COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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アフリカ発展支援に関するBSフォーラムの概要

2008-04-03 00:44:22 | Weblog
はじめに
 今年は5月28~30日に横浜で第四回アフリカ開発会議(TICAD IV:Tokyo International Conference of African Development)が開催される。また、7月の洞爺湖サミットでは、アフリカの支援が主要議題の一つと見込まれており、アフリカへの関心が高まっている。会議にさきがけて、3月29日にNHK衛星第二テレビのBSフォーラムで、「国際シンポジウム アフリカの発展をどう支援するか」(3月4日に千代田公会堂で開催)の模様の抜粋が放送された。このシンポジウムはNHKの道傳愛子解説委員の司会で、第一部では「ジャーナリスト達の報道目的と取材の成果」について、アフリカから3名、日本から1名のパネリストの参加で進められ、第二部では「アフリカ発展への今後の取組」について、日本から更に3名のパネリストが加わって進められた。この記事ではシンポジウムでの論議の概要を記載し、次の記事で考察を加えてみたい。

第一部 ジャーナリスト達の報道目的と取材の成果

道傳開設委員「ジャーナリスト達はどのような視点で、何に注目して取材してきたのか伺いたい。」

ローズ・チュンプカ女史(ザンビア国営放送)「(安全な飲み水と保健及び村人達の経済発展のための小さなプログラムへの参加を柱とした開発プログラムを紹介して)、被援助国の目標の明確な理解とそれに対応した援助が必要であり、援助するからといって、使い道まで細かく指示すべきでない。ザンビアの場合はビジネスが発展できる環境つくりである。」

ジョセフ・クラングワ氏(タンザニアマジラ紙)「(タンザニア南部の数人の女性達が僅かな金を出し合って始めた、女性のための開発基金の成功例を紹介して)、貧困の克服や病気の理解と予防のための教育や啓蒙が必要性であり、日本や諸外国が協力してアフリカ諸国の貧困削減に取り組むべき時が来ている。若者をエイズやマラリアから守ることで国も繁栄でき、海外援助も最低限に留められる。」

道傳解説委員「女性の力が向上すれば家族の中で前向きの変化が起こり、村や地域社会のも波及して最終的には貧困の悪循環を解消できるということか?」

クラングワ氏「タンザニアでは家族の中心は女性。女性が向上すれば家族全体も向上する。」

ママドウ・カセ氏(セネガル ル・ソレイユ紙)「アフリカは歴史の中で三つの悲劇を経験してきた。いずれもヨーロッパとの関係において引き起こされたもので、労働力調達のための奴隷制、資源確保のための植民地政策、法を犯しても富を求めて金融資本の中心ヨーロッパを目指すアフリカの若者の不法移民である。解決策はアフリカの統合にある。アフリカについてより正確な情報を提供し、緊密でよりよい国際協力関係の必要性を示す情報を提供してゆきたい。」

松本仁一氏(朝日新聞元編集委員)「日本の小額援助が非常に役に立っている例を示したい。ソマリアは1991年に当時のバーレ政権が倒れて内戦状態になったが、北西部では1993年に部族の長老達の話し合いにより、外部からの介入無しに武力抗争が停止され、ソマリランド共和国が立ち上げられた。ユニセフ経由の日本政府の援助金で10の学校が作られ、学校を核にした地域社会が立ち上りつつある。日本では学校一つ作るのに10億円かかるが、ソマリランドでは教室3,4の学校が70万円でできる。」

道傳解説委員「ジャーナリストとして、どのアフリカを伝えるかでジレンマを感じないか?」

チュンプカ女史「できるだけアフリカの現実を伝えたいが、ネガティブな側面を持つ記事と、将来性を持つアフリカに投資を呼び込む記事のバランスを取る事がアフリカのジャーナリストの課題である。」

