒 | 子どもの心の問題
賛否両論、喧々顎学の「スマホと子ども」。
便利なものではありますので、
「依存するのではなく、うまく使いこなす・つき合う」
ことに尽きると思うのですが…

今回は否定的な記事を紹介します。

<ポイント>
・スクリーンタイム(平日一日当たりのテレビ、スマートフォン、ゲーム機等の画面の視聴時間)が1時間を超えてしまうと、極端に学力が低くなる。
・利用時間が伸びるのに比例して、数学・国語・理科・社会いずれの学力も低下する。論理的思考力、記憶力、集中力、読解力など、学習能力全般に影響がある。
・小学生で約4割、中学生で約5割が、学習以外の目的で一日にスマホを3時間以上使用している、小学生男子に限定すると、「5時間以上」と答えた割合が約19%と、およそ5人に1人。
・学習時間や睡眠時間と関係なく、スマホ利用時間そのものが学力に影響を与えている。たとえ2時間以上勉強したとしても、スマホを3時間以上使ってしまうと、ほとんど家で勉強をしないけれどもスマホを使わない生徒たちのほうが、成績が良くなってしまう。
・スマホを長時間使うと子供の学力が低下する原因は、実は脳の発達に問題が生じるから。


▢ スマホは子供を脳をダメにする…7万人の調査で判明した「子供のスマホ利用が医学的にマズい理由」子供の頃から「スマホを触って育った人間」の恐ろしい末路
川島 隆太:東北大学加齢医学研究所教授
プレジデント:2025年4月4日)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ どれだけ勉強してもスマホを使えば台なしに
 スマホがなくてはならない存在になりつつあるのは子供の世界も同様だ。NTTドコモモバイル社会研究所の調査では、今や小学校高学年の4割、中学生の7割が所有している。しかし、スマホ使用に伴うリスクについてはまだあまり知られていない部分も多い。
 スマホが子供の学力破壊につながる危険性を指摘しているのが、脳科学者で東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授だ。川島氏は宮城県仙台市の小中学校に通う児童・生徒のべ7万人の生活習慣と学力の追跡調査を10年以上行っており、スマホ利用のリスクを訴え続けている。
「平成22(2010)年から始まった大規模調査によってまず明らかになったのは、スクリーンタイム(平日一日当たりのテレビ、スマートフォン、ゲーム機等の画面の視聴時間)が1時間を超えてしまうと、極端に学力が低くなるという事実です。利用時間が伸びるのに比例して、数学・国語・理科・社会いずれの学力も低下することがわかりました。教科を問わないことからも、論理的思考力、記憶力、集中力、読解力など、学習能力全般に影響があると推測しています」(川島氏、以下同)
 スポーツ庁が発表している「令和6年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」によると、スクリーンタイムの増加が見てとれる。学習以外のスクリーンタイムが「3時間以上」の割合は小中学校男女ともに増加しており、令和6(2024)年度の数字は平成28(2016)年度の調査開始以来、最も高い割合となった。小学生で約4割、中学生で約5割が、学習以外の目的で一日にスマホを3時間以上使用しているという。小学生男子に限定すると、「5時間以上」と答えた割合が約19%と、およそ5人に1人の計算になる。
 調査開始当初は、「スクリーンタイムの増加に伴い、学習時間や睡眠時間が減少したことが学力低下の原因ではないか」という意見もあったが、学習時間や睡眠時間と関係なく、スマホ利用時間そのものが学力に影響を与えていることも判明したという。

▶ スマホがあるだけで集中力が奪われ成績低下
「データをさらに細かく見ていくと、たとえ2時間以上勉強したとしても、スマホを3時間以上使ってしまうと、ほとんど家で勉強をしないけれどもスマホを使わない生徒たちのほうが、成績が良くなってしまうという事実も発見しました」
 その後、川島氏の研究チームでは、子供たちの脳発達の経年変化を探るべく、MRI計測で観察する試みも行ったという。
「3年ごとに子供たちに大学に来てもらい、脳の形のMRI写真を撮らせてもらったのです。それと同時に生活習慣に関するアンケート調査も実施し、一日にインターネットをどれくらい利用しているのかを質問項目に入れました。すると、インターネットの利用時間が長い子供ほど、3年前の写真と脳の状態が変わっていません。脳の発達が止まっている領域がたくさんあり、大脳においては3分の1の発達が止まり、大脳白質という大脳同士をつないでいるネットワークの部分に関しては、領域全般にわたって発達が止まることがわかりました。この事実を踏まえると、スマホを長時間使うと子供の学力が低下する原因は、実は脳の発達に問題が生じるからだと言わざるをえません」
 スマホに電源が入っているだけでも負の影響が生じることが、さまざまな研究結果によって明らかとされているそうだ。
「スマホはプッシュ型で情報が入ってくるデバイスなので、『何か連絡や通知が入るのではないか』と注意がそがれがちです。電源の入っているスマホを近くに置いて寝ると、眠りが浅くなることも複数の研究で指摘されています。実際は鳴っていないのに通知音が聞こえたり、バイブレーションを感じたりした経験のある方は少なからずいると思いますが、まさに『いつ情報が来るか』に気を取られていることの表れでしょう」
 スマホが注意力を奪うことは海外の研究報告でも明らかにされている。例えば、米テキサス大学オースティン校のワード准教授らが大学生を対象に行った実験。自身のスマホを、
① 机の上に置く
② ポケットに入れる
③ 別室に置く
の 3群に分け、記憶力検査と非言語知能検査を実施したところ、それぞれの検査の成績はいずれも、
③ 別室に置く
② ポケットに入れる
① 机の上に置く
の順になったという。
 スマホの操作に意識を向けなくても、スマホが手元にあるだけで注意力が散漫になる現象を「Brain Drain(脳からの資源流出)」と定義し、注意を促している。
 動画の視聴、ゲーム、SNS、メッセージのやり取りや通話など、同時に複数のことができるデバイスなのも重要なポイントだ。
「スマホゲームの一回のプレイ時間は短いものが多く、1~2分程度で決着がつくものが大半です。かつては、ゲームといえば専用ハード機器にソフトを入れて遊ぶのが一般的で、長時間プレイを止められないことを問題視する場面のほうが多かったように思います。しかし、現在ではそのような集中さえも維持できなくなっているのです。スマホは、動画を視聴しながら広告の合間にメッセージを返信し、さらにゲームをプレイするといった使い方がしやすい構造になっています。アプリ開発側もこのような利用スタイルを前提にしているからこそ、集中力がなくても楽しめるアプリやゲームが意図的に作られているわけです」
 川島氏は、仙台市の子供たちを対象とした調査の中で、4教科の平均偏差値を、LINE、動画、ゲーム、音楽の使用頻度ごとにわけた算出も行っている。するとすべてのアプリにおいて、勉強中に使用する頻度が高いほど学力が低くなることがわかった。スマホを使った「ながら勉強」は、今すぐにでもやめさせたい習慣だ。




CBIT(シービット)~チックのための包括的行動療法的介入~

2025年05月05日 19時04分13秒 | 子どもの心の問題
チックへの治療介入、実践編です。

日本小児科学会2025の講演(講師:木田哲郎氏)を聴講していて、
CBIT(Comprehensive Behavioral Intervention for Tics)なるものを、
初めて知りました。

始まりはダクラス・ウッズ教授(ウィスコンシン大学)、
時は2010年(論文掲載)。

論文の内容は、
・小児126名にCBITを行なった。
・52.5%に有意な改善が認められた。
・施行半年後も効果は維持されていた。
というもの。

さて、CBITとはいったい、どういうものなのでしょう?
そこには、チックのメカニズムへの考察と、
それに基づいた対処法が示されています。

まず、「チックは自己治療的なスッキリ依存症である」という表現が腑に落ちました。
それを根拠に近年、従来の「見て見ぬふりをする」から「積極的な介入」への方針転換がなされてきたのです。

また、改善しにくい「汚言」は他人がいない状況では衝動が起きないことから、環境要因の影響が強い心身症の側面があると感じました。
ストレス反応による心身症・自律神経の乱れ・・・漢方薬の出番ですね。

人はストレスを感じると喉が詰まる感覚が生じることがあります。
それを解消するために咳ばらいをしますよね。
この一連の流れはチックと似ていると思います。
そして漢方医学ではは、「のどのつまり=気うつ」と捉え、
それを解消する漢方薬「半夏厚朴湯」を用意しています。
私は「咳チック」(咳払いのクセ)の相談を受けると処方していますが、
十分に手ごたえがあります。

精神科の薬を使用する前に、漢方薬を試すことをお勧めします。

ちょっとショックだったのは、
「怒り発作をコントロールするために必要なのは、
 のびのびとした需要的な子育てではなく、
 家庭内のルールを明確に決めた“枠にはめた”子育てである。」
という文言です。
子育て本を読みまくってきた私は、
「子育ての極意は“安心を確保して自由を与える”ことに尽きる」
と思ってきましたが、これとは対極にある考え方…
子育てに必要なのは“自由”ではなく“管理”?
混乱してきました。

