COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

ドイツの名前と住所を持つセイヨウトチノキをめぐるちょっと良い話

2009-06-18 22:06:44 | Weblog
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 6月13日(土)の夕方、NHK衛星第一テレビのこだわりライフヨーロッパで、名前と住所を持つセイヨウトチノキと、それを守っている人々の話が紹介されました。セイヨウトチノキは日本のトチノキの類縁種の高木で、5月頃に花を咲かせ、フランスではマロニエ、ドイツではカスタニエ(Kastanie)と呼ばれて、日本の桜のように人々から親しまれている木です。上の動画は、5月末に山梨県北巨摩郡長坂町にある清春芸術村で花を咲かせていたトチノキです。

 番組で紹介されたのは、デュッセルドルフの郊外に生えている、樹齢200年を超えるセイヨウトチノキです。ライン川のほとりのラインボーゲンと呼ばれるこの地域には、広大な牧草地と美しい菜の花畑が広がっています。セイヨウトチノキは二つの世界大戦を生き延び、道路やゴルフ場の建設計画が持ち上がる度に伐採の危機に瀕しましたが、住民による反対運動のお蔭で生き延び、1998年にはドイツの天然記念物に指定されました。その時にユーヒト・ヴィント(Jüht Wind:野原を吹き抜けて行く風)と命名されて役所の戸籍に登録され、2年前には郵便箱が設けられました。


 番組の主人公のアンドレアス・フォークトさんは、1982年に伐採の話を聞いて保護運動に立ち上がり、その後で結婚したサビーネさんと一緒に保護活動を続け、今では多くの人びとの共感を得るようになりました。2006年、デュッセルドルフ市内で多くのブナの木が原因不明のまま立ち枯れになり、その徴候がこの木にも見られたため、一度は伐採が決定されました。しかし納得できなかったアンドレアスさんは、市のガーデン局長であり、樹木医のマンフレッド・クリックさんに診断を依頼し、伐採の必要が無いことを明らかにしてもらったのです。それ以来、アンドレアスさんとマンフレッドさんは定期的にこの木の健康診断を続けています。

 アンドレアスさんは、仕事から戻ると毎日、郵便箱に届いた手紙を取りに出かけます。設置以来、世界中から寄せられた手紙は2000通に上りました。様々な感情が込められたものや、木を守るためのアドバイスを求めるもの、時には写真や絵画など様々です。番組では母親からこの木のことを聞いた5歳の男の子、病床の娘の回復を祈る父親、40歳で心臓と循環器が弱いと診断されて、身体を鍛えるために自宅からこの木まで毎朝ジョッギングを続けた、70歳の男性からの感謝の手紙などが紹介されました。こうして寄せられた手紙の全てに、アンドレアスさんは木の精霊の名前で、感謝と優しさにあふれた返事を書いてきました。

 アンドレアスさんが木の周りに大勢の子ども達を集めて、自然教室を開いている場面も出てきました。アンドレアスさんは、子ども達にこの木を守りながら、自然を慈しむ心を育んで欲しいと考えているのです。子ども達は木のように力強く、大空に向かって伸びて行きたいと歌います。アンドレアスさんが語りました。「私の夢は世界中の木々に、郵便箱が設置されることです。手紙をやり取りし、同じ思いを持つ人たちと連帯できればいいですね。古い木の話や保護のための意見を交換する。更にその思いを多くの人に伝えたいのです。それが私達のゴールであり、必ず実現できると信じています。」
 ナレーターが、「セイヨウトチノキを中心に育まれる心の輪、アンドレアスさんの訴える自然への思いは一本の木から世界へと広がってゆきます」と結びました。
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