著作権法

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著作権の保護期間の延長(その2)

2006-11-24 03:24:48 | Weblog
 保護期間の延長にかんする「賛成論」について、反論を頂戴しました。11月23日付けのトラックバックに引用されているものがそれです。
 

■「国民会議」の構成について
 「国民会議」について、十分そのお名前を認識した上で「有識者」と書いたところ、「ほとんどが著作者である」という指摘を頂戴しました。
 確かに、発起人の方々は各分野で様々な活動をされている方々で、著作も数多くあり、「著作者」であることは間違いありません。しかし、大学の教員や弁護士として論文を「著作」したり、「評論」などを著作するだけの方も多く、小説家や美術の創作をされる方、アーティストといった方々の割合は多くありません。
 私はこの構成を的確に表現するには「有識者」と表現したほうが適切だと思います。
 
■未来の著作者を再生産できる環境
 保護期間が長くなると、利用が円滑に進まず、あらたな著作物の再生産ができにくくなる点も指摘されています。これは、延長反対を考える方々の共通した意見と思います。
 私は、利用が円滑にならなくなるという点については、まさにその通りだと思います。仮に20年間保護が延長されれば「青空文庫」も20年間にわたり、新たな作家リストを得られなくなりますし、ワンコインDVDについては、映画の保護期間が70年となったことにより、年々新たなタイトルのものが出されるという状況でなくなっています。
 しかし、新たな創作には、どれほどの影響があるのでしょうか。
 確かに翻訳のような、既存の創作を利用して創作を行う活動には、影響はあるでしょう。前の記事で引用した「星の王子様」がよい例です。
 同様に、小説の映画化といった「翻案」利用にも影響はあるでしょう。
 しかし、オリジナルの作品を創作するという点では、私は大きな影響はあるのかどうか、よくわかりません。今の時代に創作活動をされている方々は、過去の作品からインスピレーションを感じて創作することは多いと思いますが、そうした作品について権利が存続していたとするならば、その著作権に触れるような形で創作活動をされる方はどれほどおられるのか・・
 私は「新たな創作」に影響がある点は否定するものではありませんが、その影響は、創作活動全体から見れば「限定的なもの」ではないかと思っています。

 ■国際協調について
 50年より長い保護期間を設定している国は、数としては少数です。ベルヌ条約の規定を国際標準と考えれば、その標準を乱しているのが「欧米諸国」だといわれれば、確かにそういう考え方は否定できないと思います。
 しかし、米国・EU諸国などが70年としている状況を冷静に考えたとき、どのような行動を取ることが「国際協調」かをよく考える必要があると思います。
 私は、協調するなら、欧米諸国と一緒の歩調を取るべきではないかと思います。もちろん、ここは「価値判断」の問題ですけどね。


 ・・・提起された問題点のすべてに応えているわけではありませんが、とりあえず気がついた点について、書いてみました。
 私は、「無条件」で保護期間の延長を賛成しているわけではありません。延長のデメリットの解消策がセットで取られることがぜひとも必要であると思っています。
 「権利者が不明になって、許諾を取ろうと思っても取れない」とか、「出版社が作品を塩漬けにして、一般人の作品へのアクセスを困難にしている」という状況は、改善されなければならないでしょう。
 私は、権利者不明の場合には「裁定」によって利用可能とする手段が著作権法にもありますが、それを非常に簡潔な手続きで行えるようにすべきだと思っています。米国でも「オーファンワークス」の利用を円滑にするための法案が連邦議会で議論されていると聞いています。日本でも、そうした対策はぜひとも必要でしょう。
 また、出版社の「作品塩漬け」については、出版社に猛省を促すとともに、著作権法で、「独占出版」の契約を禁じるくらいの措置をとってもいいのではないかと思っています。
 新聞報道によれば、文化庁は来年にも保護期間の延長問題を検討するようですから、そうした政策を一緒に考えるべきだと思っています。