講義メモを備忘録として残しておきます。

<ポイント>
・チックはムズムズする不快な(前駆)衝動を解消するために仕方なく自ら出している(半)随意的な運動、あるいは発声である。
・なぜ(前駆)衝動が生じてくるのかは明らかにされていない。
・拮抗反応(チックを出させない筋肉の使い方)によりチックをブロックして前駆衝動を落としていくハビットリバーサルがCBITの肝である。
・家庭内でチックをタブーにしてはいけない。従来のチックを見て見ぬふりをするのは間違い、チックに気付いて意識することが大切。家族はチックを指摘するのではなくCBITの練習を促すようにすることが正解。
・チックがひどいからと言って周りがやさしくなって、腫れ物に触るように扱いだすと、楽ができると誤った学習をした脳がさらにチックを出すようになる。
・チックを出すと呼吸が乱れ、呼吸が乱れると自律神経が乱れ、自律神経が乱れると交感神経優位になりチックを誘発しやすい。この悪循環を断ち切るためにあえて意識的に深呼吸をすると自律神経の乱れが落ち着いてチックが減っていく。
・オリジナルCBITを改良したCBITキダメソッドでは有効率が95%、年齢は小学校就学年齢が最も効果が高く、加齢に伴い効果が減少していく。
・かんしゃく持ちは効果が低い。
・チックは強迫行動と関連付けられる。CBITキダメソッドでは「体がムズムズするのをチック」「脳がムズムズするのを強迫行動」と考えている。
・怒り発作をコントロールするために必要なのは、
 のびのびとした需要的な子育てではなく、
 家庭内のルールを明確に決めた「枠にはめた」子育てである。
・母親の過干渉がチックの引き金になっている例では、母親に対して、
 「10言いたいことを1にしてください」と指導している。


▶ オリジナルCBITの基本構造
1.ハビット・リバーサル・トレーニング
① 気づきトレーニング…トゥレット当事者本人がチックと前駆衝動に気づくためのトレーニング
② 拮抗反応トレーニング…チックを出させないようにする動作によりチックを止めていくトレーニング
③ ソーシャルサポート…保護者や家族がハビット・リバーサルを使ってチックを止めていくことを促す
2.機能に基づく対処法
① 機能に戻づく評価…日々のチックの悪化・好転をモニターし、影響する環境条件を絞り込む
② 機能に基づく介入…チックを悪化させる日常の習慣などを変えていくための働きかけを行う
3.リラクセーショントレーニング
① 筋肉弛緩法と腹式呼吸によるリラクセーション…リラクセーションによりストレス、緊張、不安を減らしてチックの悪化要因を取り除いていく

▶ オリジナルCBITの原理
(ハビットリバーサル)拮抗反応によりチックを出させないようにして前駆衝動の苦痛にならしていきつつ
(機能に基づく対処法)機能評価でチックの引き金になる条件を排除していき
(リラクセーション)リラクセーションでチックの出やすいメンタルを癒して
→ チックを元から減らしていく手法

▶ 拮抗反応とは?
・チックをブロックする方法
・各チックにはそれに適した拮抗反応が存在する
・拮抗反応によりチックをブロックして前駆衝動を落としていくハビットリバーサルがCBITの一番の肝である
(例)
✓首振りチックの拮抗反応は「あごを引く」こと
✓音声チックの拮抗反応は「口から吸って鼻から吐く呼吸」

▶ チックの正体
● チックは勝手に出てくる不随意運動ではない
・長い間チックは勝手に出てくる不随意運動であるとされてきた。
・当事者の立場から言うとそれは大きな間違いで、
 チックはムズムズする不快な(前駆)衝動を解消するために仕方なく自ら出している(半)随意的な運動、あるいは発声である。
● チックの前には必ず(前駆)衝動がある
・チック・トゥレットの患者は、体のいろいろな部位に発生する不快感、違和感に敏感なところがあり、これらの不快感、違和感を解消する動きや発生を無意識に探した結果、たどり着いて習慣化したのがチックと呼ばれる動きや発声になる。
・これらの不快感、違和感は(前駆)衝動と呼ばれる。
・なぜ(前駆)衝動が生じてくるのかは明らかにされていない。

▶「チックを出すとスッキリする」を逆手にとって開発された行動療法
・チックを出すと(前駆)衝動が一瞬スッキリする。
・この「スッキリ」を脳の報酬系が喜び、何度も経験したがるのがチックが繰り返される理由と考えられている。
・これは依存症の発生するメカニズムと似ており、チックを出せば出すほどもっと出てくるようになる。
・チックを出すと「スッキリ」が発生するので、「スッキリ」させないのがチックを改善していく鍵である、という仮説から、ハビット・リバーサルという行動療法が1970年代にアメリカで考案された(アズリン&ナン)。
・(前駆)衝動の刺激に対して拮抗反応(チックを出させない筋肉の使い方)でチックをブロックすると、ネガティブ強化サイクルを断ち切ることができる。

▶ チックと(前駆)衝動は気づいて意識することが大事
・家庭内でチックをタブーにしてはいけない。
・チックと(前駆)衝動にしっかり気づいて意識してい浮くことでチックの改善は始まる。
・チックを意識しないようにして出し放題にしていると、チックのネガティブ強化サイクルのせいでますますチックは増えていく。
・家族はチックを指摘するのではなく、CBITの練習を促すようにする。

▶ チックの引き金(出やすい場面、状況)
…基本的にテンションが高くなる時に出やすくなる。
…引き金になっているとしても、減らしようのない条件が多い。
✓ご飯を食べているとき
✓ゲームをしているとき
✓勉強しているとき(とくに問題が解けないとき)
✓スポーツをしているとき(している最中、終わった後など)
✓親子喧嘩・兄弟げんかをしているとき
✓学校から帰宅した時
✓友達と楽しく話したり、遊んでいるとき
✓緊張しているとき
✓ワクワク、ドキドキしているとき
✓チックを出してはいけないと思うとき

▶ チックに正面から向き合うことで改善が始まる
・チックは自ら出しているということを理解する。
・チックでしんどいからと言って保健室で休んだり、学校を休んだり、横になったりしてしまうことはかえってチックを悪化させることがある。
・チックがひどいからと言って周りがやさしくなって、腫れ物に触るように扱いだすと、楽ができると誤った学習をした脳がさらにチックを出すようになる。

▶ オリジナルCBITの課題
・包括的(Comprehensive)である必要があまり感じられない。
 特に機能評価という部分は手間がかかるだけで実効性があまりない。
・ハビット・リバーサルだけでも機能する。
・不要な書類が多すぎる。
・衝動を落としていくための様々な呼吸法の重要性が認識されていない。
・親(おもに母親)との関係性の重要さに焦点が当たっていない。

→ オリジナルCBITに、様々な呼吸法とコーチング的な要素を補完したものがCBITキダメソッド

▶ チック対策としての呼吸の重要性
 チックを出すと呼吸が乱れる
 ↓
 呼吸が乱れると自律神経が乱れる
 ↓
 自律神経が乱れると交感神経優位になりがち、
 興奮気味になってチックの引き金が引かれやすい
 ↓
 この悪循環を断ち切るために、
 あえて意識的に深呼吸を行い、
 自律神経の乱れを整えるとチックが減っていく

▶ CBITキダメソッドの流れ
 患児にチックと向き合う姿勢を持つ必要があることを伝える
 ↓
「チック階層表」でチックのリストアップをして、
 各チックの頻度や強さを数値化(SUDs)する
 ↓
 それぞれのチックに適した拮抗反応を考案する
 ↓
 チックを出したい気持ちの強さ(衝動の強さ)を数値化する
 ↓
 様々な呼吸法等を行い、衝動を落としていく
 ↓
 呼吸法や拮抗反応による衝動の提言を宿題として指示する

▶ 衝動を落とすやり方
・腹式呼吸
・4、8呼吸
・4、4、6呼吸
・ボックスブリージング
・息止め
・あくび
・筋肉弛緩
・ハミング法
・フリーズ
・眼球運動
・タッピング
・催眠、等

▶ チック階層表
・SUDsを患児に対して
 ✓どれくらいよく出ているか
 ✓どれくらい強く出てくるか
 ✓どれくらいうっとうしいか
 をざっくり数値化してもらう(10点満点)
・保護者の評価もカッコつきで入れる

▶ CBITキダメソッドによるSUDsの改善率
・効果ありが95%
 ✓著効(改善率70%以上)76%
 ✓有効(改善率50%以上)19%
・年齢別では、小学校就学年齢が最適期で、
 年齢が高くなるにつれ改善率は下がる
 ✓6歳以下:64%
 ✓7₋9歳:82%
 ✓10₋12歳:82%
 ✓13₋15歳:73%
 ✓16₋18歳:64%
 ✓19歳以上:53%
・かんしゃく(怒り発作)の有無と改善率の関係
 ✓かんしゃく有:70%
 ✓かんしゃく無:81%

▶ チックと強迫行動
・CBITキダメソッドでは
 ✓体がムズムズするのをチック
 ✓脳がムズムズするのを強迫行動
 とざっくり分けて考えている
・複雑運動チックや複雑音声チックと呼ばれるものは、
 強迫スペクトラム内のむしろ強迫行動寄りの症状なのではないか
・チックと分類されているが、実は強迫行動寄りではないかとも割れる症状;
 ✓汚言
 ✓汚行(中指立て、等)
 ✓亀のようにしゃがんで空中に文字を書く
 ✓独り言を言う
 ✓語尾に音が付く(~わん、等)
 ✓指のにおいをかぐ
 ✓家族に触る
 ✓「おやすみ」を何度も言う
 ✓部屋の隅を見たい
 ✓おしっこに何回も行く
 ✓何度も返事を強要する
 ✓何度も引き出しを閉めて音を聞く
 ✓自転車で手を放す
 ✓唾を吐く
 ✓斜め上を見て視線で三角形を作る、等
・強迫行動寄りの症状も、呼吸練習などによりチックと同じように改善していくことが多い。

