こたつむり本舗

りうまちゃーなナマケモノのブルーな戯言の綴れ書き

氷艶2017ー破沙羅ー 5/20 マチネ 感想その二

2017-06-04 16:53:35 | ハコの覚書
 猿田彦/弁慶の愛しき妻・天鈿女命が村上佳菜子。このウズメちゃんが可愛くけなげで一途で猿田彦を慕っている情感もたっぷりで出色の出来、天鈿女らしい躍動的で溌剌とした色気もあり、まさに仁にあった役で見応えがあった。
 基本スケーターには台詞は全くないのでウズメちゃんも喋らない、でも猿田彦とラブラブのおしどり夫婦感がちゃんと出ていたのには驚いた。だから立ち往生した弁慶を嘆き悲しむ様も、夫の再生を女神に祈る(天岩戸の変形シーン)様もすとんと腑に落ちる出来になっていた。
 最も競技スケーターに近い人で、衣装も最も身軽なデザインで、最もスケートのプログラムに近いソロを唯一滑ったのもこの人。つか、一般的なフィギュアスケート的なスケートはウズメちゃんのソロでしか堪能出来ない演出になっていた。けど最初のソロは長かったかな。

 さて、猿田彦&天鈿女命夫婦が大地の主として呼び出す天津神の天孫・瓊瓊杵尊が織田信成。直衣風の衣装も似合っていたし、滑りもいつもより綺麗だったけど、表現が暗い。
 この人は明るいひょうきん者のパブリックイメージがあるし、本人もコメディ得意と盛んにアピールしているけれど、表現者としての本質は陰で受け止めることなく段取り的に流す形質のある人。実際にスケーターとして滑って居るところを見ないと判りづらいけど陽の形質は皆無の人だ。
 この瓊瓊杵尊は出番こそ少ないけど、冷静に見れば事件を起こした張本人で悪人ながら、しれっとした顔でちゃぶ台座布団乱れ打ちして善人側でふんぞり返る役どころ。スケーターの役としては唯一「それがどうした!細けえことはいいんだよ!」と強引にねじ伏せなきゃいけない物語の要の役なんだが…陰の形質ゆえにそれが出来ていない、話が膨らまない、パブリックイメージ先行が徒になったか、表現者としては力不足じゃなかったかなぁ。

 瓊瓊杵尊の妻になる姉妹の妹・木花開耶姫が浅田舞、ジャンプがないのは幸いだったろうが、そうとうブランクがあるのによく滑っていた。
 かなりアグレッシブなお姫さまな造形だったんだけど、夫役が流すタイプだったので独り相撲になった傾向あり。なんだか印象の薄い夫婦だったかなぁ。

 静御前に鈴木明子、義経の胸の内に宿る幻影で気弱になると現れるという役どころなのであまり出番は多くない。 氷艶は従来のアイスショーのようなスケーティングプログラムがあまりない。ウズメちゃんのソロと義経&静のデュオの二つくらいか、一幕の義経とのデュオスケーティングで貴重なスケートプログラムを担当する役どころ。
 鈴木明子は表現に長けたスケーターで、プログラムも大地に根を張ったような力強くパワフルが多く得意なジャンルではあるが、正反対のようなはかなげな清楚なプログラムが苦手ではなく、力強いプログラムと同等レベルで得意。それは高橋大輔も同様なのだが、通常のアイスショーではシングル同士のデュオスケーティングは即席即興であまり滑り込むことも少ないが、今回は存分に滑り込んだ状態で儚げなデュオスケーティングで魅せた。ふわふわと風に溶けるような表現が出来るのもフィギュアスケートの魅力の一片を見せた、今回はカップルジャンルのスケーターがいないので貴重なシーンになった。
 そうかと思うと…二幕目岩長姫に捕らわれた義経を助けるために現れてからは静御前も白刃を振るって立廻りに参加するwこれ、映像作品でしか静御前を知らなければ違和感を覚えるかもしれないが…歌舞伎だと静御前が白刃をかざす唯一の赤姫なので、氷艶なら静も立廻りくらいやるだろと納得出来るw歌舞伎の静は自立した気丈で強い女なのです。義経とは逆で映像イメージから歌舞伎イメージになったパターンですな。

 悪のタココンビこと、奴江戸兵衛(澤村宗之助)と鬼佐渡坊(大谷廣太郎)は岩長姫の眷属ながら三枚目のコメディ担当wこのたっぷりとしたタコモチーフの着肉衣装を纏ったタココンビのはっちゃけぶりがすさまじく、悪の一味が皆どこか愛らしい雰囲気を帯びることになったw(蛇髪姫のぞく)
 でも、この摩訶不思議な底抜けのコメディキャラも荒事歌舞伎のお約束の定番なんだよなぁw
 レクレーションレベルでしかスケート経験のない宗之助さんと、スケート経験無しなのに氷艶出演を志願した廣太郎くんの為に、プロテクター代わりの着肉衣装と万一の転倒でもギャグに持って行ける三枚目役を用意したということだそうだけど、猿田彦/弁慶の亀鶴兄さんよりスケートは上手くなってたよね。
 
 義経と一緒に召喚された善の四天王が大島淳・鈴木誠一・蝦名秀太・佐々木彰生の四人、PIWチームメンバーOB+飛び抜けた表現力で全日本フィギュア大会の華だった彰生くんの四天王は大立廻りの中心になったメンバー。
 集団で滑る事になれていてる面々が超高速大立廻りの中心に居たのはなんとも心強い事だった。
 悪投の大宴会に現れた悪の四天王が澤村國矢・片岡松十郎・中村かなめ・中村蝶紫の四人、滑ることなく宴会の場面で一差し舞うのが見せ場だけど、それが動く錦絵のごとくで極上のスパイスだった。
 それに場面ごとに善側になったり悪側になったりするアンサンブルとして、スケーターはPIWチームメンバーOB・OG中心にアイスホッケー経験ありの俳優さんとジャパンアクションエンタープライズの面々が走り・滑りまくり、演奏のDRUM TAOも迫力あるスタイルでまるで立廻りに参加しているようだった。


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