中国人理解/異文化理解

「中国人とうまくつきあう実践テクニック」(総合法令出版)著者による公式ブログ

絶対に贈ってはいけない品物 続編<その3>

2014-02-14 | ■異文化理解

お土産は「豪華に・・・」「派手に・・・」「いいものを・・・」「大げさに・・・」が基本原則です。お菓子の詰め合わせを「つまらないものですが、皆さんで召し上がってください」はダメです。こんなとき「ひとつだけで少なくて申し訳ないけど、このお菓子をぜひ食べてください」と気持ちを伝えようとするのが日本人。

一方、お菓子を受け取る中国人は「本当にひとつだけ(?)」(なんてケチな日本人・・・)と、あなたはそう思われているかも知れないのです。あなたの好意が裏眼に出ていることもあるかもしれないのです。

「キャラクター付きのボールペン」や「ご当地キャラの携帯ストラップ」などもわざわざ買って行くお土産じゃなさそうです。余程の日本通でキャラクター好きならばいざ知らず、中国人に「ケチな日本人」と思われたくなかったら、むしろ買っていかないほうがいいかもしれません。

本当にお土産を渡したい人には、然るべきタイミングで、より豪華なもの、よりいいモノをプレゼントしたほうが絶対に効果的です。儀礼的なお土産、形だけのお土産や気持ちだけの品物はやめておいたほうがいいでしょう。


■気持ちを伝えたいなら、コメントをしっかり伝えることが大切・・・

だからと言って「お菓子の詰め合わせセット」がダメなわけではありません。日本酒や日本人形、定番の文房具でも、キャラクターグッツでもいいのです。ポイントはお土産を渡すときのコメントが大切なのです。

「なぜこれを選んだか・・・」、「なぜこれをあなたにプレゼントするか・・・」
このコメントをしっかり伝えるのです。
例えば・・・、「陳さん、このお菓子をぜひ陳さんに食べて欲しくて、わざわざ選んで買ってきました。これはなかなか手に入らないプレミアムのお菓子で、私が食べたお菓子の中で最高で、空港で一生懸命探して、やっと見つけて買ってきました」というようなコメントです。

さらに・・・、「これをどう使った欲しいか・・・」、「これを使って何をして欲しいか・・・」
多少押し付け(?)的なコメントになることもありますが・・・。徹底的にお土産の良さを主張するのです。

例えば・・・、「ぜひこの置物をを社長室の本棚の横に置いてください。この置物は幸運を呼ぶ言い伝えがあります。私たちの友好の証です」とか、

例えば・・・、「このお酒は金粉入りの大吟醸酒です。名前の由来は、・・・です。ぜひ、特別なお客様をおもてなしするときにいっしょにお召し上がりください」とか、
ポイントはお土産を渡した相手が、他の人に自慢しなくなるようなエピソードを伝えること。他の人に自慢したくなるような薀蓄を添えてお土産を渡すことです。

こうしたコメントを添えることで、渡したお土産は何倍もの効果を発揮することになります。「つまらないものですが、ぜひ皆さんで召し上がってください」とか、「少ないけど、気持ちだけ受け取ってください」ではダメなのです。


■年末から年明けにかけて出張がある時は、「カレンダー」のお土産がお勧め・・・

年末から年明けにかけて、出張があるときには決まって「カレンダー」を買って行きます。旧正月ぐらいまではけっこう有効です。(今年はもう過ぎてしまいましたが、ぜひ覚えておいてください)喜ばれるお土産です。3つのパターンがあります。

第一に、日本的な図柄のカレンダーです。「浮世絵」、「富士山」、「日本の四季」、「有名な観光地」のカレンダーなどです。かなりベタですが、意外と喜ばれます。桜、紅葉、東京スカイツリー、北海道なども人気です。

値段は1,000円~1,500円ぐらいのものが手ごろです。お菓子を買って行く替わりにぐたいの値段です。いいものだと2,000円を超えるものもありますが、実は100円ショップで手に入るものもあります。(100円ショップで選ぶ場合は11月中ぐらいに品揃えがあるうちにまとめ買いをしておくことをお勧めします)

第二に、歌手や芸能人、キャラクターのカレンダーです。映画俳優や女優、宝塚、ワンピースやポケモンなどアニメ系のキャラクターからオタク系までけっこう人気です。嵐やAKB48のカレンダーを買って行って奪い合いになったこともありました。