▶ チック症状「汚言」
・汚言(性的汚言、死ね・殺す、等)は音声チックと分類されているが、体にムズムズ(前駆衝動)が生じるわけではなく、脳がムズムズしているので、チックというより強迫行動寄りの症状。
・強迫行動寄りのチックは通常CBITキダメソッドの呼吸練習などで改善していくが、汚言だけは非常に改善しにくい
・周りに人が全くいない状況になると、汚言を言いたい衝動は消失する傾向がある。

▶ チック症状「怒り発作」
・怒り発作(Rage Attack)はトゥレット障害の隠れたダークサイドとして近年欧米諸国では知られるようになってきたが、日本ではまだあまり認知されていない。
・トゥレット障害の子どもの4割程度に怒り発作(爆発的な怒り)あるいは怒り衝動(イライラ)が見られる。
・怒り発作が起こるとチックもひどくなる。
・怒り発作のある子たちにとって、怒りを発散することはチックを出すのと同じようにスッキリ感を得られる行動となってしまっている。
・子どもの怒り発作が常態化している家庭では、この子の怒りはトゥレットのせいだからどうしようもなく、自分たちはそれを受け入れていくしかないというあきらめた受容的雰囲気が支配していることが多い。
・CBITキダメソッドでは、そのような受容的な考えを間違いと断じ、家庭内に怒りを発散することを許さないルールを作らせることで、改善例を多数経験している。

▶「怒り発作」の改善法
・怒り発作の衝動とチックの(前駆)衝動は根元でつながっており、怒り発作をコントロールすることでチックが劇的に改善することがある。
・怒り発作をコントロールするために必要なのは、
 のびのびとした需要的な子育てではなく、
 家庭内のルールを明確に決めた「枠にはめた」子育てである。

▶ 母子の関係性とチック
・母子の関係性がチックの引き金を引くことがある。
・母親にトゥレットの遺伝的形質があると思われるケースでは、
 母親が神経質、過干渉で常に口うるさく、
 わが子を叱るような母子関係になって母子喧嘩が起こりやすく、
 それが怒り発作を誘発したり、
 チックの引き金を引いてしまっていることが多い。
・CBITキダメソッドでは母親に対して、
 「10言いたいことを1にしてください」
 と指導している。

▶ チックは自己治療的な「スッキリ」依存症である
・チックはトゥレット患者の体や脳に生じるムズムズする不快感(前駆衝動や不安)を解消するために自己治療的な行動として患者に半無意識のうちに発見され、脳の報酬系により「良いこと」として反復されされる現象である。
・呼吸の乱れからくる自律神経の乱れが不快感(前駆衝動)を増悪させ、チックをさらに悪化させる。
・オリジナルCBITのハビット・リバーサルは、不快感(前駆衝動)に対する「慣れ」(Habituation)を作り出し、「チックのネガティブ強化サイクル」を止めていく。
・CBITキダメソッドの様々な呼吸法は、自律神経の乱れを整えると同時に、不快感に対する「慣れ」を強化してチックの引き金を引かれにくくし、チックを改善していく。

▶ チック児の母親にはトゥレット気質が多い
・チック児の母親には「のんびり穏やか」というタイプが少ない。
・チック児の母親は、自他ともに認める「不安が強くてイライラしやすく、神経質で口うるさく、過干渉」タイプであることが多い。
・易刺激性の高いチック児が口うるさく干渉されると、いらいらしやすくなり、トゥレット気質のために同じく易刺激性の高い母親がいらいらしている子どもに対してさらにイライラして激しい母子喧嘩が起こり、チック発症や増悪を誘発するのではないか。


<参考>
シービッターズ(チック・トゥレットの子を持つ保護者のための無料オンラインコミュニティ)
日本CBIT療法協会:チック、トゥレットのためのキダメソッド


チック2025~“様子観察”から“積極的介入”の時代へ

2025年05月05日 10時23分35秒 | 子どもの心の問題
昔、「チックをする子にはわけがある」というブログを書きました。
2010年1月ですから、もう15年以上前ですね(光陰矢の如し!)。

さて、2025年の日本小児科学会でもチックの講演がありました。
演者はその昔、参考にした書籍の執筆者である瀬川先生の弟子です。

すると、この数年間で大変な変化・進歩があったことがわかりました。

まず、チック症状の年齢的変化という一覧表を興味深く拝見しました。
私の専門である小児アレルギー分野では、
年齢とともにアレルギー症状・疾患が変化する現象を「アレルギーマーチ」と呼んでいますが、
それを彷彿とさせる表です。

乳幼児期には「むずむず脚症候群」や「母子分離不安」が配置されていることに驚き、
さらに「多動」や、年長児の「強迫行動」も一連の症状に含まれると捉えるようになったそうです。

そして、チックの根本原因はまだ判明していませんが、その病態は、
ムズムズする感覚を運動で解消する疾患
の可能性があるとのこと。
そのような神経回路ができてしまっていると考えると、回路を変更する訓練で解消できる可能性も出てくる、というストーリーでした。

薬物療法の他にできることも具体的に紹介されています。
生活睡眠リズムの調整が基本ですが、
・包括的行動的介入(CBIT)
・マウスピースの治療
・鼻呼吸法
・外科的治療:脳深部刺激(DBS)
など、介入により改善が期待されるスキルが開発されてきました。

つまり従来の、
「ストレスを与えないようにして様子観察、自然に消えるのを待つ」
という方針から、
早期に積極的に介入し、
 自らチックをしないスキルを身に着け、
 大人まで持ち越さないよう治す
ことを目標とする方針に180度転換したのです。

薬物療法に、私が品擁している漢方の名前も出てきて、
親近感を覚えました。
私はチックや神経発達症(ASD/ADHD)児の困りごとに、
漢方治療を提案しています。


この講演では2種類の漢方薬しか紹介していませんが、
それでも手ごたえがないときは、第二・第三の選択も用意されています。

とにもかくにもこの講演は、目から鱗が落ちる想いで聞きました。
備忘録としてメモを残しておきます。


▢ チックの子ども達に向き合おう
(星野恭子Dr)

▶ チックの定義
・単一筋または複数の筋群に起こる短時間の、素早い、反復する、無目的に見える情動的な運動。
・学童の5~24%に見られる。

▶ Tourette症候群
・反響言語と汚言を伴うチック。
・1年以上、音声運動チックが続く。
・0.1~0.5/1000、男:女=4:1

▶ チック症状の種類
● 単純チック
・明らかに無目的な、素早くて単純な動きや音声
・幼児期、一過性、合併症が少ない
● 複雑チック
・持続がやや長く、意味のあるように見える動きや音声
・学童以上、持続する、強迫性症状、ADHD

▶ チック症状の分類
「運動」と「音声」、「単純」と「複雑」という視点で、
4つに分けられる。
① 単純運動チック:
・顔から上半身にかけて多い
(例)まばたき、目を動かす、口をゆがめる、
 鼻を動かす、首を振る、等
② 複雑運動チック:
・日常の動作に近い
(例)腕の屈伸、スキップ、飛び跳ねる、
 叩く、においをかぐ、等
③ 単純音声チック:
・単純な音の連続
(例)
 ✓「ンンン」などの声を出す
 ✓咳払いをする
 ✓鼻を鳴らす
 ✓喉を鳴らす、等
④ 複雑音声チック:
・言葉、文章など
(例)
 ✓汚言症(コプロラリア)…不適切な言葉、性的な言葉
 ✓反響言語(エコラリア)
 ✓反復言語(パリラリア)、等

▶ 症状の年齢的変化
乳幼児期:むずむず脚症候群、母子分離不安
6歳頃:多動(集中力欠損症)
7歳頃:運動チック(眼球・顔面・頭部)
8歳頃:運動チック(首・肩)
9歳頃:運動チック(腕・手)
10歳頃:運動チック(躯幹・下肢)
11歳頃:音声チック…発声(低音・音声)、言語(汚言・反響言語)、強迫行動(触れる、指打ち)
12歳頃:強迫行動(叩く・打つ、噛む)

▶ チックのメカニズム
・チックの本態は「ムズムズする感覚」を運動で解消する疾患(である可能性)。
・治療意欲を向上させることが治療に向かう。
・早期介入すると高校までに軽症化する。

★ 完全にチックが消失した症例(17歳)のコメント:
チックとはむずむずする感覚を運動や声で解消する脳の誤学習。
 CBITでムズムズをチックで解消しないように脳の回路を変更できる。
 コツがわかると抑制できる。

▶ 合併症の評価
1.感覚現象・前駆衝動
・ムズムズする
・チックをしたくなる
・チックをするとすっきりする
2.ADHD
3.強迫性障害(OCD)→幼稚な感覚的な衝動的なOCD
・しないと気が済まない
・したくなっちゃう
・言っては(やっては)いけないことを言い(し)たくなる
・気になるから考える・する
4.不安障害:過剰な恐がり
・分離不安(一人でできない)
・社会性不安(人前での失敗が心配)
・外傷性不安
・全般不安(病気が怖い、虫が怖い)
5.発達障害
・ASD(自閉スペクトラム症)
・学習障害
・知的障害
6.その他
・むずむず足症候群
・爪噛み
・夜尿
・睡眠障害、等

