

以下の記事で紹介した小冊子の英語版の内容を、理解できた範囲で世界人権宣言起草に携わったステファヌ・エセル著「憤れ!」の英語版”を読んでに掲載してあります。
はしがき
10月13日のワールドWave トゥナイトで、不公平が蔓延する社会に怒れるフランスの若者たちの間で人気を集めている、本文わずか14ページの小冊子が紹介されました。著者はかつてナチスドイツに抗ったレジスタンスの闘士(93)で、去年10月に出版されて以来若者に限らず、幅広い年齢層に支持され、フランス国内で210万部のベストセラーとなっています。手軽で読みやすいことも人気のある理由の一つではないかと思われます。現在までに34ヶ国語に翻訳され、フランス国外でも100万部以上売れており、日本でも早ければ年末に翻訳物が発売になる予定だそうです。閉塞感の漂う現代に強いインパクトのあるメッセージを発信している著作ですので、紹介記事を掲載します。
1.書名と著者について
この小冊子の原題は”INDIGNEZ VOUS!(憤れ!)”で、著者はステファヌ・エセル(S. Hessel)氏(93)である。エセル氏自身の憤りの原点は、第二次世界大戦の時の経験にあった。当時フランスはナチスドイツの支配下にあり、エセルさんはイギリスに亡命、フランスの解放に向けてレジスタンス(抵抗)運動に参加した。一時はナチスに捕らえられて強制収容所に送られたが、処刑の寸前に脱走、レジスタンスの一員としてフランスの解放に貢献した。終戦後は外交官の道を歩み、国連の世界人権宣言の起草に参加するなど、人々の権利や自由の大切さを訴えてきた。
90歳越えた今もパレスチナ問題にこだわりを持ち、イスラエルの対応を厳しく批判し、ガザ地区にも度々訪れて憤り、行動することを実践している。エセル氏はそうしたこれまでの人生を踏まえて、今のフランスの若者に、若いエネルギーを社会の改革に振り向けて欲しいと、この本を著した。
2.エセル氏の発信しているメッセージと若者達の反応
エセル氏は貧富の格差の広がりなど社会の矛盾に対して憤り、以下のようなメッセージを発信して、改革に向けて行動するよう呼びかけている。
「この世界には、我慢できないことがある。最悪の態度は無関心だ。憤ることによって、社会に参加できるのだ」
「この本は若者に向けて書きました。憤りの意思表示をして欲しいのです。世界はいま大きな変化を必要としているからです。」
「私は93歳です。間もなく人生の終わりを迎えるでしょう。皆さんの行動が結果を生み、それが大きな歴史の流れとなるのです。”憤れ”という言葉は色々な意味に解釈できます。しかし重要なのは本質です。憤るべき立場にある人こそが行動すべきなのです」
「銀行は配当金や経営者の報酬には気を配るが、市民の利益は二の次だ。金儲けばかりが奨励されている」
「君達に言いたい。私の後を継いで、憤りなさい!」
この本を肯定的に受け止める市民たちの声が紹介された。エセルさんの言葉に共感した若者達が行動を起し始めている。パリ市内で行われた抗議デモの横断幕には、憤っていると書かれていた。デモ隊は、特に金融機関に対して憤っている。金融機関の投機的マネーが市場を翻弄し、信用不安を煽り、危機を作り出していると不満を強めている。
3.取材したパリの渡辺記者の考察
3-1)なぜ僅か14ページの本が人々の心をつかんだか?
まさにこの危機の時期に、多くの人が考えていたこと、不満に思っていたことを代弁する内容だった。ヨーロッパは信用不安と閉塞感に覆われている。各国政府は信用不安の原因となっている財政赤字を削減するため、増税や社会保障のカットを決め、貧富の差が更に広がっていると多くの人が感じている。また若者の失業問題も深刻である。そこにナチスドイツの支配と闘ったレジスタンスの闘士が憤れと訴えた。レジスタンス参加者は尊敬される対象である。その生き様に裏打ちされた人だけに、説得力を持って受けとめられたと思われる。
3-2)金融機関を強く批判していることが、若者達の心を引き付けた面もあるか
その通り。デモの参加者に聞くと、今の社会は金融市場、株式市場によって翻弄され、政治はその対応に追われているだけだと映っているようである。今の社会では民主主義は機能していない、金融機関のマネーが市場を通じて社会を支配しているという不満が強い。しかもその金融機関は、危機に陥っても影響が大きすぎるという理由で、公的資金で救済されている。経済学者ロマン・ランシエール氏は、「金融機関は景気が良いと多額の賞与を受け取り、悪ければ国民の税金に頼る。人々が怒るのも当然です。国民の納得を得るためには、金融機関への課税を増やす必要があります」と語っている。EUもこうした不満を受けて、金融機関への高額なボーナスへの規制を更に強化しようとしている。ただ、ヨーロッパの金融不安、信用不安の解消にはまだまだ時間がかかりそうである。危機が続くヨーロッパで、エセルさんの「憤れ!」という訴えは、象徴的な言葉になっている。
あとがき
アメリカではウォール街の金融機関に抗議するデモが広がりつつあります。この動きがエセル氏の著作に触発されたものかどうかは定かでありません。番組では抗議の若者達が集結している広場の本の貸し出しコーナーにも、この本が置かれている場面がありました。間もなく邦訳本が出版されるでしょう。閉塞感の漂う日本の社会に、この本がどのようなインパクトを生むか、より公正な社会への変革を促進するエネルギーとなることを期待します。
どうぞ貴ブログで紹介なさってください。
多くの方に知っていただきたい情報です。
邦訳の出るのが楽しみですね。
勝手ながら、私のブログでも御ブログのこの記事を紹介させていただきたく存じます。ますますのご活躍を祈念いたします。