これはちょっと値が張ります。2,000円~3,000円が一般的。プレゼントする相手がどんなアイドルが好きかを事前に聞いておけばハズレはありません。

第三に、最初からリクエストを募るという方法も実はよくやります。車が好きな人から「GT-R」(日産自動車)のカレンダーを頼まれたこともありました。ペット好きの人には「かわいいワンちゃん」のカレンダーとか、野球選手のカレンダーとか、グルメカレンダーとか、アパレルメーカーが出しているもの、鉄道会社が出しているもの、欲しいものを買って行って喜んでもらうには、先にリクエストを聞いておくという方法が一番です。

■最後に、カレンダーのプレゼントにはもうひとつ重要な意味があるのです・・・

カレンダーのプレゼントと聞いて、「日本、中国、香港、台湾では祝日が違うのでは・・・?」とお気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか?その通りです。日本の祝日と海外の祝日は違います。

しかし、祝日が違うから海外では使えないのではなくて、海外とは違う日本の祝日がわかるから逆にいいのです。つまり、「この日は吉村に連絡しても事務所にいないよ・・・」という日を覚えておいてもらうためのカレンダーのプレゼントです。

以前は、「電話やメールで何度連絡しても吉村さんがつかまらない」ということがよくありました。日本は祝日なので当然です。しかし、日本のカレンダーをプレゼントしておくことによって、こうした行き違いをなくすことができます。

逆に、私のテーブルには中国や台湾の卓上カレンダーが置いてあります。中国や台湾の祝日を確認するためです。「メールしたのにレスがない」、「電話しても誰もでない」というストレスが回避できます。また、テレビ会議の日程とか、報告書の提出日を記入しておきます。海外の祝日がわかるコンパクトな卓上カレンダーは意外と便利です。

「お土産」の注意点をシリーズで書いてきました。ぜひ、皆さんからもメッセージをお寄せください。贈って喜ばれたお土産の事例や経験談をメールにてお送りください。



※「中国人に贈ってはいけない品物」はシリーズで寄稿しました。ぜひ、バックナンバーもご覧ください。


絶対に贈ってはいけない品物 続編 <その2>

2014-02-12 | ■異文化理解

前回の続きです。贈り物として相応しくないものはまだまだあります。「薬」をプレゼントしてはいけない。「ハンカチ」もダメ、「ネクタイ」もダメ、「靴」もダメ etc. 知っておきたい「転ばぬ先の杖」です。

ダメな理由をひとつずつ解説していきましょう。

「ハンカチ」は涙を誘うと言われ、「不幸を暗示するプレゼントだから」という理由です。「ネクタイ」は女性が男性を拘束するという意味があるそうです。「あなたは私のいいなり・・・」というように、まるで飼い犬に首輪を付けるような感覚なのでしょうか?

「靴」は「これを履いてどこか遠くへ(?)行ってください」という「私から遠ざけたい」という意味があるそうです。また中国語の「靴」(xie)は、「邪」(xie)と同じ音です。これは「あやしい」「おかしい」という意味・・・。他にもまだまだNGアイテムはありそうです。


■地域により品物やその理由はさまざま

前回と今回のコラムで今回贈ってはいけない品物の中から代表的な物を紹介してきましたが・・・。しかし、ここで注意が必要です。「中国のすべての地域で同じ」とは限りません。地域によっていろいろな違いがあり、その理由や背景もさまざまです。

そのすべてを理解することが大切なのではなく、ビジネスシーンに合わせてひとつひとつを自分自身で確認しながら、自分がどう異文化と向かい合っていくべきかを考えるこ、これが異文化理解を深めるためには大切なことではないかと思います。


■中国人や台湾人観光客がドラックストアで「薬」を箱買いする様子をしばしば眼にするが・・・

「薬」は送るということは「病気を招く」という意味で嫌われます。「薬」もプレゼントしてはいけない品物です。しかし、中国人や台湾人観光客がドラックストアで「薬」を箱買いする様子をしばしば眼にします。話を聞くと、「これは○○○に頼まれた・・・」、「これは○○○さんへのお土産・・・」、「これは実家のおばあちゃんへプレゼント・・・」など、完全にお土産アイテムです。

