圧倒的な強さで制したエスポワールシチーの馬上で佐藤哲はガッツポーズ
第10回ジャパンカップダート・G1(6日、阪神・ダート1800メートル)は、好スタートから先行した1番人気のエスポワールシチーが、最後の直線でも後続を寄せつけず、G1・3連勝を達成した。2着以下に3馬身半差をつける完勝で、国内ダート最強馬の実力を証明。世代交代を果たした。コンビを組む佐藤哲三騎手(39)は海外挑戦の夢を口にした。2着に5番人気のシルクメビウス、3着に12番人気のゴールデンチケットが入り、3連単は13万1960円の好配当となった。
後ろを振り返る必要はない。エスポワールシチーは余力十分に最後の直線を迎えた。追撃する蹄音が聞こえてくるどころか、背後に迫っていたサクセスブロッケンをどんどん引き離していく。それでも佐藤哲は気合を注入し続け、最後は3馬身半の差をつける圧勝を飾った。
影も踏ませぬ逃走劇で、かしわ記念、南部杯に続くG1・3連勝。中央で初のG1制覇を飾り、名実ともにダート路線の頂点を極めた。「ホッとしました。調教で絶対勝てる手応えがあった。あとは自分がミスしなければ大丈夫だと思った」と佐藤哲は胸をなで下ろした。
先頭で直線に向かうエスポワールシチー(左)。ゴールでは3馬身半突き放しG1・3連勝を決めた
佐藤哲は戦前、不安を抱いていた。「すごく悩んだ」という最内の1番枠。外国馬が行くのか、行かないのか。控えて馬込みに入って包まれないか。
しかし、レースが始まれば、競りかけてきたティズウェイの動きを冷静に判断。「あのスピードなら1コーナーで膨れると思った」と逃げ作戦を選択し、絶妙なペースに持ち込んだ。
この秋になって中央のG1を意識できるまでに成長を遂げた。前走の南部杯では馬体重が14キロ増の500キロに。「体が大きくなって成長している。筋肉の付き方も変わってきた」と安達調教師は充実期に入った愛馬に強い手応えを感じていた。
鞍上は以前から馬の力を信頼していた。07年12月に落馬事故で腰椎などを骨折。復帰に向けてリハビリをしている時だった。「けがをしてもやもやしたときに出会った馬。G1取れるんじゃないかと思った」。付きっきりで調教にまたがり、落ち込んでいた心を救ってくれた大切なパートナーだった。
これで夢が広がった。来春のドバイワールドC・G1(3月27日、メイラン競馬場)も視野に入っている。「陣営も僕も夢は海外。今日みたいな勝ち方でないと、海外なんて言ってられない。もうチャンスはないと思っていたけど、この馬なら…」と佐藤哲。04年の凱旋門賞は、G1・2勝馬タップダンスシチーで挑み、17着に終わった。奇しくも同じオーナー・友駿ホースクラブの逃げ馬。この日の逃走劇が、胸にしまいかけていた感情を覚せいさせてくれた。
[優勝馬メモ]
◆戦績・17戦9勝(うち地方2戦2勝) 09年マーチS・G3、かしわ記念・G1、南部杯・G1に次いで重賞4勝目。
◆性齢 牡4歳の栗毛。4歳馬がこのレースを勝ったのは初めて。
◆総収得賞金 優勝賞金1億3000万円を加え、3億9033万1000円(うち地方1億1000万円)。
◆血統 父ゴールドアリュール、母エミネントシチー(父ブライアンズタイム)。父の産駒はJRA重賞3勝目。父は02年のこのレースで5着。
◆1番人気 07年のヴァーミリアン以来の優勝で4勝目。
◆南部杯優勝馬 同年にこのレースを制するのは初めて。
◆ダートG1年間3勝 史上9頭目。
◆佐藤哲三騎手(39) JRA重賞は15年連続勝利で38勝目。同G1は04年宝塚記念(タップダンスシチー)以来、4勝目。そのうち、96年朝日杯3歳S(マイネルマックス)、03年ジャパンC(タップダンスシチー)と今回は1番枠だった。
◆安達昭夫調教師(50) JRA重賞は8勝目。同G1は初勝利。
◆生産者 北海道日高町の幾千世牧場。
◆馬主 (株)友駿ホースクラブ。JRAのG1は4勝目。
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