▶ チックの前駆症状の評価(Premonitory urge in Tic Score, PUTS)
1.チックをする前に、体の中がかゆく感じる。
2.チックをする前に、脳の中や体に圧力を感じる。
3.チックをする前に、「こみあげてくる」とか、緊張を感じる。
4.チックをする前に、何かが「しっくりこない」と感じる。
5.チックをする前に、何かが完璧でないように感じる。
6.チックをする前に、外に出さないといけない体のエネルギーを感じる。
7.チックをする前に、常にこれらの感覚がある。
8.これらの感情は、チックの前には必ず起こる。
9.チックをすると、かゆさ、エネルギー、こみあげる緊張・緊張感、「しっくりこない感じ」「完璧でない感じ」は少なくともわずかな時間無くなる。
10.たとえ短い間だけでも、私はチックを止めることができる。

▶ 小児の不安障害の評価~SCAS(スペンス児童用不安尺度)
① 分離不安
・一人で寝るのが怖い
・両親と離れると不安
② 社交不安障害(社会恐怖)
・皆の前で話すのが怖い
・他の人がどう思っているか
・学校でちゃんとできるか不安
③ 強迫性障害
・繰り返しやらないと気が済まない
・確認したい
④ パニック発作と広場恐怖
・人混みが怖い、ドキドキする
⑤ 外傷恐怖(限局性恐怖症)
・昆虫やクモが怖い
・犬が怖い
・お医者さんが怖い
⑥ 全般性不安障害
・何となく怖い
・何か悪いことが起きる

▶ 小児の強迫性障害
・汚染の恐怖、儀式的な洗浄、反復する確認(成人と同じ)
・強迫行為>強迫観念
・他者を症状に巻き込む傾向
 幼児期:喉が詰まる、ママと一緒がいい
 小学生:翌日の授業の確認、一人で寝れない、地震が怖い
 中学生:頻回に手を洗う、友達の目が気になる
★ チックに関連するOCD
・幼稚、未熟、衝動的
・禁止(してはいけない、言ってはいけない)に対してこだわる

▶ チック症状に影響を及ぼす因子
~神経回路のネットワークが影響しているので全部を治していかないと治らない。
・周囲の理解
・ムズムズ感
・不安障害
・強迫性障害
・衝動性・集中障害
・睡眠の問題
・過剰なメディア
・学習の問題
・保護者の理解

▶ チックの初期治療とガイダンス
・チックの原因はわかっていない
・ムズムズする感覚を運動で解消している
・ドパミン神経が関与しているが、セロトニンやノルアドレナリン等、他の神経も広く関連している
・治療に大切なこと:
✓早寝早起き朝ごはん、睡眠覚醒リズム
✓ゲームやメディアの制限
✓鉄分(アミン系神経を助ける)
自分で「ムズムズ」を理解し、チックを制御するチックをしない練習を自分でする
薬で治すものではない…飲んで治るものではない、どんどん薬を増やされて副作用で眠気・肥満となる

▶ 鼻呼吸法
1.しっかり口を閉じる
2.鼻でゆっくり呼吸をする
✓5秒 吸う(3秒でもOK)
✓2秒 そのまま
✓10秒 ゆっくり吐く
3.1を2分間続ける
4.1日3回やる

▶ 見通しを説明して安心感を与える
「絶対によくなりますよ」
…睡眠指導、非薬物療法、セロトニン系などまだまだ治療法がある。
「チックが出ない神経回路を持っていますよ」
…チックがない時間がある。→チックを出さない神経回路が存在する。
「悪くなったら連絡をください」
…チックは急激に悪くなることがある。電話で話すだけでも安心する。

▶ チックは感覚-運動-精神の“ネットワーク異常”
~異常を成人まで持ち越さないための生活指導
1.生活リズム
・早寝早起き:小学生は高学年でも21時就寝を目標
・ゲームの制限:ゲーム中に増悪、やめると改善
・過剰なメディア暴露には注意をする
2.家族指導
・家族の理解…本人のチックを叱責しないように
・嫌悪感を持たないように、症状だと言う理解を
・兄弟のりやきゃケアも重要
3.学校対策
・本人・家族と相談したうえで同級生への理解を
・個別学習の導入
・できなことはやらせない、無理させない
・時には学校に行かない日があってもよい、その場合、生活リズムとメディアは注意

▶ 薬物療法
1.チックに対する治療
①ドパミン拮抗薬
・リスペリドン
・アリピプラゾール
・ハロペリドール
等の少量投与(0.5~1㎎/日から始める)
② 極少量L-ドパ療法(保険適応外、ドパストン散0.5㎎/㎏/日)
2.ADHDに対する治療
① グアンファシン
② アトモキセチン
3.強迫性障害に対する治療
① フルボキサミンマレイン散(25㎎から開始)
4.不安に対する治療
① タンドスピロン(5~10㎎/日から開始)
② 漢方薬:抑肝散、抑肝散化陳皮半夏、等
5.その他
・クロナゼパム
・トピラマート
・バルプロ酸ナトリウム
・レベチラセタム、等

▶ 非薬物療法~治療意欲が問題になる
1.睡眠リズムの安定(睡眠の質の向上)
 早寝早起き、昼間の運動
2.包括的行動的介入(CBIT)
3.マウスピースの治療
4.鼻呼吸法
5.外科的治療:脳深部刺激(DBS)

▶ 年齢別治療・介入:幼児期
…瞬きなどの単純チック、むずむず脚症候群、ADHD
・鉄剤(フェリチン40μg/ml以下の場合)
・極少量 L-ドパ療法(ドパストン散 0.5mg/kg/日)
・抑肝散、抑肝散化陳皮半夏
・呼吸法

▶ 年齢別治療・介入:小学校低学年
…複雑チック、強い音声チック、ADHD、不安障害、むずむず脚症候群
・アリピプラゾール(ARP)0.5~1㎎/日
・グアンファシン(GXR)1㎎/日
・フルボキサミン(FVX)12.5~25㎎/日…8歳以上
・メラトニン0.5~1㎎/日…入眠困難に、FVXとは併用禁忌
・漢方薬
・呼吸法

▶ 年齢別治療・介入:小学校高学年
…複雑チック、汚言、前駆衝動が明確化、強迫性障害、ADHD/ADD、不安障害、睡眠障害
・ARP
・GXR
・FVX
・RPD
・入眠困難にメラトニン
・思春期の対応
・包括的行動的介入(CBIT)

▶ 年齢別治療・介入:中学生
…複雑チック、性的汚言、強迫性障害、ADHD/ADD、OD、反抗期、思春期特有の変化、治療抵抗性、睡眠障害、ゲーム障害
・ARP
・GXR
・FVX
・メラトニン
・抗てんかん薬、等
・CBIT
・歯科スプリント治療
・思春期としての対応
・OD治療

▶ 年齢別治療・介入:高校生・成人
…うつ等の精神症状、ADD/知的障害、就労の問題、結婚・挙児等、重症トゥレット症
・抗てんかん薬
・向精神薬、等
・精神科への移行
・CBIT
・歯科スプリント治療
・重症例には深部脳刺激(DBS)
・就労支援、等

▶ チックの重積状態
・10歳前後で経験する
・数秒に一度、体を反らす、首を激しく降る、絶叫する、等、生活が送れないほど。
・一時的に鎮静効果が強い薬剤を増量する(GXR、リスペリドン、ARP、クロナゼパム、等)
・症状が落ち着いたら以前の量に減量する。


子どもの脳にいい「ブレインフード」があるらしい。

2025年04月13日 12時31分37秒 | 育児
子どもの未来に無限の理想を託す・・・親が陥りがちな白昼夢です。
そんな中、早期教育は無効、強制してやらせてはいけない、等、
過剰な期待の弊害も指摘されています。

食べ物はどうでしょうか?
素材を味わう自然食品を心がけ、
たんぱく質と脂質を中心に置き、
ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取すれば足る、
を私は思いますが。

脳によい「ブレインフード」なるものが存在するそうで、
それを取り扱った記事が目に留まりましたので紹介します。

記事で取りあげられた食材を列挙してみます;
・ベリー類:ビタミンCが豊富・・・免疫系、脳にも働く
・スモモ(プラム、プルーン):トリプタファンが豊富・・・気分の安定に関わる神経伝達物質のセロトニンや、睡眠を促すメラトニンの生成に関与
・サツマイモ:ビタミンAが豊富
・魚:DHAが豊富
・その他:オーツ麦、ナッツ類、柑橘類、豆類、さまざまな色の野菜