日本の「薬」は、「安心だから、安全だから」ということで人気があります。「キャベジン」や「正露丸」、「龍角散」や「太田胃酸」、風邪薬の「ルル」や「ベンザ」などなど、まとめ買いしていく人も少なくありません。「吉村さん、今度台湾に来るとき、風邪薬を6つ、胃薬を4つ買って来て・・・」といずれも銘柄指定で買い物を頼まれ、スーツケースがいっぱいになるほど薬や化粧品を持って行ったこともありました。(私は「薬の売人」ではありません・・・)(x_x)>

中国や台湾は「漢方」(中医)の国ですから、体に優しいいい薬はたくさんあるのではないかと思うのですが、わざわざ薬を日本で買って、お土産にしたり、自分で使ったりします。やはり、日本製品に対する「安心・安全」信仰は根強いものがあるのでしょうか。誰もが知っている定番のブランドはとても人気があります。

ここで「裏技」をひとつお教えしましょう。「薬」をプレゼントするときは、プレゼントした相手からコインを一枚もらうとよいそうです。つまり、こうすることで「薬を送った」のではなく、「薬を売った」ことにすのです。


■病気の見舞いに「梨」を持って行くのはダメ・・・

病気で入院している友人に果物を持って行ったりします。果物は病気のお見舞いにごく普通の贈り物だと思うのですが・・・。中国では「梨」は絶対にダメだそうです。

日本では病気見舞いに「鉢植え」はダメだと言います。「そこに長く根付く・・・」ことを嫌うからで、「生花」が一般的です。花瓶に花を活けるわけです。

「梨」は中国語で同じ発音の漢字に「離」(li)があり、「離れ離れになる」を意味し、「別れ」を暗示させる言葉です。病人に対して、「もう二度と会えませんね・・・」とお別れを告げる意味です。確かにもらったほうはどんなにおいしい「梨」でも、「これでお別れですね・・・」という送り物はあまりいい気分はしないですね・・・。


To be continued


絶対に贈ってはいけない品物 続編 <その1>

2014-02-10 | ■異文化理解

このコラムの11月18日(2013年)掲載の記事で「絶対に贈ってはいけない品物」という内容を執筆しました。けっこう反響が大きく、たくさんの方からお問い合わせをいただいたので、その続編を3回シリーズで書きます。

11月18日の「絶対に贈ってはいけない品物」はこちらからご覧ください。
http://blog.goo.ne.jp/crosscosmos/e/5fe2f952a0ed632a27ab5749cd66fb09


「時計」は贈ってはいけない、「傘」もダメ、「扇子」もダメ、前回のコラムではこんなポイントを書きました。(詳しくは11月18日のコラムをご覧ください)コラムをご覧いただいた読者の方からこんなメッセージをいただきました。「傘が駄目だと書かれていますが、逆の場合が有るのをご存知でしょうか?」

いただいたメッセージによると、「客家人の嫁入り道具に『紙傘』は欠かせません。紙と子の発音は同じで早生貴子とは早く子供に恵まれますようにの意味です。このように中国の客家人では台湾でも大陸でも同様です。一概に傘が駄目だと言えません」とのことです。

なるほど・・・、傘を縁起物としてプレゼントする地域はあると聞いていましたが、具体的な事例に触れるのは初めてでした。中国といっても北から南まで広い地域です。その地域によってそれぞれ違う風俗や習慣があることは十分に想像できます。中国をステレオタイプで理解しようとしてはいけませんね。中国の広さと奥行きの深さを改めて確認されられたメッセージでした。

「傘は人と言う文字が5つ有るので子孫繁栄の意味も有ります。そして傘の形は丸いので円満の意味も有ります」とのご指摘も・・・。なるほど、これは次のセミナーのネタ(?)で使わせていただきます。(^o^)v


■実は私も「扇子」をもらった経験があります。

中国のお土産に「扇子」をもらったことがあります。「扇子」はダメと聞いていたので、一瞬ドキッとしましたが、この「扇子」のお土産はなかなか心憎い計らいでした。

企業訪問で工場を見学した後、会議室に通され質疑がありました。会議室の戻ってきてテーブルの上を見ると、紙製の手提げ袋が置いてあります。ちらっと袋の中を覗いてみると、中には箱に入れて丁寧に包装された「扇子」が入っていました。

「あれっ?この扇子のお土産は・・・、(歓迎されていない証・・・?)」という思いが頭を過ぎりましたが、「まさかそんなことはないだろう」と総経理が会議室に入ってくるのを待ちました。

