■知的財産権侵害の罪は「10年以下の懲役」へ
著作権侵害の罪は、自由刑については「5年以下の懲役」となっています。ところが、特許等の場合には、先の通常国会において上限が引き上げられて「10年以下の懲役」とされました。そのようなことから、著作権法も「10年以下」とすることが検討されているようです。
「10年」とするのは、知的財産権侵害という行為は「窃盗」と同じだというメッセージを社会に発したいという意図があるようです。たしかに、知的財産権は簡単に侵害され、所有権の場合に比べると、権利が軽んじられているような感じがします。知的財産権をもっと大切にすべきだとの観点からすれば、その侵害は「窃盗」と同じとすることは、強いメッセージとなることでしょう。
■刑罰の重さは何で決まる?
しかし、罰則の重さをどうやって決めるかについては、違法行為の態様や、違法行為を誘発させるような事情の違いに着目すべきだという考え方もあります。
たしかに、違法行為の態様として「窃盗」より悪質な「強盗」は、窃盗に比べ重い罪となっています。すでに自分の手元にあるものを盗ってしまうような「横領」や、置き忘れているものを持ち逃げするような「占有離脱物横領」などは、「奪う」という行為がなかったり、あるいは、違法行為を誘発するような状況にあったということで、「窃盗」に比べて、軽い刑罰になっています。
■ 一般原則に照らすと・・・
そうした一般原則に立ち返って考えると、知的財産権侵害の罪はどうなるでしょうか。
著作権は特定のモノについての排他的権利ではないので、所有権と違って権利の対象を完全に「管理」することはできません。一般的には、だれもが簡単にコピーできてしまいます。そういう意味では、一般的には「占有離脱物横領」に近いのかもしれません。
しかし最近では「コピーガード」が施されるようになってきました。その場合には簡単にはコピーできません。そのような場合には家に鍵がかけられていたり、ありは金庫にモノがいれられているのと極めて近い状況ですので、著作権侵害も「窃盗」に近いのかもしれません。
そう考えると、著作権侵害は、上限は10年とすることに一定の合理性が見出せるような気がします。
もちろん、コピーガードを破ってコピーするといった場合と、コピーガードがかかっていない場合に複製する場合とで構成要件を別立てにして、上限を定めるという措置もありえるのかもしれません。
しかし、例えばインターネットへの送信禁止のガードがかかってる場合も別立てにするのでしょうか、他にも将来何らかの支分権に相当する行為をさせないガードが開発されたときには、そのつど構成要件を追加するのでしょうか。それはなんだか現実的ではないような気がします。
「支分権に相当する行為をさせないような技術的措置が施されている場合」というような一般的要件を設定することも考えられなくはないですが、罰則規定として、厳格な定め方が法技術的に可能なのかどうかは、よくわかりません。
以上つらつら考えると、著作権侵害の罪について一般的に10年とすることは、はやり一定の合理性があるような気がします。
では、特許権の場合はどうでしょうか。著作権の場合のように「コピーガード」がかかることはありません。したがって、「窃盗」とは事情が異なるような気がします。意匠や商標についても同じです。
もちろん、特許権を侵害する製品を製作する行為などについては、誰もが簡単にできるわけではありません。そうした行為をあえてやるという場合には、行為の態様は悪質だということはできるでしょう。しかし、それはモノを盗む行為にたとえていうならば、「放置されている自転車」や「道に落ちている現金」ではなく、「運搬が容易ではない大きなもの」を持ち逃げするようなものにすぎず、結局「占有離脱物横領」と同様ではないかという気がしてなりません。
・・・・ということで、なにやら「著作権」だけは、「コピーガード」という管理手段があるゆえに、上限を「窃盗」並みにすることは合理性があるが、特許等他の知的財産権の場合には「合理性」の根拠がやや薄弱のような気がいたします。
特許庁の人やこうした立法を推進した国会議員は、こうした議論にはどのような反応をするのでしょうかねぇ。
著作権侵害の罪は、自由刑については「5年以下の懲役」となっています。ところが、特許等の場合には、先の通常国会において上限が引き上げられて「10年以下の懲役」とされました。そのようなことから、著作権法も「10年以下」とすることが検討されているようです。
「10年」とするのは、知的財産権侵害という行為は「窃盗」と同じだというメッセージを社会に発したいという意図があるようです。たしかに、知的財産権は簡単に侵害され、所有権の場合に比べると、権利が軽んじられているような感じがします。知的財産権をもっと大切にすべきだとの観点からすれば、その侵害は「窃盗」と同じとすることは、強いメッセージとなることでしょう。
■刑罰の重さは何で決まる?