第二部 アフリカ発展への今後の取り組み

宮司正毅氏(三菱商事顧問)「貧困削減のための最良の政策は、持続的な経済発展で、その鍵は民間投資にある。モザンビークの首都マプート近郊出2000年に稼動を開始したアルミ地金工場は、総事業費2000億円、生産量は世界最大級の56万トン、従業員1100人の95%が現地人で、関連会社を含めると1万人超の雇用を創出した。製品の殆どが輸出用で、モザンビーク総輸出の50%を占める。資本構成900億円の4%がモザンビーク政府由来で国家プロジェクトとして位置づけられ、残りは三菱商事の25%等民間由来である。年間5億円を供出し、衛生教育プログラムの運営、エイズ・マラリア等の感染症対策の診療所の設立、小中学校、職業訓練所設立、農業振興と小規模ビジネスへの支援などに充当し、企業と地元のコミュニティーが融和した持続可能な成長を目指している。日本がアフリカの経済発展に大きく貢献するには、政府と民間が一体となって相乗効果を生むような民間プロジェクトを実現する工夫が必要である。
 インフラや公共性の高い分野は政府が責任を持って作り、国民に貯蓄と企業の誘発による経済への参画を誘導して初めて、海外投資家を呼び込むことができる。アフリカのジャーナリストには、アフリカ人自身の情熱、向上心などを高めるようなポジティブな情報を発信願いたい。」

カセ氏「正しい指摘で、政府間協力だけで満足せずに、アフリカ人自身が立ち上がる必要がある。民間セクターには利益を生むという目的がある。アフリカ人は自分たちの土地を発展させる目的がある。双方がこれを理解すれば協力のフレームワークができる。」

黒川恒男氏(JICAアフリカ部長)「JICAのアフリカ支援方針は、人々の自立支援、平和の定着、経済成長支援の三つである。マラウィでは住民の主体的労働で身の回りの木や石を利用して乾季の間だけ役立つ小規模灌漑施設を千箇所作った。これにより、WFPからの食糧被援助国だったマラウィが食糧供出国に変わった。また、エチオピアでは学校建設を入り口にしたコミュニティー開発プロジェクトを行った。
 アフリカの平和と安全は確実に前進しており、アンゴラ、ルワンダ、ブルンジ、シェラレオネ、リベリア、スーダン南部にJICAが入って活動している。
 経済成長支援に関しては、国際幹線道路建設構想の中で、数カ国まとめた地域単位での道路や港湾整備を考えている。道の駅建設、国境通過手続きの簡略化、国境での感染症対策の三つを、People’s Infrastructureとしてインフラ事業に重ねて行く。」

木寺昌人氏(外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)「アフリカは今、平均5%超の経済成長率を示しており、JICA等のプロジェクトが効いている。アフリカではAU(アフリカ連合)への統合の動きがでてきている。三菱商事の事業が先鞭になって、多くの企業が関心を寄せている。民間人のアフリカ渡航のリスク軽減に何ができるかの検討を官民連携で進めている。TICADにはアフリカ52、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、ロシア。アジア諸国、100位の国際機関、かなりのアフリカの地域機関が参加予定である。」

道傳解説委員「日本のODAは総額では削減しているが、アフリカのジャーナリストはどう考えるか?又このような状況で、日本はどのようにアフリカと関わることができるか?」

チュンプカ女史「民間企業参入で公的援助削減を補うことができる。アフリカ自身の経済力が高まれば、社会問題に自力で対処可能になる。アフリカの政府や民間投資を必要とする産業が積極的に日本にアプローチしてゆく事が必要。双方の民間企業のアプローチで、多くの問題が解決できる。」

道傳解説委員「中国の存在感が増しているという報道があるが、実感しているか?」

宮司氏「日本に力があるうちにアフリカ固有の鉱物資源やよいプロジェクトに投資して、必要なものをアフリカ人と開発し、世界のマーケット価格で持ってくるプロジェクトを作らないと、アフリカのためにならず、日本にとっても不利である。中国国営企業がどんどん投資して、鉱物資源を中国に持って行き始めている。世界的に見て年々落ちてゆく日本の経済基盤をどうして守るか、アフリカの大切さを認識して民間のプロジェクトが作る事が大変重要である。」

木寺氏「先日のAU総会で首脳達が工業化について論議した。国としての投資受け入れ環境整備が必要であるが、道路、港湾、水などのインフラ整備や人材確保は一国だけでは難しいので、いろいろな国と協力しながら投資環境を良くして行けるとよい。」

道傳解説委員「投資環境整備へのJICAの関わりはどうか?」

黒川氏「成長に向けた支援と社会セクター(水、保健,教育)の支援のバランスが今後の鍵である。但し、アフリカと日本が援助だけで結ばれていては大変不幸であり、打ち破る民間の進出等が本来あるべき姿である。」