総経理はすぐに会議室に戻ってきて、こう切り出しました。
「扇子はスペシャルプレゼントです。この地域の伝統工芸品ですが、ぜひご利用ください」
総経理の言うままにさっそく箱から取り出して開いてみると、そこには大きく文字がひとつ書いてありました。

「この毛筆の文字は私の直筆です。『恕』という文字です。この文字の意味は、これから日本企業の皆さんと助け合いながら、励ましあいながらビジネスを進めていきたいという思いです。譲り合う気持ちを忘れずに長くお付き合いしていきたいという思いを込めて書きました」

総経理直筆の文字をしたためた「扇子」のプレゼント・・・。行書で書かれた文字はなかなかの達筆で、今までいろいろなお土産をいただく機会がありましたが、今でも忘れなれないお土産のひとつです。


■実はお土産も地域によっていろいろ・・・。ステレオタイプで理解するにはなかなか難しい中国人

日本人はどうももの事をパターン化して理解したがるようです。「○○○地方出身で、△△△という経歴で、□□□という学歴で、◇◇◇業界に勤めている彼はどんな人・・・」というように、型に当てはめて人を理解しようとします。ステレオタイプで型に当てはめてもの事を見る傾向があるようです。

しかし、このように型に当てはめて中国人を理解することが本当にできるでしょうか?答えは「NO」です。地域性による違いや世代差による違い、またひとりひとり考え方や生き方の違いなど、さまざまな価値観を持つ人たちの集合体です。

一般的に日本人は「右へ倣えの横並び文化」だと言われます。誤解を恐れずに言うと、他人と同じ行動をすることで何となく安心感を得て、「出る釘は打たれる」のが日本の文化です。「主張することが評価される文化」が中国、「悟り合うことが評価される文化」が日本・・・。

贈り物も地域によって私たちがまだ知らないさまざまな風習があることでしょう。そのすべてを理解することが大切なのではなく、そのひとつひとつを自分自身で確認しながら、自分がどう異文化と向かい合っていくべきかを考えること。これが異文化理解を深めるためには大切なことではないかと思います。

地域による「贈り物」の風習の違いについて、引き続き読者の皆さんからのメッセージの投稿歓迎いたします。
よろしくお願いします。

To be continued


「春節」特集4 「春節」の時期は人間関係構を深める絶好の機会

2014-02-04 | ■異文化理解

私見ですが・・・。「春節」の時期、人間関係のメンテナンスで重要なのは「忘年会」です。これは日本の「忘年会」とはまた違った意味で重要なイベントでもあります。

「春節」時期、中国や台湾の「忘年会」とは、「社長が社員全員の一年の労をねぎらうために主催する食事会」です。社員全員を集めて、レストランやホテルを貸し切りで行ったり、時には街のホールや集会所で行ったりすることもあります。また、社員の家族も呼んで盛大に行う会社もあります。部署ごとに集まって、10~20人単位で居酒屋で行う日本の忘年会とは様子が違うようです。

もちろん費用は全額会社持ちです。日本のように「会費制」とか、「割り勘」とかではありません。時には「社長自らのポケットマネーで・・・」ということもあります。全員参加のビンゴ大会や部署ごとの余興、カラオケやアトラクションなどを行う会社もあります。社長自らが景品を出して、社員に振る舞うというケースもあります。

「忘年会」にお客さんとして取引先を招くケースも少なくありません。こちらから申し出ればたいていは歓迎してくれるはずです。「紅包」(ご祝儀)を持って出かけて行きましょう。筆者は駐在時代にこうして何度も取引先の「忘年会」に参加しました。

実はこの「忘年会」に参加すると、会社の内部の様子が実によくわかります。単に食事に行くのではなく、会場の中の様子を見回すと・・・。テーブルの数、配置、席順・・・。そして、社長の周りに誰が座っているか、部門ごとのリーダーの位置関係etc. こんなところがチェックポイント・・・。

社内の雰囲気、今年の業績、会社の勢いなど・・・。今年の売上げはどうだったか? 業績を上げているのどの部門か? 社内の人間関係は? 社長が社員に慕われている様子etc. 会社の中の様子がけっこう手を取るようにわかります。社内の雰囲気が実によくチェックできるのです。

もうひとつ大切なチェックポイントは窓口になっている社員の動向です。実は忘年会の時期は転職のシーズンです。新しい年もボーナスをもらって、「春節」休み(お正月休暇)を機に辞表を出して会社を辞めるという人もいます。

