COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

限りある地球に住む一地球市民として、微力ながら持続可能な世界実現に向けて情報や意見の発信を試みています。

アフリカ発展支援に関するBSフォーラムの考察続編

2008-04-09 00:40:05 | Weblog
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はじめに
 先日書き込んだアフリカ開発支援の記事の関連で、知合いのNGO関係の方(Iさん)から参考になる情報をいただいたので、続編を書きたいと思います。Iさんは先月、アフリカの貴重な資源の奪い合いによる資源枯渇加速のおそれや、先進工業国型ビジネスモデルの普及の影響に関連したセミナーに参加したそうです。このセミナーはFoE JAPANが主催した「資源開発とCSR~環境社会影響とその対策~」でした。

1.資源獲得競争が資源国に及ぼす影響
 セミナーの冒頭の現況報告(世界の鉱物消費量の急激な増加、獲得競争における中国の台頭、鉱物企業の国際的な統合合戦など)の後、鉱物資源開発が現地住民や環境に被害を及ぼしている、下記のような問題が提示されたそうです。

(a) 発掘のため、その土地の先住民の強制移住とその反対者への抑圧
(b) 環境破壊(森林・生態系・生物多様性破壊・大気・水質・土壌汚染)
(c) 腐敗(人権・労働・腐敗の構造)

 (a, b) との関連では,オックスファムオーストラリア傘下のマイニング・オンブズマンという組織が、鉱山開発地の地元や先住民族のコミュニティの苦情を受けて開発状況の調査を行い、鉱山会社への説明責任の要請などを請け負う活動を行っているそうです。
 (c) の「腐敗」については、Iさんもウガンダやマラウイに派遣された青年海外協力隊の方々から権力構造の腐敗を耳にしていたそうで、まだ健全な民主主義や政治体制準備できていない途上国に、先進国が「資源がお金になる」状況を作ってしまったことが、さらなる権力腐敗を呼び、健全な思考の妨げになるのではないか心配だとの意見で、私も全く同感でした。なお、2004年にアフリカ女性として初めてノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんも、著書「モッタイナイで地球は緑になる」(木楽舎 2005)で、「腐敗」について論じています。

2.途上国における企業の社会的責任(CSR)
 先のBSフォーラムでは、モザンビークでアルミ精錬事業を展開している三菱商事の宮司氏から、CSRに基づく様々な支援活動の説明がありましたが、FoE JAPAN主催のセミナーでは、開発会社が出資している奨学金や生計支援が、地元の権力者のみのメリットになって地域社会を分断し、地元政治の主流にいない住民の周辺化を助長しているとの報告もあったそうです。Iさんは、先にあげたマイニング・オンブズマンのような直接現地と関わる組織と、CSR全体の向上を目指すNGOが連携した企業への提言が重要だとの意見です。私はこれにも同感です。
 宮司氏の「日本に力があるうちにアフリカ固有の鉱物資源やよいプロジェクトに投資して、必要なものをアフリカ人と開発し、世界のマーケット価格で持ってくるプロジェクトを作らないと、アフリカのためにならず、日本にとっても不利である」という発言には、Iさんも同感と違和感の交錯した受止め方をしたそうで、特に「良いプロジェクト」とは具体的にどんなプロジェクトなのかを示して欲しいと感じたそうです。前の記事のジャトロファの栽培にしても、バイオディーゼル油を少しでも多く調達したいと投資する側にバランスが偏ると、アフリカのためにならなくなってしまいます。

3.国内における鉱物資源のリサイクル
 FoE JAPAN主催のセミナーのパネルディスカッションで、参加者に「鉱物の日常的なリサイクル」の重要性が呼びかけられたそうです。携帯電話にはニッケルなどの希少鉱物が含まれていますが、日本ではほとんどがリサイクルされていません。先月あったサイエンスZERO「都市鉱山を生物パワーで掘り起こせ」という番組によると、日本は世界でも有数の廃棄されたハイテク機器からなる都市鉱山“埋蔵量”を誇るようです。Iさんは、例えばリサイクル1台ごとにメーカー側が10円拠出して、希少鉱物調達地域で活動しているNGOのプロジェクトを支援するなど、メーカーとNGOの連携案を模索しているそうです。

おわりに
 今日のテレビニュースによると、インドがアフリカの首脳を招いて初めてのインドーアフリカサミットを開いたそうで、資源獲得競争は益々過熱しています。しかし、BSフォーラムの考察で書いたように、地球の環境容量を考慮すれば、先進工業国型のビジネスモデルを世界に普及させることは不可能なことが明らかです。途上国に先進国のような産業革命を繰り返すのでなく、一気に持続型経済という新しい段階に入ってもらうことが必要なことを先進国側が理解し、途上国を支援して行くことが大切だと思います。政治が変わる必要がありますが、Iさん達NGOの方々の啓発活動にも期待したいと思います。

情報提供いただいたIさんに感謝です。

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3 コメント

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こんにちは。 (さみゅえる)
2008-04-26 11:33:50
http://www.voiceblog.jp/hottokenai/24132.html
これが現実ですし、アフリカ支援は百害あって一利無しかと。
返信する
掲載ありがとうございます。 (ibata)
2008-04-29 13:14:26
coccolithさんに、だらだらと書き連ねて送ってしまったことを、まとめてくださり掲載をありがとうございます。
たまにセミナーなどに行くと、それだけでいい情報を吸収した気になるのですが、実際はあまり身についていなかったりします。あらためて自分の言葉でまとめてみると、どれくらい理解してなかったかがよくわかりますね。
これからの官+民+企業の3者連携のあり方は、地球の未来にとって本当に重要だと思います。
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Ibataさんへコメント御礼 (coccolith)
2008-04-30 13:48:12
JANICの方からコメントをいただけて光栄です。
開発援助の現場に近い情報をいただけて、大変参考になりました。これからも時々いらっしゃってください。
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