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目 次
はじめに
1.ブルキナファソのプロフィール
2.南部サプイの状況
3.中部カヤへ
4.栄養不足の子ども達
5.砂漠化の進んだ北部の状況
6.求められる支援
おわりに
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はじめに
5月8日のきょうの世界 特集で、「気候変動と子どもたち~ユニセフ大使アグネス・チャンさんの報告~」が放送されました。アグネスさんは4月13~23日にユニセフ親善大使として西アフリカの小国ブルキナファソを訪れ、気候変動が子ども達の暮らしにどのように影響しているかを視察してきたのです。番組で示された映像と、アグネスさんが語ったブルキナファソの状況は厳しいものでした。放送の終わりに、より詳しい内容が7月のBS特集で放送されるとの予告がありました。その番組「気候変動が子どもを襲う~アグネス・チャン 西アフリカ報告~」が7月4日(土)22:10‐23:00のBS1で放送されます。牛が飲んでいる池の濁った水をペットボトルに入れて飲んでいる少年たち、ユニセフ栄養リハビリセンターで鼻から入れた管で栄養を与えられている1歳8カ月の男の子、アグネスさんに抱かれた栄養失調の男の子のつぶらな瞳、45度の炎暑の中で泥水につかって砂金探しをしている幼い女の子たちなどの映像は、初めて見る人々の心に強く訴えかけるものがあります。先進国に住む私たちは温室効果ガス排出削減の中長期目標値設定のほかに、何をできることはないかを、お考えいただきたいと思います。なお、この番組は7月11日(土)15:10‐16:00二BS1で再放送されます。
以下は番組紹介を兼ねて、きょうの世界での放送内容の紹介を書込みます。
1.ブルキナファソのプロフィール
ブルキナファソは、アフリカ西部、サハラ砂漠南端のサヘルと呼ばれる半乾燥地帯に位置し(冒頭の図参照)、北の方から砂漠化が進んでいる国である。人口はおよそ1400万人で、労働人口のおよそ86%が畜産や農林業に従事しているため、気候変動の影響が生活に及びやすい状況にある。ブルキナファソはいま丁度砂漠化の途中、北部、中部は徐々に砂漠化しているが、南は未だ雨が降っており、砂漠化のプロセスを見ることができる
砂漠化の最前線の国である。
アグネスさんは訪問前、温暖化や気候変動は将来の問題と思っていたが、直視すると既に現在の問題で、しかも森とか湖の問題ではなく、人間社会の問題だと学ぶことができたと語った。
2.南部サプイの状況
アグネスさんは砂漠化を見るため、南のサプイからスタートし、カヤ、ドリ、ウルシ、エサカン(冒頭の図参照)と北へ行けば行くほど砂漠化が進む状況をつぶさに眺めてきた。まず訪れたサプイでは、砂漠化が進む中北部から移住してくる人々(気候移民)の増加で、人口はこの15年で2倍に増えた。5年前、家族20人を連れて中部のカヤから移住してきまたババさん(51)一家は、サプイで買った土地でトウモロコシなど穀物栽培を始め、今は自分たちで食べる分に加え、収穫の一部を市場に出荷して、家族の生活を支えている。かつてはカヤも豊かな土地であったが、徐々に雨が降らなくなり、穀物を育てることができなくなった。ブルキナファソではここ何十年かで降水量を大幅に減り、600ミリ以下の地域が拡大している(下図参照)。しかも予測としては、2020年で更にこの半分、4カ月の雨季が2ヶ月になるという。「気候変動や砂漠化などの深刻な問題を知っていますか?」とのアグネスさんの問いに、ババ「私自身が気候変動の証人です。」と答えていた。気候移民の増加で、いずれ土地の権利や水の争いが起きるのではないかが懸念されている。
3.中部カヤへ
サプイから北へ向かって車を走らせると、緑がどんどんなくなって、砂漠化の深刻さが見えてきた。途中で見つけた大きな水溜りでは、沢山牛が水飲んでいた。牛の世話をする子ども達は、家の周辺では草が無くなったため、朝から働き通しで遠くまで牛を連れて行かねばならなくなった。子ども達が池の濁った水をペットボトルに入れて飲んでいたことに、アグネスさんは衝撃を受けた。
