■「翻訳権の10年留保」とは?
「翻訳権の10年留保」とは、1970年まで効力を有していた旧著作権法で認められていた制度で、海外の著作物の翻訳が10年出ていないときには、日本ではその作家の翻訳+印刷による複製の権利が切れるというものです。発行が講和条約前の場合には、この10年に一定期間の「戦時加算」も加わります。
1971年から施行された現在の著作権法にはこの規定はありません。しかし、1970年までに発行された著作物についてはこの「翻訳権の10年留保」は適用されることとなっています。したがって、例えば1970年に発行された海外の著作物は、1980年までに邦訳されていなければ日本の出版社は81年以降自由に翻訳し出版することができました。
多くの作品がこれにより日本で邦訳が出されたようです。確認はしていませんが、著作者が生存しているかどうかはまったく問われないので、著作者がまだ生きている間も日本ではこの規定を適用することにより多くの作品が邦訳され出版されていたようです。
■青空文庫のリストに
で、10年留保の規定で日本での翻訳等が自由になった作品は、現行法の下でも、翻訳し出版することは自由です。
ただし、翻訳と印刷が自由ということのようなので、それ以外の利用については権利が残るのかもしれません。インターネット上にアップロードすることは難しいのでしょうか。しかし、「印刷」は大丈夫なので、書物としては出版発行が可能です。
■戦時加算廃止との関連
最近著作権関係団体が、保護期間の死後50年までから70年までへの延長を文化庁に要望したようです。その中で、戦時加算は廃止すべきだという意見も表明されていたとのことです。
しかし、戦時加算は、連合国が日本との戦後の枠組みを規定する際に決められた秩序ですから、いかに「不平等条約」とはいえ、その廃止は容易ではないでしょう。少なくとも「沖縄の復帰なくして戦後は終わらない」などといった政治家の情熱と同じくらいの情熱を持った政治家が現れないと、その廃止は難しいのではないでしょうか。
しかし、この戦時加算を廃止するには一緒に「翻訳権の10年留保」も廃止したらよいではないかという議論もあります。確かにこうしたセットでの議論なら連合国も乗って来やすいのではないかとも思えます。
だが、翻訳権の10年留保は、現行法の著作権法には規定はありません。現在ではこの10年留保により翻訳権が新たに切れる著作物はありません。1980年末をもって自由な翻訳ができる海外の著作物リストに新たな著作物は加わらなくなっています。
■保護の復活?
したがって、戦時加算廃止の取引として提案できる翻訳権の10年留保の廃止はといえば、意味あるないようにするのであれば、それは「保護の復活」しかありえません。
「保護の復活」は著作権の分野では基本的には行わないこととしているようです。保護があって、いったん保護期間満了で公有になったものを、また再び保護するというのは、社会的に混乱が大きいと考えられるからです。「ローマの休日」も、今なぜ問題になっているかといえば、映画の著作物の保護期間を公表後50年から70年に延長したときに、復活はしない・・つまり、いったん保護が切れたものは復活しないという立法措置をとったからこそ、保護が切れているのかどうかが問題となっているのエス。
したがって、「保護の復活」になるような「10年留保の廃止」はありえないでしょう。つまり、10年留保を廃止したとしても、この10年留保の規定の適用により出版された著作物については、そのまま出版が継続できるようにすべきでしょう。
「翻訳権の10年留保」とは、1970年まで効力を有していた旧著作権法で認められていた制度で、海外の著作物の翻訳が10年出ていないときには、日本ではその作家の翻訳+印刷による複製の権利が切れるというものです。発行が講和条約前の場合には、この10年に一定期間の「戦時加算」も加わります。
1971年から施行された現在の著作権法にはこの規定はありません。しかし、1970年までに発行された著作物についてはこの「翻訳権の10年留保」は適用されることとなっています。したがって、例えば1970年に発行された海外の著作物は、1980年までに邦訳されていなければ日本の出版社は81年以降自由に翻訳し出版することができました。
多くの作品がこれにより日本で邦訳が出されたようです。確認はしていませんが、著作者が生存しているかどうかはまったく問われないので、著作者がまだ生きている間も日本ではこの規定を適用することにより多くの作品が邦訳され出版されていたようです。
■青空文庫のリストに
で、10年留保の規定で日本での翻訳等が自由になった作品は、現行法の下でも、翻訳し出版することは自由です。
ただし、翻訳と印刷が自由ということのようなので、それ以外の利用については権利が残るのかもしれません。インターネット上にアップロードすることは難しいのでしょうか。しかし、「印刷」は大丈夫なので、書物としては出版発行が可能です。
■戦時加算廃止との関連
最近著作権関係団体が、保護期間の死後50年までから70年までへの延長を文化庁に要望したようです。その中で、戦時加算は廃止すべきだという意見も表明されていたとのことです。
しかし、戦時加算は、連合国が日本との戦後の枠組みを規定する際に決められた秩序ですから、いかに「不平等条約」とはいえ、その廃止は容易ではないでしょう。少なくとも「沖縄の復帰なくして戦後は終わらない」などといった政治家の情熱と同じくらいの情熱を持った政治家が現れないと、その廃止は難しいのではないでしょうか。
しかし、この戦時加算を廃止するには一緒に「翻訳権の10年留保」も廃止したらよいではないかという議論もあります。確かにこうしたセットでの議論なら連合国も乗って来やすいのではないかとも思えます。
だが、翻訳権の10年留保は、現行法の著作権法には規定はありません。現在ではこの10年留保により翻訳権が新たに切れる著作物はありません。1980年末をもって自由な翻訳ができる海外の著作物リストに新たな著作物は加わらなくなっています。
■保護の復活?
したがって、戦時加算廃止の取引として提案できる翻訳権の10年留保の廃止はといえば、意味あるないようにするのであれば、それは「保護の復活」しかありえません。
「保護の復活」は著作権の分野では基本的には行わないこととしているようです。保護があって、いったん保護期間満了で公有になったものを、また再び保護するというのは、社会的に混乱が大きいと考えられるからです。「ローマの休日」も、今なぜ問題になっているかといえば、映画の著作物の保護期間を公表後50年から70年に延長したときに、復活はしない・・つまり、いったん保護が切れたものは復活しないという立法措置をとったからこそ、保護が切れているのかどうかが問題となっているのエス。
したがって、「保護の復活」になるような「10年留保の廃止」はありえないでしょう。つまり、10年留保を廃止したとしても、この10年留保の規定の適用により出版された著作物については、そのまま出版が継続できるようにすべきでしょう。