道傳解説委員「求められる援助、付き合い方についてはどうか?」

松本氏「本当に相手国の人々の生活に役立つかと、外交戦略としての援助かをはっきりさせておく必要がある。わけの分からない形で多額の金が流れても、成果も出てこない。受容れ国政府がフェアでバックアップする状況がないと具合が悪い。日本政府はそれを見極めてよい関係を作って欲しい。同時にアフリカのジャーナリスがそれをきちんとwatchして欲しい。日本のジャーナリストもwatchしなければいけない。」

道傳解説委員「それについてのアフリカのジャーナリストの意見はどうか?」

チュンプカ女史「ザンビアはインフレ率を一桁台に安定させ、為替の安定を図る努力もしている。これは同じ様な経験をした国からの協力がないとできない。日本のような国と仕事をするのは非常に有益で、多くを学べる。ザンビアでもインフラが整備された産業都市が本格的に建設されれば、投資を誘致できると期待している。」

カセ氏「最近、セネガル大統領が『セネガルは別にお金は必要ない。直接投資を求めている』と宣言した。アフリカが汚職や腐敗を撲滅しようとするなら、直接投資、更には短期投資の方針を受け容れることが汚職・腐敗回避のために最初に取るべきアプローチである。アフリカは経済的投資だけではなく、もっと人々の幸福に結びつく開発を進めなければならない。人間が充実感を持って生きてゆくには、経済発展と健全な政治、そして自由と民主主義がなくてはいけない。」


道傳解説委員「アフリカ発展のためにジャーナリストはどんな役割が果たせるか?」

クラングワ氏「ジャーナリストになる前は教師だったが、今は黒板の代わりに新聞を使って人々を啓発し、社会改革をどのように推進してゆくかを伝えている。人々と話してどのような問題を抱えているかを聞き、何をすべきかをメディアを通して伝えている。問題を隠してはいけない。それはジャーナリストがすべきことではない。アフリカが発展するように人々を助けてきたし、これからも助けて行かねばならない。」

道傳解説委員「アフリカの人達にとって関心の高まりが今年限りであってはよいことない。TICADやG8の成果を注視し、その後アフリカにどのような変化が起こって行くかも見守りたい。」

以上についての考察は次の記事を参照されたい。

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2 コメント

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manicmondayさんへ (coccolith)
2008-04-04 12:07:44
コメントを有難うございます。
映像詩プラネットで大きなインスピレーションを感じられましたね。おっしゃるような逆転の発想を持つ方が増えていって欲しいものです。
1年半くらい前の記事ですが、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユニス(ユヌスとも言われていますが)の貧困博物館という記事のTBを送らせていただきます。貧困がなくなって、博物館に行かないと見られない世界を期待しての構想です。
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アフリカの貧困‥ (manicmonday)
2008-04-04 10:17:31
coccolithさん、こんにちは。
TBありがとうございます。

昔は、貧困についてこう思っていました。
かわいそう。私にできる援助って何かあるかな?と。

だけどその考えって、なんだか上目線というか、
共に生きて行こうという気持ちが
所詮薄い他人事のように、近頃感じるようになりました。

映像詩プラネットを観たとき、
地球はたったひとつで、自分の起こした行動は
地球の裏側にも影響しているし、どこにでもつながっている
という事を強く感じました。
ならば、その行動を起こすための発端である
思考こそが大事なんじゃないだろうかと思ったのです。

貧困が発生してしまった原因って、
自分さえよければいいという思いから
発信された気がするのですが、
いつのまにかその小さな思いが、
社会化されて国際化されて大きくつながってしまった
ようなきがするんです。

時間はかかるかもしれないけれど、
だったら、その逆を純粋に求められる人で
あふれた社会になれば、
それが世界中につながって、
これまで失っていたバランスを取り戻せるのでは???
なんて思うわけなのです。

マイナス思考の時や悲観的なときって、
私は変な答えを出しがちです。
でも、プラス思考の時って、新しい思考回路が
できてゆく瞬間が多いし、そこからさらにもっと良い事に
発展してゆく可能性が高いという経験があります。

そんな気持ちを大事に信じていこうと思っている
今日この頃です。
環境問題も、悪くなることを恐れるのではなく
今あるものをいとおしみ大切にしたいなぁって
この間、美しい桜の木をみていたら、
メッセージというかエネルギーというか
何かそんなものをもらったような気がしました☆
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