・・・以上の食材がお勧めで、最後の一押しは「親がお手本を見せる」こと、
つまり上記食材を子どもの前で親が美味しそうに食べることだそうです。

あれ?
たんぱく質・脂質・糖質(炭水化物)のバランスについての言及がありませんね。
まあ、バランスのよい食事ができているという前提なのでしょう。


▢ 脳にいい「ブレインフード」とは、子どもの脳には特に重要
脳の健康に重要な約45の栄養素から子どもが食べやすいものを紹介
2025.04.02:National Geograpic)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 
 「ニンジンに含まれる栄養素は目の健康に欠かせない」「カルシウムが豊富な牛乳は歯や骨のためにいい」といった話はみな聞いたことがあるだろう。では、脳によい食べ物についてはどうだろう。
 「神経科学の観点から言うと、実際、脳の健康のために食べ物は重要です。脳は栄養素を燃料にして機能していますから」と、米ワイル・コーネル医科大学ウィメンズ・ブレイン・イニシアティブを主導するリサ・モスコーニ氏は言う。
 脳は年齢によってさまざまな栄養素を必要とする。とりわけ、幼児期は脳の成長や発達、健康にとって特に重要な時期だ。(参考記事:「皮を食べないと大損する野菜や果物、キウイやニンジン、柑橘類も」)
 「生まれてからわずか数年の間にも脳は急激にニューロン(神経細胞)を成長させていきます」と、神経科学者でもあるモスコーニ氏は言う。
 現在、脳の健康にとって重要な栄養素は約45あると分かっている。タンパク質、亜鉛、鉄、コリン、葉酸、ヨウ素、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12、オメガ3脂肪酸などだ。
 もちろん、「葉酸」「コリン」と聞いて「おいしそう」などと思う人は、子どもにも大人にもそういないはずだ。そこで、そうした栄養素を豊富に含む食べ物に目を向けてみよう。以下に挙げる食材のほかにも、オーツ麦、ナッツ類、柑橘類、豆類、さまざまな色の野菜を食事に取り入れるとよい。(参考記事:「体にいいナッツ5種、がんや認知機能などに効果、ベストはどれ?」)
 「早いうちに始めることが大事です」と、米ボストン小児病院の小児科医で米ハーバード大学医学部の小児科助教のクレア・マッカーシー氏は指摘する。「子どもが健康によい食べ物しか知らなければ、そうした食べ物を食べる・食べないで親と揉めることはかなり少なくなります」
 取り入れる食品群をいくつか絞って、新しい調理法をトライしてみよう。家族の脳の成長にいいものを提供することは、思ったよりも簡単なはずだ。

▶ ベリー類
 ブラックベリーやブルーベリーなどのよく見かける安価なベリー類にも、ビタミンCが豊富に含まれている。ビタミンCというと免疫系を思い浮かべる人が多いが、脳にも必要な栄養素だ。体内に生じたフリーラジカル(遊離基)はDNAや細胞にダメージを与えるが、それを中和する上で、抗酸化物質であるビタミンCが重要な役割を果たす、とモスコーニ氏は言う。
 「神経伝達物質、すなわち神経系の信号伝達に使われる化学物質の生成にもビタミンCは重要です」と、モスコーニ氏は説明する。ビタミンCが不足すると、脳を含め、多くの体内組織の結合が弱まり始めるという。(参考記事:「「ビタミンCで風邪を予防」のウソ、誤解生んだノーベル賞化学者」)
 ラズベリー、ダークチェリー、マルベリー(クワの実)、ゴジベリー(クコの実)も優秀な食材だ。ベリー類には、天然の糖分と消化器系に重要な食物繊維もバランスよく含まれている

子どもに食べさせるには:今回のリストの中では、おそらくベリー類が一番食べてもらいやすいが、変化を付けたいのであれば、ヨーグルトやダークチョコレートに浸して食べるのがモスコーニ氏のお勧めだ。
 ダークチョコレートには、トリプトファンという必須アミノ酸が含まれていて、それ自体も脳によい食べ物だ。または凍らせたベリー類をシャーベットにしてレモン汁とメープルシロップを少しかけて食べるのもよい。(参考記事:「冷凍の野菜と果物、実は栄養たっぷり、生よりよい場合も」)

▶ スモモ(プラム、プルーン)
 生のスモモ(プラム、プルーン)にも、ドライフルーツにしたスモモにも、トリプトファンが豊富に含まれている。トリプトファンは、気分の安定に関わる神経伝達物質のセロトニンや、睡眠を促すメラトニンの生成に関わっている。睡眠は脳の休息であり補修の時間だ。(参考記事:「睡眠薬が脳の掃除を妨げているおそれ、認知症とも関連、最新研究」)
 チアシードや、ダークチョコレートの原料であるローカカオ(生のカカオ)にもトリプトファンが含まれている。

子どもに食べさせるには:ドライフルーツのスモモは甘さと独特の味わいが絶妙に合わさっており、ピューレ状にすれば、赤ちゃんの離乳食になる。もう少し成長したら、リンゴの代わりにスモモを丸ごと弁当に入れるのもいい。あるいは、半分にスライスしてピーナッツバターをたっぷり塗れば、食物繊維とタンパク質たっぷりのヘルシーなおやつになる。(参考記事:「大腸がんのリスクを下げる食物繊維、1日にどのくらい取るべき?」)

▶ サツマイモ
 「子どもの脳の健康にいい食材を1つだけ挙げるとしたら、濃い緑色をした葉野菜を選びます」とモスコーニ氏は言う。とはいえ、正直なところ「子どもは葉野菜を食べてくれません」と認める。
 では代わりに、サツマイモはどうだろう。自然の甘味があり、いろいろな料理に使え、ビタミンAという別の抗酸化物質が豊富に含まれている。ビタミンAは脳の健康全般に重要な必須栄養素で、深刻なビタミンA不足は、中枢神経系の発達と機能を妨げるおそれがある。

子どもに食べさせるには:ゆでてつぶす、オーブンで焼く、揚げる、グリルで焼く、フライドポテトやタルト、パンケーキ、スープにするなど、レシピは無限にある。(参考記事:「ビタミンやミネラルの相乗効果、一緒に取るといい組み合わせ6選」)・・・

▶ 魚
 人の脳の半分以上は脂肪でできている。つまり、脂質が神経の健康に何らかの役割を果たしているのは明らかだ。だが、どんな脂質を摂取するかが重要だ。
 例えば、オメガ3脂肪酸の一種、DHA(ドコサヘキサエン酸)は、ニューロンの形成に極めて重要だ。ニューロンは、健全な脳の成長や発達、学習能力を担っているとモスコーニ氏は説明する。
 DHAを摂取するには、「脂肪の多い冷水魚に注目すべき」だという。DHAが豊富なのは、サケのほか、サバ、アンチョビ(カタクチイワシ)、イワシ、ニシンなどの青魚だ。(参考記事:「DHAなどオメガ3脂肪酸は「肺の健康にも重要」、初の報告」)

子どもに食べさせるには:幼い娘がいるモスコーニ氏は、「ワンランク上のフィッシュ・スティック(衣を付けて揚げた棒状の料理)」と名付けた料理をよく作るという。魚の切り身を卵液に漬け、細かく砕いたピスタチオとアーモンド、パン粉、塩を混ぜたボウルに入れて衣を付ける。ココナッツオイルかエキストラバージンオリーブオイルでソテーしてできあがり。
 もちろん、子どもが青魚に手を出そうとしない場合は、冷凍食品コーナーで定番のフライやスティックを使って、魚の味に慣れさせるのも手だ。ティラピアやタラにも、健康にいい脂肪酸が含まれている、とマッカーシー氏は言う。
 マッカーシー氏から最後にもう1つアドバイスがある。それは「親が手本を見せること」だ。
 「子どもは親を見ていて、親から学びます」とマッカーシー氏は言う。「健康によいブレインフードを子どもに食べさせたいのなら、親も食べるべきです」(参考記事:「いつまでも記憶力は保てる、脳にいい運動の程度と食事とは」)



子どもを“フロー”状態に持っていくスキル

2025年04月13日 11時06分43秒 | 子どもの心の問題
何かに集中して他のことを忘れる時ってありますよね。
大人でスポーツをしている方はご存知と思われますが、
ランナーズハイやスイマーズハイ、等もその例です。

完全になにかに没頭している状態を「フロー」と呼ぶそうです。
子どもがフロー状態の時、成長と幸せを促すとのこと。

私はこれを聞いて、中学生の時に呼んだヘルマンヘッセの小説(エッセイ?)を思い出しました。
ある生徒が窓の外を見て空想の世界に浸っているとき・・・
ふつうの先生であれば、
「こら、ボーッとしているんじゃない!」
と叱るのが一般的ですが、
小説に登場する先生は、気づいても何も言わずにそのまま様子を見ていたそうです。

随分昔の話しでしょうけど、
その先生は「フロー」の大切さを認識していたのかもしれません。

SF少年であった私にも、
授業中に空想の翼を拡げて別世界に行っていた経験があります。
記憶が残っているということは、
その時の先生もスルーしてくれたのでしょう。

記事を読んで感じたこと。
なんだか「子育て指南書」を読んでいる錯覚に陥りました。

子どもがフロー状態に入りやすい環境を作るためには、
1. 子どもが何に興味をもつかを探る
2. 気が散るものを排除し、邪魔されない時間を確保する
3. 子どもに「足場」を用意してサポートする
4. 成果を重視しない
等が大切、と説明しています。

