COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

ムハマド・ユヌス氏の貧困博物館構想

2006-11-02 12:25:47 | Weblog
 バングラデシュのムハマド・ユヌス氏の特別番組を二つ見た。ユヌス氏は、自ら設立したグラミン銀行と一緒にノーベル平和賞を受賞した。ノーベル財団の選考理由は、「永続的な平和は、人々が貧困から抜け出さねば実現できない」であったそうだ。バングラデシュは1971年にパキスタンから、ベンガル人のアイデンティーを求めて独立したが、戦乱による国土の荒廃と多くの人材の喪失を被り、いまだに海外援助にたよる世界最貧国の一つである。
 独立間もない母国の大学に着任したユヌス氏は、アメリカで学んだ経済理論で国の経済発展を目指した。バングラデシュは1974年の大洪水による飢饉で、餓死者が続出する悲惨な事態に見舞われた。被災地の村を訪れたユヌス氏が目にしたのは、経済学の教科書に書かれていない、本当の貧困の姿であった。竹椅子を手作りしている女性は、高利貸しからの借金で10円相当の竹を買っていたが、借金の返済に追われて1日2円も稼げずにいた。村の困っている女性42人にポケットマネーで総額1712円を無利子、ある時払いで貸付けたところ、全額返済されたことが契機になった。銀行が貧しい人々へ融資しないことから、ユヌス氏は1983年に自らグラミン銀行を創設し、無担保で貧しい人に小額融資を始めた。5人一組が連帯保証人になって助け合う仕組みで、返済期限は1年、週1回の分割返済である。年利は20%と日本のサラ金並みであるが、高利貸しからだと1日10%で、返せないと家を担保に取られてしまうのとでは大違いである。貧しい人々はこのような仕組みで何百年もの間、貧困と搾取の悪循環から抜け出せずにいた。農村女性という最も弱く貧しい人々の自立を促すことで、グラミン銀行はこの悪循環を断ち切った。返済率99%で貸し倒れ殆ど無く、国の支援に頼らずにバングラ最大の銀行に成長した。このやり方はマイクロクレジットと呼ばれて国際的にも評価され、60以上の国と地域に広がっている。
 一つ目の番組は、2001年に放送された「未来への教室」の再放送であった。このシリーズは優れた人が少人数の少年・少女達を直接指導する様子を描いたものである。今回の舞台はダッカ郊外の貧しい村の普通の学校で、「貧困とは何か、グラミン銀行の役割は何か」について語った二部構成の作であった。第一部ではグラミン銀行からの融資で貧困から脱却した女性達の経験談を、生徒達が聞いてまわった。第二部は学校の卒業生達が社会の中でどう過しているかを聞いてまわり、学校を出てもなかなか就職口が見つからないという、経済基盤に乏しいバングラデシュの厳しい現実を目の当たりにした。そこでユヌス氏が推奨したのは、個人個人が貧困の中で、自らに秘められた可能性を探しだす起業家精神であった。それは貧富によらない人間生まれながらの能力への、ユヌス氏のゆるぎのない信念によるものであった。おそるおそる100円台の融資からはじめた女性達が、上手に運用することで経験、能力、勇気が高まり、桁を上げた融資で事業を拡大しようとしている様子が紹介された。
 バングラデシュは大変貧しく、大量生産・大量消費の循環サイクルから抜け出せない国とは、まだまだ大きな差がある。しかし皆が皆、お金儲けに奔走しだしたらどうなるであろうか。ユヌス氏は二つ目の番組(10月29日のNHK海外ネットワーク)で、「今までは利益ばかりが優先されてきた。人は金を稼ぐ機械ではない。人々のためになるビジネスを広めて、事業を通じて社会問題を解決したい」と語っていた。また、「全ての人を貧困から抜け出させる日は必ず来る。貧困を博物館に入れて過去のものにしてしまい、将来の子供達が訪れて、貧困て何、何故人々は貧しかったの?と問うような世界にしてしまいたい」とも語っていた。わが国の影響力の大きい人々の中にも、このような夢を語る人が出てきて欲しいものである。ユヌス氏は、決して夢物語ではないと語っていた。
(お断り:同内容の記事をユニス氏で掲載してありました。両方使われているようですが、英文表記ではMuhamad Yunusになっているので、ユヌス氏に改めました)


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「不都合な真実」の試写... | トップ | 「アメリカ 神の理念を政治... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
manicmondayさんこんばんは (coccolith)
2008-04-07 22:54:05
ご返事有難うございます。
日本はこの番組が放送された当時より格差が増大し、ワーキングプアのようなテレビ番組も放送されるようになってきましたね。ユニス氏のように平和を願う強い信念を持って、格差のない社会の実現を目指すようなオピニオン・リーダーが現れてほしいものです。
またお出かけになってください。
返信する
Unknown (manicmonday)
2008-04-07 18:22:57
coccolithさん、こんにちは。
コメント、TBありがとうございます。
お返事遅くなってすみません。

平和を願う強い信念を持つことは、
夢で終わらず、形にできるという希望を
与えてくれるような方ですね☆
貧困ってなにって当たり前のように皆が問う社会って
考えただけで、素敵ですネ。
本当にすばらしい話を紹介してくださいって
ありがとうございます!
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事