11月25~12月1日のテレビ番組情報(11月24日更新)は前の記事です。
1.はじめに
先日録画しておいた表記の番組に感銘を受けたので紹介します。主人公のキャサリン・サリバン先生は、ニューヨークの公立高校に専門教育の教師を派遣しているNGOに所属する、平和教育の専門家です。大学で演劇を学んでいた時、近所に核兵器の原料となるプルトニウムの精製工場があること、そのような物質を人間が作っていることを知った瞬間に、核軍縮問題に取り組もうと決意して、軍縮研究の進んでいるイギリスに留学しました。平和学の博士号を取得後はイギリスのNGOで平和運動を開始し、広島、長崎訪問と被爆者との対面が平和教育の原点になりました。6年前にニューヨークに来てから、公立高校を巡回して6万人以上に、平和の大切さを教えて来ました。
2.ニューヨーク公立高校での課外授業
皆で輪になって相手の名前を呼び合いながらキャッチボールして、気持ちがほぐれたところで授業が始まります。中心テーマは核兵器問題です。「世界が混沌とする今こそ現実を直視することが必要。自分の世界に引きこもっていてはダメ、世界を見てもっと考えなさい」と教えています。身体と心でしっかり受止めて貰うために、様々な工夫を凝らしてあります。
まず生徒達は、世界におよそ3万2千個と言われている核兵器の数に驚きます。次に目を閉じさせておいて、金属の玉を一つ落とし、6千万の死者を出した第二次世界大戦に使われた全ての武器の威力に相当する音だと伝えます。続いて現存する核兵器の威力に相当する2600個の玉をバラバラ落として行きます。生徒達はなかなか止まない音に怖さを感じ、そのような武器を持つ意義に疑いを募らせます。
次に取り出したのは、アメリカの2004年の国家予算を、項目ごとに長さで表したリボンです。教育費340億ドル、子どもの医療費440億ドル、ひときわ長いのが軍事費の3990億ドルです。これに加えてエネルギー省の予算に含まれる核開発分400億ドルがあります。「こんなに軍事費が多いなんて早く戦争を止めなきゃ」と生徒自身に考えさせる授業を心がけているのです。
アメリカの一般的歴史教科書には、「広島と長崎への原爆投下は、第二次世界大戦を早期に終結させるため、避けられない手段だった。このお蔭で大勢のアメリカ人の命を救うことができた」と書かれているそうです。教室の照明を一瞬消して、「広島ではこの一瞬で14万人が死にました。長崎ではこの一瞬で7万人が死にました」と伝えてから、広島の被爆者達から譲り受けた4000度の高熱で溶けた屋根瓦など様々な資料を見せると、原爆の事実について初めて知った生徒たちは驚きを隠せません。サリバン先生は、「誰もが機会を作って被爆地を訪れ、惨劇を生き延びた被爆者達がこの世を去る前に話に耳を傾け、苦難の歴史と原爆の恐ろしさを実感して欲しい」と語っています。
3.国連での活動とドキュメンタリー映画制作
サリバン先生は教育現場での経験を生かし、去年は国連の最重要課題の一つである核軍縮のノウハウを世界に普及させる指導要領作りのプロジェクトに参加し、完成したパンフレットは世界中に配布されました。現在は国連のHPで核軍縮の意義について詳しく説明する原案作りに取組み中です。若者たちに核軍縮問題に興味を持たせ、誰もが平和に貢献できることを教えることがプロジェクトの狙いです。
サリバン先生はアメリカで5指に入るドキュメンタリー映画の巨匠ロバート・リフターと共同で、「最後の原爆」を制作しました。この映画の主人公は長崎訪問で知り合った被爆者で、戦争を知らない若者二人を連れて、核兵器廃絶を訴えてアメリカやイギリスを歩くストーリーです。世界の様々な映画祭に出品予定で、日本では10月27日に明治学院で試写会があったようですここにアクセスすると、英文ですが詳しい情報を見ることができます。
4.サリバン先生の願い
サリバン先生は、「愛する家族、友人、音楽、草の香りなど愛するものが、原爆で一瞬のうちに失われてしまうのは耐えられないから平和教育を続けています。恐怖ではなく、「愛」が平和教育の原動力です」と語っていました。口先の美辞麗句や他からの強制とは違う、心底からの響きが感じられました。「世界から核兵器がなくなるまで平和教育を続けたい」、それがサリバン先生の願いです。