結局、
子どもをしっかり見つめて観察し、
コミュニケーションを取り、
安心を与えて自由にさせる、
ということに尽きると。

そして“成果”ではなく“過程”を評価するには、
子どものために時間を割いてエネルギーを使ってしっかり見つめる必要があります。


▢ 子どもを夢中な「フロー状態」に導くには、創造性を育み幸せに
子どものポテンシャルとやる気を引き出すために、親ができる後押しの4つの秘訣
2025.04.03:National Geographic)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 ギターを弾くなど、子どもが邪魔されずにやりたいことをするとき、「フロー状態」になることがある。専門家によれば、このように何かに完全に没頭している状態は、子どもの健やかな成長と幸せを促すという。
・・・
 心理学者によると、人が満ち足りた幸せを得るのは、何かに夢中になっているときや、誰かと重要な関係性を築いているとき、達成感とともに技能や知識を得られるような目標に向かっているときだという。
 不確かな状態や恐れなどは、子どもの活気を奪う要因になる。「現代の私たちは、脅威や安全に対する感覚が過度に高まりすぎて、何かにチャレンジすることが難しくなっています」とフロウ氏は指摘する。(参考記事:「子どもの心の健康にも「沈黙は金」、その大きな効果と処方箋」)
 しかし、エミーさんがドラゴンに出会ったように、虚脱感に対抗する手段はある。「フロー」だ。フローとは、何かに没頭している状態を指し、充実した幸せをもたらす特徴的な要素をいくつも備えている。
 フロー状態の子どもは、自分がしていることに完全に夢中になっていて、時間がたつのを忘れ、食べる・寝るといった身体的な欲求すら忘れてしまう
 「人はみな生まれつき、成長したいという欲求を持っています」とフロウ氏は言う。「子どもがフロー状態になるよう働きかけることは、子どもが自分のポテンシャルを模索し、発揮するのに役立ちます」(参考記事: 「私たちは実は努力が大好き、挑戦に駆り立てるドーパミンの力」)

▶ フロー状態の脳では何が起きているのか
 人がフロー状態のとき、脳では実にさまざまなことが起きていて、その全体像は単純ではないことがわかっている。
 米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の外科医であり神経科学者でもあるチャールズ・リム氏は、2008年2月27日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表した研究で、ジャズミュージシャンがピアノを演奏しているときの神経活動を調べた。
 すると、「即興で演奏しているとき、前頭前皮質(自己を客観的に観察することに関わる領域)の広い範囲が止まったようになっている」ことがわかった。
 また、「クリエイティブな活動をしている間は、感覚処理や運動処理を司る部分(の活動量)が増えているとみられる」とリム氏は語る。同様のパターンは、フリースタイル・ラップのミュージシャンや、コメディアン、風刺漫画作家にも見られた。
 簡単に言うと、人が没頭してフロー状態にあるとき、自意識は消えるが、している活動に対する意識が高まることが、脳をスキャンしたところわかった、ということだ。フロー状態に入ったダンサーは、例えば、おそらく筋肉の痛みは感じていないが、自分の動きを左右する曲には超敏感に反応している。
 このことは、子どもにとってどんな意味を持つのか。何をするかによって、またその人の専門の度合いによって(例えば「絵を描くのが好きな子ども」と「プロのアーティスト」の違い)、フローの状態には複数のレベルが存在するのではないか、とリム氏は推測する。
 現在進められている研究の中で、リム氏のチームは、音楽的な訓練を受けていない9~11歳の子どもを対象に、即興演奏中の脳の活動を調べた。ミュージシャンを対象にした実験と同様に、暗記した曲を演奏しているときと、即興で演奏しているときの脳のパターンを比べた。実験は、どんな音を鳴らしたとしても絶対に間違っているようには聞こえないような仕組みで行われた。
 「プロのミュージシャンと比べると、子どもの脳の活動はかなり控えめでした」とリム氏は言う。「子どもの脳のパターンと、訓練を経た大人の脳のパターンには、どのような関連性があるのかという興味深い疑問が生じました」
 とはいえ、「子どもが暗記から即興に移ったとき、つまり丸暗記から完全に夢中になれる活動に移ったときの脳には大きな違いがある」ことは明らかになった。今後続く研究によってさらに詳細が判明することだろう。(参考記事:「「推しがいること」は脳にとって薬か毒か、一方通行の関係の科学」)
 神経化学の観点から言うと、フロー状態では、学習や記憶、感情の制御に関わる神経伝達物質のドーパミンが重要な役割を担っている。(参考記事:「ドーパミンは「快楽物質」ではない、“幸せホルモン”の真実」)
 「実際、フロー状態は、脳のドーパミン作動性回路(ドーパミンが脳内を伝わる経路)をうまく利用している」と、英ロンドン大学の心理学教授ジョイディープ・バッタチャリア氏は言う。氏は、フロー状態になる頻度が高い人のドーパミン作動性回路は「時間をかけて徐々に再編成され、形作られる」のではないかと推測する。
 したがって、定期的にフロー状態になることで、学習意欲や感情をコントロールするスキルを向上させられるのかもしれない
 2013年11月22日付けで学術誌「Frontiers in Psychology」に発表された研究で氏は、ピアノを学ぶ学生のフロー状態に入る能力と、感情知能(感情を理解、管理、活用する能力)の間には関連があることを示した(ただし、研究は相関関係を示すものであって、因果関係を示すものではない、と氏は注意を促している)。

▶ 子どもがフロー状態になるよう働きかけるには
 落書きや積み木で高層ビルを作り上げることに夢中になる子どもをみたことがある人ならわかるだろうが、「子どもはフロー状態になる傾向を生まれつき、本質として持っています」と、バッタチャリア氏は言う。
 だが、ちょっとした後押しが必要なときもある。子どもがフローの恩恵を受けられるよう、いくつかアドバイスを専門家からもらった。(参考記事:「6つの子育てスタイル、子どもにベストなのは? 専門家に聞いた」)

1. 子どもが何に興味をもつかを探る
 フロー状態になるには、本人の内側から生じる動機が非常に重要であるため、子どもが何に夢中になるかを探ることが大事だ。
何に興味があるのか、子どもと話をしてください」と、ミシェル・ハリス氏は言う。氏は米国ニューヨークに拠点を置く認定臨床ソーシャルワーカーで、親たちのためのコーチングやワークショップなどのサービスを提供する会社「ペアレンティング・パスファインダー」の創設者だ。
 また、子どもにただ「これをしなさい」と言うのではなく、子どもに自分で考えさせるべきだ、とも説く。自主性が認められると、続ける可能性が高くなる。年少の子どもの場合は、「自分で思いつくのが大変そうであれば、親がアイデアを出して提案してもかまいません」とアドバイスする。
 どんな活動が「フロー状態」になるかは、個人によって大きく異なる。「何が子どもの心に火を付けるのか、お子さんのために探ってください」と、米ラトガース大学の教育心理学者デビッド・シャーノフ氏は言う。
「こうした類いのフロー状態になる活動を積み重ねていけばいくほど、子どもはやる気や意義を感じるようになります」(参考記事:「趣味は脳と体にいい、寿命を10年近く延ばすスポーツ他おすすめは」)

2. 気が散るものを排除し、邪魔されない時間を確保する
 私たちが生きている時代は気が散ることばかりで、予定もぎっしり詰まっている。どちらもフロー状態を壊しかねない。「テレビを消して、気が散りにくい場所を見つけてください。そして、今はただ、自分が取り組んでいることを楽しむ時間だよ、と子どもに伝えてください」とハリス氏は言う。(参考記事:「「SNS断ち」に短期間でも驚きの効果、専門家が秘訣を伝授、研究」)
 フロウ氏も同意見だ。「何も決めず自由に遊ぶこと、しかもたくさん遊ぶこと。それが不可欠です」。例えば、フロウ氏の11歳の娘と14歳の息子は、興味のあることをする自由な時間を十分に確保するため、課外活動は2つまでにしているという。

3. 子どもに「足場」を用意してサポートする
 フローには微妙なバランスが求められる。興味を持ち続けられる難易度は必要だが、がっかりしてしまうほど難しすぎてもいけない。子どもがヘルプを必要としがちな最初の頃は親が「足場」となるようなサポートを用意して、このバランスを保つ必要がある。子どもに自信がついてきたら、親は手を引く。
 レゴを例に挙げよう。まずは「説明書の通りに作れば、何ができあがるのかがわかるキットから始めるのがよいでしょう」とシャーノフ氏。子どもが基本を身に付けたら、何か新しいものを一緒に作るとよい。
 「煙突の色は何色にする?」「ここのドアは外開き、それとも内開き?」など、子どもに尋ねるのを忘れないように。ただし、主導権は子どもに握らせる
 フロー状態をもたらす活動に親が一緒に取り組むことは、子どもとのつながりを生む非常によい方法でもある。
 家族でも友達でもメンターでも、他の人とつながっていると感じられると、フローを促し、虚脱感にも対抗できるかもしれない。例えば、学校におけるフローに関するシャーノフ氏の研究では、教師と同級生からのサポートは、生徒の積極的な参加につながることがわかった。
 「フロー体験を友だちと共有することは有意義で、絆を生むきっかけになります」とシャーホフ氏は言う。さらに、友だちやメンターから即座にフィードバックが得られれば、子どもは目標(あるいはそれ以上)を達成しやすくなる。(参考記事:「科学の教え、「もっと人に助けを求めよう」 、どういうこと?」)

4. 成果を重視しない
 親が成果や結果を重視すると、やっていることを楽しむ気持ちを失わせてしまうかもしれない。「ピアノを弾くのにモーツァルトになる必要はないし、バスケットボールをするのにマイケル・ジョーダンになる必要もありません」とリム氏は言う。
 そうではなくて、子どもがもう少し自由に、手順やルールなどに縛られずに取り組めるようにしよう。出版のことは一切考えずコミックブック制作に取り組むのもいいし、お気に入りの映画のサウンドトラックに合わせて歌うのもいい。
 結局のところ「創造性は万人に備わっている」というのがリム氏の考えだが、さらに磨きをかけるには訓練が必要だ。
 「子どもがこうした活動に取り組むとき、脳内では創造性が育まれています」とリム氏は語る。そして子どもがフローを通じて自身のクリエイティブな本質に触れるようになればなるほど、大人になったとき、そうしたスキルを生産性へと発展させられる可能性が高くなるだろう。


子どもの身長を伸ばす食材

2025年04月08日 14時10分13秒 | 育児
古くて新しい話題・・・
子どもの身長を伸ばしたい!
どうすればいい?

