中国人理解/異文化理解

「中国人とうまくつきあう実践テクニック」(総合法令出版)著者による公式ブログ

実は「譲歩」のカードが持つ意外な有効性・・・

2013-08-06 | ■中国人との実践交渉術

実は「譲歩」のカードが持つ意外な有効性・・・

前回のコラムでは、「交渉を有利に運ぶためには『譲れるポイント』が重要なカードになる」というところまで書きました。「譲れるポイント」とは、「交渉では『妥協』、『調整』、『譲ること』が重要である」と言いたいわけではありません。「協調の姿勢が重要」ということを言いたいわけでもありません。

論点を明確にする意味でも、まずは「絶対譲れないポイント」を確認しておくべきです。つまり、「絶対に譲れないポイント」の対極にある「譲ってもよいポイント」を洗い出しておきます。そして、この「譲れるポイント」を交渉カードとしてカードを切るタイミングを考えて有効に使うということです。

交渉に臨む前に、まず「絶対に譲れないポイント」を洗い出します。同時に「譲れるポイント」を考えてみるのです。「譲れるポイント」とは、譲っても大勢にはまったく支障のないポイント、むしろ譲ってしまったほうがよいポイント、気づかずに寝かせてしるポイントがないかどうか、徹底的に洗い出します。

重要なのはこの「譲れるポイント」の使い方です。「譲れるポイント」を安売りして最初からどんどんカードを切ることは不可です。むしろ、相手に譲って欲しいポイントを要求して、その交換条件として日本側の譲れるポイントを提示する。または、譲ってしまってもよいポイントをまず絶対に譲れないポイントのように提示して、そのポイントを譲歩する代わりに相手に対して別の要求を突きつける。例えばこのようにさまざまな使い方ができます。「譲れるポイント」を「見せ札」や「捨て札」として使うこと。「譲れるポイント」を「切り札」のように見せかけて使うこと。これが「譲れるポイント」の効果的な使い方です。「譲れるポイント」を先に徹底的に洗い出しておきましょうという理由です。

 

持論ですが、交渉はひとつでも「譲れるポイント」を準備しておいたほうが有利です。「譲れるポイント」をたくさん準備しておくことはビジネス折衝や交渉を有利に進める「鍵」になります。日本企業がビジネス折衝や交渉に臨む際にまずアドバイスするのは、交渉に臨む前に「譲れること」(譲ってしまってもいいこと)を徹底的に洗い出してみることです。考え得るすべての「譲歩のカード」を準備しておきます。

日本側にとって譲歩してしまっても損にならないものは何か、相手が期待している譲歩は何か、どのタイミングで譲歩のカードを切るべきか、それに見合う反対給付が受けられるかどうか、あらゆる角度から譲れるポイントを徹底的に探し出します。

実は、「譲歩のカード」はどんなつまらないものでもよいのです。譲ってしまっても大勢には何の影響もないこと、むしろ譲ってしまったほうが好都合なこと、中国側が「譲ってほしい」と考えていることなど、そして、これらを交渉カードとして有効に活用します。つまり、「譲歩のカード」がどれだけ準備できるかが、交渉を有利に進めるための重要な「交渉カード」となります。

ただし、「譲れるポイント」を必要以上に安売りすることは厳禁です。 そしてこの「交渉カード」をどのタイミングで出していくかが大切なのです。効果的なタイミングで、相手からの譲歩を引き出すための交換条件としてうまく利用していくのです。

 できるだけもめないように、と担当者が気を配って交渉を進めるケースでは、この「交渉カード」の安売りが目立ちます。「交渉カード」は然るべきタイミングで最も有効に出していくべきです。「交渉カード」の安売りは禁物であり、ぎりぎりまで粘って、相手の出方を見ながら、「交渉カード」の切り方を考えるべきです。

 もちろん、譲歩することや妥協することが悪いと言っているわけではありません。必要以上に交渉を長引かせたり、焦らしたり、時間稼ぎをしたり、わざとゴネて相手との関係に波風を立てることが目的ではありません。「譲歩」という切り札を交渉のカードのひとつとして最大限有効に活用すべきだということが言いたいわけです。

そのためには、何を譲ればよいか、どのタイミングで譲るべきか、などをしっかり考えたうえで交渉に臨むべきなのです。まずは担当者がこれらの点を明確に意識してください。大切なカードを有効に使うためには相手側に何を主張(要求)するべきか、事前の作戦会議で十分に検討してみてください。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