しかし、罰則の重さをどうやって決めるかについては、違法行為の態様や、違法行為を誘発させるような事情の違いに着目すべきだという考え方もあります。
たしかに、違法行為の態様として「窃盗」より悪質な「強盗」は、窃盗に比べ重い罪となっています。すでに自分の手元にあるものを盗ってしまうような「横領」や、置き忘れているものを持ち逃げするような「占有離脱物横領」などは、「奪う」という行為がなかったり、あるいは、違法行為を誘発するような状況にあったということで、「窃盗」に比べて、軽い刑罰になっています。
■ 一般原則に照らすと・・・
そうした一般原則に立ち返って考えると、知的財産権侵害の罪はどうなるでしょうか。
著作権は特定のモノについての排他的権利ではないので、所有権と違って権利の対象を完全に「管理」することはできません。一般的には、だれもが簡単にコピーできてしまいます。そういう意味では、一般的には「占有離脱物横領」に近いのかもしれません。
しかし最近では「コピーガード」が施されるようになってきました。その場合には簡単にはコピーできません。そのような場合には家に鍵がかけられていたり、ありは金庫にモノがいれられているのと極めて近い状況ですので、著作権侵害も「窃盗」に近いのかもしれません。
そう考えると、著作権侵害は、上限は10年とすることに一定の合理性が見出せるような気がします。
もちろん、コピーガードを破ってコピーするといった場合と、コピーガードがかかっていない場合に複製する場合とで構成要件を別立てにして、上限を定めるという措置もありえるのかもしれません。
しかし、例えばインターネットへの送信禁止のガードがかかってる場合も別立てにするのでしょうか、他にも将来何らかの支分権に相当する行為をさせないガードが開発されたときには、そのつど構成要件を追加するのでしょうか。それはなんだか現実的ではないような気がします。
「支分権に相当する行為をさせないような技術的措置が施されている場合」というような一般的要件を設定することも考えられなくはないですが、罰則規定として、厳格な定め方が法技術的に可能なのかどうかは、よくわかりません。
以上つらつら考えると、著作権侵害の罪について一般的に10年とすることは、はやり一定の合理性があるような気がします。
では、特許権の場合はどうでしょうか。著作権の場合のように「コピーガード」がかかることはありません。したがって、「窃盗」とは事情が異なるような気がします。意匠や商標についても同じです。
もちろん、特許権を侵害する製品を製作する行為などについては、誰もが簡単にできるわけではありません。そうした行為をあえてやるという場合には、行為の態様は悪質だということはできるでしょう。しかし、それはモノを盗む行為にたとえていうならば、「放置されている自転車」や「道に落ちている現金」ではなく、「運搬が容易ではない大きなもの」を持ち逃げするようなものにすぎず、結局「占有離脱物横領」と同様ではないかという気がしてなりません。
・・・・ということで、なにやら「著作権」だけは、「コピーガード」という管理手段があるゆえに、上限を「窃盗」並みにすることは合理性があるが、特許等他の知的財産権の場合には「合理性」の根拠がやや薄弱のような気がいたします。
特許庁の人やこうした立法を推進した国会議員は、こうした議論にはどのような反応をするのでしょうかねぇ。