非科学的な迷信も多々ありますが、
科学的に正しい情報を提供します。

子どもの成長に関わるメインの要素は、
年齢と共に変化することがわかっています。

乳児期は「栄養」
幼児期は「成長ホルモン」
思春期は「性ホルモン」
・・・これが医学の常識です。

ですから、成長不良の患者さんを診たとき、小児科医の頭の中は、
乳児の成長不良 → 栄養不良はないか?
幼児期の成長不良 → 成長ホルモンが足りているか?
思春期の成長不良 → 性ホルモンは十分分泌されているか?
との疑問がグルグル回っています。
もちろん、栄養不良は基本的に全年齢に影響を及ぼします。

整形外科医に取材した「子どもの身長を伸ばす」記事が目に留まりましたので紹介します。
結論から申し上げると、
「卵と肉と魚を食べるべし」
という、ごくフツーの内容でした。

ここには糖質・炭水化物が登場しません。
つまり、「糖質制限食」「ロカボ」が身長を伸ばす食事、
ということになりますね。

<ポイント>
・完全栄養食と呼ばれる卵は1日1個より1日2個食べたほうが身長が伸びるという報告がある。
・身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれている手頃な食材がある、それは「サバ缶」。
・子どもの身長を伸ばすためにはカルシウムが大事。
・卵は必須アミノ酸をすべて含む優秀なたんぱく源。さらに、ビタミンC、食物繊維以外の栄養素をすべて含むことから、「完全栄養食」と呼ばれていまる。
・肉と魚介はどちらも優秀なたんぱく源。肉と魚介を1:1で摂るよう心がるべき。
・牛肉には、鶏肉にあまり含まれていない鉄や亜鉛が多く、豚肉はエネルギー代謝を促すビタミンB1が鶏肉より多いというメリットがある。
・牛肉には鉄や亜鉛が豊富に含まれており、豚肉や鶏ササミやムネ肉はビタミンB群が豊富。
・魚介には肉にはほとんど含まれないビタミンDを含むものがたくさんある。骨ごと食べられるものならカルシウムもたっぷり摂れる。
・マグロやカツオ、サバなどには鉄やビタミンB群も豊富。さらに、青魚や鮭、マグロやカツオなどの脂に多く含まれるオメガ3不飽和脂肪酸(以下・オメガ3)には、神経伝達をスムーズにして脳の認知機能を向上させたり、体内の炎症を抑え、アレルギー症状を軽減させる働きが認められている。
・生サバ、塩サバ、サバ水煮缶、サバ味噌煮缶は、骨の材料になるたんぱく質、カルシウムのほかにも、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれている。


▢ カルシウムだけじゃ骨は伸びない…「子どもの身長を伸ばす栄養素」が一気に摂れる"超万能食材"「完全栄養食」である卵は1日2個食べたほうがいい
田邊 雄:東京神田整形外科クリニック院長
2025.3.30:PRESIDENT)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 何を食べれば身長が伸びやすくなるのか。東京神田整形外科クリニック院長の田邊雄さんは「完全栄養食と呼ばれる卵は1日1個より1日2個食べたほうが身長が伸びるという研究結果がある。さらに、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれている手頃な食材がある」という――。

▶ 成長ホルモンと栄養、どちらも欠かせない
 子どもの身長を伸ばすためにはカルシウムが大事だと思う方が多いのではないでしょうか? しかし、身長を伸ばすのに必要なのはカルシウムだけではありません。
 成長期には脳の脳下垂体という部分からたくさんの成長ホルモンが分泌されます。これは「今、成長しなさい」という脳からの指令。成長ホルモンは、その指令に従い、食事で取り入れた栄養を使って骨を伸ばします。
 骨を伸ばすためには、カルシウムだけではなく、たんぱく質、ビタミンD、亜鉛、鉄といった多くの栄養素が必要となります。
 つまり、身長を伸ばすためには、次の2つが重要です。
・脳から成長ホルモンが十分に分泌されること
・骨の成長に必要な栄養を十分に摂ること
 睡眠をはじめとする生活のリズムが乱れて成長ホルモンが十分に分泌されなかったり、必要な栄養が不足したりするだけで、骨の成長は停滞し、身長が伸びにくくなる可能性があるのです。
成長ホルモンと栄養。この2つが連携して子どもの体は成長していくということを、まずは覚えておいてください。

▶ 卵は「完全栄養食」と称えられる理由
 卵はMサイズ1個(50g)に約6gのたんぱく質が含まれています。ここでは、たんぱく質を構成するアミノ酸について解説しましょう。
 人体を構成するアミノ酸は20種類。そのうちの9種類が必須アミノ酸です。必須アミノ酸は人体で合成できないため、食事で摂る必要があり、1つでも不足すると、体内でたんぱく質が十分に合成されなくなります。
 そのため、栄養計算上ではたんぱく質が十分でも、必須アミノ酸が不足していると成長に悪影響が及ぶ可能性があるのです。
 卵は必須アミノ酸をすべて含む優秀なたんぱく源。さらに、ビタミンC、食物繊維以外の栄養素をすべて含むことから、「完全栄養食」と呼ばれています
 さらに注目すべきは、必須アミノ酸の消化吸収率(DIAAS)。・・・卵の消化吸収率は動物性食品の中でもトップクラス。卵は非常に優秀な食材なのです。

▶ 卵は「1日1個」より「1日2個」
 卵は1日に何個食べると身長の伸びに効果があるのでしょう? ウガンダの小学校で「卵が子どもたちの成長にどれくらい影響を及ぼすか」を調べた研究の結果を見てみましょう。
 調査の内容は次のとおりです。
 対象は6〜9歳の小学生。週5日提供されている給食で、卵0個のグループ、卵1個のグループ、卵2個のグループに分け、これを6カ月間継続し、それぞれの身長の伸びを比較。
 結果は、卵0個のグループは3cm弱、1個のグループは約2.5cm、2個のグループは3.5cm弱身長が伸びていました。明らかに卵2個食べたほうが身長が伸びていたのです。・・・
 つまり、卵を食べない、または1日1個食べるより、2個を毎日食べることで身長が伸びる可能性が確認されたのです。
 たんぱく質が少なくなりやすい朝食で卵2個を食べてもいいですし、朝1個、夜1個でもかまいません。ただし、卵には脂質も含まれているので、体脂肪率が高い子どもは食べすぎないようにしましょう

▶ 鶏ササミ・むね肉はたんぱく質が豊富
 「肉はどの種類のどの部位を食べればいいですか?」という質問をよく受けます。身長を伸ばすという点においては、鶏ササミ・鶏ムネ肉がおすすめです。
 その理由は骨の材料となるたんぱく質を多く含むからです。
 100gあたりのたんぱく質量が多いのは、鶏ササミ約25g、鶏ムネ肉(皮なし)約24g、豚ヒレ肉(赤身)が約23g。逆にたんぱく質が少ないのは、牛バラ肉が約11g、牛サーロインが約12g、牛肩ロースが約14g(すべて和牛)となります。
 鶏ムネ肉・ササミと牛バラ肉のたんぱく質量には、倍以上も差があるので、牛バラ肉を優先的に食べ続けた場合、かなりの量のたんぱく質を取り損ねることになります。
 ただし、牛肉には、鶏肉にあまり含まれていない鉄や亜鉛が多く、豚肉はエネルギー代謝を促すビタミンB1が鶏肉より多いというメリットがあります。それぞれの栄養価を知り、鶏ムネ肉やササミをメインにしつつ、たんぱく質量の多い牛や豚のヒレ肉やモモ肉を、ときどき加えるといいでしょう。

▶ 魚介にも肉にもそれぞれメリットがある
 肉と魚介はどちらも優秀なたんぱく源。成長に欠かせない必須アミノ酸をバランスよく含む点でも同レベル、100gあたりのたんぱく質含有量もほぼ同レベルです。
 だからといって、肉ばかり、魚ばかり、さらに同じ種類ばかりを食べるのは、おすすめできません。偏らずにいいとこ取りをしたほうが、成長のためにはいいからです。
 たとえば、魚介には肉にはほとんど含まれないビタミンDを含むものがたくさんあります。骨ごと食べられるものならカルシウムもたっぷり摂れます
 マグロやカツオ、サバなどには鉄やビタミンB群も豊富。さらに、青魚や鮭、マグロやカツオなどの脂に多く含まれるオメガ3不飽和脂肪酸(以下・オメガ3)には、神経伝達をスムーズにして脳の認知機能を向上させたり、体内の炎症を抑え、アレルギー症状を軽減させる働きが認められています。成長期の子どもにとって有意義な働きがたくさんあることがわかります。

▶ 週1回は食べてほしい「サバ缶」
 肉の場合も同様にメリットがあります。牛肉には鉄や亜鉛が豊富に含まれており、豚肉や鶏ササミやムネ肉はビタミンB群が豊富です
 それぞれのいいところを上手に取り入れるためには、肉と魚介を1:1で摂るよう心がけてみてください。完璧にできなくてもかまいません。たとえば、朝食で魚介を食べなかった場合は、夕食で魚介を食べる。前日、肉ばかりを食べてしまったら、次の日は魚介をメインにするといった感じで意識して実践するだけで、大きく偏るのを防げます。
 魚介を取り入れる際におすすめしたいのがサバ水煮缶です。「加工したサバより新鮮なサバのほうが体にいいのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。しかし、答えはノー。サバ水煮缶の栄養価は、生サバや塩サバに劣ることはありません。むしろ優れている部分もあるのです。

