大きく膨らんだつぼみが、開花の時を待ちわびている。3歳牝馬の出世レースのひとつ、紅梅Sを快勝。天性のセンスと決め手を秘めるワイルドラズベリーが、上昇ムードに乗って重賞の舞台に立つ。
「前回は強かったな。追い出すまで、他の馬を待つ余裕があったし、最後も突き放したから」と、文句ない内容に中尾秀調教師が満足げな表情を浮かべる。
前走の紅梅Sは格上挑戦となるオープンだったが、危なげないレース運びで1番人気に応えた。スタートを決めて好位のインをキープ。直線では馬なりのまま先団に並びかけると、追ってからもしっかりと伸びてライバルたちを撃破した。
「スタートが速いし、競馬が上手な馬。一瞬の反応の良さ、抜け出す脚はなかなかいいものがありますよ」。主戦の浜中騎手は、パートナーの素質を感じ取る。
3戦2勝。上がり3ハロンのタイムを見ても、35秒3、34秒8、34秒6と、1戦ごとに末脚に磨きがかかっている。
「2走前はスムーズに行ってもう少し前のポジションで運べていれば、もっと際どかったはず。新馬戦も直線で狭いところを割って伸びていたし、いい勝負根性があるよ」とトレーナーも高評価を与える。
今回は2歳女王のアパパネをはじめ強豪揃いの桜花賞トライアルで、試金石となる一戦。坂のあるコースも初めてだが、指揮官の胸の内は不安よりも期待の方が大きい。
「パワーのある馬体だし、気性的にも、体形的にもマイルが合いそう。アパパネとどれだけやれるか楽しみだよ」
本番と同舞台の前哨戦。重賞タイトルという果実を手に、桜の季節を迎えたい。(鈴木康之)