「AJCC・G2」(23日、中山)
記録ずくめの一戦に理論派トレーナーが燃えている。史上5頭目の同一JRA平地重賞3連覇を狙うネヴァブション。管理する伊藤正師は08年にもエアシェイディで制しており、勝てばAJCC4連覇。平地重賞の記録としては、54年ぶり2人目の快挙となる。近走不振の愛馬を奮い立たせるべく、ブリンカーを装着して快挙達成を成し遂げる構えだ。
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08年にエアシェイディがVを飾り、今回偉業に挑むネヴァブションは09、10年を連覇中。愛馬の3連覇、そして伊藤正師自身の4連覇。「それはたまたま。全く気にしていない」とトレーナーは笑うが、決して偶然で成し遂げられる記録ではない。
確かな厩舎力と馬の能力が融合してこそ。「ウチは大手の馬が多いわけではない。個人馬主が多い。いろいろ文句を言っちゃうからなあ」と師は笑いながら、自身の管理馬について語る。外厩制度が発展し“オーナー主導”の風潮も強い昨今の競馬界。大手がさまざまな意味で幅を利かせるなか、個人馬主が多いのは厩舎への信頼度が高いことの証明でもある。
8歳を迎えてなお、勢いを失っていないネヴァブションも、陣営がじっくりと育ててきた結果。それでも時に想定外のアクシデントが起こるのも競馬だ。「万全に仕上げたジャパンCが除外。狂った部分はある」とトレーナーが話すように、急きょローテをステイヤーズS(3着)→有馬記念(8着)に変更。その影響で精神面に狂いが生じ、ここ2走は右にもたれる従来の癖が顔を出した。
いかにして軌道修正するかが最大のテーマ。当然、理論派トレーナーは策を練っている。水曜の追い切りでは片側にチークピーシズを着用して反応を確かめた。騎乗した後藤は「ブリンカーのような強制的なものを着けた方がいい。今のままだと同じ結果になる」とコメント。陣営は馬具装着を決断した。問題点を解決した先に待つのは、さまざまな大記録。厩舎力を見せつけて歴史に名を刻む。