▶ 5つの栄養素がすべて入った優秀な食材
 生サバ、塩サバ、サバ水煮缶、サバ味噌煮缶の100gあたりの栄養価を比較してみましょう。・・・
 いずれも、骨の材料になるたんぱく質、カルシウムのほかにも、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれています。なかでもサバ水煮缶は、カルシウムの量が多く、不足しがちな鉄や亜鉛、ビタミンDもしっかり含まれています。味噌煮缶よりたんぱく質、カルシウム、亜鉛、ビタミンDの量も豊富です。
サバ缶は、サバを骨ごとぶつ切りにして缶に入れて加熱しているため、骨に含まれるカルシウムも逃さず摂取できます。刺身や焼き魚ではかなわない、サバ缶ならではのメリットです。
 サバ水煮缶100gあたりには、約11gの脂質が含まれています。脂質が多いとなると、肥満、そして身長の伸び率低下のリスクがある早熟が気になり、避けたくなるかもしれません。
 しかし、サバなどの青魚に含まれる脂質は積極的に摂ってください。なぜなら、人間の体内では合成できない「必須脂肪酸」のオメガ3が多く含まれているからです。

▶ 子どもの脳の健やかな成長も促す
 オメガ3は、血液サラサラ効果があることで知られていますが、子どもの成長にも欠かせない栄養素です。・・・
 特に注目したいのは、脳神経の発達を促す働きです。脳は心身のあらゆる機能を操る司令塔。身長を伸ばすのに欠かせない成長ホルモンも、脳の指令によって分泌されるのですから、脳の健やかな成長はとても大切です。
 また、体内の炎症を抑える働きがあることから、運動によって傷ついた筋肉の修復にも有効。疲労回復効果もあることから、アスリートも積極的に取り入れている栄養素です。
 オメガ3にはたくさんのメリットがありますが、酸化に弱いという弱点があります。サバ缶の場合、缶を開けた瞬間から酸化が始まるので、開封後は早めに食べきるようにしてください。
 また、熱によっても酸化が進むので、加熱せずに食べるのがベスト。缶汁にもオメガ3が含まれていますが、身にも十分含まれていますから缶汁は無理をして摂る必要はありません。

<参考>

こどものSOSが聞こえてますか?

2025年03月27日 10時02分13秒 | 子どもの心の問題
こどもに関する諸問題を扱った書籍を読むと、
「まず子どもの気持ちを受け止めましょう」
という文章にたびたび出会います。

逆に言うと、
現代社会では子どもの気持ちを受け止める土壌が崩壊しており、
それが問題の源流となっている、
と言い換えることができるかもしれません。

そしてネット社会になり、
子どもの相談先は玉石混淆のバーチャルサイトに移り、
ますます家族・保護者から離れていっているようです。

危険ですね。

そんな内容を扱った記事が目に留まりましたので紹介します。

<ポイント>
・子どもの死亡例の約2/3は病死、1/3は外因死です。そして、外因死のうち最も多くを占めるのが自殺
・就学前児童のインターネット利用状況:1歳児では33.1%、2歳児では58.8%が利用しており、6歳児では8割を超えました。
・スマホ所持率:6歳児では既に13.3%の子どもが自分専用のスマートフォンを所持している、10歳以上の小学生では70.4%、中学生では93.0%
・就学前児童の遊びを調査:よくする遊びとして、砂場遊び43.7%、鬼ごっこや缶蹴り31.2%に対して、YouTubeの視聴が58.7%
外で兄妹や友人と遊ぶより、スマートフォンなどを手にしている機会のほうが多い。友人や家族に何かを相談する機会は減り、インターネットで自己解決しようとしている。

私が就学前児童の頃(50年以上前)は、
子どもは外で遊んで日が暮れるとかえってくるのがふつうでした。
田んぼや空き地を犬と駆け回り、
刈り取った藁で秘密基地を作り、
ザリガニ釣りをしていました。

とにかく体を動かし、
ヘトヘトになって帰宅する毎日でした。
家の中で遊ぶのは、雨の時だけ。

病弱だった私が健康になれたのは、
その走り回った日々のおかげかもしれません。

今思い返すと、藁のニオイや、ヒバリの鳴き声が蘇ります。


▢ SOSを発しない子ども
一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)
 (2025年03月22日:日本医事新報社)より一部抜粋(下線は私が引きました);

▶ 子どもの死亡検証
 2024年の出生者数は72万988人と過去最少の数字でした。貴重な子どもの命を守らなくてはなりません。筆者らは地域における18歳未満の子どもの死亡例を検証し、防ぎうる死の予防や、死が避けられない子どもに対する医療や支援の充実に努めています(child death review:CDR)。
 筆者が検証している地域では、どもの死亡例の約2/3は病死、1/3は外因死です。そして、外因死のうち最も多くを占めるのが自殺です。自殺例を検証して、事前に気づける変化はなかったのか、子どもが発するサインはなかったのか、早期に介入できなかったのかなどが話し合われます。しかし、どうしても周囲が気づけるようなサインを発せずに、自殺に至る例があります。その背景には、近年の子どもの生活状況が関係しているようです。

▶ インターネット利用状況
 昨年、政府は青少年のインターネット利用環境実態調査結果を公表しました。年齢とともにインターネットの利用率は高くなりますが、驚いたことに、1歳児では33.1%、2歳児では58.8%が利用しており、6歳児では8割を超えました。利用する手段はスマートフォンや携帯電話が圧倒的でしたが、6歳児では既に13.3%の子どもが自分専用のスマートフォンを所持しているそうです。そして、その率は年齢とともに上昇し、10歳以上の小学生では70.4%、中学生では93.0%となりました。
 目的としては、低年齢ほど動画の視聴やゲームが多かったのですが、年齢とともに、情報検索や投稿、メッセージ交換の割合が上昇していきました。このように、現在の子どもたちが育ってきた環境は、明らかに私たち大人とは異なります。

▶ 子どもの遊び
 6歳就学前までの子どもの生活について、民間の研究所が継続的に調査を行っています。「幼稚園や保育園以外では誰と一緒に遊ぶか」という問いに対して、1995年には「兄妹」や「友だち」と答える割合は半数以上でした。しかし、その割合が年々低下し、2022年にはそれぞれ38.8%および16.0%でした。さらに、よくする遊びとして、砂場遊び43.7%、鬼ごっこや缶蹴り31.2%に対して、YouTubeの視聴が58.7%になっていました。
 このように、外で兄妹や友人と遊ぶより、スマートフォンなどを手にしている機会のほうが多いようです。

▶ SOSが発信されない
 子どもたちの多くは幼少期からインターネットで情報を得て、コミュニケーションもインターネットが主体となっています。友人や家族に何かを相談する機会は減り、インターネットで自己解決しようとしているようです。その結果、たとえ悩んでいたとしても、それが発信されず、周囲がこころの変化に気づけない状況になります。
 社会では自殺予防に向けた相談窓口や相談ダイヤルがありますが、インターネット社会で育った子どもたちに有用なのか検証する必要があります。とは言っても、このようなSNSが中心の社会を後戻りさせることはできません。
 子どもを育てる上で何か足りないところがあったはずです。子どもの自殺予防のために今、大人が立ち上がらなければなりません。


・・・ネットと自殺、というキーワードで、
もう一つ目に留まった記事があり、紹介します。
検索ワード「学校に行きたくない」の検索数と中高生の自殺数が比例していた、
という驚くべきデータ。

▢ 日本の小中高生の自殺リスク「学校に行きたくない」検索量と関連
(鷹野 敦夫)
2024/11/20:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 
 自殺は、日本における小児および青年期の主な死因となっている。自殺リスクの検出に、インターネットの検索量が役立つ可能性があるが、小児および青年期の自殺企図とインターネット検索量との関連を調査した研究は、これまでほとんどなかった。多摩大学の新井 崇弘氏らは、自殺者数と学校関連のインターネット検索量との関連を調査し、小児および青年期の自殺予防の主要な指標となりうる検索ワードの特定を試みた。・・・
 2016〜20年の警視庁より提供された日本の小中高生における自殺企図の週次データを用いて、検討を行った。インターネットの検索量は、Googleトレンドから収集した20の学校関連ワードの週次データを用いた。・・・主な結果は以下のとおり。

・「学校に行きたくない」「勉強」の検索ワードは、自殺発生率とのグレンジャー因果性が認められた。
・相互相関分析では、「学校に行きたくない」では-2〜2(タイムラグ最高値:0、r=0.28)、「勉強」では-1〜2(タイムラグ最高値:-1、r=0.18)の範囲で有意な正の相関が認められ、自殺者数の増加に伴い検索量の増加が示唆された。
・COVID-19パンデミック期間中(2020年1〜12月)では、「学校に行きたくない」の検索傾向は、「勉強」とは異なり、自殺頻度との高い関連性が認められた。

 著者らは「『学校に行きたくない』のインターネット検索量のモニタリングは、小児および青年期の自殺リスクの早期発見につながり、Webベースのヘルプライン表示の最適化に役立つ可能性が示唆された」とまとめている。

<原著>