1.はじめに
先日録画しておいた表記の番組に感銘を受けたので紹介します。主人公のキャサリン・サリバン先生は、ニューヨークの公立高校に専門教育の教師を派遣しているNGOに所属する、平和教育の専門家です。大学で演劇を学んでいた時、近所に核兵器の原料となるプルトニウムの精製工場があること、そのような物質を人間が作っていることを知った瞬間に、核軍縮問題に取り組もうと決意して、軍縮研究の進んでいるイギリスに留学しました。平和学の博士号を取得後はイギリスのNGOで平和運動を開始し、広島、長崎訪問と被爆者との対面が平和教育の原点になりました。6年前にニューヨークに来てから、公立高校を巡回して6万人以上に、平和の大切さを教えて来ました。
2.ニューヨーク公立高校での課外授業
皆で輪になって相手の名前を呼び合いながらキャッチボールして、気持ちがほぐれたところで授業が始まります。中心テーマは核兵器問題です。「世界が混沌とする今こそ現実を直視することが必要。自分の世界に引きこもっていてはダメ、世界を見てもっと考えなさい」と教えています。身体と心でしっかり受止めて貰うために、様々な工夫を凝らしてあります。
まず生徒達は、世界におよそ3万2千個と言われている核兵器の数に驚きます。次に目を閉じさせておいて、金属の玉を一つ落とし、6千万の死者を出した第二次世界大戦に使われた全ての武器の威力に相当する音だと伝えます。続いて現存する核兵器の威力に相当する2600個の玉をバラバラ落として行きます。生徒達はなかなか止まない音に怖さを感じ、そのような武器を持つ意義に疑いを募らせます。
次に取り出したのは、アメリカの2004年の国家予算を、項目ごとに長さで表したリボンです。教育費340億ドル、子どもの医療費440億ドル、ひときわ長いのが軍事費の3990億ドルです。これに加えてエネルギー省の予算に含まれる核開発分400億ドルがあります。「こんなに軍事費が多いなんて早く戦争を止めなきゃ」と生徒自身に考えさせる授業を心がけているのです。
アメリカの一般的歴史教科書には、「広島と長崎への原爆投下は、第二次世界大戦を早期に終結させるため、避けられない手段だった。このお蔭で大勢のアメリカ人の命を救うことができた」と書かれているそうです。教室の照明を一瞬消して、「広島ではこの一瞬で14万人が死にました。長崎ではこの一瞬で7万人が死にました」と伝えてから、広島の被爆者達から譲り受けた4000度の高熱で溶けた屋根瓦など様々な資料を見せると、原爆の事実について初めて知った生徒たちは驚きを隠せません。サリバン先生は、「誰もが機会を作って被爆地を訪れ、惨劇を生き延びた被爆者達がこの世を去る前に話に耳を傾け、苦難の歴史と原爆の恐ろしさを実感して欲しい」と語っています。
3.国連での活動とドキュメンタリー映画制作
サリバン先生は教育現場での経験を生かし、去年は国連の最重要課題の一つである核軍縮のノウハウを世界に普及させる指導要領作りのプロジェクトに参加し、完成したパンフレットは世界中に配布されました。現在は国連のHPで核軍縮の意義について詳しく説明する原案作りに取組み中です。若者たちに核軍縮問題に興味を持たせ、誰もが平和に貢献できることを教えることがプロジェクトの狙いです。
サリバン先生はアメリカで5指に入るドキュメンタリー映画の巨匠ロバート・リフターと共同で、「最後の原爆」を制作しました。この映画の主人公は長崎訪問で知り合った被爆者で、戦争を知らない若者二人を連れて、核兵器廃絶を訴えてアメリカやイギリスを歩くストーリーです。世界の様々な映画祭に出品予定で、日本では10月27日に明治学院で試写会があったようですここにアクセスすると、英文ですが詳しい情報を見ることができます。
4.サリバン先生の願い
サリバン先生は、「愛する家族、友人、音楽、草の香りなど愛するものが、原爆で一瞬のうちに失われてしまうのは耐えられないから平和教育を続けています。恐怖ではなく、「愛」が平和教育の原動力です」と語っていました。口先の美辞麗句や他からの強制とは違う、心底からの響きが感じられました。「世界から核兵器がなくなるまで平和教育を続けたい」、それがサリバン先生の願いです。