著作権法

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著作権の保護期間の延長

2006-11-20 02:52:46 | Weblog
 権利者団体が保護期間の延長を求めて文化庁に要望書を提出し、また、慎重な検討を求める有識者がその旨文化庁に要望書を提出したという報道がありました。
 権利者団体の要望は、各紙にのっていましたが、慎重な検討を求める要望は、日経しか報道していなかったのではないでしょうか。

 米国からの要望もありますし、政府の公式の計画である「知的財産戦略推進計画」においても「2007年度中に結論を得る」とあることから、著作権法を所管する文化庁ではおそらく近いうちに検討を開始することでしょう。

 保護期間の問題は、ある面経済問題ですが、創作に携わる人や創作物をどれほど大切にするかという文化芸術の問題でもあると思います。
 保護期間延長反対論は、「経済」の問題として、保護期間を「死後50年まで」から「死後70年まで」に延長しても、創作のインセンティブにはならない、と言っています。しかし、延長要望派は、創作者やその作品を大切にするということで、インセンティブになるとしています。要するに、経済的な側面よりも、「しっかり保護してくれている」というその「気持ち」のような部分を重視しているのでしょう。

 たしかに、創作のインセンティブにならないといっている人は、「有識者」に多いような気がします。実際に創作をしない人で「経済学」的な観点から、言っているのではないでしょうか。

 私は、個人的な考え方を披瀝すれば、保護期間の延長は賛成です。
 理由は、3つあります。

 第1には、やはり国際協調の観点です。
 欧米先進国がもう70年に延長しています。そうしたなか、国境を越えて利用されることが多い「著作物」の保護は、一般論としては先進国共通の保護内容とすべきではないでしょうか。
 損得の議論がありますし、知的財産権法の権威である研究者までもそのようなことを言っておられますが、それはあまりにも「途上国」的な発想ではないかと思います。「星の王子様」が、保護期間が切れたことにより多くの翻訳が登場したといいますが、そうした翻訳が出版される経費のうち、権利者に支払われるべき金銭はいったいどれほどなのでしょうか。それを節約したいから保護期間が短い方がよいというのは、なんだか情けない気がしてなりません。
 日本は「自由貿易」でもって、今日の経済的な繁栄を勝ち取り、その成果を謳歌しています。そういう国は、国際収支面の「損得」の議論というよりも、「国際協調」を大切にすべきではないでしょうか。


 第2は、創作をする方々の気持ちを大切にしたいということです。
 保護期間の問題は、先に触れたように、「経済問題」だけではなく、「文化芸術政策」の問題でもあります。「保護期間の延長」は、創作する者を大切にするとともに、作品をも大切にするという国家の意思の表れという側面があります。
 文化芸術に対する政策は日本は欧米諸国に比べると本当に貧弱といわれています。国の予算も少なく、民間からの寄付も少なく、寄付を促進するような税制にもなっていない・・・・ 
 そんな文脈からすると、せめて著作権の分野で、創作を大切にする姿勢を示さなければいけないのではないかと感じます。

 第3は、保護期間の延長は、経済的には大きな影響はないということです。
 断定的に「ない」と書いてしまいましたが、確たるデータがあるわけではありません。しかし、死後50年を経過しそうな者の作品の利用はいったいどれだけあるかと考えると、著作物全体の利用からすれば極わずかでしょう。
 もちろん、権利者との連絡がうまくいかないから著作物を利用できないとか、そういう面での影響も考えられますが、それは50年となっている現在でも問題とされており、保護期間の延長問題とは別に解決されるべき課題であり、延長問題とリンクして語られるものではないと思います。
 でも、文化庁が延長を考えているのなら、この問題に対しては有効な対策を用意すべきでしょうね。「裁定制度」をより緩やかなものとするとか、「えいや」と使っていいことにして、後から登場した権利者には、その権利行使に限定を加えるとか、そうした措置を取るべきでしょう。

 ・・・そんなことで、保護期間は延長してもよいと思いますが、こうした考え方は少数派なんでしょうね。