「来年もよろしくお願いしますね」というひとことを言うためにわざわざ日本から出張を入るという商社の友人がいます。彼は生き生きと仕事をしているか、会社に不満を持ちんがら仕事をしていないか、お酒を飲みながら話をします。会社に対するホンネを聞く絶好の機会でもあるのです。

商社の友人は長い取引を続けていくためには「忘年会」への出席は毎年欠かさないそうです。「忘年会」は担当者とホンネで話ができる時間を作る貴重な機会なのです。

ぜひ、来年は取り引き先の「忘年会」に乗り込んで言ってみてはどうでしょうか?きっと大歓迎してくれるはずです。ちなみに、来年(2015年)の「春節」は2月19日(木)です。 (^。^)/


「春節」特集3 「春節」の時期出張は避けるべき(?)、敢えて行くべき(?)

2014-02-03 | ■異文化理解

「春節」は転職が多い季節です。「春節」の正月休暇を機に会社を辞める人、ボーナスをもらって会社に辞表を出す人、新しい年を新しい職場で迎えようとする人etc. 

「春節」の前後は重要な案件の打ち合わせや意思決定は避けたほうが無難です。クリスマスから年末年始、そして「春節」までは何かと慌しい季節です。重要案件の決定は慎重に進めたほうがいでしょう。実は、この「春節」の前後は転職が多い時期なのです。

また、「春節」は転職の季節でもあります。正月明け、その会社を訪問してみると担当者がいなくなっている(転職してしまっている)ということもあります。日本の会社では考えられませんが、中国や台湾では担当者が代わってしまうと商談が最初から組み立てなおしということがよくあります。会社を辞める担当者が後任者に十分な「引き継ぎ」をしないまま会社を辞めてしまうということがよくあるからです。

重要な案件は会社とトップの意向を十分に確認し、実務の担当者とも普段以上に連絡を密に取り合い、十分なコミュニケーションを欠かさないように仕事を進めることをお勧めします。「春節」の前後は特に注意が必要な時期です。

筆者は基本的に「春節前後の出張はできれば避けるべき・・・」と考えますが、「敢えてこの時期に出張を入れている・・・」という商社の友人もいます。その目的は「忘年会」です。彼は「春節」前に敢えて出張を入れて現地で取引先の「忘年会」の梯子をするというのです。

そのひとつの理由は、彼に言わせると「担当者の進退確認・・・」だと言います。「一年間、お疲れ様でした。お世話になりました。来年もいっしょにがんばりましょう・・・」という挨拶。さらに来年の具体的な計画や将来の方向性など、担当者とのコミュニケーションを取り、信頼関係を深めるには、忘年会の時期は絶好の機会なのです。

「春節前後の出張は人間関係のメンテナンスのために重要・・・」と考えるわけです。長年中国でのビジネスに携わってきたからこそ言えるコメントかも知れません。

ビジネスは「会社」対「会社」が基本です。契約書を交わして仕事は会社対会社で進めていきます。しかし、実際の仕事の現場を動かしているのは担当者です。仕事の現場では「人」対「人」の信頼関係が重要。あたりまえのことなのですが、特に華人圏では「人」対「人」の信頼関係を十分に意識してビジネスを進めていく必要があります。


「春節」特集2 業務の「引き継ぎ」・・・

2014-02-02 | ■異文化理解

「春節」の時期は転職が多い季節です。ここで注意したいのは業務の「引き継ぎ」です。中国の企業では辞めていく社員から後任者へ業務の「引き継ぎ」が期待できないことが多く、辞めていく社員が後任者に「引き継ぎ」をしないまま突然会社をやめてしまうこともあります。これはそれまでの業務に支障をきたすばかりか、これまで培ってきた人間関係を再構築しなければならないこともあります。

日本なら辞める人が新しい担当者を伴って挨拶にやってくるところでしょう。しかし、そんな日本では「あたりまえ」のことが期待できないことがあるのです。日本人は担当者は辞めた後の業務が滞らないように業務の「引き継ぎ」をすることが「あたりまえ」と考えます。しかし、中国ではそうとも限りません。

挨拶がないどころか、メールでの連絡すらないことがあったり、「後任者」さえ決まっていないというケースがあったり、日本の「あたりまえ」がまったく通用しないこともあるので要注意です。担当者が換わるとプロジェクトはゼロスタートになり、再度打ち合わせが必要となるケースもあります。