カヤではババさんの兄アマドウさん(75)が家族10人と暮らしていた。去年は雨季に雨は殆ど降らず、畑のヒエが全滅した。その後、もう一度種を撒いたが、収穫量は例年の1╱2から1╱3に減ってしまった。高齢のアマドウさんは、新しい土地に移住して生活を始めるのは厳しいが、今後も雨が降らなければ、生活が立ち行かなくなると危機感を募らせている。村を見渡すと年寄り、女性、そして幼い子ども達の姿が目立ち、移住できる人たちや出稼ぎできる若者は既に逃避し、残されている人たちは半分飢えた状態で、どうにか維持してゆくしか道が無い状況に置かれている。
4.栄養不足の子ども達
ユニセフの支援の栄養リハビリセンターには、食糧事情が悪化で重度の栄養失調になった子ども達が次々と運ばれてくる。前日に瀕死の状態で運ばれてきた1歳8ヶ月の男の子は。一ヶ月前から食べる力もなくなり、鼻からチューブを通して栄養を与えられていた。離乳食を始める時期に食料不足に直面した子ども達の栄養不足の影響が大きい。他の兄弟と争って食べてゆけずにどんどん飢えて、5人に一人の子供が5歳未満で死亡している。母親は、子どもが栄養失調になっても病院に行かねばならないことが分からないので、ボランティアが村で探し出して連れてきている。医療機関の数も著しく不足している。
5.砂漠化の進んだ北部の状況
砂漠化が最も深刻な北部の村ウルシでは、かつては豊かな森に囲まれて、直径10キロもあった湖が36年前の旱魃以来、少しずつ小さくなり、ほとんど干上がっていた。やはり北部のエサカンにある30年前に発見された金山には、降水量の減少で農業や放牧で生計を立てられなくなった人々が収入を求めて移り住んできている。金山でおよそ11000人が働いており、その半数が子ども達である。数十メートルの深さまで穴を掘り、地下の金脈に向かって横に掘り進める。手足が長く、楯穴を上り下りできる男の子は穴に入って働き、小さな子ども達は掘り出された砂利を集めてザルの中で水にさらし、金が混ざっていないか探している。水も買わなければいけないので、蒸発しないうちに働かなければならない。45度を越える暑さの中で何も食べずに10時間も働き、夜家に帰って1回だけ食事するだけである。金山の中には事故、怪我、そして麻薬とかいろいろな危険があり、とても子ども達が働く場所ではない。アグネスさんは、何とかそういう状況から子ども達を救い出さなければいけないと痛感した。
6.求められる支援
ユニセフはエサカンの近くに職業訓練所を開き、親を説得して連れてきた子ども達に、バイクの修理、刺繍、織物、木工などを教え、小学校も作っている。しかし、登録されている子ども達の半分しか来ない状況にある。アグネスさんがブルキナファソの子ども達への緊急援助としてあげた最優先課題は、栄養失調、安全な水、そして学校であった。続けて意見として、気候変動に対応できる農業を行うための、日本からの限られた水資源の管理と技術や農業技術の支援への期待を述べた。
おわりに
今年12月にコペンハーゲンで開催されるCOP 15(第15回気候変動枠組み条約締結国会議)での合意形成に向けて、2020年までの世界各国の温室効果ガス排出削減の中期数値目標を巡って、各国間で盛んに論議が行われています。麻生首相は先日、米国やEUの数値目標を横目で見ながら、2005年比で15%削減を打ち出しました。麻生首相はこれ以上の数値は国民負担が大きくなりすぎると述べていましたが、念頭にあったのは、全家電製品の省エネ機器への買い替えや、断熱住宅への改造でした。映像で見られた気候変動の現実に、無頓着としか思えません。アグネスが一番大事なこととして語った、「温暖化がこの気候変動の原因としたら、先進国に住む私達がCO2を出しているので責任がありますよね。だから、私達は自分の生活を改めなければ、ブルキナファソの子ども達の将来はないなあと思いました」が重く響きました。アグネスさんには、ブルキナファソが小さな地球という風に見え、「私達が生活を改めなければ、いずれ私たちの身に起こるのではないか」と思ったのです。