「後任者」の人選は、あくまでも取引先である中国企業側内部の問題です。しかし、実は日本側から注意を払っておきたいポイントでもあります。「窓口となっている担当者が突然会社を辞めてしまう可能性がある」、「もしも彼が辞めてしまったら、彼が担当していた業務は誰が引き継いでくれるか」、このような点を日本側から意識しておくことが中国ビジネスでは必要なのです。

担当者が辞めてしまっても業務が滞らないように、彼の同僚や部下、アシスタントの中で誰がキーパーソンになるかある程度検討をつけておきたい。担当者が辞めた後のキーパーソンを予め探しておくことをお勧めします。

そのためには窓口になっている担当者だけではなく、日ごろから彼の同僚や部下とのコミュニケーションを図る機会があれば理想的。メールは必ずCCで複数の担当者に送る。彼の下で誰がどんな権限を持っているかもある程度は把握しておきたいところです。

こうした点は日本企業同士の取引なら気にしなくてもよいポイントです。なぜなら担当者が代わってもしっかり「引き継ぎ」があり、後任の担当者が前任者の業務を引き継いで問題なく進めてくれるうからです。しかし、中国企業との取引の場合、「個人は会社を代表していない」と心得ておくべきです。

もちろんビジネスは「会社」対「会社」の契約で動くのですが、実際にビジネスの現場を動かしているのは現場の担当者です。中国の場合、時には会社間の契約よりも担当者の現場レベルでの判断が優先されることがあり、この点は日本企業が注意すべきポイントのひとつです。人と人の繋がりがビジネスを動かしている。「個人」と「個人」の信頼関係の構築と密接な連絡がより重要なのです。

「春節」の時期、先方とのコミュニケーションに特に注意を払うことをお勧めします。正月休み明け、担当者のメールアドレスがちゃんと活きているかどうか(?)、念のために確認を・・・。


「春節」特集1 「春節」前後のビジネスに要注意/「春節」は転職の時期

2014-02-01 | ■異文化理解

新年快楽! あけましておめでとうございます。

2014年の「春節」は1月31日。旧暦でお正月を祝う中国では「春節」が1年の始まりです。今年も皆さんにとってすばらしい1年になりますように・・。今年もよろしくお願いします。

1月30日が「除夕」(大晦日)、各地で爆竹が鳴り響き、花火が夜空を彩り、商店街も伝統市場でも赤い正月飾りが華やかな雰囲気を盛り上げます。「徐夕」から「春節」を跨いで1週間ほどが正月休暇です。荷物をたくさん抱えて満員の帰省列車に乗り組む風景は日本でもテレビのニュース番組で報道されるこの時期の風物詩になりつつあります。

では、カレンダーの1月1日はどうかと言うと・・・。新暦でお正月を祝う日本のような特別や雰囲気はありません。中国でも1日は祝日になり仕事は休みになりますが、その前後も含めて通常通りの仕事です。旧暦の正月である「春節」を盛大に祝うのが華人圏の習慣なのです。

さて、「春節」のもうひとつの側面・・・。それは「春節」のこの時期は「転職」の季節でもあります。一般的に中国では年末から1月にかけて人事評価があります。個人の査定があり、面接があり、ボーナスの金額や翌年の目標が決まります。

ボーナスを受け取ると「忘年会」のシーズンに入ります。つまり、2014年が明けて「春節」の1月31日にまでは「忘年会」のシーズンが続いているわけです。そして、「忘年会」を前後してボーナスを受け取って、「忘年会」を終えてから「辞表」を出すという社員もいます。「春節」を機に会社を辞め、心機一転、正月休暇後は新しい職場に出社するというパターンです。

「正月休暇後、担当者が換わってしまった」、「窓口だった人が会社を辞めてしまった」というケースもあります。しらずに中国出張を入れると、現地に行ってみて「担当者がいない」、「換わった担当者が前任者から業務を引き継いでいない」といったケースもあります。大きなプロジェクトの最終決定はできればこの時期を避けたほうが無難かもしれません。「重要案件の決定は旧正月明け」、「この時期の出張はできる限り控えている」という人もいます。

「春節」は人が動く季節です。この時期は一年でも最も転職が多い季節なのです。くれぐれも要注意。皆さんの取り引き先の担当者は大丈夫?